ドラゴンの円卓会議
それから紅哉と佐鳥は無事日本へ帰国した。
ワイバーンはまず火神崎家の前に降りると、何事だ!?とセレナ、舞香、龍一、朱音さんを含むメイド全員に迎えられ、紅哉の女装がバレる!と。
一同がポカーンとするなか、舞香だけは紅哉の事が分かり、真っ先に抱きついてきた。
その行為にラッセルを思い出したが、何も言わないで抱きついている舞香にただいまと言った。
佐鳥と言えば、紅哉を降ろすなり、そのまま炎道家に行くと言ってワイバーンを操作して行ってしまった。
それから2日くらいは女の癖が治らず、クラスの豊姫から怪しい目を向けられる。
癒理は舞香から事情を聴いていたそうで、おかえりなさい。と一言だけ言ってくれた。
「いや~女癖も治ったし!俺の復活だな!」
「ふむ、そのようだな。マスター」
「お、ニルも大丈夫か?結構ストームサウルスにやられたんだろ?」
「問題ない。もう傷は癒えた」
「ヴリトラは?」
「アタシも大丈夫よ。それよりも紅哉。相談があるのだけれど」
「なんだよ…」
ベットに倒れている紅哉にニルと一緒にゲームをしているヴリトラが話しかけてくる。
「アタシね。冥府に戻れないみたいなのよ」
『なんだって!?』
「あ、アタシの勝ちね。ニルって弱いのね~。これなら舞香にも勝てそうだわ」
『いやいや!お前もっかい言ってみろよ!』
「二人してうるさいわね。冥府に戻れないって言ったのよ」
『だからなんでだよ!』
「あなたと契約した時間が長すぎてリンクが切れないのよ」
「えっと、つまり鍵に戻れないと?」
「そうよ。舞香に言ったら――――」
『もうお兄様のパートナーになったら…?』
『なんだとおお!?』
「あなた達本当に仲がいいわね」
「なんだ、これからは邪龍2体見て行かないといけないのか?」
「そうなるわねぇ……これからも末永くよろしくよ」
「まぁ、ヴリトラならオレは構わない。ほら、続きをするぞ。あんな不意打ち認めん」
「ニルは相変わらず負けず嫌いねぇ」
ナリオカートを再開した二人に対し、紅哉はこれからの事を考えていた。もちろん社会的な事でだ。
いきなり俺のパートナーが2体になりましたー!パンパカパーン!と言ってみろ。しかも龍だぞ。絶対面倒な事になるに決まっている。
『どこで手に入れたんですか!?人類には龍は2体だけと聞いているんですか!』
『えっと~、妹の舞香から貰いましたー!』
うん、ダメだな。でも、真実はそうなのだ。
「うわもうダメだああああああああ!」
「な、なんだ!?マスター!?どうした!?」
「ちょ、この子精神がおかしくなっているわ!」
「おい!しっかりしろ!マスター?マスタアアアアアアア!」
ニルは壊れた紅哉に対して嘆きの声を上げるしかなかった。
深夜、紅哉もセレナ達も寝静まった頃、ニルとヴリトラは舞香を呼び出していた。
「なに……?もう寝たいのだけれど…」
ベランダに寄り掛かっている二人に対して舞香はいつも通りのペースで話しかける。
「舞香、アジダハーカとグリンデルも聞き取れるようにしろ」
「え…?あの子達も…?」
「そうよ。これは龍族に関係することなの」
「そう……出す事は出来ないけど、心層空間での会話は可能……私の手の平に手を重ねて…」
舞香の差し出した手にニルとヴリトラは手を重ねた。すると、浮遊感と共に意識が飛んだ。
「なに用だ。舞香」
「話があるのは私じゃない……」
「オレ達だ」
「ほう……久しいなニルよ」
真っ暗な空間だった。だが、中央に巨大な炎が燃え上がり、何とか顔が把握できる。
この空間にはリヴァイアサン、アジダハーカ、グリンデル、ヴリトラ、ファーヴニルがいた。舞香はその会話をリアの近くで聞く。
「オレとヴリトラはアメリカで同族に出会った」
その言葉に龍と舞香は言葉を失った。あのグリンデルも黙って聞いている。
「ニル、それは本当ですか?現代に蘇った龍は私とあなたのみ。その他にまだいたのですか?」
「そうよ。砂漠で死にかけた時にあいつは来たわ」
「はははは!お前らが死にそうだって!?龍の風上にも置けねェな!でもよ、お前らで死にそうって事はそいつは相当強いってことだよなァ!」
「オレ達は連戦で消耗していたんだぞ!決して負けたわけではない!」
「ニルちゃんは弱いでちゅもんね~。オレよりも弱い龍騎士だもんね~」
「なんだと!グリンデル!貴様この場で殺してやろうか!」
「待って……私がこの場に招いたのはそんな血なまぐさい事をさせるためじゃない……ここは話し合いの場…」
グリンデルの安い挑発に乗りそうになったニルはヴリトラになだめられながらもここは引いた。
アジダハーカは場が静かになると、ゆっくりと口を開いた。
「ヴリトラ。誰に会ったのだ?」
「神龍よ」
「神龍ですって!?あのお方はまだ生きていたのですか!」
「違うわ。神龍もパートナーのようだったわ。主の命でアタシたちを助けに来たようだったし」
「神龍か……我と肩を並べるバハムートの懐刀……面白い奴が蘇ったものだ」
「お前が笑うなんて珍しいな、ダハーカ」
舞香は初めて見た。いつもつまらそうにしているアジダハーカが笑ったのだ。
「ニル、お前こそ旧友に会えて嬉しいようだな」
「そんな事はない。ただうざい奴が蘇ったな、と思っただけだ」
「けッ!神龍かよ。あいつは何を考えているのか分からん奴で嫌いだな!」
グリンデルは緑の鱗を炎に映す。
「我と同じ策士よ。ニル、この事は紅哉に言ったのか?」
「いや、まだ言っていない」
「言わないのですか?」
「神龍は言ったわ。私の主を見たら驚くと。恐らくアタシたちの知り合いに神龍のマスターがいる」
「それ本当…?私でも気づけないパートナー…?それに龍クラスとなればエーテルなんてただ漏れで分かるよ……?」
「お前が気付いていないだけじゃないのかァ?案外近くにいたりしてな!はっはっは!」
「それしか考えられないわ。それに神龍はニルを見て言ったわ。完全に紅哉の知り合いよ」
「それでマスターには変な気負いをして欲しくないのもある。だから、ここで意見を求めたいのだ」
「なるほどな。確かに紅哉が変に怪しんでたりしたら出す尻尾も出さん」
「なに…?神龍って危ない龍なの…?」
舞香の不安そうな言葉にヴリトラは炎で包まれた顔を左右に振る。
「そんな事はないわ。神龍はそこのダハーカに比べれば何百倍も良いわよ。でも、ただの邪龍よりは恐ろしいわ」
「だってよ!ダハーカ!お前の方が何百倍も怖いってよ!」
「ふむ。神龍が事を起こす事はないだろう。紅哉の知り合いに悪人はおらぬ。神龍は大人しくしているころだろうよ」
「ほう、お前は言い切るのは珍しいな」
ニルの蒼い瞳がアジダハーカを捉えた。
「お前も龍の里で分かっていたはずだろう。神龍は強い者に惹かれる。もし主が強いのであれば、何も問題はない。お前のマスターとやらの知り合いに弱い奴がいるか?」
そう言われて舞香、リア、ニルは考えた。その結果が――――
『いない』
「ふむ、それでいいのだ。ならもう答えは決まっている」
「そうですね。別に紅哉には言わなくていいでしょう」
「そう……お兄様には秘密ね…」
結局この場はアジダハーカが取り仕切った気がしたが、別に彼がまとめた所で何も言う事はない。
何故なら、バハムートの次に王となる候補がこのアジダハーカだったのだから。
「ダハーカ。お前はまだ舞香に従っていないのか?」
「我は誰にも媚びぬと言ったぞ。この舞香にな。だが、協力はしないつもりはない。舞香よ、本当に我の力が必要になった時は呼ぶがいい」
「え………うん…呼ばせてもらうね…」
「お、ダハーカが少しは認めたようだなァ!なら、破壊はオレに任せろ!破壊ならいつでも待ってっからよォ!」
「あなたを呼ぶ機会は余り来ないと思う……」
「……まぁ力が必要な時は呼べよ!オレ様は退屈してんだ!いっつも犬ばっか呼びやがってよ!そこのヴリトラも贔屓してんじゃねェよ!」
「だって、あなた舞香に従わないじゃない。アタシとケルベロスは舞香を好きよ。だから、従っているの」
「ちッ!じゃあな!」
アジダハーカに続いてグリンデルも緑の炎を散らして消えて行った。己のあるべき場へ戻ったのだろう。
「舞香。帰るぞ」
「うん……それじゃ、さっきと同じ…」
舞香が手の平を出すと、そこへヴリトラとニルが重ねる。そして先ほどと同じ感覚と共に現実に戻る。
「結論が出たな」
「結局何もしない事ね。まぁ皆に知らせる機会だと思えばいいかしらね」
「私とお兄様の他に龍使いが……」
「舞香?余り気にしなくていいわよ。神龍は怪しいけれど、あれでも聖龍だわ。人を困らせるような事はしないわ」
「そう……ならいいけど…んじゃ、私はもう寝るね…」
「うむ。オレ達も寝るとしよう」
「そうねぇ。久しぶりによく眠れそうだわ」
舞香はお気に入りのクマのぬいぐるみを抱いてベランダを後にし、ニルとヴリトラは一度だけ背伸びをして霊体化した。
神龍に興味を示して外の世界に興味を持ったアジダハーカが舞香のスタメン入りしました。あ、グリンデルもです。これでヴリトラを失った力の10倍近い戦力が追加され、要塞崩しではひどいことになりそうですね。
さて、次は玲奈と特訓です!




