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龍の血を引く者  作者: また太び
5章 紅哉の戦場アメリカ(続)
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章仁の過去

「ただいま~」



と言っても返事はない。そんなことは分かっている。なんせ親が帰ってくるのはいつも遅い夜頃だ。

私、三原豊姫は綺麗に靴を揃えて家に上がる。

紅哉くんの家と同じくらいの家に少し恥ずかしさもあるけど、今更家にケチをつけるのはお門違いかも。



「む……帰ったか」


「っ!?」



今日の晩御飯の用意を買って来た袋を落とすところだった。

なんと目の前に2mはあるだろう大男がいたのだ。



「お父さん!?どうしたの!?」



そう、お父さんだ。この外人を思わせる屈強な身体と似合わないスーツ姿の人は間違いなく、お父さんだ。



「今日はお前に話があって少々会社を空けてきたわけだ」



なんだが私に話があるお父さんは、私に席に座るよう言う。



「お前の友達の紅哉という男。お前はどう思っている」


「え!?な、なんでそんな話!?」


「お前はもう少しで18だ。その意味が分かるな?」


「…………結婚の話…?」


「そうだ。だが、私も娘の意見を尊重したいと思っている。知らない相手と無理やり結婚するのはお前も嫌だろう」


「そう…だね」


「今度私の方から火神崎の所へ挨拶に行こうと思う」


「なななな!?何を言っているの!?ちょっと紅哉くんはそんなんじゃ!?」


「ではな。私も忙しいのでな」


「お、お父さん待ってええええええええ!!!」


「安心しろ。お父さんに全て任せろ」


「安心できないからああああああ!!」



バタンと家の扉の音が響いた。私はどうすればいいのか分からず、1時間ほど玄関で固まっていた。





「へっくしょんっ」


「おや、小春さん風邪ですか?」


「ううん。誰か噂をしているのかも…」


「んなことあるか!今どき流行らんぞ!んなの」



基地へ向かう軍用車で砂漠を走る俺はくしゃみをしただけで佐鳥にここまで言われる。

俺達が基地に向かう理由は、まず荷物とこの後の事だ。作戦は成功したわけだし、報酬金を貰う話を付けに行く。

ストームサウルスが去った後の惨状は酷いものだった。

砂漠は抉れに抉れ、車が走るにはとても辛い道だ。建物も砂に埋もれてしまっている。



「ストームサウルスはSランクの魔物だ。アメリカに現れたのはここから30年も前のことだ」


「そんなに前からいたんですか!?」


「一説によると、太古から生きていたとも言われています」


「えええ!?太古から!?」


「小春お姉ちゃん。恐竜型の魔物って個体数が極端に少ないんだよ」


「冬眠していたとも言われていますね」


「恐竜をパートナーにしている者は多いが、魔物として残っているのは少ない。結局弱肉強食の関係でいくら強くても時代の流れで進化する魔物に狩られて死ぬパターンが多い。だが、あのストームサウルスは現代においても最強の座をほしいままにしている」



前で車を運転しながら煙草を吸う佐鳥は語る。

そうだ。魔物は日々進化していると言われている。時代の流れに適応したり、その場に存在する絶対的捕食者に対抗するためのすべを身に着けたりと、進化する。

それはやがて新しい魔物を生み出したり、自然環境を崩す原因にもなる。

だが、あのストームサウルスは生き残る。それがどれだけ凄い事は今の話を聞いて十分理解出来た。



「ニルとヴリトラ2体掛かりでやっと止めたんだよね。幻想種最強が2体かかり…」


「そういうこった。あの恐竜とは金輪際関わりたくないわ」


「俺も同感です。ストームサウルスは危険すぎる」



バードレイは悔しそうに拳を握りしめる。



「バードレイ…」


「あのキャンプ場には子供達もいた。それがあんな一瞬で…」



ストームサウルスに襲われた記憶が鮮明に蘇る。呆けた顔をした子供達の命を一瞬で奪った竜巻。

あの場にいた傭兵もみんな死んだのだろう。



「でもな。おかしいんだよ。あの場にピンポイントでストームサウルスが襲ってきた事がな」



運転している佐鳥が後ろにいる俺達にも聞こえる声で呟く。

その言葉にバードレイとラッセルも同じ意見だったようだ。



「どういう事ですか?」


「ストームサウルスは本来気性の荒い性格ではないんだよ。自分の縄張りに入って来た者には容赦ないが、大人しいんだ」


「それがあんなに怒っているのがおかしいと俺も思っていました」


「僕もね。あんなに怒っているストームサウルス見たのは初めてなんだよ~」


「それにな。予め作戦がバレていたのも気になった」



少し整理しよう。作戦がバレていた。ストームサウルスが怒っていた。何故か手当たり次第攻撃した。

それもストームサウルスは本来大人しいという。

おかしい。誰か作戦が失敗する事を望んだ奴がいる。



「誰か裏切り者がいたのは確実ですよね」


「……そうだな。しかし、そんな事をしてメリットになるのか?」



佐鳥の言うメリットとは恐らくビジネスの事だろう。これを失敗させて金になる事があるのだろうか。


謎は深まるばかりだ。

そして俺達を乗せた軍用車は基地へ着いた。



「なッ!?」


「やはりな…」



そこには壊滅した基地があった。



「今からあたしだけ中を見てくる。お前らはここでこの車を見張っていろ」



一人納得した佐鳥は煙草を吐き捨てて壊滅した基地へ突入して行った。



「佐鳥さんは荷物だけ取って来るだけのようですね」


「バードレイ分かるの?」


「ええ。戦場で全てを完遂しようとすると必ず死にます。一つだけの目標を完遂するのであれば生存率は上がります」


「でも、荷物なんて残っているのかな~」


「壊れちゃってる可能性もあるね」



ラッセルが少しだけ残念そうに言う。それに俺も同意する。



「この襲撃は遠距離からの攻撃によってやられています。ほら見てください。全て攻撃は屋根に当たっていますよね。あれは戦車による遠距離砲のものです」



確かにバードレイに言うとおり、一見すると滅茶苦茶にやられたように見えるが、全て屋根に被弾したものと、地面に当たったものだけだ。

バードレイの観察眼に素直に感心した。



「だから、もしかすると部屋は無事かもしれませんね」


「でも、何のために襲撃したんでしょうね」


「恐らくは米軍のワイバーンを警戒したからでしょう。ここからじゃ見えにくいですが、格納庫にも弾が被弾してしますしね」


「兄貴見えないよ~」


「ほら、これだと見えるだろ」



ラッセルを肩車するとラッセルは「おー!」という声を上げる。



「ホントにそうなのかな……」



俺の目にはこの襲撃が何かを奪うためのものだと思われた。こんな中途半端に破壊するのは明らかにおかしい。

研究所は囮で相手にとってはこの基地が本命だと思った。



『まぁ確証がないからこんな事は言えないんだけど…』



しばらく壊滅した基地を観察していると、基地へ入るための入り口が開いた。

佐鳥か、と思ったがそうではない。若い青年だ。



「げッ!」


「げ?」


「あれは篝章仁!」


「あ!小春さん!」



俺は車の蔭から飛び出すと、何か手に持っている章仁に詰め寄った。



「おや?御嬢さんは?」


「章仁!お前こんな所で何をしている!」


「ん?んん?ちょっと君…………あぁ!紅哉く―――!」



大声で俺の正体を言おうとした章仁の口を手で塞ぐ。



「それを言うな。今は小春と言え」


「じ、事情はよく分からないけど、君はこんな所で何をしているんだい?」


「それはこっちのセリフだ。お前の手にある物はなんだ」


「あ、これ?これはね、神の遺産」


「は?」



章仁は最高の笑顔を作りながら手の平を開くとシャランと綺麗な宝石で装飾されたペンダントが現れた。



「いや~これはここの作戦隊長さんが持ってたもんでね?余り神の力は残っていないものだけど、グレイプニルを強化するために必要かな~って」


「だからここを襲ったのか?」


「いや、僕は漁夫の利と言った所かな。これの価値を知らないならず者が狙っていたから利用させてもらった。ちなみに僕は一人も殺していないよ?ここから離れた所にある戦車もエンジンと砲身を壊しただけだし、ここの基地の人も催眠ガスで眠らせた」


「お前犯罪者のくせに人殺しはしないのかよ」


「おやおや、御嬢さんがそんな怖い顔しない方がいいよ?あ、須野原瑠璃ちゃんに見せてあげよう」


「やめろボケエ!」



携帯を取り出した章仁を俺は全力で止める。



「話を戻すとして。言っておくけど、僕は一度でも人は殺したことがないよ。うちの組織にいる人みんなそうだよ。僕らは人間だ。そんな人間同士争うのはおかしいからね」


「お前がそれを言うか?お前が起こした事件をまさか覚えていないなんて言わないだろ」


「あれね。悪夢を起こしたのは僕じゃないんだよ。いや、厳密に言えば僕なんだけど。僕ではない」


「はァ?結局お前が起こしたんじゃないのか」


「少し時間もある事だし、僕の過去について話そうかな。幼い僕は、魔術師の技能を見極めるセンターで最低の評価を貰った。それから年が過ぎて14歳の僕は神の遺産と出会った」


「なに!?」


「そこでね。僕はこう頼んだんだ。僕を偉大な魔術師にしてくださいってね」



どうしてこいつは俺にこんな話をするのだろう。



「それが困っちゃうよね。横やりが入ったんだ」


「横やり…?んじゃ、お前が起こしたわけじゃないのか!?」


「神の遺産を発動させるには、どれだけ神に願い事をしたいかで発動する。僕はどうしても魔術師になりたかったから発動したんだけど、どうやら彼では神の遺産は発動しなかったようだ」


「彼って誰だよ」


「ん?それは僕のお父さん」


「は……?」


「僕のお父さんはね。無能力者の僕をホント嫌っていてね。願い事は無能力者などいらない、だそうだ。その結果同時に願い事を叶えようとした神の遺産は二つの願いを混合してしまった。結果無能力者が有能力者を妬む世界となったんだよ」


「お前の父親と母親は…?」


「僕のお父さんとお母さんは自殺しちゃった。僕に謝りながら両親一緒に自殺したよ。全くとんだ親だよね」



平気な顔をしている章仁は口笛を吹きながらペンダントをくるくる回す。



「で、俺にそんな話をしてどうするんだよ。同情して欲しいのか?」


「いやいや、なんとなくかな。君は面白い。浅見パークランドで出会った時からビビって来てね」


「え、お前ホモなのか…」


「ち、違うよ!い、いいかい?僕は君をライバルと認めたんだ。これから神の遺産を取り合う事になるだろうからね。あ、そうだ。君に次会ったら渡そうと思っていた物があったんだった」



章仁はUSBをポケットから取り出した。



「なんだこれは?」


「これは神の遺産を見つけるためのデータが入ったプログラムだ。僕らだけにアドバンテージがあるのは行けない。レースを始めるためには公平に行かないとね」


「お前頭大丈夫か?」


「大丈夫じゃないかもしれないね。こんな所綾香とか沖田さん見られたら大変だ」



章仁はそう言って俺の横を通り過ぎて行く。



「君の舞香さんには悪い事をしたと思った。あんなに怒りを見せられたから反省しているんだ、これでもね。でも、僕もアヴェンジャーズとの夢がある。だから、舞香さんに免じてそれを君に渡した。これで君と僕は公平だと思っている。紅哉君、次からは勝負だよ」


「ふん。望むところだ。次お前らを見かけたら叩き潰すからな」


「それでこそだ。言っておくけどさ、僕は悪役じゃないからね?人類と敵だと言われているけど、これでもまだ善人のつもりだからね?」


「お前浅見パークランド爆発させておいてそれ言うか!?」


「あ~あれね……火薬の量を間違ってさ………部下の不手際さ。幻術を破るのは難しいんだよ、これが」



真面目に落ち込んでいる章仁にどう声をかけようか悩んだ末、俺は呆れた。



「お前らの組織はホントなんなんだよ……」


「はっはっは!気楽な組織さ。本当の悪の組織は政府と言うべきかな。それじゃあね、紅哉君」



章仁はそう言って上空から降りてきたヘリに乗って行った。



「悪い事をしたと思った、か………そして政府かァ…」



空はどんよりと重く黒い雲で覆われていた。


アヴェンジャーズと紅哉たちの関係は。ポケ〇ンで言うロケ〇ト団とサ〇シみたいな関係で行きます。

コメディーみたいな戦闘と共にアヴェンジャーズと紅哉たちをお届けしていきます。もちろん舞香の感情を戻す話を作ります。

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