バードレイの戦場
俺、バードレイは走っていた。いまラッセルから電話があり、最優先事項としてチープマシンを操作している部屋を探している所だ。
『恐らく、さっきいた研究者の部屋ですかね…』
小春さんがいない以上、俺は一番慣れている英語で今の状況を言葉に出しながら把握する。
『くそ!もうこんな所まできやがったか!』
『どけえええええ!!』
現れた傭兵とここに元からいたのであろう兵士をマシンガンを乱射して足を貫く。片膝をついた兵士たちを俺は腰に備えた牛を切るような長いナイフを2本取り出し、すれ違いざまに首を落としていく。
断末魔など上げさせない。
バタバタと倒れて行く兵士たちに目もくれない俺は先を急ぐ。
小春さんに強化してもらったせいか、足は羽のように軽く、自分でも驚くほどの速度が出ていた。
次々と現れる敵の頭上をジャンプして越えると同時にマシンガンを浴びせ、これを切り抜ける。喉も枯れそうなくらい走っているが、自然と足は止まらない。
『だ、誰だ!?』
『動くな!』
俺は制御室に辿りつくなり、中にいた一人の研究者に銃を突きつけた。こちらを振り返る事も出来ない研究者は震え始めた。
『今すぐチープマシンの耐久を下げるんだ』
『だ、誰がそんなことを――――ぎゃあああああ!』
俺は容赦なく男の足を撃つ。
『同じ事は2度言わない。今すぐやれ』
『く、くそぉ!』
『10秒やる。早くしろ』
『わ、分かった!今すぐ下げるから撃たないでくれ!』
研究者は焦りながらも機器を操作した。すると、モニターに映っているチープマシンの魔術障壁が弱くなったように見えた。
『これで弱体化したんだな?』
『あ、あぁ!もちろんだ!だ、だから命だけは助けてくれ!』
俺は懇願する男の頭を撃ち抜いた。そしてバタリと男が倒れる。
『子供達を実験に使っていたようなお前らに元から命などない!』
吐き捨てるように言うなり、俺は小春さんの勝利を祈ってその場から離れ、次の任務に移った。
制御室には小さく銃のカートリッジが落ちる音が響いた。
『小春!聞こえるか!』
「はい!なんでしょうか!」
俺はチープマシンの攻撃をかいくぐりながら佐鳥の電話に出る。
『いまラッセルからチープマシンの耐久が落ちたとの連絡があった!それと、チープマシンを破壊するとなるとここの研究所まるまる吹き飛びかねん!それまで持ちこたえろ!』
「えええ!まだ持ちこたえるんですかァ!?」
『うだうだ言うな!破壊活動はお前に任せる!ニルの一撃なり、チープマシンごと破壊しろ!』
そこで電話が切れる。今の事をニルとヴリトラに伝えると、2体とも露骨に嫌そうな顔をした。
「まだ耐えろと言うの?嫌ねぇ」
「あのチェーンソーがとてつもなくうざいんだが」
「でもさ、あれ破壊すると爆発して俺達も助からないそうだぜ」
「あ~それは勘弁願いたいわね」
今もガトリングの嵐が襲い掛かっているのだが、ヴリトラは退屈そうにこれを防ぐ。
「もうちょっと頑張ってくれよ」
「あいよ」
「分かったわ」
ヴリトラとニルは嫌そうにしながらも従ってくれた。
ドオオオオオン――――!俺は子供たちが幽閉されているであろう部屋に辿りつく。その扉を最後のロケットランチャーで破壊し、部屋へ飛び込んだ。
『大丈夫!?助けに来たよ!』
中には子供しかいなかった。俺は怯える子供たちにリュックから飴を取り出して全員に配る。
それで怯えのなくなった子供たちに笑顔を見せて、さっそく救助活動に移る。
正直一人ではなかなか厳しいが、小春さんがチープマシンを抑えてくれているのは大きい。
子供たちを数えてみると、ざっと20人だろうか。目がみんな虚ろだが、どれだけ薬漬けの日々を送っていたのかを想像して歯ぎしりをする。
『これから俺が君達を外まで案内する!いいかい?怖がらないでちゃんと俺に着いてくるんだよ?』
子供たちはこくりと頷いて俺に着いてきてくれた。
『ラッセル!子供達を確保した!護衛を回してくれ!』
『流石兄貴!小春お姉ちゃんは!?』
『小春さんはチープマシンと戦っている。あれが爆発すれば研究所はまず確実に吹き飛ぶ。だから、それまで持ちこたえてくれているんだと思う』
『分かった。佐鳥さんに今の事を伝えるね!』
『よろしく頼むぞ』
携帯をしまい、崩れ落ちかけている研究所を迅速に抜けて行く。来た道とは違う道を行き、進んでいくと、途中から続々と傭兵が護衛に着いてくれる。
『よくやったな坊主!』
『これで任務完了だ!』
背中をドンと叩かれて俺は苦笑いを浮かべる。子供達を守るように囲んで走る俺達は強引に道を切り開いていく。
「よくやったバードレイ。後はここを抜けて研究所から離れるぞ」
「小春さんは!?」
更に進んでいくと、佐鳥さんとラッセルも加わり、俺は思わず佐鳥さんに聞いてしまった。
「小春は研究所ごと破壊するつもりだ。全員の無事が確認次第告げる。大丈夫だ、あいつは強いからな」
それを言うなり、佐鳥さんは俺達を置き去りにするほどの速度で現れる敵を倒して行く。確か作戦隊長がいたはずだが、彼はどこに行ったのだろう。
もう佐鳥さんが隊長のような気がしてきた。
動きを封じた兵士たちを拘束し、共に外へ連れて行く。これは後に裁判でしかるべき罰が下るだろう。
そこからというもの、佐鳥さんの的確な指示によって俺達は無事に子供達を救助する事が出来た。研究所から2km離れた所にある臨時キャンプ場に戻るなり、子供達には温かいハニーミルクが配られる。
「岸部!どうだ!」
「問題ありません!全員帰還しました!」
「よし!」
佐鳥さんは恐らく小春さんに最後の通達を告げた。
「破壊しろ!」
バードレイは時々自分が掲げる信念とはかけ離れた行動をします。人を殺す時も何とも思わないのもそのせいですね~




