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龍の血を引く者  作者: また太び
5章 紅哉の戦場アメリカ
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作戦日当日

「お前、風呂は最後に入れよ。もちろん女湯な」


「はい………でも、着替えはどうするんですか?」


「あたしのマネマネを使え。ステルス装置くらい作れる」


「流石ですね……水に浸かっても?」


「問題ない。言っておくが、機械のようで機械じゃないからな?マネマネに生成されたものは機械じゃない。生きている」


「生きている!?」


「マネマネが真似たものだからな。マネマネそのものだ」


「あぁ、なるほど」



もう驚きにもなれない俺は、大人しく従っておくことにした。というかマネマネ便利すぎだろ。



「はぁ~あ……やっと一日が終わったかァ…」



と、心の中で呟く。下手に声を出してばれたりしたら大変だ。

いま俺は女湯に一人で入っている。佐鳥がトイレに行くと同時に外へ透明化した俺が出る。そして風呂場までこっそり移動し、服を掃除道具の中へ入れ、今に至るというわけだ。



『こんな気を揉むような風呂は初めてだな』


『出来れば俺もこんな事はしたくないよ』


『スリルがあって面白そうじゃない?』


『全然面白くないっつうの』



どうしてここまでストレスが溜まるのだろうか。俺は確か、強くなるためにここに来たのではなかったか。どうしてこうなった。

明日、そう明日になれば……――――



「もう上がる!」


『ん?いま誰かいたかしら?』



英語が聞こえた。



『しまった!思わず声を出してしまった』


『馬鹿め』


『あ~あ。知らないわよ』


『いや!まだ俺にはステルスがある!』


「ん~?気のせいだったか?まぁいい、清掃を始めるとするか~」


『待て待て!』


『はっはっは!ほら、走れ』



俺は全力で走った。脱衣室に戻ると、まだ清掃担当の女の軍人は脱衣室に入ったばかりだった。しかし、これからどうする俺!もう清掃員は真っ直ぐ道具がしまってあるロッカーに向かっているぞ。



『マスター。声でも出せばいいんじゃないか?』


『そ、それだ!で、でも日本で通じるか?』


『ここにいるというアピールをすればいいんじゃないの?』


『オ、オーケー』


「ま、まだ入ってま~す!」



俺は脱衣室に連なるロッカーに隠れながら出来るだけ大声で叫んだ。



『ん?まだ誰か入っていたのね。これはごめんなさいね』



Sorryという言葉だけ聞き取れた俺は、なんとか安堵の息を漏らした。

もうこんな事がないように、俺はロッカーの中にある袋に包んで入れていた服を取り出して、さっさと着替える。

もうパンツを見て驚くような男ではない。



『はっはっは!こいつもう女として生きていいんじゃないのか!?』


『適応力という奴ね。人間って凄いわね』


『お前らふざけるな…』



現実では俺の顔は酷く歪んでいる。相当ガラの悪い女の顔にしか見えないが、脱衣所を出るころには元に戻る。

部屋に戻る時はノックを6回叩く。どこに監視カメラがあるのか分からない。だから、佐鳥は俺とすれ違いで出て行く形となる。

ステルス装置は部屋に入るなり、青白い炎となって消えた。恐らく佐鳥の所まで戻ったのだろう。



「はぁ……疲れた…」



もう1日で何度ため息をつくんだ俺は。そう思っていると、佐鳥はビールを片手に戻ってきた。



「明日は早いぞ。さっさと寝ておけ」


「はい。佐鳥さんはまだ寝ないんですか?」


「まぁな。あたしはまだやる事がある。お前は2階だから光は気にならんだろ」



佐鳥はそう言って手持ちのライトを振って見せる。俺は佐鳥に許可を貰って、少しだけ端末携帯を開いた。

すると、俺の事を心配した瑠璃のメールがたくさん来ていた。


紅くんアメリカに行ったの!?大丈夫!?


渡辺さんに聞いたけど、アメリカって魔物が凶悪なんだよね?私は心配だよ~



「やれやれ……」



心配してくれる彼女に俺は一言だけメールを送った。


俺様を誰だと思っている。世界で2人しかいない龍使いにして、スーパーでウルトラかっこいい紅哉様だぞ?



「よし、寝るとしますか」


『それ死亡フラグな』


『あ、やっぱりニルもそう思った?アタシもそう思っていたのよね』



邪龍を無視して俺は余り寝心地がよくないベットに身を預けて寝ることにした。

しかし、思った以上に身体は疲れているらしく、睡魔はあっという間に俺の意識を刈り取って行った。





翌朝、俺は朝早く起床し、身体の調子を整えるために寒い外で一人武術を舞っていた。

流れるような動作ながらも、強さを秘めた力強い武術。



「はッ!」



最後に全身を使った拳を前に突きだすと、空気が震えた気がした。



「ふぅ………寒い…ね」



日本では余り見なくなった雪を、俺は珍しそうに見る。天から降り注ぐ雪。吐く息は白く、温まった身体もすぐ冷えてしまいそうな気がした。



「凄いですね!武術というものですか?」



空を仰いでいると、バードレイが近づいてきた。



「ええ。触り程度ですけどね」


「いえいえ、そんな謙遜なさらずに。途中から見ていましたが、力強く、凛々しく、そして美しいものでした」


「あはは……そんな大層なものではないですよ」


「つかぬことを聞きますが、あなたはどうしてこの作戦に?」



バードレイは俺が困っているのを見て、さりげなく話題を変えてきた。

正直さっさと部屋に戻ってあったまりたいのも山々だが、ここで急に話を切るのも悪い。



「私は勝ちたい人がいるので、そのために強くなるためにこの作戦に参加したんです」


「小春さんは十分お強い方だと思いますが、そんなあなたでも敵わない人がいると?」


「ええ。妹なんですけど、ホント強くて、姉として情けないです」


「妹さんがいるのですか?」


「妹は本当に強くて、いつも私は負けているのですが。それでも妹は私を慕ってくれる。でも、悔しいですよね。こんな負けてばかりでは姉貴面も出来ない」



この雪を舞香に見せてやりたかった。舞香は何故か雪合戦をすることに拘っていたが、それは今も叶ってはいない。日本は温暖化の影響をモロに受け、雪が降らない時期が続いている。逆にどうして5月に入るというのに、ここは雪が降るのだろう。



「戦場の臭いを覚えろ、と佐鳥さんに言われました。危険を察知する能力がかけているのでしょうかね」


「戦場に置いて、危険を察知する能力が長けていれば、長けているほど生存する確率は上がります。俺自身、危険を察知する事だけは高いんですよね。そのおかげで何度も命を救われてきました」



バードレイの碧い瞳は昔を思い出しているようだ。



「俺の両親は二人とも俺とラッセルが小さい頃に亡くなりました。両親共に軍人でして、ある魔物討伐の任務の時に現地にあった孤児院を襲っていた魔物と相打ちで死にました」



「魔物は、強かったのですか?」


「はい。Sランクの魔物でした。両親は魔物と一緒に崖に落ちてこれを撃退し、俺の家には感謝状と遺骨が送られてきました。それで俺は決心したんです。魔物でいつも怯えながら生きている子供たちに少しでも安らぎを与えたいと」



バードレイは拳を強く握った。



「でも、俺は見ての通り無能力者でして、残されたのは父親譲りの危険察知能力と母親がいつも分解してメンテナンスをしていた武器を見て覚えたくらい。それでも案外やれるもんなんですね」


「バードレイは強いんですね。私なら、怖くて家に籠っています」



バードレイの言葉に感心した俺は、微笑みながら褒めると、バードレイはあからさまに顔を赤くしていた。



「え、えっと……今日の作戦、一緒にがんばりましょうね」


「ええ、もちろんです」



俺はバードレイに握手を求めると、バードレイは顔を真っ赤にしながらも、握手に応えてくれた。


結構勢いで書いていますが、自分でもどこへ向かっているのか分からなくなっているような気もしますね、ええ。

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