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龍の血を引く者  作者: また太び
5章 紅哉の戦場アメリカ
31/162

玲奈は翡翠出身だった!?

「おい、起きろ」


「ふえ……なんですか?」


「アメリカの国境に入った。もうすぐ着陸態勢に入る。シートベルトを付けろ」


「も、もうですか!?」


「あぁ。お前、ぐっすり寝ていたな。寝顔もセレナに送っておいたぞ」



意地悪く笑う佐鳥にもう反応する気力もない俺は、シートベルトを付けてしまう。



『まもなく着陸します。佐鳥中佐、重力にお気を付けください』


『了解。安全運転で頼むぞ』



英語で会話した佐鳥は、椅子に深く腰掛けると、次の瞬間、また強烈なGが襲い掛かって来た。



「くっ!これホント慣れないです!」


「我慢しろ。もうすぐ終わる」



タイヤが滑走路に付く音がする。それを聴いた俺は安堵の息を漏らす。

しばらく待っていると、やがて飛行機は停車した。



「よし、降りるぞ」


「は、はい!」



俺は荷物を持って飛行機から出る。受付で佐鳥は日本の空港で見せた黒いカードを出すと、あっさりと通っていく。

空港から出ると、日本とはまた違った都会が広がっていた。



「私、アメリカに来たんですね」


「ほら、さっさと行くぞ」



感動もすぐ佐鳥の言葉で打ち消され、キャリーバックを引きずって佐鳥の後に続く。

佐鳥は停まっていたタクシーに乗ると、行き先を英語で言い、車はゆっくりと発進する。



「これから作戦基地に向かう。いいか、お前は極力人と喋るな。あそこにいるのはゴロツキばっかだからな、レ○プされても知らんぞ」


「え!?ちょっと、それは困ります」


「あぁ、困るな。服をひん剥かれた時に男でした~ってなったら、お前は死ぬだろうな」


「笑いごとじゃないですって」


「ん~案外両刀かもしれんぞ。まぁ、されたら自分で死にそうだが」



冗談で言っているのか分からない佐鳥の言葉に俺は背筋が凍るようだった。

そこから車で40分。わりと本格的な施設に着いた。

軍用車が何台も入ってきたり、戦車も停まっている。一つの軍事施設の地に降りた俺と佐鳥は、タクシーに金を払ってトランクから荷物を取りだす。



「行くぞ」



佐鳥の言葉に俺は無言で頷いて軍事施設に足を踏み入れた。

中に入ると、銃器が大量にあった。



「ここにいる者のほとんどが無能力者だ。有能力者は海外じゃ珍しいんだ。有能力者のほとんどが魔物討伐に当てられるために、こういう人間が人間を裁くときには銃器が使われる」



俺が珍しそうに銃などを見ていると佐鳥が説明してくれた。



「それと、出来るだけ人と目を合わせるなよ?変な因縁つけられるからな」



佐鳥の言うとおり、俺は前髪で目を隠して、出来るだけ下を見て歩くようにした。

すれ違うガタイの良い男たちは、俺と佐鳥を珍しそうに見ては去って行く。



「まぁ、女がこんな所にいるのは珍しいからな。特に小春、お前を見てたぞ?今の男たち」


「や、やめてください」


「はっはっは!」



佐鳥は豪快に笑いながら基地の廊下を歩く。

少し進むと、受付があり、受付の男性は俺達を見るなり、ぺこりと礼をした。



「佐鳥中佐、お待ちしておりました」


「あ、あれ…日本語…?」


「あぁ、こいつはあたしの元部下だ。アメリカに行ってさ、今回のあたしに依頼してきたのはこいつだ」


「どうも、岸部と申します。階級は一等兵です」


「ど、どうも……」


「佐鳥中佐、そちらの御嬢さんは?」


「あたしの弟子だ。暇そうにしてたから連れてきた」


「は、はぁ。佐鳥中佐がそう言うのでしたら私から特に申し上げませんが」


「大丈夫だ。腕はある。そこらの傭兵の100倍は使える」


「それを聞いて安心しました。では、詳細データです」


「うむ。じゃあな」



登録と部屋の鍵を貰った佐鳥は、俺を連れて宿泊する部屋に向かった。

部屋に入ると、簡単な机と2段ベットがあるだけだった。見たところ6畳と言った所か。



「まぁ悪くはないな」


「そうですね」



荷物を降ろすと、思わずため息が出た。



「なんだか、ピリピリしていますよね、ここ」


「当たり前だ。誰もが賞金を狙っている。手柄を多く立てた者にはボーナスが入る。そうすると周りは全員ライバルだ。そりゃピリピリするさ」



ブーツを履いたままの佐鳥は、ベットに横になりながらそう言う。



「小春。端末の電源は切って置けよ。電波がジャックされるかもしれない。念のために、バッテリーを抜いて、端末と別々にしておけ」


「分かりました」



俺は言われた通りに、端末からバッテリーを取り外して別々のバックへ入れる。



「この後作戦会議がある。お前も出席するから来い」



どうやら俺達が最後の組だったらしい。随分とスケジュールが詰まってそうだ。



作戦室に入ると、佐鳥は俺が目立たないように最後列の席に座る。それでも目立ってしまうのは仕方ないと言える。

こんな辺境の地にパンクスタイルの俺が来たら、誰でも驚く。



「おい、小春。みんなお前の事可愛いって言ってるぞ」


「………ノーコメントで…」



英語で分からないが、口々にキュートと言っているのは分かる。だからこそ、俺は俯くしかなかった。

少し経つと、作戦室に2mはあるだろう大男が入って来た。



「あいつがここをまとめている男だ」



そっと佐鳥は腕を組みながら説明してくれた。作戦のほとんどが英語で言われており、何を言っているのか分からない。

英語が分からないのがここまで辛いと思ったのはテスト以来だろうか。


溜め息をついていると、大男が俺を指差したように見えた。というか、指差していた。

なんだなんだ?と思っていると、何か喋っている。



『おい、そこのガキはなんだ!何故こんな所にガキがいるんだ!』


『お前、それあたしの弟子に向かっての事か?』



佐鳥が相手を馬鹿にしたように言うと、沸点が低いのか、大男は怒鳴り散らしている。



「やべ、煽りすぎたわ。どうやら、お前がここにいることが気に食わないらしい」


「何故ですか?」


「さぁ?ガキ=弱いと思っているんじゃないのか?見たところあいつも無能力者っぽいしな」



『あいつをつまみ出せ!ガキは家で寝ていろ!』



突如作戦室に屈強な男が現れ、俺の腕を強引に掴む。どうすればいいか、佐鳥を見ると、この鬼教師は日本語でこういった。



「吹っ飛ばしていいぞ」



ドオオオオオン――――――俺はそれを待っていたと言わんばかりに、腕を掴んだ男へ対して腹に蹴りを入れた。

すると、壁を破壊しながら8mくらい飛んだだろうか。それくらい飛んで男は止まった。

それを見た男たちは、誰もが目を疑った。



『おい、今の見てもうちの子はここの部屋に相応しくないと言うのか?』



佐鳥がそう言うと、大男は気まずそうに頭を掻いた。



『わ、悪かった。あなたの弟子は素晴らしい素質をお持ちだ。非礼を詫びる』



男は俺の所までわざわざ来て、帽子を取って数秒間頭を下げていた。



「あ、あの。私の方こそごめんなさい。こんな恰好じゃここの場所にふさわしくないですよね」


『彼女はなんと?』


『こんな格好だからこの場所には似合わないだろうってさ。アンタの行為にはそこまで気にしてない』


『分かった。では、気を取り直して説明させてもらう』



作戦説明が再び始まり、英語だらけの会話に俺は眠かった。そんな眠気を紛らわすために俺は佐鳥に聞いた。



「あの、ここに私を連れて来なくてもよかったんじゃないですか?私、英語さっぱりですし」


「あぁ、別に連れて来なくてもよかった。でもな、お前のことを認めていない奴らに示しを付けておこうと思って連れてきた。あの作戦隊長がお前の事を咎めるのは予想出来ていた。それを利用しただけだ」


「全て計算済みだったんですね」


「ま、そういうことだ。後で岸部に和訳した作戦の紙を作らせる。それを読んでおけよ」


「はい!」



作戦会議が終わり、ゾロゾロと出て行く傭兵たちに続いて俺と佐鳥は部屋を出る。

傭兵たちに変な目で見られるも、俺は何故か羊を数えてその視線に耐えた。



「岸部!」


「佐鳥中佐、どうかしましたか?」


「小春は英語が分からないんだ。だから、さっきの作戦内容を和訳した奴をくれないか」


「そういうことでしたか。分かりました。すぐにお持ちしますね」



受付に着くなり佐鳥は岸部に頼む。俺も悪い気がしてぺこりと頭を下げると、いえいえと笑って奥へと消えて行った。



「あの、日本人って舐められないのですか」


「舐められる。日本人は小柄だし、どうしても欧米人の体型にはなれない。実際自衛隊のとこでも争いは幾度もあった。アメリカ人と合同の訓練の時は喧嘩しまくりでな、あたしもそれに混じって喧嘩なんかしてたもんだが」


「中佐がそんなことしてていいんですか?階級剥奪されますよ」


「バレなきゃいいだろ。実際バレてないしな」



佐鳥が軍人の頃を話しを聞いていると、岸部がファイルを持ってきた。仕事が早いことで。



「佐鳥中佐、お持ちしました。返却しても構いませんし、そちらで処分してもらっても構いません。ただし、この基地から持ち出すことだけは――――」


「分かっている。じゃあな」


「あ、佐鳥さん。し、失礼します」



岸辺からファイルをひったくった佐鳥は本当に自由気ままな人だ。人の説明を最後まで聞かずに部屋に戻る。

まぁ、佐鳥本人も軍人だから、いちいち説明など聞かずとも分かっているのだろう。



「読んでおけよ。あたしは少し席を外す。あたしが帰って来た時は部屋のノックを6回する。もしこれと違った合図をした時は絶対に開けるな。例え岸部であってもだ」


「分かりました」



佐鳥は欠伸をしながら外に出て行った。俺は佐鳥が出ていくなりすぐに部屋のドアの鍵を閉める。



『随分と居心地が悪いわね~』


『仕方ないだろ、こういう場所なんだからさ』


『日本がどれだけ甘ったれた国か実感できるな』



ヴリトラの呆れとため息が混じった声に俺は同意する。ニルもそれは分かっているようで、日本がどれだけ安全な国か今更のように思っているようだ。



『で、小春。作戦はどうなってるのかしら?』


『ん~。見た感じでは、俺と佐鳥先生は攻撃隊らしい。研究施設に少人数で入り込んで、子供の救出、および研究資料のデリートだとさ』


『なるほどな。舞香みたいな子共がいるんだろ?放っておけないな』


『そうねぇ。舞香みたいな子が犠牲になるのは可哀想よね』


『そうだな。俺達がやらないと何の罪もない子供たちが傷ついてしまう』


『セレナが言っていたが、この作戦の研究所も数ある施設の一つでしかないのだろう?』


『それでも、やらないよりはいいだろ?』


『それもそうだな』


『ところで小春?』


『その呼び方は嫌いだが、なんだ』



ヴリトラがどこかおかしそうに話題を変えてきた。



『あなた、トイレはもちろん女の子用よね?』


『―――ッ!?』


『良い着眼点だ、ヴリトラ。マスター、喜べ、男子禁制の花園へ入れるのだぞ』


『嬉しくないな。とっても嬉しくないな…!』


『大丈夫よ、小春。アタシとニルが教えてあげるわ』


『教えなくていい!というかお前ら黙ってろ!』


『ニル、酷いわ。龍がせっかく親切にしてあげているのに、この男の娘は親切を突っぱねるのよ』


『酷い話だな。では、マスターがトイレをするときは盛大にひやかしてやろう』


『この野郎ども…!他人事だと思いやがって…!』


『実際他人事よね?』


『あぁ、他人事だな』


『邪龍2匹集まるとロクなことがないな!』


『なんだか今の小春を見ていると、こう、苛めたくなるのよね』


『……………』


『ああん!小春が遂に無視し始めたわ!』



俺はニルとヴリトラの会話をシャットアウトして、作戦内容に目を通す作業に没頭することにした。



しばらく経つと、扉が6回ノックされた。俺は佐鳥が帰って来た合図に気付くなり、すぐ扉を開けた。

佐鳥は缶コーヒーを片手に2本持っていた。その1本を俺に投げると、どっかりベットへ座る。



「特に何もなかったか?」


「はい、何もありませんでした。佐鳥さんはどちらへ?」


「あたしはここの基地を歩いていた。地図通り合っているか、どこに脱出経路があるのか調べていたのさ」


「どうしてそんな事を?」


「もしものためだ。ここはいつ魔物が来てもおかしくない所だからな、いつでも逃げる路は確保しておくものさ」



確かに、基地からすぐ近くには森がある。いや、ジャングルだろうか。もちろんそのジャングルにはセレナが言う、凶悪な魔物がゴロゴロと徘徊しているのだろう。佐鳥も戦闘よりも逃げると言った。



「あの、ここに住む魔物って日本とは別格なのですか?」


「あぁ、別格だ。日本でA指定されている魔物は、ここだとA+だ。たまにSランク級の魔物も徘徊していることもあるから、出来るだけ戦闘は避けるんだ」


「Sランクですか……恐ろしい場所ですね」


「あたしとお前がいれば勝てない事もないが、無闇に手を見せる事は避けるべきだ。日本と海外じゃ技術の進み具合が雲泥の差だ。日本も出来るだけ海外に技術を伝えているが、海外にとっては暗号に見えるらしい」


「それは聞いたことがあります。さっき見た銃器も日本だともう旧式扱いですよね」


「だから魔物に後れを取っているわけでもあるがな。今の日本の技術をアメリカとか、こういう危険度が高い場所で活用する事が出来れば、有能力者が減る事は少なくなるはずなんだけどな」



佐鳥は缶コーヒーを飲み終えると、片手で投げてゴミ箱へ入れる。



「そう言えば、セレナが佐鳥さんは戦略級魔術師に認定されているとか、言っていましたが」


「あぁ、それな。あたしって構造を知っていれば何でも作れるんだわ。例えば、巨大な超電磁砲レールガンとかな」


「な、なんメートルくらいですか?」


「ざっと40mだ。作るのに数時間とかかるが、作ってしまえば―――もう分かるな」


「はい……正直佐鳥さんってチートじゃありません?」


「チートなもんか。あたしは銃器にしか詳しくない。ランチャーやら地雷やら、マシンガン、ハンドガン、機銃、手榴弾、ナイフ、まぁ色々あるが、それくらいしか作れん」


「それだけでも十分ですよ」


「レールガンは、別に40mの物をいつも作るわけじゃないぞ?小型のだってちゃんと作れる。それでも危険だ」



超電磁砲とは、金属を電磁加速させて音速で打ち出す事が出来る兵器だ。佐鳥の持つレールガンはきっと充電不可の永続的に電気を流す事が出来る極悪兵器だろう。



「ま、戦略級って言ってもあたしはこの事をセレナ以外には言っていない。もちろん政府にもばれてないし、誰にも話すつもりはない」



そして佐鳥はバックを漁ると書類を取りだした。



「まぁ、政府に知られていいことなんかないからな。ただあいつらは怖いだけだ」


「怖い?ですか」


「反乱を起こしたくないんだよ。篝章仁みたいな男をな」



佐鳥の書類を少しだけ立って、見てみると。それは俺達3組の成績表だった。



「なんでここに来てまで成績表を付けているんですか…」


「時間がねェんだよボケ。それくらい分かれや」


「それを見ていると、佐鳥さんは教師なんだな、としみじみ思います」


「どういう意味だ?ああん」


「す、すみません……」



今にもナイフが飛んできそうなイラ立った声に俺はすぐ謝罪を入れる。もう佐鳥との付き合い方は分かっている。



「お前、この前合同とはいえ、2組に勝ったんだよな」


「ええ、まぁ。凪咲の力があったからですが」


「凪咲…?あぁ、校長が今年もなんとかSランク魔術師を入れる事に成功したって言ってたやつか」


「凪咲は凄いですよ。100人足止めして、それを全員倒したんですからね」


「イフリートだったか。あたしも見ていたが、あれはエーテルの消費が半端ないようだな」



佐鳥は慣れた手つきで、どんどん成績表を付けて行く。



「なんだか私の存在が薄くなりそうです」


「お前はエヴォルト手に入れたんだろ?まぁ、それも気軽に使えるもんじゃないがな」


「佐鳥さんが黙っていた理由は、やっぱり政府ですか?」


「あぁ。お前は形として禁忌魔術師になってしまった。それを政府に言うと晴れてお前はモルモットだ。エヴォルトに至る者が少ないのは分かるよな?」


「ええ、そうらしいですね。玲奈さんもそう言っていました」


「ほう、玲奈と話したのか。あ、そうか。お前は瑠璃と恋人らしいよな」


「……………………ちなみに誰から聞きましたか」


「聞いていないわ。あたしの目から見てだ。お前ら妙にべたべたしてたからな」


「行動控えるとします」


「瑠璃と玲奈は従姉関係だから、お前は知り合いでもおかしくはないか。それで、彼女から何か聞いたか?先輩のエヴォルト者として」


「いえ、今度そういう話を彼女の家に行って聞く予定です」


「ならいい。玲奈のパートナーは知っているか?テレビに一度だけ映った事があるんだが、それ以来あいつはテレビ取材とか全部NGするせいで、玲奈、という名前は知っているが、どういう人なのか分からない奴が多い」


「名前だけは聞いたことがあります。確か天狐てんこでしたっけ?」


「そうだ。あいつの実家の長崎では有名な妖怪だ。千里眼を持つと言われ、透し、神通力が使える神の領域に足を突っ込んだ九尾の狐」


「あ、玲奈さんって長崎出身なんですか」


「すんごいぞ。天狐は未来予知に似た千里眼を持つことから、あいつの実家の神社はいつも大賑わいだ」


「あ、占いですか」



俺の答えに佐鳥は頷く。未来予知に似た千里眼。そりゃあ繁盛しそうだな。



「大分話が逸れたが、とりあえずあいつの天狐がエヴォルトすると、これが天狐のツヅラオノビクニとなる。妖術、神通力、未来予知めいた千里眼が更に強化された九尾へと進化する」


「あの、ただの千里眼だけでも十分厄介だと思うんですけど…」


「そうだな。まず勝てないだろう。それを分かっているからこそ、玲奈は大会には出ないし、テレビにも出ない。出れば確実に心を折られる」


「なんで佐鳥さんはそんなに詳しいんですか?」


「詳しいも何も、瑠璃が1年生の頃にあいつは翡翠にいたからな」


「ええ!?翡翠出身だったんですか……」


「あいつの担当教師もあたしだ。天狐の顔ぶん殴ったのは全国であたしだけだろうな」


「千里眼ありますよね?あれをどうやって攻略したんですか?」


「天狐がパンクしそうになるくらいの手を頭の中で即興で思いつかせた」


「聞いた私が馬鹿でした………」



ビジョンとして浮かべるらしい千里眼に対して、佐鳥は次の手次の手とどんどん攻撃して行くうちに生み出したと言う。俺には到底できそうにない芸当だ。



「ま、あたし以外には勝てっこないってことだ」



佐鳥は強引に締めくくると、そこで会話が終了した。しかし、ここでとても重大な問題が発生する。



「あの、佐鳥さん……」


「なんだ。あたしは成績を付けることに忙しいんだ」


「トイレどうしましょう……」


「んなもん女子トイレ行って来いや!」


「そうですよね、すみません…」


『くっくっく。おいヴリトラ。マスターがトイレらしい』


『さっきのコーヒーが効いたのね』


『お前らマジで黙っていろよ!』



俺はいそいそと部屋を出た。今日何度目か分からないため息をつく。幸せが逃げて行くと言うが、もう女装をした時点で何かを失った気がする。



『やぁ!こんにちは!可愛い御嬢さん』


「は、ハァイ?」



道行く傭兵に笑顔で挨拶されるが、俺は引きつった笑みしか浮かべられない。

因縁を付けられる事はなくなったが、どうも傭兵たちの目の色が変わっている気がして怖い。



「あの、岸部さん。トイレってどこにありますか?」


「あ!トイレなら、この先をずっと行って、右に曲がった所にありますよ」



唯一の日本人にトイレの場所を聞いて、俺はトイレと向かう。


ジャアアアアア―――――!



「はぁ……なんかホント死にたい…」


『可愛いわぁ。羞恥で顔が真っ赤よ』


『女のトイレが大変だという事をこの身で知るがいい』


玲奈の天狐は狐の世界でも上位に位置する存在です。九尾は見えるが、天狐は人間には見えないとか。もはや次元が違うようですね。この機会に幻獣について調べてみてはどうでしょうか?きっと気に入るかと思います。ってこれあとがきなのに宣伝しちゃってる…

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