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龍の血を引く者  作者: また太び
1章 炎道家と紅哉の関係
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炎道家屋敷と義理の弟

「で、本当に直海はやばいのか」



セレナが運転する車に紅哉と舞香は乗っている。舞香は眠いのか目頭をこすって今にも寝そうだ。



「はい。もう治す方法なく……後は…」


「死ぬまで待つしかないって事か」


「大雑把に言うと……はい…」



直海は昔から病気になりやすい病弱な人だった。

それによく一人で抱え込むので、きっとこの癌も末期になるまで黙っていたのだろう。

自分の事は自分がよく分かっていると誰かが言ったが、よく的を射た言葉だと思う。

抱え込むのは勝手だが、それで人に迷惑をかけるのは言語道断だ。



「何やってんだかあいつは……」


「紅哉様…」


「直海の事は分かった。それで今日はなんのパーティーなんだ」


「今日のパーティーは養子のお披露目という事です」


「はぁ?養子?」


「ええ、私達ガードマンも直前まで知らされてなく、ただ旦那様は今日は養子をお披露目するパーティーだ、としか」



何故養子?と思ったがそれは当たり前だ。何故なら紅哉と舞香が炎道家を離れたのだ。誰が後を継ぐかなんて養子しかいないに決まっている。

直海は病気で子供を産める状態ではないし、何よりもう癌が末期ときている。



「ま、よくよく考えればそれは必然だな。炎道家は金があるからここで雅文と直海が死んだら親戚に金が流れる。それを食い止めるために養子の話が上がったんだろうな。でも、俺には関係のない話だが」



セレナは答えなかった。すれ違う車の音がやけにうるさいと思ったのは初めての事だ。

舞香はやっぱり眠かったのかクマのぬいぐるみを抱いて紅哉に寄り掛かって寝ているし、セレナの表情はサングラスで隠されていて何を思っているのか分からない。



「わたしは今でも紅哉様と舞香様直属のガードマンだと思っています」



突然セレナが口を開いた。



「そうだな……少し過保護すぎるガードマンな気がするが」



否定する気は元よりなかった。実の母より母親らしかったセレナ。誰が嫌いになれようか。



「ふふ、自覚はありますよ。普通仕事に私情を持ち込むのは御法度なんですけどね」


「逆に2歳児の教育に私情を持ち込まない程の鉄仮面っぷりだったら、怖くてトラウマもんだと思うがな」


「わたしも若かったんですよ」


「今でも十分若いだろ」


「あら?そう見えますか?」


「まだ20代後半だろ?」


「ええ、そろそろ婚期を逃しそうな気がして焦りもありますけどね」



冗談を混ぜてセレナは笑う。

セレナの家は四人家族だ。まず巨人かと思うほどの体躯を誇るロシア人の父親の四条クロフィード。怒らせると誰よりも怖い大和撫子の母親、四条麗華しじょうれいか

ここで長女の四条セレナが入る。学生時代では白い死神と呼ばれていたとか、呼ばれてなかったとか。

そして次女の四条アイリ。正直この子は覚えてはいない。ほとんど面識はなく分かっている事は今も学生で俺の3つ上という事だけだ。



「なんだか紅哉様と話していると懐かしい気分になりますね」


「そうか?俺はあの研究者共の顔が浮かんできてイライラするがな」


「こうやってよく紅哉様と舞香様を車で迎えに行ってましたよね」


「そうだな。今思えば黒塗りの車が下校時間ピッタリに校門で待ってるのは怖いと思う。というか不審者扱いされなかったのか?」


「一度だけありましたよ。箒を持った教員の方が来られましてね、対応に困りました」


「お前いつも校門を塞ぐように車止めるからだ。それにサングラスかけてたから尚更犯罪者っぽく映ったんだろうな」



そこから紅哉とセレナは四条家と起きた話だけに花を咲かせて車の移動時間を潰した。

案外楽しい事もあったのだな、と思ったりもして自然と笑みが零れた。

だが、それは少しの間だけ。



「着きました」


「ありがとうセレナ」



紅哉は送ってくれたセレナに礼を言って寝ている舞香を起こす。

バタン――――車のドアを閉める。

無駄に金を使って作った屋敷。また帰って来るとは思いもよらなかった屋敷に人が続々と集まって行く。



「あ~あ……また来てしまったな…」



誰に言うまでもなく紅哉は独り言を呟く。


中に入ると会話を楽しむパーティー客と忙しそうに料理を運んでいるメイド達でいっぱいだった。

何も大人だけでなく、よく見ると紅哉と舞香と同年代くらいの子までもいる。

ここにいる人たちは大体2種類に分けることができる。まず雅文と同じ研究員。次に雅文に少しでも恩を売ろうとするお金持ちだ。

以前セレナに聞いた話だが、紅哉と舞香には幼い頃からお見合いの話が持ち上がっていたそうだ。そして、そのほとんどは龍を持っている紅哉と舞香の強さと炎道家の財産目当ての下種共。

全くどうすればそこまでせこい大人になれるのか分からなくなるくらい呆れたものだ。



「人……多い…」


「舞香、わたしから離れないでくださいね」


「ん……」



いつの間にか昔のように様付けじゃなくなったセレナは心配そうに舞香に手を伸ばして手を繋ぐ。

舞香も嫌ではないようで、むしろ喜んでいるように見える。



「おや……あれは龍の血を引く者の火神崎紅哉さんではありませんか?」


「あら、ホントですわね。あちらの小さい子はその妹さんでなくって?」



大広間を横断していると周りから噂される声が聞こえる。これは仕方ないと諦めている。

紅哉と舞香は世界で2人しかいない龍使い、むしろ目立たない方がおかしい。



「腹が減ったからさっさと皿に盛って食おうぜ」


「私も………お腹減った…」



紅哉は逃げるように料理コーナーへ早歩きで向かった。



「ここは飯だけは評価する」


「本場の料理人を連れてきてますから、当然です」


肉汁が滴る骨付き肉を頬張りながら食べる紅哉はずっと付き添っているセレナに質問した。



「なぁセレナ、お前はいつまで俺達についてくるんだ?ガードマンの仕事はないのか?」


「何を言ってるんですかあなたは……わたしはあなたと舞香直属のガードマンですよ。それに旦那様には父上、奥様には母上がついています。あの人達なら何も心配する事はありません」



少し悲しそうに言うセレナに紅哉はなんて馬鹿な事を聞いたのだろう、と自分を責めたくなった。紅哉と舞香がどんな状況になろうとも彼女だけは味方だったのだ。



「ごめん、変な事を聞いてしまった」


「いえいえ、わたしはあなたと少しでも話せて嬉しいですから、気にしないでください」


「セレナ……トイレ行きたい…」


「あら?分かりました。では、下の階のトイレは混んでいるでしょうから2階の方に行きましょうか」


「ん……お兄様…ちょっと行ってくる…」


「おう、俺は適当に飯でも食っているから急がずに行って来いよ」



席を立ってセレナと手を繋いで行く舞香を見送ると、紅哉はまた食い足らないのかまた料理を貰いに同じく席を立つ。



「なに?」



紅哉が取ろうとした肉が隣から伸びたトングによって持っていかれた。

横目で見るとそいつは一言で言うと人類男児の敵だった。

顔はどんな女でもころりと落ちそうなイケメンっぷりに長身。ネクタイを少し緩めている感じが更に紅哉の神経を逆なでする。



「こんばんは、兄さん」


「お前なんぞに兄さん呼ばわりされたくないな」


「いえ、あなたは位置的に僕の兄さんですよ」


「ん……お前、炎道家の養子で来たっていう…」


「ええ、僕は炎道彰えんどうあきらと言います。僕は元は孤児でして、ある日孤児院に雅文さんが、ね」


「それを俺に聞かせてどうするんだ?もう俺には関わりのないことだ」


「なんだか兄さんが知りたそうな顔をしてたのでね。あぁ、僕の他にもう一人いることはご存知ですよね?」


「いや、知らない。セレナからはただ養子を取るっていう話しか聞いてないからな」


「一応形として僕の下に妹がいるんですよ。名前は炎道奏えんどうかなでです。どことなく舞香姉さんに似ていますかね」


「舞香に?それはどうしてだ?」



舞香に似ている、という言葉に紅哉は反応した。



「髪はショートカットなんですけど、その髪色が銀髪なんですよ。顔つきもなんだか似ていまして」


「銀髪って……随分と珍しいな」



いい加減立ち話も疲れる紅哉は新たに追加された肉を取って自分の席に戻る。それを彰は付いてきて舞香の席ではない違う椅子に腰かける。



「他人の、いえもう他人ではないですが、奏の家は没落した王族の家だったそうで、その髪も母親譲りらしいです」


「没落した王族ねェ……言っておくが、舞香の元の髪色は赤だぞ。あの白髪はくはつは雅文と直海が行った実験の反動によるものだ」



舞香の髪は紅哉の赤黒い髪よりもずっと美しく真紅のように輝いていた。瞳の色もあんな安っぽい赤色ではなく透き通るようなで吸い込まれそうなワインレッドだったが、今ではその面影すらない。



「僕もこの家に来て舞香姉さんの事は聞きました。でも、紅哉兄さんは真実を知らない」


「なに?真実?何のことだ」


「それは僕の口から言うべきことはありません。今日パーティーに来たのは直海さんに会うことでしたよね?なら、尚更僕から言うべきではない」



そう言って彰は更に盛った肉を野菜と一緒に口に入れる。そして一人で「うん、おいしい」と感想を口にする。



「なるほど、今日俺を呼んだのはただ息子の顔を見たいとかそんな下らない理由じゃなさそうだな」


「下らないかどうかは分かりませんが、少なくとも大切な事柄なのでしょうね」


「お前、嫌な奴だな」


「あれ?何か紅哉兄さんの気分を害す事を言いましたでしょうか?」


「お前のその全てを悟ったような口調がむかつく」


「おや、自分では自覚がないのですが、もしそうなら改めましょう」


「ホントに孤児院にいたのか…?少し失礼な言い方になるが、普通孤児院ってのは身寄りのない子供やコミュニティ障害を患った人達が集まる場所だと思っていたんだが……」


「それは少し偏見かもしれませんね。僕がいた場所は確かに身寄りのない子供もいましたが、みな寂しい思いはしてませんし、なにより地域貢献してましたから、それなりに社会的マナーは身に着けた子ばかりなのですよ」


「へぇ、孤児院にいても魔術師の才能は開花するんだな」



今更になって彰から漂う魔術師特有のオーラに気付いた。濃い、彰のオーラは普通の魔術師のオーラの何十倍も濃い。


(俺と同格か……もしかすると俺より上か…)


本当に嫌な奴だ。さっきは今更と言ったが、今までこいつはオーラを隠していたのである。

それを今出したという事は挑発と受け取っていいのだろうか。



「紅哉兄さんとは少し手合せしてみたいと思ってたんですよね」


「命知らずな奴だな。言っておくが俺はイケメンには厳しいぞ」


「それ、差別じゃないですか。なら可愛い子には優しいんです?」


「当たり前だろ」



さも当然に答える紅哉に彰は少し呆れていた。でも流石イケメンか、すぐに気持ちを取り直す。



「でも、今やるべきことではないんですよね。この後のイベントがありますから」


「イベント?」



皿を持って立ち上がった彰に紅哉は問いかけていた。



「ええ、それはもう少ししたら分かりますよ。では、お話出来て楽しかったですよ、兄さん」


「俺は楽しくなかったがな」


「それは残念です。次は紅哉兄さんが楽しめる内容でまた話したいと思います」



それでは、と言って立ち去る彰はどこまでもイケメンだった。あそこまで無駄のない動きをしていると疲れるのではないか?と思うほど何もかも決まっていた。

紅哉は無性にイライラしてきたので皿にある肉をフォークで刺して何度も口に入れていた。


後書きも直したくなるってどういうことですかねぇ……。

少し前の自分がここまでつまらない文を書いていたなんて恥ずかしい限りです…

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