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龍の血を引く者  作者: また太び
4章 林間学校
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因縁の対決

「うっしゃー!朝ご飯だぞ!」


「師匠、もう少し待ってくださいね」


「うわ、紅哉先輩テンション高いっすね」


「あぁ、ニルと喧嘩してスッキリしたからな」


「ね…?言ったでしょ…?お兄様とニルは仲良しだから…」


「紅哉くん、傷は大丈夫?」


「あぁ、美波と豊姫がやってくれたんだろ?ありがとな」


「えへへ、私はそこまで……本当に頑張ったのは豊姫先輩です」



舞香にしてるようについ美波の頭を撫でてしまうと、満更でもないようだ。



「豊姫、今日の予定は?」


「今日は9時まで朝ごはんと休憩で、9時30分には中央キャンプ場に集合してアリーナに行くみたい」


「お?やっぱ毎年恒例の1年2年混合の要塞崩しか?」


「の、ようだね。舞香さんが今年もいるから荒れそうだね…」


「龍の威圧で何人ぶっ倒れっかな~」


「師匠!もしかして師匠と一緒に戦えるのですか!?」


「うおお!?そ、そうだが?」


「嬉しいです!私、張り切っちゃいます!」


「癒理さん相変わらず紅哉さんと一緒だと色々壊れるね…」


「ってことは俺は舞香先輩と一緒っすか?」



男用のエプロンを付けた直人が後ろでニュースを見ている舞香に尋ねた。



「うん……直人は私の弟子だから…当然…」



顔も上げないでそう告げた。直人は自然と豊姫と紅哉を見る。



「もちろん俺は舞香の敵だ」


「ごめんね、私も紅哉くんと同じ3組だから」


「マジっすか!?俺孤高じゃないっすか!?」


「直人君。覚悟してくださいね。私はあなたを殺りに行きます」


「お、お手柔らかに…」


「直人……私がいる限り負けはないから…」


「おおう……凄い自信っす…」


「ちなみにいま1年生と2年生を合わせると400人いるんだ。200人隊200人の大規模要塞崩しだから、これを毎年見に来る人もいるほどアリーナは人で溢れかえるよ」


「ええ!?そんなに来るんすか!?」


「直人くん、私たちの学校って全国でも5本の指に入るほど有名なんだよ?」



と、美波そう言われて納得する直人。



「それに今年は優秀な1年が多い。荒れそうだな」


「荒れるよ……間違いなく、チームメンバーでね…」



舞香は不吉な事をぼそりと呟く。



「し、師匠……お味はどうですか…」


「うん、おいしい。お前、ホントなんでも出来るな」


「…ッ!あ、ありがとうございます!」



紅哉達は出来上がったカレーを食べていた。癒理は長い髪を揺らして何度も紅哉に頭を下げる。

直人も普通に舞香からうまいと言われて、ガッツポーズをする。

美波と豊姫は一緒にカレーを作っていたせいか、仲良く食事を楽しんでいる。



「俺、ちょっと佐鳥先生の所に行ってくる」



紅哉は食事後、ニルと共に席を立って佐鳥の寝ているテントまで歩きだした。



「佐鳥先生、起きてますか」


「おう、起きているぞ」


「俺、行きます」


「ニルと喧嘩して決まったんだな。アタシに感謝しろよ?お前ら、ここまで音が響いていたから、アタシが先生たちを誤魔化していたんだぞ」


「すみません」


「まぁいい。セレナにはアタシから話しておく。お前は心構えだけしっかりしておけ」


「先生、俺は人殺しはしません。ガキみたいな発想かもしれませんが、これだけは譲れません」


「………その目なら安心した。ここで人殺しも何でもしますって言ったらお前死んでたぞ」



佐鳥はテントから出てくると、紅哉の頭をわしわしと乱暴に撫でた。



「お前はセレナの弟子だからな。アタシが心配になるのも理解しろよ?セレナの弟子がいつまでも負けっぱなしはアタシも気分が悪い」



それだけ言うと佐鳥はにやりと笑ってその場を後にした。よく見ると佐鳥の服装は迷彩柄で、完全に軍人そのものだった。



「殺さないのは佐鳥にとって加点だったらしい。良かったなマスター」


「危なくこんな所で死ぬ所だった。悩んだかいがあったな」



紅哉とニルは佐鳥のテントを後にした。





その後紅哉達はバスに乗って魔術師育成アリーナへと向かっていた。ここは全国でも大規模要塞崩しが出来る場所として有名で、ここでしか出来ない要塞崩しもある。



「火神崎、俺達のクラスの弟子全員はお前に従うって言ってるぜ」


「あぁ、分かった。基本は遊佐さんに従ってくれ。俺達のクラスだけが舞香との試合になれている。ようするに、舞香を討てるのは俺達しかいないということだ」



いまバスの中では作戦の最終ミーティングをしていた。1年生と2年生が混合になるうえで一つ心配なのが、統一だ。人数が多すぎるために統一がとれず、勝手に動き回ってしまって舞香にやられるパターンが多い。

実際去年も舞香のリアからのハドロンブレスをくらって壊滅したし、今年はその二の舞だけは踏みたくない。



「豊姫はうまく1年生をまとめてくれ。美波もいるからそれなりに影響力はあるはずだ」


「うん…!私、頑張るね」


「防御はこれでいいとして、問題は他の組だ……3組の俺達は佐鳥先生のゴリ押しで一つにまとまったが……」


「あ~それだよな。俺達って2組としかやったことがないから1、4、5組の動きがまるっきり分からねェもん」



クラスのムードメーカー朽木俊介が難しい顔をする。

その言葉にみな納得しており、豊姫も他の組は何をするのか分からないらしい。

そんな悩むも連れて巨大な建物、魔術師育成アリーナに着いた。


アリーナに着くと1年生はそわそわしており、これから2年生とやる要塞崩しに胸を躍らせているらしい。

紅哉と豊姫たち3組が頭を悩ませていると、そこに一人の1年生が現れた。



「ん?どうした?1年生はあっちに集合だぞ?」


「凪咲は先輩とこれから組むもんです。それで、イフリートの主でもあります~」


「あぁ。君か、美波が警戒していた1年生は」


「美波ちゃんには一発やられちゃったけど、今回は味方。それであなたが指揮するというので、私は師匠よりあなたに従えと言われたので、よろしく~」



なんとゆるい喋り方だろう。この少女。本当にイフリートの主なのだろうか。



「ほいじゃ、それだけなんで、よろしくです~」



すい~と去って行く凪咲という少女は、1年生の集合場所へ去って行った。



「あれが炎の魔神の主か……」


「でも、可愛くね?」


「馬鹿、美波ちゃんの方が可愛いだろ」



紅哉のクラスは今の凪咲と1年生で誰が一番可愛いかの話になってしまった。



「お前らさっさと来い!」


『は、はい!』



佐鳥に叫ばれて紅哉達は急いで集合した。



中に入ると、いま行っている要塞崩しの映像や、有名選手による効果的な練習方法などが映されたテレビでいっぱいだった。



「あ、紅哉くん。あれ、玲奈さんじゃ」


「あぁ、あれが日本最強の魔術師か」



誰も気づいていないようだが、豊姫は奥のベンチ座っている女性を見つけた。刀條玲奈。美しいオレンジ色の髪は腰辺りまで長く、服装は実家が神社の事から巫女服だ。髪の左右に白いリボンを付けており、視線の先はテレビを見ているようだった。

豊姫と少し見ていると、視線に気付いたのか紅哉と豊姫を見つけるなり、近寄って来た。

そこで気付いた者も多く、口々に「あれって刀條玲奈じゃね?」と言う。



「君、火神崎紅哉君だよね」


「はい、そうですが」



凜としていて透き通るような美しい声だった。取材も写真もNGな彼女はろくにテレビに出ないせいか、ネットでも写真は余りない。



「私ね、瑠璃ちゃんの従姉で、君の事はよく聞いているんだ」


「瑠璃と従姉なんですか!?」


「内緒ね…?それで、あなたは瑠璃ちゃんの彼氏なんだよね…?」



と最後の方を小声にした辺り、常識を弁えている人だと思ったりした。



「ええ、まぁそうですが」


「ふむふむ……私、会うたびに瑠璃ちゃんにその自慢話されてさ、ちょっと羨ましいな~とかおも―――いや何でもないの!まぁそれで君の実力を見るのも兼ねてここに今日は来たの」



途中で言葉を切って、今日の目的を話す。瑠璃の友達とは初耳だ。



「君の妹さんの実力も期待してる。頑張ってね」



玲奈はそう言って元いた場所に座ると、またテレビを見始めた。



「なんだか気の抜けない戦いになってきたね…」


「そうだな。しかし、まさか瑠璃の従姉だとは」


「瑠璃先輩、前に親戚に神社の子がいるって言ってたけど、まさか玲奈さんなんてね」


「驚きだな……さて、頑張るとするか」


「うん、頑張ろ」



玲奈に見られているとすると、下手な戦いは出来なくなってきた。

VR空間転送室に入ると、巨大な転送装置が二つもあり、その光景に驚きを隠せない者が多数いた。主に1年生だが。



「さて!分けられた師弟はそれぞれの転送装置に乗れよ!」



と教師に言われると、400人はゾロゾロと移動を始めた。

そこで癒理たちとも合流し、転送装置へ乗る。



「力のある限り頑張れよ!それじゃあ、お願いします」



教師は機械を操作する担当員にお願いすると、紅哉達は奇妙な浮遊感と共にVR空間へ飛ばされた。

これでここに来るのは2回目だが、ステージは同じくシンプルステージ。周りは平地であり、踏むのは草原。

ゴルフ場を思わせる、綺麗に整備された芝生はこれからここが戦場になると思うと、少し申し訳ない気持ちになる。

前言撤回。そもそもVR空間なので余り気にしないが。



「美波さん、私たちは魔術障壁を20層にするよ」


「20層!?え、えと、ホントですか!?」


「うん。基本は10層だけど、200人もいるからその倍にしないといけないの。だから、大急ぎで作るよ」


「は、はい!分かりました!みんなー!これから豊姫先輩が魔術障壁を20層作るから協力して!」



美波の言葉に皆驚いているようだった。10層張るのも難しいが、更に20層も張るとなると制御が難しくなるのだ。

だが、豊姫はそんな妥協は許さず1年生に厳しく行く。

2年生は当然だ、と頷いており豊姫に従って続々と集まって行く。



「豊姫も気合が入っているようだ。癒理、俺達も行くぞ」


「はい!師匠!リン!ユニゾン!」


「ニル!」


「ウオオオオオオオオオ!」



癒理はリンを呼び出してユニゾンする。魔を思わせる槍を高速で回して地面に力強く刺す。

ニルは出てくるなり、自分を鼓舞する雄叫びを上げる。

初めて見る龍に驚く1年生も多く、2年生ですら思わず見てしまう。



「お、おい……あれがリヴァイアサンかよ…でかすぎんだろ…」



と、誰かが言うと、遠くには顕現したリアの姿があった。ここからでも聞こえるリアの雄叫びに、もう恐怖している1年生もいる。



「あんなの受けれるわけがない…」


「首が10本……」


「この腰抜けどもが!お前らみたいな魔術師はいらん!ここで引っ込んでいろ!」



そんな1年生をニルが睨めつけた。紅哉はやれやれと肩を落とし、3組は頭を抱えている。

これが舞香が言ったチームメンバーで荒れるというものだ。




所は変わり舞香の陣営。



「私と少しいればいい……後はみんな攻めて…」


「みんな攻めろって言ってるっす!リアが全部守るそうっすよー!あ、少しだけ残って欲しいと」



と、声の小さい舞香に変わって直人が連絡を伝えていた。



「リア…お願いね」


「クキャアアアアアア!」



リアは拠点の城を守るように顕現すると1年生たちはやる気に満ちていた。

これなら負ける気がしない、と。

体長25m超えのリアは遥かに小さいもう1体の龍族を見?

さぁ遂に3組の初勝利です。豊姫も紅哉も俊介も遊佐もだいぶ成長しました。いつか、入学当時の話とかしてみたいですね。

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