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龍の血を引く者  作者: また太び
4章 林間学校
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林間学校一日目の実戦訓練

紅哉たち生徒は林間学校が行われるキャンプ場に着くと、バスは翡翠学園のバスしかなかった。



「あ~他校だが、やっぱりこれなくなった」



佐鳥は語る。なんでも急な用事で来れなくなったらしい。生徒たちの間ではもちろんそんなことがあるはずがないと誰もが思っている。

大方、直前で自分の学校の力がばれるのを恐れたのだろう。

佐鳥本人も「やっぱり」と言っているし。



「まぁ、他校がいてもめることはないだろうから、気楽にいけよ」



佐鳥はそう言って面倒くさそうに職員会議に向かった。






実戦訓練が始まる前に、担当教師からの説明を生徒たちは聞いていた。



「では、説明は以上だ!まずは各組のランク付けの札を渡す」




適当に並び始めた生徒に混じって紅哉達も弟子と一緒に並ぶ。



「師匠。確かランクはA、B、C、とあるんですよね」


「そうだ。Aが一番難しいと言われている。Bが少し難しい程度でCが一般の難しさだ」


「俺らはもちろんAっすよね…」


「当たり前……直人、あなたにもちゃんとやってもらうからね…」


「りょ、了解っす…」


「美波さん、私達も頑張ろうね?」


「はい!師匠に良い所を見せます!」



いつも通りの癒理、プレッシャーのかかる直人、張り切る美波と弟子たちは気持ちがバラバラだった。



「お前らはAだ」


「当然…」


「まぁそうだよね…」



教師から貰った札にはAと書かれていた。そしてその裏には指定された場所の地図が書いてある。



「緑化活動という名の魔物退治だな。Aは一番危険な場所だ。もちろん担当の教師がいるが、基本俺達で切り抜けて行く」


「こうやって好きな人同士で班を組むのが基本だけど、たまに師匠と弟子だけで行く人もいるんだよね」


「言っておくが、あくまで俺達は監督だ。基本はお前達だけで戦うんだぞ」


『はい!』



紅哉の言葉に弟子3人は同時に返事をして指定の場所へと向かった。

指定された場所は洞窟だった。入り口には担当の教師が2人おり、ここで一度点呼を取ってから行くらしい。



「紅哉達だな。よし、頑張って来いよ」


「んじゃ行くか」



討伐目標はここで悪さをするオーガとワイルドオーガの討伐だった。

オーガは体長2m程度の亜人だが、ワイルドオーガは体長3mの腕が4本もある魔物だ。

そこまで強いという訳ではないが、初めての実戦に緊張して動けないという弟子も多い。

なので、気を引き締めなければいけない訓練だ。



「オオオオ!」


「まずは私から。リン、行きますよ」


『あいよ!』



一瞬でユニゾンした癒理は洞窟の蔭から飛び出したオーガへ向けて槍を投擲した。

槍はオーガの頭を貫通して光となり消えると、癒理の手元に出現する。



「うん、流石だ」


「ありがとうございます」


「おお……すっげぇ…」


「流石です!癒理さん!」


「まぁ当然……癒理はいつもセレナとトレーニングしてるから…」


「流石ね、癒理さん」



今年の一年生はとても優秀だ。美波のパートナーはイクシオンという雷を纏った馬だ。

馬繋がりの豊姫は美波が戦う姿を心配そうに見ており、オーガを倒すと安堵の息を漏らした。



「そこまで心配しなくてもな……」


「だ、だって……美波さん、初めての実戦なんだよ?私心配で心配で」


「だから大丈夫だろ。美波だってお前に良い所を見せようと頑張っているんだぞ?ここは戻ってきた美波を褒めてやるべきだ」


「うん、そうだね」


「豊姫先輩!やりましたよ!」


「うん。おめでとう。頑張ったね」


「はい!頑張りました!」


「次は……直人、分かっているよね…?」


「う、うっす!見ててくださいよ!」



ジロリと舞香から目線を送られてまた緊張する直人に紅哉は声をかけた。



「そんな緊張するな。いつも通りの力を出せば何も問題はない。落ち着いてやれよ?」


「そうっすね…………うし!行ってくるっす!」



一度深呼吸をした直人は張り切って洞窟の奥から出現したオーガに走って行った。



「直人のパートナーはなんだ?」


「ふふん……珍しいもの…」


「ほう?」



舞香は珍しくもったいぶったので紅哉はこれからパートナーを出す直人に注目した。



「来い!スコル!ハティ!」


「ワン!」


「ワオオオン!」



直人の声に反応して出てきたのは青と赤のオオカミだった。普通はどんなパートナーも1体しか使役出来ないのだが、まれに2体使役する魔術師がいたりする。これはパートナー同士の相性が深く関わっており、スコルとハティは兄弟のオオカミとして知られているため、同時使役が出来たのだろう。



「2体使役!?凄いな。でも、なんであいつBなんだ?」


「それは本人のスペック…」


「あぁ、なるほど…」


「ユニゾン!」



スコルとハティは赤い光と青い光になって直人の身体に集まると。直人の身体は徐々にオオカミの姿へと変化していき、ユニゾンが終わるとそこには黄金の毛並みを持つオオカミに変身を遂げていた。



『オオオオオオン!』



スコルとハティと直人の声が混ざった雄叫びは洞窟を震わせる。



「スコル!サンブースト!」



直人の声が発せられると同時に足はオレンジ色の炎に包まれる。前足には炎で作られた刃が生み出され、触れれば確実に焼き切るだろう。



「ハティ!ブリザードムーン!」



そして炎の刃に絶対零度の氷が纏わり、辺りの温度が下がったような気がした。



「おし!準備オーケーっすね!俺が出来る事を見せてやるっすよ!二人とも!」



地を強く踏みしめ、そして直人が駆けだした。スピードは徐々に増して行き、見えるのは炎と氷の軌跡。



「オオオオ!?」



オーガの周りをぐるぐる回り始めた直人は相手が混乱したのを見た瞬間襲い掛かった。

カッ―――――――炎と氷の軌跡は一瞬でオーガを粉々にし、肉片も氷付いてそして炎で消えて行く。

戦闘が終わるとそこには初めから何もなかったような、ただ冷たい洞窟の道が広がっているだけだった。



「ふぅ~……終わったっす………」


「ワンワン♪」


「キュウウン…」



ユニゾンを解くとスコルとハティはご主人の顔を舐めて褒めていた。



「やれば出来るじゃないか」


「上出来……後はユニゾンの時間を延ばして行く事…」


「いいじゃないですか?私と要塞崩しをするときは是非それも使ってください」


「かっこよかったよ~。うん、癒理さんとの対決は私も見たい」


「最初の戦闘にしては動けていたよ。私なんかがちがちで…」


「あはは……俺頑張ったっすね」



紅哉の手を借りて立ち上がると、次は紅哉達が腕を見せるときのようだ。

洞窟の奥に到達した紅哉達はオーガ達の群れを見た。真ん中には紫色のワイルドオーガがおり、護衛のオーガは30体とこれは群れというより大群だった。



「お前らはそこで見ていろ。師匠として腕を見せてやる。行くぞ、舞香、豊姫」


「うん……見てて、直人…」


「よし!私頑張るね」



ドスン―――――!


「グオオオオオオオオオ!」



空中から現れた漆黒の龍戦士は雄叫びを上げるとオーガ達を壁まで吹き飛ばした。



「リア……ブリザードテイル…!」



吹き飛ばされたオーガ達の所へ、突如次元を裂いて巨大な氷の龍の尾が現れ、オーガ達をまとめて凍らせていく。



「ペガサス!光の翼!」



凍ったオーガへペガサスが追い打ちを仕掛ける。突如翼が光輝くと、それは光弾のように飛び出してオーガ達へ突き刺さる。

突然の奇襲にオーガ達はなすすべもなく一方的にやられて行った。



「これが学園トップの力っすか…」


「紅哉先輩たちは別格かなぁ……踏んだ戦闘の場数が違うもん、これくらい普通なんだろうね」


「あぁ……師匠流石です…」



紅哉の戦う姿を目の前で見れて目を輝かしている癒理はもはや別人だった。いつもの鉄仮面はどこかへ行き、今は憧れの人を見ているひとりの少女に過ぎない。



「ニ、ニンゲン!?ド、ドコカラワイタ!?」


「お前がここの親分だな。まぁ毎年恒例の行事だから大人しくやられておけ」



案外知能があったワイルドオーガに少し驚きつつも紅哉は隣で腕を組んでワイルドオーガを見下しているニルに命じた。



「ニル、任せたぞ」


「こんな俗物をオレにやらせるとはな」


「リュ、リュウゾク!?キサマラハホロビタ!?ハズジャ!?」


「聴き取りずらいんだよこの野郎!」



ニルの剛腕は黒い炎を纏いながらワイルドオーガを粉砕した。最後の言葉は真面目に聴き取りずらくてイラついたものだった。



「お兄様…終わった……」


「紅哉くん、こっちも終わり」


「こっちも終わりだ」



ニルは異臭を放つこのフロアを炎で洗浄していく。リアはニルの燃やした場所を瞬間凍結させて炎を消す。

そして最後の仕上げとしてペガサスが温かな光を振りまいて完全に洞窟を洗浄した。



「マスター、洗浄終わったぞ」


「おし、帰るか」



入り口まで戻って無事監督教師から終了を意味するハンコをもらうと、癒理以外の弟子は安堵の息を漏らした。


直人にはやればできる子!という感じで行きましょうかね。でも、小者感が抜けないのは気のせい気のせい

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