悪の組織??
「帰ったか、章仁」
「ふぅ、えらい目にあったよ」
篝章仁は会議室のような場所に入り、ワインを飲んでいる男に一度だけ視線を向けて適当な椅子に座る。
「ねぇ沖田さん。サマエルの支配率はどうなってる?」
沖田と呼ばれた年配の男はワインを一口飲んでから電子ファイルを滑らして章仁の元へ渡す。
所々白髪の入った髪はオールバックに決め、黒いサングラスにダークスーツの沖田の右目は傷で見えなくなっている。だが、それすらも自分の美点と捕えている沖田は誰もが憧れる兄貴としてこの組織に君臨していた。
テーブルを滑って来たファルを受け取った章仁はさっそく読み始めた。
「あ、僕はコーヒーで」
「は~い。………ねぇねぇ沖田さん、章仁さんなんだか疲れている様子だね?」
突然この重苦しい会議室に到底似合わない明るい声がこだました。それは一人の少女から発せられた声だった。
中学生のような幼い顔立ちにも関わらずどこか芯の強さを持っている雰囲気の少女。髪は短いが、伸ばしているのか少しだけ長く伸びた細い髪を赤いリボンで束ねている。
身長は平均から見ても低く、下手すると電車もバスも子供料金で乗れそうだ。
「そのようだな。私は留守番していたので分からないがな」
「私も留守番だった。行きたかったな~浅見パークランド…」
コーヒーを入れている少女は羨ましそうに息を吐いた。そんな様子を見てか、沖田は部下から預かった浅見パークランドの袋を出した。
「おい、綾香。これをお前にやる」
「なぁに沖田さ―――ってこれ浅見パークランドの!?」
「そうだ。綾香ちゃん悲しがっているだろうから、これプレゼントで。と書いてあるな」
袋に添えられたメッセージを読んだ沖田は綾香と呼ばれた少女に袋を渡した。
「わーい!わーい!私まだ部下を与えられていないから……沖田さん!その人たちに礼を言っておいてね!」
「あぁ、約束しよう。それより、章仁がコーヒーを待っているぞ」
「わわ!お、お待たせしましたー!」
「おや?何か貰ったのかい?」
「はい!あのですね――――」
「綾香がいるからうちの組織は案外まとまっているのだろうな…」
沖田はそう言ってワインをぐっと一口また飲む。ここは誰も知らないアヴェンジャーズの基地。
高級そうなビルの会議室は作戦室であり、幹部の休憩所ともなっている。空いている席はあと4つある。もちろん余りなどないが、今は席を外しているようだ。
「ん~グレイプニルでも大分かかるようだね。お、綾香、大分コーヒー入れるのうまくなったね」
「そ、そうですか!?嬉しいです!」
章仁に頭を撫でられて喜ぶ綾香の目には尊敬の色が入っている。
「開発部も相当かかると言っていた。動きを封じている辺りで僥倖と言えるだろう」
「そうだね。暴れてちゃ制御も出来ないし。もしサマエルがコントロールできるようになれば探索も一気に楽になる」
「そうだ。だから、今は待つしかないだろう」
「そうだね~。よし!綾香ちゃん!千羽鶴折ろうか」
「いいですよ!私こう見えて早いんですからね!」
いきなり始まった千羽鶴折りに沖田は目を白黒させるが、一瞬で落ち着きを取り戻し、一生懸命鶴を折る二人を見始めた。
アヴェンジャーズはごろつきの集団ではなく、立派な統一の取れた組織である。リーダーである章仁は部下に気を配る良いリーダー。アヴェンジャーズのマスコット綾香。そして頼れるサブリーダーの沖田。このほかに隊長とか軍師とか色々いるが、彼ら彼女らは今はいない。
隊員同士も仲良くしており、暇さえあれば腕を磨いたりトランプで賭け事をしたりと楽しく過ごしてるのだ。
「先は長そうだな……」
ふと、沖田は今の現状を思い浮かべてそう呟いた。
短い話ですが、こういう感じに章仁の組織にも愛着を抱かせるように頑張って書いていこうと思います。敵だけど、惜しい存在、という位置でしょうかね。




