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龍の血を引く者  作者: また太び
4章 林間学校
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そろそろ明らかになる?舞香の弟子。そしてセレナと朱音の模擬戦

「紅哉くん。明日林間学校だけど、班は弟子さんと組むそうだよ」


「そうらしいな。飯はお前のとこにお邪魔するとして…」


「もう紅哉くん……料理の一つくらいは覚えたら?」


「役割分担というものだ。俺は戦闘、お前は食事」



と、紅哉は食堂にある自動販売機から缶コーヒーを購入する。今は昼休みであり、紅哉と豊姫はさっさと食事を終わらせてブラブラと校内を歩き回っていた所だ。



「言い訳にしか聞こえないんだけど……まぁ紅哉くんが料理が出来ない事は今に始まった事じゃないしね……あれ?癒理さんは料理出来ないの?」


「出来るぞ。あいつの親は家を空ける日が多いから自然と料理のスキルが身に着いたらしい」


「なら、癒理さんに作って貰えばいいんじゃない?」


「そうだったな……自然と豊姫に頼むのが癖になっているみたいだ」



なんとなくそんな事を言われた豊姫は前を歩く紅哉には分からないように笑顔を浮かべた。



「お兄様……」


「お、舞香か。お前そういえば弟子はどうなったんだ?」


「こんにちは舞香さん。私も舞香さんの弟子については全く知らないね」


「だって…言ってないもの…」


「ってことは決まったのか?」



紅哉の言葉に舞香はこくりと頷いた。セレナにも龍一にも何も言われていない紅哉からすれば相手が誰なのか気になって仕方がない。



「男の子……いま会ってきた所……会ったら椅子から転げ落ちていた」


「あ~なんか想像出来ちゃった…」


「まぁ舞香だしな」



2学年トップの成績とこの学園の頂点に座する魔術師。それが入学したての新入生の前にいきなり現れたら心の準備も何もない。



「どんな奴なんだ?」


「ん…」



舞香は志願書を取り出すと紅哉へ差し出した。


明るそうな少年だ。顔立ちはまだ中学生らしい幼さを残し、髪は長すぎず短すぎずの中間くらいで成績もこれと言って悪くはない。

パートナーもBランクと普通だ。はっきり言うと普通すぎる。



「えっと、これは一応セレナと龍一が考えに考えて選んでくれた弟子か?」


「うん……採用理由は至って簡単………」



舞香が指差した場所は得意魔術系統。そこには氷と書いてある。

舞香が最も得意とする魔術が氷であり、教えるのが楽だと思ったのだろう。



「でも、氷系統ならもっと良い人がいたんじゃないの?舞香さんならもっと選べたと思うのだけれど…」



「うん…豊姫の言うとおり、もっと良い子もいたよ……Aランクの子とかもいた。でもね、そういう子に私は何が教えられるだろうって考えたら自然とこの男の子を選んでいたの…」


「あ、それ凄く分かるよ。私も美波さんに正直何も教えたらいいのか分からないの」



しばらく豊姫と舞香による女子トーク?が進んでいく。紅哉と言えばいつも自分が癒理に何を教えているのだろうか、とずっと考え込んでいる。

そもそも紅哉もまだ未熟者だし、その未熟者が何を教えているのか、と問われればすぐには答えれる事は無理だ。

紅哉はセレナから教わる事がまだまだあり、それを今我が身に教え込んでいる最中で、癒理に教えてあげる事と言えば実戦での心構えくらいだろうか。



「お前らって仲良いよな」


「え?」


「そう……私と豊姫は親友…」


「休日遊んだりしているのか?」


「うん。舞香さんとショッピングしたりするよ」


「ん…」



舞香は財布を取り出して、何やら紅哉へ渡す。それはプリクラだった。可愛らしくデコられた写真には仲好さそうに写っている舞香と豊姫がいる。



「おお、お前らそんなに仲が良かったのか」


「豊姫は基本ぼっち……」


「ま、舞香さん!」


「お前……そうか、俺が拘束していたんだな……悪かった…」


「ち、違うよ!た、ただ人付き合いが苦手なだけで…」


「あはははは!」


「豊姫…面白い…」


「え?へ?」



冗談で言った事を真面目に返してきた豊姫に紅哉は腹を抱えて笑い、舞香は表情こそ笑ってはいないが、口元が僅かに上がっている。



「もう!二人してなんなの~!」



割と本気で怒っている豊姫から怒られないためにも紅哉と舞香は走って逃げて行った。



「こらあ!二人とも待ちなさい!」


「やば!逃げるぞ舞香!」


「うん…!ちょっとからかいすぎた…」



こうして紅哉達の学園生活は進んでいく。新しさと喧騒を連れて――――





「せい!」


「くッ!にゃろう!」



いまセレナと朱音は模擬戦をしていた。きっかけはこれから遡る事10分前――――



「うわー!もう掃除ばっかしんどい!」


「朱音さん。それ言ったらメイドの仕事が勤まりませんよ」


「龍一さん。どうしてそんなにテキパキ仕事がこなせるの?」



壁に寄り掛かって地味に休んでいる朱音は近くで黙々と掃除をしている龍一に尋ねた。



「まぁ僕はこういうマメな仕事が好きですからね。セレナさんも同じじゃないですか?」



たまたま通りかかったセレナへ龍一は意見を求める。



「え?そうですね。ガードになってから紅哉と舞香の世話とか色々しているうちにマメな仕事が得意になりましたね」


「ねえねえ!小さい頃の紅哉君と舞香ちゃんってどうだった?」


「いま仕事中ですよね?それ終わったら話してもいいですが」


「えー!それ聴きながらだったらきっと仕事捗る気がするんだけどなー!」


「ダメですよ朱音さん。仕事なんですから」


「むぅ…龍一さんってどうしてそんなにケチなのー!」


「ケチじゃありませんよ……」


「龍一さん。それならわたしとの模擬戦に勝てたら、でいいでしょうか。浅見パークランドの時からあなたの実力には興味があったものですから」


「ふむ……まぁセレナさんが良いというのであれば…」


「わーい!んじゃ手加減なんてしないよ?」



と、それで今に至る。他のメイド達もセレナと朱音の勝負に興味津々であり、誰も掃除などしていない。



雷刃らいじん!」



セレナに襲い掛かる聖剣が突如稲妻を纏い、剣の速度が上がる。だが、セレナは特に驚いた様子もなく落ち着いてこれを躱す。



「繋ぎの太刀!武威斬ぶいじぎり!」



そこから更に稲妻が増し、V字斬りを放つ。



「ん!?」



更に速度を上げた一撃はセレナの身体を掠めた。後ろへバックステップで後退したセレナは一つ息を吐く。



「流石にあたしの雷刃を躱すのは驚きだねぇ。武威字斬りまで避けられちゃった」



大剣を肩に担いだ朱音は純粋に驚いているようだ。セレナ自身も驚いている。朱音より巨大な剣を木の棒のように軽く振るい、ましてや速度を上げて行く事に。



「白虎、ギアを上げますよ」


『了解』



白虎が応じると同時に一瞬だけセレナの周りに激しい風が吹き荒れた。



「よっし!行くよ!疾風!迅雷!」



疾風で左手を地面に着き、迅雷で風を置き去りにした突進を仕掛ける。

今のセレナには朱音の姿がよく見える。目の前に迫った朱音は左手で大剣を振り、大剣で見えなくなった右手を本命の攻撃としているのがよく見える。だからセレナの取るべき行動はカウンターだ。

水平に斬り込んでくる聖剣アスカロンを身を低くして避け、そして本命の右手のボディーブローを左で受け流す。

そしてカウンターをするべき時が来た。



虎雷砲こらいほう!」



右手に溜まるは白虎のオーラ。仙人の域まで達する白虎の一撃を溜めたこの拳は触れただけでもたちまち脳震盪を起こすほどだ。

それが今朱音の腹部へ突き刺さろうとした時に朱音は反応した。



雷脚らいきゃく!」



繰り出される右拳を朱音は稲妻を纏わせた右足で無理な態勢ながらも上へ弾き飛ばす。

サマーソルトのようになった雷脚はそのまま踵押しへ移行する。

だが、セレナも負けじと朱音の踵を左足で相殺させる。



「ホーリーレイ!」


「な!?至近距離で魔術!?」



足の裏に術式が現れ、セレナは慌てて足を戻し魔術は魔術で対抗すべく魔術障壁を作り上げる。

足の裏から放たれた光の矢はセレナへ襲い掛かるが、全てセレナが受け切る。

ちなみに二人とも高速詠唱で魔術を使っている。これくらいの超人になると、当たり前になってくるのだ。



雷神破断らいじんはだん!」



稲妻を纏った大剣を地面へ突き刺すと、稲妻はまるで生きている蛇のようにセレナへ襲い掛かる。



虎脚震こきゃくしん!」



ドン!とセレナが地面を踏みつける。するとなんと突然地面から岩が突きだして稲妻の蛇を防ぐ。

ジャキン――――――!岩は一瞬で切り伏せられると岩山に陣取った朱音が砕いた岩を飛ばしてくる。

大砲のように飛ばされる岩をセレナは横に疾走してこれを躱す。


ドオオオオオン―――――一つ大きな岩が地面へ当たると、盛大な砂埃を巻き起こしてセレナの姿を隠す。

数秒後弾丸のように飛び出したセレナの拳は朱音の顔へ、それを予想していた朱音は大剣を腹部へ、ほぼ同時に繰り出していた。



「そこまで!」



それを中止させる龍一の声が鳥のさえずりで賑わう庭に木霊した。



「ふあああ!引き分けか~」


「そのようですね」



それを見ていたメイド達はセレナと朱音へ健闘の拍手を送る。

朱音は大剣を空中に放り投げると、大剣は次元の中へずぶずぶ消えて行った。

セレナも一つ目を閉じる。そうすると身体を覆っていた風のオーラが消えていく。



「セレナちゃんに勝ちたかったな~」


「正直ここまでとは驚きましたよ」


「いや~二人とも凄かったですよ。是非紅哉さん達に見せたかったですね」


「あははは……この模擬戦やる理由が紅哉君と舞香ちゃんの幼い頃の話しだから出来ればいてほしくないな~」


「まぁ話したら邪魔されそうですしね」


「それで龍一さん、結果はどうなんの?」



芝生に仰向けで倒れていた朱音は勢いよく身体を起こすと、傍にいる龍一に問いかけた。



「引き分けですしね。どうしましょうか」


「龍一さんが仕事しながら話してもいいならわたしは構いませんが」


「結局龍一さんかー!」



再び倒れた朱音に龍一は呆れのため息をつく。



「別に構いませんよ……というか、結局僕が許可出す事になってるんじゃないですか」


「まぁ引き分けだしね~」


「わたしも掃除を手伝うでどうでしょう。そうすれば仕事も捗るのでは?」


「セレナさんがいいのであれば」


「んじゃ決まり!よし!さっそく戻って掃除を再開しようじゃないか!」



息一つ乱れのないこの二人の超人っぷりに龍一だけが苦笑いを浮かべていた事は誰も気付かない。


朱音の謎がまた深まりましたね。それと次の話で舞香の弟子が登場します。

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