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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略(続)
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反撃のための出港

「それじゃあ、行ってくるね」


「行ってくるわ、お兄様」


「頑張りまっす!」



夜の穏やかな海の港で皆は瑠璃、舞香、紘一の3人の見送りをしていた。



「燃料タンクもいっぱい積んだから、問題ないはずだ」


「大丈夫ですよ。直海さんにマニュアル本も書いてもらいましたし、俺も一通り覚えていますから」


「舞香、気を付けて行くのよ?」


「心配しなくても大丈夫よ」


「瑠璃先輩気を付けてください…」


「大丈夫だって。すぐ戻って来るからね~」


「美雪、3人に。踊れるわね?」


「はい!」



美雪はシャランと金色の神楽鈴を鳴らすと緩やかに踊り始めた。



「瑠璃……これは…?」


「これはね、私達に幸運を授けてくれる舞いなの。普段は結婚式とか、末永く幸せでいますようにっていうための踊りなんだけどね」


「へぇ……滅多に見れるものじゃないわね、これは」



美雪は踊り終え、そして静かに3人の前に来ると幸運を纏った神楽鈴を景気よく鳴らして3人に幸運を授けた。



「未熟者ですけど頑張って踊りました。皆さん、どうか怪我なく戻ってきてくださいね」


「美雪ちゃんの想い、しっかり伝わったよ。ありがとう」


「美雪、ありがとう」


「ありがとうございます!俺、頑張れそうです!」


「紘一、妹と瑠璃を頼んだぞ」


「紅哉さん…………はい!俺!二人を頑張って守ります!」


「むしろ逆に守られそうな予感がするけど」


「あははは、まぁまぁ戦闘にならない事を祈りながら行くとしようよ」


「荷物積み終わったぜ」


「クルーザーのメンテも問題ないよ~」



食料やら色々積んでいたクロフィードとクルーザーの最終メンテナンスを行っていたアイリが船から出てきた。

3人は皆にもう一度だけ挨拶をして船に乗り込む。



「出発します!」



紘一が運転席から声を上げ、そしてクルーザーはゆっくりと出港した。



ゴオオオオオ―――と海を裂きながら突き進むクルーザーの上で舞香が運転席にやってきた。



「ここからどれくらいかしら」


「大体8時間ってとこですね。途中休憩も入れるんで、もう少しかかると思います」


「分かったわ。何かあったら呼びなさい。私は瑠璃と交代しながら寝るわ」


「了解っす」



欠伸をしながら舞香はクルーザーの階段を下りて寝床へ行ってしまった。



「やれやれ、まさか海に出るとは思わなかったな」


「意外か?」


「まぁそうだな」



舞香がいなくなってからすぐにグランベスが隣に現れた。

こんな時でも紘一の学校の制服を着ている彼女に思わず苦笑してしまう。



「龍の里にも海があったが、そこは水龍種のエリアだ。龍人種の私が水龍種のエリアに行けば喧嘩が起こるし、実際海を見たのは初めてだな」


「海が初めてか。感想をどうぞ」


「移り映えしない景色でつまらんな」


「おいおい……」


「だがまぁ、こんなにも広いと自分の存在が小さく見えてしまう。不思議な気持ちだ」



壁によりかかって地平線を見るグランベスには、海がどのように映って見えているのだろうか。



「海よりも大きいと謳われたリヴァイアサンを包む海だ。我らの存在が小さく見えて当たり前だ」


「神龍か」



和服に身を包んだ白髪の男が現れた。

右手には一升瓶が握られているが、この龍は酒が好きなのだろうか。



「水龍種が穏やかな性格を持つ理由が分かるな。こんな大きな海で毎日泳いでいれば、争いごととは無関係になるはずだ」


「逆に海を汚そうとする者には誰であろうと許しはしなかった種族でもあったがな」


「神龍、お前は人間の魔術師と出会ってから何を感じた」


「珍な質問だな。お前が過去の人間と何があったかなど知らぬが、人間はただ生きようとしているだけだ。我らには到底理解出来ない概念ではあるがな」


「生きようと……なるほどな。変な質問だったな、すまん」



グランベスは恐らくあの移民族の事を思いだしているのだろう。

我が子を生かすために我が身を捧げた母親と、生きるために必死で腕を磨いた二人の子供の姿を。



「なに、今日の私は機嫌がいい。久しぶりに素晴らしい巫女の舞を見たからな」


「美雪さんのことか」


「うむ。私は宝玉の頃から意識はあったのでな、瑠璃と玲奈と美雪の事は昔からよく知っている。あの小さな娘がよくあそこまで立派に踊れるようになったものだ」


「親父臭いな、神龍は」


「ふふ、まぁそうかもしれん。何せこちらは彼女らが生まれる遥か前から生きている。あの家との関係はそう短くない」



神龍は船の先に立つ瑠璃を見る。

見た目は若いが、やはりこの龍は相当歳が行っているのだろう。

目が完全に親が子を見守る目になっている。



「瑠璃よ、何か一曲歌え。私は暇だ」


「ええええ!?今から歌うの!?ここで!?」


「アイドルだろう。場所を選ばずともその歌声さえあれば十分だ」


「うっはー!アイドルの歌が聴けるのか!」


「あぁ、そう言えば紘一の部屋にも瑠璃のCDがあったな」


「何故か瑠璃の歌は龍に受けがいい。あのダハーカもお前を一目置いていたからな」


「え?そうなの?なら、ちょっとだけ歌おうかな」


「瑠璃、あなたのギターよ」


「え!?舞香ちゃんが持っているの!?」



寝ていたはずの舞香がいつの間にか瑠璃の青いギターケースを持って、階段を上がって来ていた。



「玲奈が持ってきていたの。感謝しなさい」


「もう玲奈ちゃんったら……」



そう言いつつも瑠璃は久しぶりに触れる自分のギターに嬉しいようだった。



「それじゃ、歌うね!」


「いやっほー!テンション上がるわ!」


「紘一…まだ歌っていないぞ…」


「あら?ダハーカ達も聞きたいようね」



舞香は手首に鍵を生み出し、鍵が弾けると人間の姿のダハーカ、グリンデル、小さい犬になったケルベロスとヘルハウンドと似足歩行のウリボーのようなフンババが現れる。



「ダハーカ。お前も飲むか?」


「うむ。いただこう」


「なんだかこの歌聴くと妙に落ち着くんだよな」


「分かりますよ、グリンデル。瑠璃の歌声は不思議だ」



ギターを弾きながら歌う瑠璃。

それを肴にどっかりと座って酒を飲む神龍とダハーカ。

グランベスは目を閉じてあの移民族との夜を思い出し、リアとグリンデルは瑠璃の歌声に聴き惚れる。


座る舞香の隣で尻尾を振りながら撫でられているケルベロスとヘルハウンド、そして彼女の膝に座るフンババ。


瑠璃の歌声がよく響くように船の速度を落とした紘一はノリノリだった。



「今夜はいい夜だ」


「そうだな。本当にいい夜だ」



神龍とダハーカは微笑を浮かべて酒をぐっと飲み干すのであった。

私の実家の近くに神社があるのですが、そこの女の子とは幼稚園から中学まで一緒だったんですよね。

幼馴染ではなく、むしろ腐れ縁に近く、幼稚園も小学校も中学校も本当に1つしかないド田舎だったので、ほかの友人も皆一緒でした。


それで神社の子なんですが、一度だけ中学の頃1人の友人と一緒に遊びに行ったことがありました。

その時にその子は丁度踊りの稽古を受けていて、本物の巫女服と神楽鈴を持って踊っていたんですよね。とても似合っていた思い出がありまして、ここに出てくる美雪は無意識にその子をイメージしてしまったのかもしれません。


今はもう神社のお祭りなど行かない歳になってしまいましたから、その子とはもう会っていませんが、よくよく考えると今の大学生活より中学校とか小学校の頃の方が楽しかった思い出が多かったですね。

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