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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略(続)
154/162

激突

「さぁ!来たれよ!我が戦士達!」



バハムートが翼を大きく展開すると時空が歪みだす。

その歪んだ時空から顔を覗かせたのは数えきれないほどの龍だった。



「この世界を我らの新たな里にするのだ!行け!」


「グオオオオオオン!!!」


「ガアアアアアア!」



龍達は時空を超えて王の雄叫びにより呼び出され、新たな安住の地を得るべく全世界に一斉攻撃を仕掛けた。



「紅哉君!太平洋にとんでもない数の龍が!」



また勝手に衛星を使ったアイリが鬼気迫る顔で作戦会議に乗り込んできた。



「来たか!章仁!出撃だ!」


「うん!皆行くよ!」


「行くぞ!皆!」


『おう!!』



皆が準備している間、舞香は一人外で待機している野良の龍族に話しかけていた。



「ねぇあなた達って確か戦闘能力は普通の龍族と変わらないのよね?」


「グルルゥ…」


「このまま戦場に出れば間違いなく死んじゃうけど、それでいいの?」


「ガルウ!」


「馬鹿な子達ね…」



構わない、戦いの中で死ねるのなら本望だ。と言っているように聞こえる龍族たちの返事に舞香は手を伸ばした。



「私と契約しなさい。そうすれば名付きの龍にも負けない力を貸してあげる」


『舞香、まさかここにいる全部の龍族と!?』


「うふふ、そのまさかよ。お父さんとお母さんに感謝しないといけないわね。この無尽蔵に等しいエーテルの力が今発揮するのよ」



何だかセリフが悪役の誘いに等しいが、地龍種、龍人種、翼龍種は舞香との契約を望んだ。



「あなた達は死んだわけじゃないから、契約を後で破棄しても肉体は残るわ。だから、今だけあなた達に私の力を貸し与えましょう」


「グオオオオオ!!!」



舞香と契約した事によって力が増幅した龍族はやる気に満ちていた。



『皆舞香に感謝していますよ。これで負ける気はしない、と』


「そうだといいわね。私のエーテルを貸しているのだからタダで死んで貰っちゃ困るわ」


「舞香!奏は来なかったが、大型の転移術式の作成に入るぞ!」


「は~い!」



舞香は紅哉の声に応えると術式を作成するため龍族を後にした。




サラリーマン達がハンカチを片手に外回りをする東京。誰しもが夏の猛暑に参っている時、雲一つない青空に影がよぎった。



「ん?なんだ?」



一人の男が空を見上げた時、その顔は恐怖に歪む。



「ま、魔物だあああああああ!!!!!」


「きゃあああああああ!!」


「逃げろおおおおおおおお!!」


「オオオオオオン!!」



世界で2体しか存在しないと言われていた龍がまさか2体を軽く超える数で人間の世界を襲うと誰が思っただろうか。



「作戦をもう一度確認するぞ。まず名付きの龍族を見つけ次第カメラに収める事。そして無名の龍を倒しつつ市民の安全を確保することだ。名付きの龍と戦うのはその後になる」


「分かりました」


「了解」


「分かったよ、おと~さん」


「オオオン」



紅哉達はビルの屋上に立って海の方からどんどん溢れてくる龍族を見ていた。

紅哉のグループ、癒理、紘一、朱音、ワイバーンの4人と1体は攻撃部隊だ。

攻撃部隊はアヴェンジャーズを混ぜた6グループ。

1部隊が紅哉達。2部隊が章仁、葉隠、江ノ島、沖田。3部隊がセレナ、佐鳥。4部隊がカケル、理沙、彰。5部隊が舞香、ガルグイユ、ニーズヘッグと愉快な仲間たち。6部隊が俊介、凪咲、直人の6つに分けられた。


市民の安全を優先する防衛隊は3部隊。

1部隊が豊姫、瑠璃、美波、白龍帝。2部隊がお菊、綾香、龍一、直海、サクソン。3部隊がクロフィード、麗華、クエレブレ、シャナ。

この他にもアヴェンジャーズの戦闘員や炎道家の人達も避難誘導に協力しているため、攻撃部隊よりも圧倒的に人が多い。


別荘にはアイリと遊佐と知佳が残り、その近くの丘には万一に備えてグランベスが巨大な壁を設置している。



「さぁ!空からやってくる龍は丸焦げになっちゃいなさい!」


「紅哉さんと直人さんに良い所を見せられるといいね」


「なっ!?お父さんはともかくなんで直人さんが出て来るの!?」


「あれ?朱音ちゃんから聞いたけど、小学校の作文で私の夢は直人さんのお嫁さ―――」


「わーわー!!!!うるさ~い!!カケル君から丸焦げにしてやろうか!?」


「ご、ごめんごめん」


「もう!あったま来た!行くよ!カマエル!!」



理沙のパートナーは劫火の天使カマエルだ。

何故火神崎、炎道と紅哉の家に火に関係する文字があるのか。それは未来の世界でようやく理解する事が出来た。

遥か昔、最上級天使カマエルは人間の世界を監視するため地上へ降りて来た事があったそうで、人間の世界に降り立ったカマエルは降りてきた衝撃で翼を傷めてしまい、天に帰れずにいたそうだ。

そこで出会った人間が炎道家の人間。つまり、紅哉のご先祖様に当たる人間だった。

カマエルは人間の看病に感動し、お礼として自分の翼を炎道家に幸運の印としてあげたという。

そして劫火の天使カマエルが通った道の家。という事で炎の道。カマエルに感謝するため炎道家が出来たというわけだ。


偶然炎道家の書庫で綺麗な箱に入った赤い翼を見つけた未来の紅哉は、既にゲオルギウスを持つ姉の朱音ではなく、妹の理沙に与えることにした。

それを触媒に呼び出したのがカマエルというわけだ。



「ユニゾン!!」



6枚の真紅に輝く翼が背中から生え、頭に輪っかが出来る。



「今の私は機嫌が悪いのよ!」


「グオオオオオン!!」



敵対意思を見せた理沙たちに龍達は群がって行く。

だが――――理沙はぐっと両手を前に突きだすと。



「消し飛べええええ!!コロナバースト!!」



空を真っ赤に染める劫火が地平線まで広がった。

まるで夕日が訪れたような天の劫火に地上を歩いていた人や、避難活動をしていた豊姫たち、そして攻撃を仕掛けようとした紅哉達も思わず足を止めてしまった。


劫火を喰らった龍族は一瞬で絶命し、元あるべき場所へと帰って行くのか光の粒子に包まれてく。



「あーはっはっはっは!!」



額に手を当てて笑う理沙は完全に舞香の血を引いている事が分かった。



「ね、彼女を怒らせると怖いんだ」


「誰が怒らせたのよ!」


「いでッ!」


「凄いですね。今の攻撃で龍族の進軍を止める事が出来ましたよ」


「私のしたことは警戒させることに意味があるの。このまま突っ込んでも無駄死にするだけ、ってね」



遠くから見ていた章仁は自分の額に汗が流れたのを感じた。



「うわ……ホント紅哉君達と手を組んで正解だったね」


「ホントじゃのう。あんなのどうやって避けろっていうのじゃ」


「無理無理!地平線まで飛んで行く炎とかどうやって避けろと!」


「いや~紅哉君の娘さんと喧嘩しない方が身のためだね。朱音さんも10体の龍従えているわけだし、そのうちの1体はバハムートだよ。怖い怖い」


「さて、章仁どうする。今のお嬢ちゃんのおかげで龍族共の足が止まったようじゃが」


「このまま押し切るよ。数では圧倒的にこちらが不利なんだ。相手の士気が下がっているのなら好都合!」



章仁たちは動揺している地龍種に攻撃を始めた。



「さっすが理沙だね!大魔術師二人の血は伊達じゃない」


「これが魔術師とパートナーの力か…」


「舞香と豊姫の血はちゃんと受け継がれているようだな。凄まじい力だ」


「師匠、龍族が怯えています。攻めるのなら今が好機かと」


「そうだな。朱音さんはニルの翼で飛べるとして、紘一も行けるか?」


「はい!グランベスは龍人種なのでユニゾンすれば飛べます!」


「了解。癒理は舞香に貸して貰ったワイバーンに乗りながらになるが、大丈夫か?」


「問題ありません。よろしく頼みますよ」



癒理はワイバーンの鼻先を撫でるとワイバーンは気持ちよさそうに癒理に頭を寄せる。



『へへ!ドラゴンライダーってとこか!面白いぜ!オレが生きていた時代よりもな!』


「リン!行きますよ!」


『おう!ワイバーンも頼むぜ!』


「オオオオン!!!」



紅哉はダブルユニゾンすると黒い翼を広げる。

紘一はユニゾンすると宝石の原石で彩られた翼を広げる。

朱音はオーブを叩き斬ると白いニルを召喚して手に炎で出来た白い剣を握る。

癒理はワイバーンに跨ると首輪を掴んで振り落されないようにしっかりと身体を固定する。



「よし!俺達の力を見せるぞ!」



数は不利だが、それでも負ける気はしなかった。

龍から感じるはずの龍圧もない。こちらも相手を弱体化させることは出来ないが、それならば同じ条件。後は今まで鍛え上げてきた力で押し切るのみだ。


紅哉達は飛び立った。


未来を守るために。



「ふふふ、流石私の血を引いているだけあるわね。良い牽制になったわ」



舞香は東京湾の港に一人で立っていた。

彼女にグループなどいない。何故ならばこんなにも愉快な仲間がついているのだから。


それはさながら魔物使いのようだった。

ケルベロス、ヘルハウンド、フンババ、リヴァイアサン、アジダハーカ、グリンデル、ガルグイユ、ニーズヘッグと他舞香によって強化された龍族。


彼女が見つめる先にはまるで津波のように盛り上がる海と青空を覆い尽くす龍族の大群。



「ねぇリア、どうして水龍種ってこんなにも大きいのかしら」


「海が広いですからね」


「答えになってないわよ」


「すみません…」


「まぁいいわ。皆!準備しなさい!」


舞香の声に反応したリアたちは一斉に攻撃の態勢をとる。


「さぁ!私の眷属たち!人類を支配しようとしている愚か者達の頭を冷やしてあげなさい!」



リア達は一斉に攻撃を放った。

リヴァイアサンの轟津波、タイダルウェーブ。

アジダハーカの呪いの波、ネオ・カオスウェーブ。

グリンデルの爆発のブレス、クレイジーブレス。

ケルベロスの風の刃、トルネードファング。

ヘルハウンドの灼熱のブレス、マグナファング。

フンババの森の怒り、アースインパクト。

ガルグイユの水の槍、ウォーグスマッシャー。

ニーズヘッグの毒のブレス、ポイズンブレス。

他の龍達も普通の龍とは思えない強力なブレスをリア達に合わせて放つ。



真空の波と呪いの波が水龍種を呑み込み、竜巻と灼熱のブレスと爆発が合わさり空中の龍人種と翼龍種が消えて行く。

何とか舞香達の後ろを抜けて行こうとする龍はフンババが呼び起こした大樹の枝に叩き落とされて消える。

リア達の攻撃を掻い潜れても先に待っているのは紅哉達だ。しかし、舞香は足止めどころか進行すら許さなかった。



「おらおらぁ!!」


「皆さんが逃げ切るまで何とか守り抜くですよー!」


「ふぅ!俺達は忙しいっすね!」



舞香達の猛攻を地中に潜って逃れてくる地龍種の相手をする俊介たちは次々と現れる龍族の対応に見舞われていた。



「エヴォルト手に入れたおかげでユニゾンの方も力が上がっているんすけど、なんせ数が多すぎるっす!」


「その名付きっていつ現れるんですか~!先に凪咲たちが参ってしまいそうです~!」


「わかんねえよ!とにかく次の目的である街の人達が逃げ切るまで戦うまでだ!」



そして場所は変わりビルの屋上。

佐鳥はスナイパーライフルを構えながら龍達を確実に仕留めていた。



「へっへ!オリハルコン製は違うなぁおい!構造さえわかっちまえばマネマネでも生成できるっつうの!」


「佐鳥、まだまだ来ますか?」


「あぁ!まだまだ来るぜ!ったく避難誘導はまだ終わらねえのかよ!」


「父上たちの連絡を待ちましょう。もしこのまま名付きが出てこないのであれば市民だけでも非難させて撤退とします」


「あいよ!」



ガゥン!と佐鳥は休まず撃ち続ける。

セレナは佐鳥に気付いて下から襲い掛かってくる地龍種の相手をしており、無線での会話をしていた。

こんなに魔物と戦ったのは本当に久しぶりだった。



「ふふ、学生の頃を思い出しますね」


「だな。お前とやんちゃしてた頃がつい昨日のようだ」


「そこまで時間が過ぎたわけではありませんがね」


「まぁな!」



セレナの耳に響く銃声が懐かしい。

神の遺産を回収するために世界を歩いていた時も佐鳥はセレナの隣で銃を撃ち続けていた。



『なんだか年を食ったみたいで嫌ですね』



そんな事を考えたセレナは自分の思考を鼻で笑うと襲い掛かって来た龍人種の拳を飛んで避ける。

そこからセレナは強力な踵落としを龍人種の頭に叩き落とす。

ベコン!と頭がまるで車のボンネットが凹んだようになった龍は力尽きて消えて行く。


休む暇などない。


龍人種が消えると同時に地中から地龍種が奇襲を仕掛けてくる。

セレナはそれを少し下がるだけ牙を躱し、拳を腰に添えるとスクリューを加えた正拳突きを繰り出す。

5メートルはあるであろう地龍種は吹き飛ぶ。そしてビルに直撃しずるずると尻を地面に着かせるなり消えて行く。



「やれやれ、本当に休む暇がありませんね」


「ああ、全くだ。余裕の相手だが、数が多い。こっちのスタミナが先に切れそうだ」


「気を付けてくださいね。敵はまだまだ来ます」


「あいよ」



拳のグローブを引っ張るとセレナと弾をリロードする佐鳥は次の襲撃に備えた。



「あの…」


「ん?あなたは確か知佳さんでしたよね」


「あ、はい…」



別荘に残っている知佳は章仁たちの会話がよく分からず、なんだか頭のよさそうな遊佐に聞いてみることにした。



「紘一お兄ちゃん達は何をしているんですか?」


「そうですね。知佳さんのお兄さんである紘一さんは紅哉さん達と協力して東京を守ろうとしています。東京には国会議事堂がありますし、お偉いさんがここで死んでしまっては日本は成り立たなくなってしまいますからね」


「それで紘一お兄ちゃん達は渋谷に…」


「そうです。この他にも市民を災害があった時のために用意された地下シェルターに誘導するなど避難誘導にも努めています。ですが、市民を誘導するのはあくまで戦いやすくするためです。凪咲さんなんて力を解放すれば辺りは熱気に包まれますからね。だから、豊姫さん達防衛班がいち早く市民を誘導して紅哉さん達が派手に暴れられる環境を作ろうとしているのです」



遊佐は懇切丁寧に知佳へ説明して行く。



「そう言えば紘一お兄ちゃんカメラ持っていったけど、何をするの?」


「それは名付きの龍。つまり、他の龍とは明らかに別格の龍を写真で姿を収めるようにするためです。名付きの龍が強いことなど分かっていますから、その写真で姿を収めたものを一度持ち帰って龍族を交えた会議で作戦を練るのです」


「なるほど。そのまま戦って相性が悪かったら大変だもんね…」


「そういう事です。名付きはそれなりに有名なはずですから、龍族の誰かしらその特徴、技など知っているはずです。その名付きにあった人を当てれば楽に倒せるはずですし、脅威もぐっと下がるはずです」


「凄い……皆ちゃんと考えているんだね」


「まぁ負けられない戦いですからね」


「遊佐さん達は何をするの?」


「私たちはこの装置を守る事です。この装置が破壊されれば紅哉さん達は危険に晒されるかもしれませんから」



遊佐と知佳は龍圧相殺装置であるアンテナを見上げた。

今も正常に作動しており、アイリに天然であるドジは踏んでいない。というか、そんな頻繁にあってたまるかという話だが。



「皆頑張って…」



知佳は祈った。

誰も欠けずに無事戻ってくることを。

遂に龍族との戦いに入りました。

これから色々な視点で書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。

基本紅哉の視点ですが、ちょこっとだけ視点が変わる人もいれば、まるまる1話全部使う人も出てくるかもしれません。

今のところは舞香に結構使いそうかな~と思っていますね。あと豊姫とか……。

とにかくメインヒロインとサブ主人公の紘一君視点はあります、と言っておきます。

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