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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略(続)
155/162

蹂躙の覇龍王と悟りの覇龍王

「さぁ!人間どもよ!蹂躙されるがいい!」


「覇龍王、ご報告いたします!」



太平洋で龍族を召喚し続けるバハムートは偵察に行かせた龍の言葉に耳を傾けた。



「ある島国で我らに反逆する龍が!」


「なに?一体誰だ?無名か?」


「いえ!ファーヴニル!リヴァイアサン!神龍!白龍帝!グリンデル!アジダハーカ!グランベス!ニーズヘッグ!ガルグイユ!サクソン!クエレブレ!他数十体の無名と思われます!」


「なんだと!?そこの島国の戦況はどうなっている!」


「侵入できません!余りにも攻撃が激しく、他の龍達の士気が落ち始めています!」


「たかが名付き数体だろう!何をやっているか!」


「申し訳ございません!その他にも天使と思われる者の攻撃で翼龍種が一瞬で―――」


「ぬうう!もうよい!我自らその島国を落としに行く!」


「はッ!まだ名付きの龍が召喚されていませんが?」


「あやつらの召喚には時間がかかる。それに我もまだこの世に降り立ってから身体が馴染んでおらぬ。腕鳴らしにそやつらを叩き潰してくれる」



バハムートは偵察の龍人種を置き去りにして日本へ向けて飛んで行く。



「よいっしょっとごめんねー!」



朱音は炎剣を飛んでいる翼龍種目掛けて槍投げのように投げて撃ち落とす。



「ん?ニルどうしたの?」


「来る。覇龍王が来るぞ」


「えええ!?早くない!?名付きもまだ来てないんだよ!?」


「どうやら他の国よりも戦況が悪いらしいな、この日本は」


「そりゃあ、邪龍の王様もいるし、龍神種が2体だよ?鬼に金棒だよ」


「どうしたんだ?朱音さん」


「バハムートが今こっちに飛んできているって」


「おいおいおい!!!そんな『今出前頼んだから』みたいな軽いノリで言うなよ!!!」


「あ、気付いてくれた?さっすがお父さん!」


「だからこんな時に抱き付くなって!!」


「むぅ……このままだと舞香ちゃんとぶつかるみたいだよ」


「援護に行こう。癒理!しばらくこの一帯はお前とワイバーンに任せる!紘一!俺達と来い!」


「分かりました!お気をつけて!」


「はい!今行きます!」



高速で空を飛び回る癒理に大分片付いたこの一帯を任せ、唯一バハムートの攻撃を素で耐えること出来る紘一を連れて行く。



「マスター、もうすぐ来るぞ。オレ達も急ごう」


「あぁ、舞香一人じゃ心配だ」



白いニルは朱音を乗せると先に飛び立った。

紅哉と紘一もそれに続くと炎が飛び交う空へ飛び立つ。



「ダハーカ、これは…」


「早いな。余りにも早すぎる」


「予想外ね。まさか名付きよりも早く王自ら動くなんて」


「へッ!骨のない奴ばっかで退屈してたんだ。王様自ら来るなら願ってもいない相手だ」



最後の1体の首を引きちぎったグリンデルは遥か遠くから海を裂きながら飛んでくる龍を見た。



「舞香、紅哉達には?」


「もうすぐ来るって言ってたわ。さてと、無名の龍達!あなた達はお兄様達が抜けた場所を援護に行きなさい!いくら強化したからと言ってバハムートには勝てないわ!」



龍達はバハムートと戦う気でいたが、今の主は舞香なので渋々従ってこの場を離れて行く。

龍達が離れて数十秒後、舞香達の前に龍族の王が姿を現した。



「お前達か、我に反逆する者は」


「バハムートよ。何故再び龍の里を作ろうと思った。我らは既に新しい安住の地を見つけている。貴様の支配下に置かれた国など興味がないのだ」


「アジダハーカよ。国を作るのにいちいち市民の声に傾けると思うか?」


「ふっ…なるほど、最初から交渉の余地はないか」


「消えるがいい。我が懐かしき同胞よ」


「スーパーノヴァだ!おい!オレ達の全力でも跳ね返せるか怪しいぞ!!」


「そんな事言ってもやらなきゃ私たちが消し炭なのよ!」



エネルギーを溜め始めたバハムートを見てグリンデルが焦る。



「さらばだ!」


「ならこっちもスーパーノヴァだ!」


「あったしもー!」



バハムートがブレスを吐き出した瞬間舞香の後方からも強力な光のブレスが放たれた。



「なに!?」



それはエヴォルトしたニルに乗った紅哉とバハムートを召喚した朱音だった。



「我が何故!?」


「愚かだな、過去の私よ」


「間に合ってよかった。大丈夫か?舞香」


「ええ、間一髪よ」


「リア達も大丈夫?あたし達遅かったらやばかったね」


「助かりました。この恩、忘れません」



紅哉はニルから降りると舞香に駆け寄った。

ケロりとしているが、額から汗を流しているのを見るなり結構危なかったらしい。


そしてユニゾンを解除したニルとバハムートとグランベスが紅哉達を庇うように前に出る。



「幻影か!我の姿を模って心を揺さぶる気か!」


「ふん、別に貴様がそう思いたければそう思うがいい。だが、一つだけ言っておくぞ。貴様にこの世界は渡さん」


「そうだ。もうお前の時代は終わったんだ。さっさと帰れ」


「何なら攻撃してみるか?私の盾でお前の攻撃を全て防いでみせよう」



バハムートが睨めつけ、ニルが帰れと腕をしっしと振る。グランベスは背中に着けた盾を抜いて構えて見せる。



「ぬううう!」


「あれ?そう言えばお前は黒いんだな。あっちは紺色なのに」


「それは未来の私と過去の私の世界が若干異なるからであろう。ニルが白いようにな」


「馬鹿にしよってええ!」



怒りに震える紺色のバハムートは黒いバハムートに向けて拳を突きだした。

だが、黒いバハムートはそれを軽く受け止めて見せてあろうことかお返しとばかりにカウンターを顔に入れた。



「ごっふぅ…!」


「弱いな。昔の私はこんな力で龍族をまとめていたのか」


「な、何故だ!我は覇龍王だぞ!龍族の頂点に立つ王なのだ!」



叫ぶ紺のバハムートを黒のバハムートは冷ややかな目でその言葉を聞く。



「慢心だな。私は未来で朱音と共に修練を積んだ。だが貴様はなんだ。ただ王座にふんぞり返っているだけで何もしていないではないか」



背中から飛び出した尾を黒のバハムートはこともなげに掴む。

そしてそれを引き寄せて離すと腰を捻り渾身のアッパーを腹部に叩き込む。



「つ、強い…!」


「バハムートの身体は強靭な鱗で出来ているはずですが…!」


「それは私と同じ原理だろう。私のオリハルコンがオリハルコン同士でしか砕けぬように、バハムート同士ならば防御も何もないって事だ」


「栞奈さん…!紅哉君、セレナさんから受け継いだ体術はちゃんと私と龍の皆にも受け継がれたよ…」



朱音は未来にいる自分の師匠を思い出し涙が流れる。



「ぐぼぉ!?あ、がぁ!」



血を吐いて港に倒れる紺のバハムートは憎らしげに自分と似た姿の龍を見る。



「くッ!ふぅ!ふぅ!我がまだこの世に身体が馴染んでいないからと言って好き放題やってくれたな!」


「しぶといな。黒光り並みじゃないか?」


「お、おい!ニル!」


「くっくっく、言ってみたくなったんだ」


「いいだろう。今のところは引いてやる。だが、我の体調が整い次第まずこの島国を攻め落としてやる!」


「むッ!待て!」



黒のバハムートは逃げようとする紺のバハムートを捕まえようとしたが、その手をくぐり抜けて紺のバハムートは逃げて行ってしまった。



「逃げられたか」


「お兄様、住民の避難が終了したみたいよ。それと街にいた龍族が撤退して行ったみたい」


「バハムートがやられたから戦力を整えるために一度戻ったんだろう」



携帯を持ちながら歩いてきた舞香は豊姫との通話を切るとバハムートが飛んで行った海を見る。



「戦いはこれからね。正直今の初戦が最初で最後のチャンスだと思ったのだけれど」


「うむ…出来れば私も今ここで決着をつけたかったところだ。過去の私は完全に慢心していた。そこを突いて短期決戦に持ち込んだのだが、逃げられてしまった」


「逃げられてしまったんだ。今更どうこう言ったところで仕方ない。皆、一度戻る事にしよう。これからの対策を考えるんだ」



紅哉は『帰還する』という短い文をメールにして皆に一斉送信する。



「お兄様、別荘に繋がる転移術式を作ったわ。先に私の新しい子達を送るけれど、いいかしら」


「あぁ、俺達は後で構わない。それに癒理もこっちに来るようだし、グループ同士合流して帰還しなきゃな」


「そうね。それが決まりだものね」




紅哉達は舞香の所に飛んできた、または歩いてきた龍達が術式に入って行くのを見届けると最後に自分たちも術式に入って別荘へと帰って行った。

余り自分の書いた話にどうこう言いたくないのですけど、過去のバハムートの喋り方ってモロ悪役ですよね。

『この私が!この私がー!』とか『なんだこの力は!?なぜ貴様らにこんな力が残っている!?』とかセリフがある悪役のように、もう主人公たちが新たな力に目覚めるためのおぜん立てみたいな、そんな感じがしてならないっていうか……。

まぁもう書いてしまった以上仕方ないですよね。うん、バハムートはこの調子でいきたいと思いますよ。未来のバハムートは紳士的な喋り方なわけですし、被ってしまうのもどうかと思ったんですよね。

悪役を余り出さない私の作品なのですから、たまにめっちゃ悪役だな~っていうキャラが一人くらいいてもいいですよね。面白いと思いますし。

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