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龍の血を引く者  作者: また太び
3章 浅見パークランド
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決意の夜

結局ここにあると言われている神の遺産は章仁たちアヴェンジャーズに奪われてしまった。

日にちも経ち、やがて落ち着きを取り戻した遺跡を朱音、龍一、セレナ、そして遺跡を是非探索したいと言った四条アイリの4人でこの遺跡を調べに調べつくした。

その結果ここの遺跡には守護獣と呼ばれる強力な魔物がいる事が分かり、この遺跡にはサマエルという堕天使がいたそうだ。



「今後の方針について話したいと思う」



紅哉は火神崎家にいる人たちを集めて緊急会議を行った。もちろんそこには仕事を終えて真っ先に来た瑠璃、元から参加するつもりだった豊姫、癒理、美波の姿もあった。



「俺達火神崎家はこれから炎道家と連携を取ってアヴェンジャーズよりも早くこの世にあると言われる神の遺産を見つけ、保管する事にした」


「紅哉。それですが、次に狙う遺産の在り処は分かっているのですか?」



「いや、分かってはいないが、いまアイリと雅文が全力で調べている。麗華さんと龍一さんの見立てではアヴェンジャーズはこれから浅見パークランドで手に入れた神の遺産を解析に入ると思われると言っている」


「それからは僕が。今さっき紅哉さんが言った通り残念ながら神の遺産はアヴェンジャーズの手に渡ってしまいました。しかし、今すぐに次の遺産を求めて行動に出る事はないと思われます」


「どうしてそう思うの?あたしとしては別働隊を送って次の遺産の在り処を探しに行くと思うんだけど」



龍一の言葉に朱音は行儀悪く足をテーブルに上げたまま口を挟む。



「遺跡には守護獣がいます。これは朱音さんもご存知ですよね?」


「うん。多分相当強いと思うよ。あたしでも少しは苦戦するかもしれないけど」


「つまり浅見パークランドの遺跡にも守護獣がいたという事はアヴェンジャーズはこの守護獣と戦闘したという事です。相手を一方的に倒したという事はまずあり得ないので少なからずアヴェンジャーズは力を消耗していると思います」


「なるほど。それで戦力が整うまでは大人しくしていると思うのですね」



癒理が先に答えに気付いて言葉にする。それに龍一は頷き、視線を紅哉に戻した。



「では、話を戻すぞ。つまり、アヴェンジャーズが休んでいる間にアイリと雅文が遺跡を見つけ出してそこを――――」


「アタックするんだね!」


「そうだ。うまく行けば奴らより先に神の遺産を手に入れる事が出来る。今後の方針はこれで行く。みんな、異論はないか?」



皆を見渡すと誰も異論などあるはずもなく、紅哉は元気よく―――


「よし!解散!」


と命じた。


メイドの皆はこれから忙しくなりそう、と言いつつもその表情はどこかやる気に満ちていた。



「師匠。やっと光が見えてきましたね」



ゾロゾロとリビングを出て行く皆を見ていると隣に癒理が来てそう言った。



「あぁ、やっとだ。これで長年の事に決着がつきそうだ」


「師匠。私はあなたのためならどんな事であろうと必ずご期待に応える所存です」


「相変わらず堅苦しいなァ。応えてくれるのは嬉しいが、死んだりなんかしたら俺はお前を怨むぞ」


「死ぬつもりなどありません。私は師匠の弟子です。もし死ぬことがあるのならば末代までの恥じです」


「そこまで行くのか……」


「では、私はこれで」



大袈裟な事をさらりと口にして去って行った後に美波が紅哉の傍に来る。



「紅哉先輩。私、なんだか凄い事に巻き込まれていますよね」


「怖かったら外れてもいいんだぞ?お前は実戦の経験すらないんだ。癒理が特別なだけで、お前は普通の高校生なんだぞ」


「いえ!むしろわくわくしているのです」


「わくわく?」


「あぁ!これは失礼しました!わくわくというのは皆と協力して一つの事を成し遂げようとすることにわくわくしているのです。それに外れることなど出来るわけないじゃないですか」


「どうしてだ?」



紅哉がそう問うと美波は入り口付近まで行ってこちらを振り向く。



「だって、友達が頑張ろうとしてるんです。あんなやる気に満ちている癒理さんは初めて見ました。なら、私もやらなくちゃって自然と思ったんです」



美波はそう残して先に帰って行った癒理を追って行った。



「紅哉くん」


「豊姫か。なんだ、もう遅い時間だぞ?早く帰らなくていいのか」


「うん。もう少しだけ、ね」



紅哉の傍に来て豊姫は止まる。こうやって面と向かい合って話すのは初めてだろうか。



「紅哉くんは舞香さんの感情を取り戻すために戦うんだよね」


「あぁ。それが俺の願いであり戦う理由だ」


「私も頑張るね。私があなたの盾になるから、あなたは真っ直ぐ進んで行ってね。そ、それだけ!じゃ、じゃあね!」


「あ、おい!あいつ足速かったのか」


「ふっふっふ。紅くんは人気だね」



豊姫は脱兎の如く走り去って行ったのを見ていた瑠璃が、意地の悪い笑みを浮かべながら歩いてくる。



「紅くんから言わせれば長かった。私から言わせれば短かった」


「あぁ。俺はやっと光が見えてきたと思っている」



瑠璃の言葉を一瞬で理解した紅哉は即答する。

つまり瑠璃が言いたい事は――――

〟紅くんは舞香ちゃんの感情が戻るのを何年待ったのだろう。それはきっと100年、1000年のように長かった。逆に私からすればあっという間だった。紅くんと出会って、舞香ちゃんと出会ったのがついこの前のように思える〝

いまの短い言葉の中にはこれだけの思いが隠されていたのだ。それを紅哉は理解して言葉にする。



「お兄様……」


「舞香、もう寝るんじゃないのか?」


「うん……だから一言だけ…」



パジャマ姿で眠そうにしている舞香は紅哉と瑠璃を見て精一杯の言葉を口にした。



「ありがとう。お兄様、瑠璃」



いつもの感情のない声で言うのではなく、出来るだけ言葉に波を乗せようとして失敗した舞香を見て紅哉は確信する。

やっぱりこの道は間違ってはいなかった、と。

同じく瑠璃も己のパートナーを晒ししてでもこの子の感情は取り戻そうと改めて誓った。



「舞香。練習したな?」


「あれ……バレた。でも、失敗した…」


「やっぱり練習していたんだ。でも、舞香ちゃんの気持ちは伝わったからね!」



舞香は視線を紅哉達から外して床の方へ向ける。



「これはお兄様の仕事だもんね……私が口出し出来る事じゃない………本当は私もお兄様や瑠璃について行きたい…でも、これはお兄様が過去にケリをつけるために行うもの………だから私は家でお兄様たちの帰りを待つことにするの…」


「あぁ。だからお前は安心して家で待っていてくれ。まさか舞香、お前兄ちゃんと瑠璃の力を信じていないわけじゃないだろうな?」



その言葉に舞香はとんでもないとばかりにふるふると首を左右に振る。



「私と紅くんは最強のコンビなんだからね。舞香ちゃんが心配する事なんて何もないんだから!」


「うん……だから、今日もぐっすり寝れるの……」



それだけ言って舞香は大好きなクマのぬいぐるみを大事そうに抱えてリビングを出て言った。



「負けられないな」


「うん。あんな舞香ちゃん初めて見たよ」


「俺もだ。舞香のために皆は全力を尽くしてくれる。この思いを無駄にしないためにも頑張ろう、最後まで」



紅哉と瑠璃の目には決意の炎が宿っていた。

よくよく考えてみるとこの二人、結構なシスコンかもしれない。




いま火神崎紅哉を中心とした物語が動き出した瞬間でもあった。


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