戦士たちの休息
「癒理さん!お祭り行きましょうよ!」
「私ですか?もうすぐ龍族が攻めてくるというのに遊んでいていいのですか?」
「そ、そうですけど、紅哉先輩たちはお祭り行ってしまいましたよ!」
「師匠たちが?」
「それに基本私達夜はオフじゃないですか。睡眠時間が少し削れてしまいますが、今日くらい学生らしく楽しみましょうよ!」
癒理は朱音が淹れてくれた紅茶を飲みながら考えた。
確かにこの家にはもう紅哉、豊姫、瑠璃のエーテルの反応が消えている。
自分が尊敬する師匠が遊ぶというのであれば今日くらい遊んでもいいのでは、と思えてくる。
「………いいですよ。お祭り、行きましょうか」
「わーい!癒理さん水着持ってきた?」
「ええ、一応師匠が持ってきておけって言っていたので」
「よし!それじゃ行こう!」
「その前に」
「え?」
癒理は飲んだカップをテーブルに置くと立ち上がった。
そして彼女が向かった先は直人の部屋だった。
「え、え!?な、直人君も!?」
「まぁ彼も暇でしょうし、誘っても問題はないはずです」
「た、確かに問題はないけど…」
癒理がノックして直人の部屋に入ると、彼は寝ていた。
「寝ていますね」
「ほ、ほら、熟睡しているようだし、二人で行こうよ」
癒理は無言でスカートに隠したホルターから折り畳み式の槍を取り出すと寝ている直人の頭を叩いた。
「癒理さん!?」
「いでッ!?な、何事っすか!?」
「直人君、お祭り行きますよ」
「え?あ、え!?」
叩き起こされた直人は何の事か分からず目をぱちくりさせているが、癒理はタンスに目を付けると勝手に開けだした。
「ま!待て!ストオオオオオップ!!!俺の大事な物とか見られちゃうからダメだってば!!」
「別にエロ本があっても私は構いませんよ。そういうのは見慣れているので」
「み、見慣れている!?じゃ、じゃなくてだ!見られて困るのはこっちだって言っているの!わー!俺の言葉無視するんじゃないっす!!お祭り行くから外でちょっと待っていてくれよ!」
恐らく水着を探しているのであろう癒理を直人は外に押しやると扉を閉めて鍵をかけた。
「はぁ……すっかり目は覚めてしまったっす……確かここらへんに水着があったような…」
「わわわ……」
「ん…?って美波ちゃん!?や、こ、これは!俊介先輩の趣味で俺の趣味では!!俺はもっとスレンダーな子が――――」
「そういう事聞いているんじゃないの!直人君の馬鹿ああああ!」
普通にタンスからホイホイ出てくる本に美波は顔を真っ赤にしながら振り向いた直人に全力のビンタをかました。
「直人君…」
「はい……猛省しております…」
外で正座をして反省している直人の隣では小さな炎が何かを焼いていた。
呆れているのは美波であり、その後ろで癒理は何も言わず海を見ている。
「ここは皆過ごしているんだよ…?それに女の子の割合が多いわけだし…その、そういう本はちょっと…」
「分かっております……ですが、一つ言ってもよろしいでしょうか」
「何ですか」
「日頃ね……紅哉先輩と瑠璃先輩と豊姫先輩のイチャイチャを見ているとそのなんと言うか……ストレス発散的な?事がしたくなりまして…ついこの前コンビニで購入してしまい…」
「まぁそれは私も分かるよ。ス、ストレス発散でそういう本は買わないけど」
「美波、いい加減エロ本程度で言葉が詰まるのはどうかと」
「し、仕方ないじゃない!わ、私だって見たの初めてなんだし…」
「中見たのですか……」
「マジで?!どうだった!?すげぇ可愛い子ばっかだったっすよね!特に29ページらへんの子は美波ちゃんに似ていて―――」
「あ、そう言えば私に似ていたような…って直人君!!」
「はい…すみません……」
「バッチリ見ていたのですね。それより直人君を追及するのもいいですが、お祭りには行かないのですか?」
「あ!そうだった!もう直人君のせいでこんな時間に」
「俺じゃないよな!?事の発端は完全に癒理ちゃんっすよね!?」
時計を確認する美波は可愛らしく直人を睨みつけ、直人はそれを躱すように癒理に食いかかる。
「まぁそれはもういいでしょう。直人君、これを」
「おお!俺の水着持ってきてくれたんだな!って結局俺のタンス漁ったんすか!!」
「ええ、まぁごっそりと」
「もういいから早く行こうよー!」
顔を真っ赤にして怒る美波にこれ以上言わせるのも可哀想だと思った二人は一度休戦し、海を目指して歩き始めた。
「遊佐さんは行かないの?」
「ええ、私はアイリさんとこの後も予定がありますから」
「そっか。遊佐さんと最後に海行ったのいつだっけ」
直人たちのやり取りをリビングから見ていた俊介は本を読む遊佐に話しかけた。
「確か8歳の頃だったと思います。あの時は俊介さんのご家族にお世話になりました」
「そんな前だったか。あ~あ、また遊佐さんの水着見たかったぜ」
「私の見たところで特はないでしょう。それよりも凪咲さんを誘ってみてはどうですか?」
「あいつなら午前の修行が効いたのか今も寝ているよ。あ~あ、俺は留守番かよ」
「残念でしたね。空いていれば行ったかもしれませんが」
「なら、行っておいでよ」
「え?アイリさん?」
本から顔を上げると、そこにはアイリがいた。
目が合うとにっこりと笑ってキッチンの冷蔵庫へ向かう。
「ですが……」
「大丈夫大丈夫!遊佐ちゃんのパートナー置いて行って貰えればそれで万事解決だから!」
なおも食い下がろうとする遊佐を一蹴してアイリは冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り出す。
「楽しんでおいで。もうこの日が過ぎたら遊ぶ事なんて出来なくなると思うから、普通の高校生として思い出を作って来るといいよ」
「アイリさんがそこまで言うのでしたら……」
「うんうん!たまには年上の言う事を聞いても罰は当たらないよ!それじゃ、アイリは自分の部屋に戻るねー!」
アイリは俊介と遊佐に手を振りながら部屋を出て行った。
残された二人はどうも気恥ずかしくなり、顔を合わせることが出来ない。
「と、とりあえず水着取ってくる。10分後外で」
「わ、分かりました」
先に耐えられなくなった俊介がそう言って部屋を出て行く。
「私も取ってこよう」
俊介が出て行ってから30秒後、遊佐はいつもの表情に戻ると本を閉じて自室に戻って行った。
「オーディン、今日はお祭り行こうか」
「ふむ、我もお祭りというものに興味があったところだ」
「せっかく水着も選んだことだしね。それと今は僕の前だから一人称は『我』でいいけど、人前だと結構それ目立つから『私』に変えてね」
「努力しよう。彰、本当にこれを着るのか?布が少ないではないか」
「それが水着だからね。オーディンならきっと似合うよ」
「彰がそう言うのであれば着てみよう」
「それじゃ、僕達も行こうか。兄さんたちは既に出発したようだ」
「龍人達は早いな」
彰とオーディンは自室から出ると水着を持って紅哉達同様に海を目指した。
この事に気付かない凪咲は熟睡中だった。
恐らく癒理みたいな無神経が現れるまできっと彼女は眠り続けるだろう。
新しいキャラクターとか考えていると悩む事と言えばキャラの性格でしょうか。
被ってもいけないし、目立たないキャラになってしまうと動かし方が地味になってしまう。
そう思うと龍者の中で当てはまりそうと言えば…………………やばい、一人該当者がいるのですが、どうしよう……もし、今後あれ、こいつかなり出てくるなって思ったらそのキャラかもしれません。
私が思っている以上に目立たないキャラがいたりするかもしれませんが………あ、一応紅哉の周りにいるキャラです。言ってしまえば翡翠組の中ですね。その中で目立たない………子は…。




