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龍の血を引く者  作者: また太び
3章 浅見パークランド
13/162

舞香の秘密と平穏とは・・・

ニルは大きな翼を器用に使い浅見パークランド、パートナーが降りる専用の場所へ着地した。



「よっと」



俺は瑠璃を抱えてニルから飛び降りると、ニルは人間の姿になった。



「オレも行く」


「はぁ!?」


「ここには美味いアイスがあると言うじゃないか。なら、オレも行くしかない」


「まぁまぁ入場料は私が払うから大丈夫だよ」


「いや…財布を気にしているんじゃなくてだな……お前、マジで行くのか?」


「さっきから行くと言っているだろう」





「紅くん早くー!」


「おい、マスター。あっちに美味そうなアイスがあるぞ」


「だああ!あっちこっち引っ張るな!」



瑠璃とニルに左右から引っ張られてどこへ行ったらいいのか分からなくなってしまった。

いま俺達は浅見パークランドの中にいた。

作戦を決行するのは人が少なくなった夜になり、今は普通に遊ぼうと瑠璃に言われて今に至る。

そう、紅哉は絶賛引っ張り回されている所だ。




舞香には秘密がある。それは彼女が最も信頼している兄にも隠している事だ。

場所は荒れ果てた街。ビルや数多く並ぶ商店街には誰も住んでいない。

ここはゴーストタウン。昔は名前があったそうだが、誰も住んでいない事から自然とその名がついた。

何故誰もいないかと言うと簡単だ。それは魔物が支配しているからだ。



「リア……」


『はい』



街を突き進んで突き当りに着くと、舞香はリアの足だけを召喚して馬鹿でかい岩石に触れる。

リアが触るとその岩はまるで意思があるように動き始めて、行く手を塞いでいた道を開いた。

そこは洞穴だった。漏れ出すエーテルはパワースポットの如く強烈で魔物が巣窟になっていないのがおかしいくらいだ。

人が昔住んでいたのか、その洞穴は階段があり、舞香は静かに階段を降りて行く。



「リア……準備は出来ている…?」


「問題ありません。下に着き次第、いつでも開門できます」


「そう……ならいいね……」



下まで降りると舞香は巨大な扉の前に立ち止まると、今度は舞香自身がそこに手を触れる。

ゴゴゴゴゴゴ―――――扉は重い音が鳴らしながら開き、舞香はそこを通って行く。

入るとそこは闘技場を思わせる場所だった。

石作りで出来た観客席はもちろん誰もいない。誰が何のためにここを作ったのか舞香は別段気にも留めない。

そして舞香は所定の位置に着くと闘技場は機能し始めた。

明かりが灯り、周りの石に囲まれた風景は吹き飛んで観客席からは人の声が響き始める。



「グルルルルル……」



「リア……ユニゾン…」



どこからともなく現れた巨大な狼は舞香を睨む。

ここは電波も届かない絶壁の間。壊す事は不可能だし、止めるときは舞香の一声で終わる。

この謎の場所は舞香の本当の修練の場だ。



「ここならお兄様にも怒られない……おいで…ヴリトラ、ケルベロス、ヘルハウンド、グリンデル、アジダハーカ…」



「クキャアアアア!」


「ガルウウウウウ!」



「ワオオオオオオン!」


「ヒャハーーーー!」


「ヌオオオオオオオ…!」



現れるは最強にして最悪の魔物達。



「舞香、またここに来たの?」


「主よ、此度の獣は手強いぞ」


「舞香殿、我の力を必要とするか」


「うははははは!おいおい主よ!また良い場所に来たなおい!」


「舞香よ。我の手助けなど必要なかろうに」



ここだと舞香の力は限界を超えて使う事が出来る。そのため普段は眠っていて貰っている魔物の手を借りる事が出来るのだ。

もちろん外などで使う気などさらさらないが。



「あなた達の系統だけど……分かる…?」



更にもう一体増えた巨大な狼を見据えながら舞香はケルベロスとヘルハウンドに問う。



「あれはスコルとハティだ」


「うむ。太陽と月を司る狼だ。フェンリルの子孫だ。油断は出来ん」



「じじい共は腰抜けなんだよォ!」


「あ…グリンデル…」


「こら!アンタは脳みそまで筋肉で出来てるのかい!?」


「うげッ!て、てめぇ!何がしやがる!」



スコルとハティに一人で襲い掛かろとしたグリンデルをヴリトラが掴んで止めた。その反動でグリンデルは顔から転んで苛立ちを込めた声でヴリトラに抗議する。



「ここは我とヘルハウンドに任せてもらおう」


「左様。グリンデル、貴様ではスピードで劣るだろう。我らのスピードに右に出るものなどいまい」



3つ首のケルベロスと翼の生えた巨大な猛犬が舞香達の前に出る。それでスコルとハティは敵を狙い定めたのか走り出した。



「ヘルハウンド、お前はハティを頼むぞ」


「心得た」



そして目にも止まらぬ速さでの攻防が始まる。



「なぁんだ。久しぶりに出て来たから腕が鈍ってるかと思いきや、案外やるじゃない。あの犬」



「おい!さっさと終わらせろ!」


「我らの仮想敵は次であろう。それまでしばし待つとするか」



ここはパワースポットになる寸前の泉だ。だが、さっきの岩があるようにここは特定の者しか入れないのだ。

それが幸いか、魔物に溢れかえることなく舞香の最高の修行場となっている。

このスコルとハティもヘルハウンドとケルベロスに最も適した者として選ばれたにすぎない。

感情はなく、ただひたすら相手を屠る事だけを考える機械のようだ。



「アジダハーカ……グリンデル…。あなた達はまだ私に従う気はないの…?」


「ないな!何故お前に縛られなくてはならない!オレはオレがしたい事をする!これは誰にも邪魔させねェ!」


「舞香。貴様も知っているおろう。我は誰にも媚びぬ、この戦いも余興にすぎぬのだ。貴様は我らを呼ばねば良いだけの話し。この会話に意味などない」


「アンタらホント馬鹿だよね。もう少しニルを見習ったらどうだい。もう少し人間というものを信じてみなさいよ」


「ヴリトラ…それはオレに人間のペットになれと言っているのか!?」


「はん!どんな解釈をすればそんな言葉が出るんだい?アタシが言いたいのは、人間と協力しろって事だよ」


「ヴリトラ。貴様の言いたい事も分からない事もない。だがな、それでも我は孤高を貫く。元来より我ら龍族とは孤高であろう」


「ダメね舞香。この邪龍共はアンタに従う気は元からないみたいよ。呼びだすのなら、ヘルハウンドまでにしておきなさい」



そう言うとヴリトラは背を向けてしまった。グリンデルもアジダハーカもそれ以上語らない。



「ホント……骨が折れるよ、お兄様…」



この催しも特訓というより、魔物とのスキンシップに近い。しかし、このスキンシップが未だに実らない事に舞香はため息をついた。





『ごくり……』



いま、紅哉達はあるアトラクションに乗って、その結果を見ていた。

それは――――



「やった!私が1位!」


「ふっ……まぁ悪くはない」


「嘘だろ!?舞香といつもゲームして鍛えていた俺が負けるだと!?」



そう、シューティングゲームだった。

乗り物に乗って暗い場所で現れる的を光線銃で撃ち抜くゲームなのだが、この3人に遊びなどなかった。

紅哉達は遊びの要素を一切廃止してただ己の点数を上げる事だけを考えた、廃人思考でプレイに望んでいたのだ。

しかし、結果は1位瑠璃、2位ニル、3位紅哉という結果だ。

瑠璃と紅哉の差はごく僅かだが、瑠璃と紅哉の違いは狙った的だ。紅哉は出来るだけ点数の高い小さな的を狙っていた事に対し、瑠璃は点数の少ない大きな的も積極的に狙っていた事がこの結果に繋がったのだろう。



「お客様、こちらスタッフの記録を塗り替えた3名に景品を送らせていただきます」


「おお!ありがとうございます!」


「ぬいぐるみか……」


「わぁ!可愛い!」



よく分からないデザインだ。クマが宇宙服を着て光線銃を持っているぬいぐるみ。男の紅哉からすれば分からないが、舞香とか瑠璃からすれば評価が段違いなのだろう。



「でもさ、スタッフの記録って相当高いだろ。あれ抜ける奴普通の人でいるのか…?」


「いえ、普通はおりませんが、まれにお客様たちのような方が現れるのでこういう景品を作ったのです。プレイするのであれば、報酬があった方が燃えるだろう、と」



スタッフの女性が意地悪く笑ったのを見て、3人は共通の事を思った。



『あぁ…この人がこの記録を叩き出したのか…』と。



因みにこの3人相当なゲーマーである。瑠璃はアイドル活動を行いながら暇さえあればゲームをする。ニルは昔、紅哉のやっていたゲームを自分でやってみてそれからドがつくほどハマった。

紅哉は舞香に誘われるうちにゲーマーとしての才能を開花させて今に至る。



「またお越しください!」



笑顔で手を振るスタッフに見送られてアトラクションを後にする。



「なかなか面白い乗り物だった」


「いや~ニルに負けるとは思わなかったぜ」


「ニルちゃん凄いんだね~。私も途中からニルちゃんの追い上げに焦っちゃったよ」


「くっくっく。オレもそれなりにゲームが出来るという事を見せつけただけだ」


「でもさ、周りの人達はきゃー、とかくっそー!とか楽しそうにしてたのに、俺達は無言で撃ち続けてたよな…」



それを思い出して3人の間にはしばらく沈黙が漂う。



「ほら!私たちは結果を見て楽しめたでしょ!?それでいいじゃない!」


「そ、そうだな!景品貰ったし、楽しんだよな!」


「ねね。大体のアトラクションには乗ったから、グッズ探しに行こうよ。セレナさん達にもお土産買わないと」


「そうだな。舞香にも買ってやらないとな」



そう言って紅哉達はグッズ探しを始めた。



ドオオオオオオオオン――――――それは突然の出来事だった。



「なんだ!?」


「城の方から響いて来たな」


「紅くん!出てみよう!」



紅哉は動揺して固まっている店員に自分の名刺と今買った荷物を預けて、先に行ってしまった瑠璃たちを追った。



「瑠璃!ニル!」


「紅くん!」


「マスター!瑠璃!こっちだ!」



瑠璃は紅哉の事を待っていたのか、通路の真ん中に立っていた。そしてニルは何やら通路の端の草むらに隠れており、紅哉と瑠璃を手引きした。



「紅くん。私のパートナーが知らせてくれたんだけど、武装した集団がここに来たみたい」


「武装集団だと…?」


「うん。いま噂になっているアヴェンジャーズかな……」


「あいつらか……確かリーダーは篝章仁だよな」


「マスター、瑠璃、誰か来るぞ」



そこで瑠璃はここに幻術の魔術を発動させて、ここの認識をぶれさせた。



「これで全員か?」


「あぁ、店内にいた人も全員中央に集めた」


「よし、それじゃ俺達も戻るぞ」



そして足跡は遠ざかって行った。

瑠璃は幻術を解いて、息を吐く。



「早いな。これは元から仕込んであった作戦みたいだ」


「大方ここに潜伏していたんだろ。合図と共に市民を銃器で脅して鎮圧。そりゃ早い」



紅哉の言葉にニルが的確に答えを出す。



「紅くんどうする…?この騒ぎに乗じて城に突入する…?でも、やっぱり一般市民の人達が先だよね…?」


「ちょっと待ったー!」



紅哉が「そうだな」と言おうとした瞬間目の前にとてもよく知っている人が現れた。



「朱音さん……それとセレナも何してるんだ…」


「いや~気になっちゃったもんでね…ごめんね!」


「わたしは無理やり連れて来られたんです」



「それで紅哉君。どうやらお困りの様子だね」


「紅哉。一般市民はわたし達が何とかしますから、あなたは当初の目的を遂行しなさい」



戦闘用のグローブを嵌めたセレナが紅哉と瑠璃を見て告げる。朱音も「うんうん」と笑顔で答えてくれた。



「おい!お前達何をしている!」


「ささ!行った行った!」


「ありがとう!朱音さん!セレナ!」


「おい!止まれ!」



アヴェンジャーズは紅哉達に向かってマシンガンを構えて発砲した。しかし、その銃弾は紅哉達に届く事はない。

何故なら――――――ジャキン!



「君達はアタシとセレナちゃんがお仕置きしちゃうんだから!」



そう、朱音は身の丈よりも大きい大剣を振るって銃弾を全て弾いたのだ。



「ゴー!白虎!」



セレナと共に駆けだした白虎はスピードを僅か数歩足らずにしてトップギアまで引き上げる。

まさに神速となった白虎は一瞬でアヴェンジャーズの背後に周り、背中の中心にポン、と足を置く。ただそれだけで男は膝から崩れ落ちた。

セレナも放たれる銃弾をステップで躱しながら距離を詰めると、鋭く息を吐いて拳を相手の鳩尾にめり込ませた。



「がはッ!?」


「よいっしょ!」



セレナが男の意識を奪った隣で、朱音は大剣を勢いよく振り回すと小さな竜巻を起こした。



「雷撃!」



大剣に稲妻を纏わせ、朱音は身体をしならせて大剣を振って稲妻を放つ。稲妻は竜巻に当たると周りに放電し始め、アヴェンジャーズの意識を根こそぎ持って行った。



「こんな所ですね。まずは」


「うん。安心したよ、この人達が魔術耐性の防具を着てて」


「ですね。それじゃなかったらわたしの掌底で骨ごと砕けてます」


「うわぁ……相変わらずえぐいな~」


「あれ?わたしの技を披露ことありました?」


「え?ああ、ううん!紅哉君から聞いてたからさ、やっぱり凄いな~って」


「そうですか。それよりも次に行きましょう」



特に気にした素振りをしないセレナは地図を取り出して中央に行くための、道を考えだした。




「瑠璃。こっちだ」


「ここ…?ちょっと待ってね…」



紅哉と瑠璃は城に潜入すると、事前に貰った端末に入った地図を頼りに地下へ続く道を探していた。

瑠璃は紅哉の指差す場所へ手を当てると、エーテルを集中させて幻術破壊を試みる。

バキパキ――――パリン!―――――幻術は呆気なくガラスのように壊れた。



「よし!ナイスだ瑠璃」


「凄い強固な結界だったよ。私でも苦戦する幻術なんて……ここを封印した人は相当凄い魔術師なんだね」



下へ通じる階段が現れると、紅哉は懐中電灯を取り出してまず自分から降り始める。



「ねぇ紅くん」


「分かってる。ここ、相当エーテルが濃い」


「うん……ここからは魔術が使えないかも」


「暴走してしまうのは勘弁だ。自分の身はパートナーでカバーしよう」



下まで降りると、奥の通路へ続く道がある。階段を降りるところまで暗かったのに、ここはエーテルが活発化しているため、ライト代わりのようにキラキラ光っている。

エーテルは空気のように大気中に漂っているものだ。紅哉達魔術師が使うエーテルはもちろん己の体内に貯蔵しているエーテルを用いて発動させるが、体内だけではなく微量ながら大気中のエーテルも活用している。

さて、ここで規定以上のエーテルを取り込むと術式はどうなるか。答えは簡単だ。爆発する。ただ爆発するのではない、魔術とは神経とリンクさせてエーテルを流し込んで初めて完成するものだ。

それが爆発するという事は神経までズタズタになるということであり、下手すると2度と魔術が使えない、という事にもなりかねないのだ。



「ここにアヴェンジャーズがいるかもしれない。十分に気を付けて行こうか」


「うん。でも、幸いここは魔物がいないみたいだよ。うちのパートナーが索敵してくれた」



瑠璃のパートナーが謎なのは今に始まった事ではないが、正体がとても気になるのも事実だ。

でも、それを聞くと彼女はいつも誤魔化すので紅哉は聞くことをもはや諦めている。



「あぁ、ニルも感じないって言ってるし、そこまで身構えなくも大丈夫か」


「でも、一応最低限の警戒はね?」


「そうだな。お互い警戒しながら行こうか」



紅哉と瑠璃は警戒しつつも出来るだけ早く先を急いだ。


やはり日常会話は苦手のようです。バトルの話はすらすらと出てくるのですが、うまくいかないですね。本当にバトルなしのコメディー系を書いている人は尊敬します。

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