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龍の血を引く者  作者: また太び
10.5章 新たな龍人
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龍人の誕生

しかし、次は森の奥から想像を絶するほどの速度で突進を仕掛けてきたカマキリのような魔物にグランベスは吹き飛ばされる。


吹っ飛ばされた瞬間、グランベスは黄色い光に包まれると紘一と同い年くらいの少女の姿になって彼の目の前まで転がってくる。

グランベスのエーテルが底をついたのか、紘一を守っていた鉄壁の守りが解除され、紘一はすぐさま少女を抱き起した。



「もう逃げようぜ…!こんなの勝てるわけないだろ…!なんで俺なんかを守ってんだよ……お前は誇り高い龍族だろ…?」



ボロボロになったグランベスは紘一の手を振り払って立ち上がる。



「言っただろう。責任は取ると。お前のパートナーが命を賭して守ったと言うのであれば。私もお前を守ろう……ぐッ…」


「無茶するな!流石の龍族でももう無理だ!」



膝をついて苦しそうに顔を歪ませるグランベスに紘一は剣を握り前に立つ。



「お前こそ無茶をするな……生身の人間がA級クラスの魔物に勝てるわけがない…」


「少なくとも傷だらけのアンタよりは戦えるはずだ」


「ふっ…よく言う…」



グランベスは立ち上がると口元の血を服の袖で拭う。



「ギチギチギチ………キシャアアアッ!」



自分に歯向かう意思を見せた二人にカマキリ型の魔物は羽を開いて威嚇する。

風が巻き起こり、少女の美しい金髪が風に舞う。



「休んでいるべきだ。今のアンタじゃ満足に動けないだろ」


「そうだな。満足には動けない。だが、せめてお前の盾になる事くらいは出来る」



グランベスは息を吐き出すと、即席の水晶で生成された剣を生み出す。



「体液は流石に防げないが、斬撃程度ならば私の剣で防げる」



もう彼女が戦わないという選択肢はないと見た紘一は短く『頼む』とだけ言い、剣を握り直す。



『グリフォン…!俺に力を貸してくれ!』


「キシャアッ!」



カマキリの鎌が二人の間に突き刺さる。

左右に飛んだ二人は背後に回る。



「いいか!こいつの身体は私ほどではないが、耐久性が高い!お前のその剣では弾かれて終わりだろう!」


「んじゃどうすればいい!」


「足の関節を狙え!カブトムシの兜と背中の隙間があるように!どの虫にも必ず弱点は存在する!今の我らが勝つには足を落とし!相手を行動不能に陥れるのだ!」


「了解!」



カマキリの足を確認する。

確かに足の駆動部である場所は脆く、あそこならば剣が通りそうだ。



『斬るんじゃダメだ!だから、渾身の力を込めて突く!!』


「おおおおおおお!!!」


「キシャアアッ!」


「やらせない!」



紘一が突きを繰り出した瞬間カマキリはまるでそこを狙われるのを嫌うかのように、今までとは比較にもならない程の速度で鎌を振るってきた。

しかし、そこへ回り込んだグランベスが剣を盾にして鎌の攻撃を弾く。



「いっけえええええ!!」


「ギギィイ!?」


「いいぞ!」



手応えがあった。

突き刺した箇所から体液が溢れ出し、紘一は動かなくなった足を確認しながら後方へ下がる。



「まずは1本!」


「うまい具合に足の神経までも切り裂いたか。教えていなかったが、刺す時は斜めに刺せ。ただ突き刺しただけでは意味がない。足へ信号を送る神経を断絶させるように斜めから刺すのだ」


「先に言ってくれよ。失敗したらどうするつもりだったんだ…」


「その時は恍けるつもりだった」


「おい!」


「おっと、無駄話もそこまでだ。ふふっ、あいつ怒っているぞ」


「そりゃあね…」



鎌を構えたカマキリは先ほどよりも攻撃のペースが格段に上がった。

まだ見切れる範囲だが、当たったりなどしたら一瞬で肉片に変わる事くらい容易に想像が出来る。



「おい!注意を引け!私が2本持っていく!」


「わ、分かった!」



紘一は敢えてカマキリと相対するように前へ来ると、近くにあった大きな石をカマキリの顔に投げつけた。



「ギギギ!キシャアア!」


「すっげー怒ってんな…」



標的を紘一に絞った瞬間カマキリの態勢は大きく崩れる。

それはグランベスが右足を2本も切り落としたからだ。



「強度では私の方が勝っているな。どうだ?立っていられないだろう」


「グランベス!決めろ!」



立つことが出来なくなったカマキリがその場に倒れる。



「ははッ!何も出来ないだろう!」



グランベスは高く飛ぶと、空中からカマキリの頭を切り落とすように剣を振り下ろした。



「ギッ――――………」



短い断末魔を上げてカマキリは息絶えた。



「ふぅ……何とかやれるもんだな…」


「うむ。正直負けるかと思ったが、案外やれたな」



死んだカマキリの前で地面にへたり込んだ紘一の傍までグランベスはやってくる。



「こいつが女王……なわけがないか…」


「あぁ、まだまだ来ると思うが、今のうちにこの森を抜けるぞ。立てるか?」


「俺は大丈夫だ……―――――グランベス!!!!」


「ん?」



ドスッ―――――!


グランベスの胸に茶色い触手のようなものが突き刺さっていた。



「ぐッ…!寄生体だったか…!」



グランベスはあらん限りの力で胸に突き刺さった触手を抜き取ると、振り返る。

するとそこには、死んだカマキリの中から細い棒状の生き物が出てきているのだ。



「お、おい!しっかりしろ!」


「ふぅ…ふぅ……図鑑で見た事はあるだろう………虫に寄生して生きる生き物がいることくらい………つまり、あの虫は寄生されていたのだ…」



グランベスは倒れてしまった。

今も荒い息を吐いて何とか生きている状態だ。

誰が見ても助からない事は一目瞭然だった。



「すまない……お前がこの森を抜けるまで守り抜くつもりだったのだが…」


「いい!そんな事どうだっていい!な、何か助かる方法はないのかよ!?」


「泣くのではない……あの寄生虫は宿主を失って苦しんでいる……お前が手を下さなくとも時期に死に絶える。だから…お前は……私を置いて逃げろ…」


「い、嫌だ!またかよ!また俺は誰かを犠牲にして生き延びるのかよ!」


「すぐ近くに私たちの他に戦っている者がいたはずだ……その者たちと合流すれば助かる………さぁ、行け…」



紘一は首を振った。まるで駄々をこねる子供のように。



「困ったものだ……先ほどまでお前を襲っていたのは私だぞ…?そんな私をそこまで信用して……お前は馬鹿だな…」


「そんなの関係ない!」



紘一の涙がグランベスの頬に落ちる。



「くそ!何かないのかよ!!!」


「お前……名はなんと言う…」


「辰己紘一だ」


「辰か………良い名だ…」



目を閉じるとグランベスの身体が徐々に黄色い光となって消えていく。



「お、おい!?消えるのかよ!?ふざけんな!なんでだよ!」


「私だって紘一を最後まで守り抜きたかった」



紘一はグランベスを助ける方法を頭に巡らせる。



『何かないか!何かないか何か!!!』


彼が辺りを見渡して視界に入ったのは、相棒のグリフォンが消滅した後の地面だった。

そう、自分はグリフォンをもう一度この世に呼び出すためにここに来たのであった。

だが、もう一度呼び出しても自分と過ごしてきた相棒が戻ってくるわけではない。


『グリフォン……ごめん、お前を呼び戻す事は出来なくなっちまった……俺はこいつを助ける!』


消え続けるグランベスを紘一は強く抱きしめた。



「魔術師辰己紘一が命ずる!この世に我が右腕となる魔物を呼び出さん!呼び出し名はグランベスなり!応えてくれ!グランベス!!!」


「紘一お前……私を…」


「いいから答えろ!俺をこの先ずっと守るのか!守らないのか!」


「…ッ!いいだろう、このグランベス。右腕となり、生涯ずっとお前を守り続けよう…」



その瞬間巨大な魔法陣が紘一とグランベスの足元に広がり、黄色い光の柱を立ち上らせた。


続きという形です~

1回前のもつなげて出したら見事に文字化け……

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