表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略
123/162

浅野カケル


「ふぅ、何とか逃げ切れたようね」



舞香は走りながら安堵の息を漏らす。

あの剣は使わせてはいけないと直感で悟っていた舞香は、短期決戦を仕掛けたのである。

まぁ例えあの剣が使われたとしても自分が勝つ事は揺るがないが、斬られたら大変な事になる。



「恐らくあの剣は魔剣グラム。私が斬られたら痛いで済まないわ。絶対一生もんの傷が残る……」



自分の身体が傷物になるのだけは避けたかった。



「お、お兄様にこの身体を捧げるんだもんっ!」



何やらキャラが不安定になっている自分に盛大なため息をつくと舞香は気を取り直して先を急いだ。




金髪の青年が崩壊した国会の廊下を歩いていた。



「なんだこれ……俺が寝ている間に何があったんだよ……」



青年は瞳を閉じると入り口付近に懐かしいエーテルの波動を放つ魔物が2体。更に自分の歩く方向の先にもう一つ懐かしく、そして恐怖を刻まれた恐ろしいエーテルの波動を感じた。



「うげッ!まさか俺のこと迎えに来たのか?」



この青年の名は浅野カケル。未来の世界から朱音と共にやってきた未来人である。

親は鉄壁の貴公子の龍一と白き死神のことセレナ。

そんな人間というジャンルに収めておいていいのか分からない親を持つカケルは、朱音と時間跳躍した時にはぐれてしまったのである。


一文無しの彼が流れ着いたのはアメリカで、実力を買われた彼は軍隊から成りあがり国会を守護する警備員になったというわけだ。



「あぁ……そっか、もうバハムートが来るのか」



自分の使命を忘れかけていたカケルは朱音と合流する事を決めた。



「バレルと大統領には悪いが、そろそろ俺も動かなきゃな」


「あなたがカケルね」


「ま、舞香さん……お久しぶりです……」



天上を突き破って降りて来たのは舞香だった。

彼女の顔を見た瞬間カケルの顔が恐怖で歪む。



「ん…?あぁ、未来の私が何やらあなたに色々トラウマを植え付けたみたいね。それは今の私に関係ない事よ」



スタスタ歩いてカケルに近づく舞香にカケルは思わず後ずさりする。



「ほら、行くわよ。朱音の身体が崩壊しかかっているわ」


「なんだって!?まさか……!舞香さん!ちょっと着いて来てくれ!」


「え?ええ、いいわよ。でも早くしなさいよ。ヘルちゃんが早くしろって言っているわ」


「あぁ、時間は取らせない!」



カケルは走り出した。



「あら、案外早いのね。朱音以上かしら」



自分を置き去りにしたカケルの速度に驚いた舞香は、身体を強化してカケルを追った。





「あぁ、これじゃない…!これじゃないんだ…!どこに行った!」


「何を探しているの?」



警備員専用ロッカールームに来ると、先に到着していたカケルが自分のリュックを漁っていた。



「朱音ちゃんの身体が崩壊しかかっているのはエーテルのせいじゃない」


「それじゃ?」


「朱音ちゃんの身体は特殊な事は知っていますよね」


「えっと、龍の遺伝子だったかしら?」


「そうです。昔、未来の紅哉さん達が半龍化しかけた朱音ちゃんにある薬を投与しました。恐らくその薬の効果が切れかかっている」


「って事は崩壊じゃなくて朱音の身体は龍化しているってことなの?」


「ええ、その通りです。今朱音ちゃんの状態はどこまで進行していますか?」


「お兄様に聞いた限りでは、ゲオルギウスを召喚していることもままならないとか」


「まずい。一刻も早く朱音ちゃんの元に行かなければ…………―――あった!!」



カケルは白い丸薬が入った小瓶を取り出すとポケットに入れてリュックを背負った。



「行きましょう!もうここに用はないです!」


「分かったわ。日本行きの船が停まる港にセレナと佐鳥先生を待たせているわ」


「母上と師匠が!?なら、もう脱出したも当然ですね」


「ケロちゃん!最後の脱出よ!」


「よし、早く乗れ」



ケルベロスを召喚するなり舞香とカケルは搭乗する。

二人が乗った事を確認したケルベロスは建物を破壊しながら外を目指した。



「ケロちゃん!」


「ぬッ!」



舞香が叫ぶと同時にケルベロスの真横から光の軌跡が通った。

間一髪で躱すと、舞香とカケルは臨戦態勢を取る。



「カケル!何故ですか!何故あなたがそこのテロリストと共に行動を!」


「バレル…」



襲撃者はバレルだった。

涙を堪えている彼女の手に握られている剣はカタカタと震えている。



「バレル、俺は自分の使命を思い出したんだ。だから、俺は行かなくちゃならない」



カケルは何もない虚空を掴むとそこには青く透き通る一振りの西洋剣が握られていた。



「コールブランド……カケル、本気なのですか」


「あぁ、どうやら君はここを通さないようだし、俺だって意地でもあの子の元に行かなくちゃならない」



ケルベロスをけしかけようとした舞香を手で制してカケルは前に立つ。



「バレル、引く気はないか?君の師匠は誰だったか思い出せ」


「師匠が間違った道に行こうと言うのであればそれを止めるのも弟子の役目」


「俺は間違った道になど行っていない。ただ、少し迎えに来た人が派手にやっちゃっただけだよ…」


「どちらにせよ、カケルはここを出て行こうとしている。テロリストに抵抗する事もなく!協力して!」



バレルの声は悲鳴に近かった。

カケルは一瞬だけ悲しい表情を見せたが、次にはもう覚悟を決めた顔をしていた。



「剣を抜け!お前が正しいと思うのなら俺を止めてみろ!」


「カケル!!あなたって人はいつもそうだ!あたしの気持ちも知らないで!勝手に突っ走って!」



剣を振るうバレルに対しカケルは何も言わずに彼女の剣を見ていた。

まるで師匠が弟子に最後の稽古をつけるかのように。



「この馬鹿ぁ!!どうして!もっと稽古つけてよ!まだあたしはあなたに教わっていない事がたくさんあるのに!」


「………………もっとちゃんと相手の剣を見るんだ…」


「うっ!くぅ…!なんで!?これが最後なの!?ねぇ!もう会えないの!?」



泣きじゃくるバレルとカケルは舞う。

それもう戦いではなく舞踏だった。廃墟と化した建物で力強く踊る二人を見て舞香は悲しそうに目を細めた。


10分くらいだろうか。

剣舞は突然その終わりを告げる。



「じゃあな、バレル」


「え…」



舞香の目ですら捉える事が出来ない程高速でカケルは動くと、バレルの背後に回って後頭部を手刀で意識を奪った。



「終わった?」


「終わりました。これでもう思い残すことはありません」


「行きましょうか。セレナと佐鳥先生が待っているわ」



カケルは床に倒れたバレルを起こして安全なところまで運ぶと首に巻いていたネックレスを外して彼女の首に着けてあげた。



謎の魔物襲撃は呆気なく終わり、魔物が急に消えた事に誰もが驚いていた。

負傷者は多数。だが、命に別状はなく、死亡者は誰一人としていなかった。

誰もが生き残った事を奇跡だと叫び、国会議事堂襲撃は終わりを告げる。

ただ、一人の男を除いて……――――



「セレナ!佐鳥先生!すぐに出して!」


「佐鳥!」


「あぁ!もう飛べるぜ!」



闇の奥から聞こえる声に反応したセレナは佐鳥に呼びかける。



「ケロちゃん!ハイジャンプよ!」


「うむ!」


「うおおおああ!?」



ジャンプしたケルベロスは空中で鍵に戻り、舞香とカケルは空中に放り出される。



「え!?それで行くの!?」


「あったりめぇよ!衛星に捕えられず、尚且つ軍のセンサーにも引っかからない!これしかないだろ!」



鋼色の乗り物は以前女装した兄と佐鳥が乗って来たものだった。

しかし、微妙にフォルムが変わっている。



「というかこれアイリが分解したんじゃないのかしら!?」


「アイリがもう一度性能を上げて作り直したんですよ!少し時間はかかりましたが、間に合ってよかったです!」



騒音に負けじと声を上げる舞香にセレナが答える。



「ってこれ米軍のワイバーンですよね!?」


「あん?そっちがカケルって奴か。おい、もう出していいのかよ!」


「ええ、お願いします!佐鳥先生!」


「振り落されんなよ!!」


『グオオオオオッ!!』


「ぎゃああああ!!Gが!Gが凄いいいいいい!!」



ニルの声を発してワイバーンは飛び立った。

涼しげに取っ手を掴むセレナと舞香にカケルは驚く。いま自分は結構な力で踏ん張っているのだが。



「日本まで3時間だ!」


「えええ!?これを3時間耐えるのおおお!?」



カケルの絶叫は騒音によってかき消された。




「うっ…ぐすぐす……カケル…」


「バレル…」


「大統領…」



壊れた国会を歩いていた大統領はうずくまって泣いているバレルを発見した。



「そうか……カケルは行ってしまったか…」


「ち、違うのです!テ、テロリストに連れて行かれて!」


「カケルは自分の意思で行ったのだな」


「……はい…彼は自分には使命があると言って……」



うずくまるバレルと同じ目線に立った大統領は優しく彼女の頭を撫でる。



「彼には何度私の命を救われたか分からない。暗殺も何度もあった。そのたびに彼は決まって今日はアンタの部屋で寝ると言ってね。面白い男だったよ」


「大統領をアンタ呼ばわりするのはカケルだけでしたね」


「まるで私を友人のように扱って、あの部屋で一人忙しく雑務をこなしているときも、あいつはマンガ本を持ってきて笑っているような奴でね。君を連れてくるまではそんな事をやっていたのだよ」


「そんな事があったのですか……ホント何やっているのでしょうね…あの人は」


「そうだな。ホント何をやっているのだか……結局最後まであの男の真意を読むことは出来なかったよ」



大統領は立ち上がるとバレルを見た。



「さぁ、この事をなんて国民に知らせればいいものか。バレル、一緒に考えてくれるかな?」


「…ッ!は、はい!あたしにお任せください!」



バレルは自分を気遣う大統領の気持ちを理解して精一杯の笑顔を作った。



『カケル、あなたが何をしようとしているのかそれはあたしには分からない。でも、あなたの意思は継ぐ。アメリカを守るのはあたしの役目だ。だから、ちゃんと見ててね。いつかあなたを負かしてあたしだけの師匠にしてやるんだから!』



バレルは涙を乱暴に服で拭うと先を歩いて行く大統領を追った。

舞香編終わりです!

いや、章自体は終わっておりませんが、いかがでしたか?

なかなかいいスピードで書き上げたと思っています。

結構ぱぱっと終わってしまいましたね。でも、疾走感はそれなりに出てたと?思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ