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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略
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本気の舞香

「あれ……セレナ…佐鳥先生…」


「お、来たか」


「舞香、元気にしてましたか?」



港につくと紺色のシャツと迷彩柄のズボンを履いて煙草を吸ってる佐鳥と佐鳥同様に迷彩柄の服を着たセレナが港で待っていた。

予定では舞香がここに来るときにドンピシャで迎えに来るという手筈だったが、まさか既にいるとは思わなかった。



「へっへっへ。あたし達の仕事は終わったんだよ。暇だからアメリカを見て回ってたわけさ」



セレナに肩を回す佐鳥は上機嫌だ。対するセレナは明らさまに嫌そうな目で佐鳥を見てから舞香に目を移す。



「舞香、先に荷物を預かっておきましょう。もういつでも飛べる準備はしています」


「うん……荷物お願いね…」



舞香はケルベロスから荷物を降ろすとセレナに預けた。



「おい、セレナ」


「はい。では、やりましょうか」


「なに…?」



佐鳥はリュックから手の平より少し大きめの箱を取り出した。



「それは…?凄い力を感じるけど……」


「神の遺産だ。これを今からお前に使う」


「え……?」


「感情を戻してやるって言ってんだよ」


「いいですか舞香。わたしと佐鳥のメッセージにはここで舞香の感情を戻せ、と未来のあなたから仰せつかったのです」


「じゃねぇとお前は負けるらしい。何に負けんのかしらねぇけどよ」


「時間は余りありません。早速ですが行きます」



佐鳥から神の遺産を受け取ったセレナは舞香の前まで持ってくると、その箱を開けた。


パァアア―――――緑色の淡い光が漏れ出し、太陽が沈むにつれて暗くなる港に光が生まれる。


願うだけで願いは果たされる。


セレナはあの実験を思い出しながら祈った。


過去の舞香。炎道家の庭を兄の紅哉と元気に駆け回っていたあの舞香。兄の紅哉より策略家でいつも四条家全員を困らせていた悪魔のような舞香を思い出したセレナは小さく笑うと、その願いに力を込めた。



「さぁ!神の遺産よ!わたしの願いを叶えなさい!」



そして緑色の光は港を光に包んだ。






緑の光が消え、辺りに静けさが戻ると心配そうな表情で見守るセレナと珍しく真面目な顔をしている佐鳥が舞香の前に立っていた。



「舞香…?大丈夫ですか…?」


「ふふふ……」


「ん?大丈夫かこいつ」


「あーはっはっはっは!戻ったわ!完全復活よ!」



高らかに笑い出した舞香にセレナは目を白黒させていた。



「遂に!遂に!私の感情が!」


「うるさいわボケ」


「あいたっ!な、何をするのかしら!少しくらい喜んでもいいじゃない!」



青筋を立てた佐鳥に頭を叩かれた舞香は抗議の目を向ける。

その時だった。涙を流したセレナが舞香に抱きついたのである。



「良かった……!本当に良かった…!」


「セレナ……ええ、私はもう大丈夫よ。本当にあなた達には心配をかけたわね」


「本当に…心配かけすぎですよ…ッ!」


「ごめんなさいね……セレナ、ありがとう」


「あたしも手伝ったんだぞ」


「……佐鳥先生もありがとうございます」



感謝の意が籠った声で舞香は二人に頭を下げた。



「まぁいいってことよ」


「行くのですか?舞香」


「当たり前よ。これは私の仕事だわ。ちゃちゃっと終わらせてカケルという男を連れてくるから待ってなさい。今の私ならアメリカ最強の魔術師も相手にならないわね」



冗談ではなく、本気でそう言っている舞香はケルベロスに乗ると夜の闇に消えて行った。



「急に性格変わりやがった。いや、戻ったと言うべきか」


「ええ、あれが本来の姿です。常に上から目線。小悪魔な策略家。大人のわたし達でもあの子の鬼ごっこには勝てませんでした」


「鬼ごっこかよ……クロフィードさんもか?」


「もちろん。四条家、炎道家惨敗です」


「うっは、そいつは恐ろしいな。麗華さんもやられたのか」


「さぁ、彼女のお手並み拝見と行きましょうか」



セレナは懐かしむように彼女が消えて行った夜の暗闇を見ていた。




「ケロちゃん!今の私なら前よりもあなたに力を回せるようになっているわ!あなたいまSランク軽く超えているんじゃない?」


「うむ。前よりも力が沸いてくる。今ならば英雄でも軽く屠ってやろう!」


「うん、その心意気いいね!さぁ!乗り込むわよ!」



夜のビルを飛んでいくケルベロスの背中で舞香は右手首にある最後の鍵をチェーンごと引きちぎった。

そしてケルベロスが国会議事堂のフェンスを越えた瞬間舞香は召喚した。



「来なさい!森の番人フンババ!!」



鍵から凄まじい力が溢れ出し、次の瞬間夜の国会が巨大な木の根っこに包まれた。

照明は急成長した草が灯りを潰し、国会の通路には樹齢軽く2000年は超えているであろう太い木の根が突きだしている。


そしてその番人が国会議事堂の入り口付近の地面から現れた。



「オオオオオオオオオ――――!!!!!」



まるで巨大な猪のような姿の獣は背中から巨大な斧を取り出し、水平に薙いだ。


ザン――――!!!


入り口はまるで紙のように斬れ、慌てて出てきた警備員はフンババを見て腰を抜かす。



「ま、魔物だあああああ!!」



舞香はその頃ケルベロスの背中に跨り、更に紅蓮に輝く鍵を握っていた。



「ヘルちゃんもお願いね。フンババを援護しなさい!」



紅蓮に燃え上がる鍵を空へ投げると、鍵が弾けて赤い魔法陣が描かれる。

そこから地上へメテオのように落下して行ったのは二つの首を持つ犬狼だった。



「ま、魔物が増えたぞおお!!」



それを見届けた舞香は行動を開始した。




「大統領!お逃げください!ここは危険です!既に車は用意してあります、こちらへ」


「うむ……」



アメリカ最強の魔術師バレルが既にユニゾンした状態で剣を腰に差して大統領を促していた。



「何故急に魔物が……警備の者は何をしていた」


「分かりません……突然現れたとしか…」



木の根が窓を突き破った自室で大統領は考えていた。

今も外で魔物が暴れているのか地響きが聞こえる。



「悪夢としか思えんな………カケルは?」


「寝てます。こんな時に何をしているのか…」


「起こせ!魔物の迎撃にあたらせるのだ!」


「了解しました!」



バレルは近くの警備員にカケルを起こすよう命令する。



「バレル、お前も行け」


「し、しかし!その間誰が大統領を!」


「私は大丈夫だ。敵の狙いは私ではない……この攻撃に無差別性が高いと感じられるのだ」



バレルは渋々頷くと部屋を出て行った。



「では、敵の狙いはなんだ…?」



大統領はボロボロの自室で一人頭を悩ませていた。




「うふふふ……誰も狙いがカケルだなんて思わないでしょうね」



舞香はケルベロスを鍵に戻し、一人国会議事堂の中を駆けていた。



曲がり角から一人の警備員を先に見つけるなり電磁ナイフを取り出して首筋に当てる。



「がぁあああ!?」



意識を奪うと、幻術で男の身体を消して舞香は先に進む。



「良い調子ね。インドア生活してたのが嘘みたいだわ」



ナイフで遊びながら舞香は奥から人が歩いてくる気配を感じて身を隠す。



「ん……」


『あれは……アメリカ最強の………』



バレルだった。

青髪を揺らして廊下を歩く彼女を纏う雰囲気は触れれば斬れそうなまでに冷たかった。



『へぇ……流石アメリカ最強ね。なかなか強そうね』


「そこに誰かいるのか」


『いるのかと聞かれて誰が出て行くもんですか、バーカ』


「んッ!せいッ!」



舞香が隠れる場所をバレルは一閃した。

壁ごと切り裂かれたその先に舞香はいない。隠れると同時に幻術を施した彼女を見つけるのは至難の業だ。



「……………なるほど、それで隠れているつもりか。いいだろう。いつまでも隠れているというのであればあたしが直々にそこから出してやる」


『まさかばれて―――』



また剣の一閃が振り下ろされた。


舞香は身を小さくして転がるとバレルの正面に出てしまった。



「誰だお前は…?」



黒いフードを被っている舞香はまだ自分の素顔がバレていないと思いたい。



「答える気はないか……ならば、そのまま斬り捨ててくれる!」



舞香は腰に着けた氷結手榴弾を後ろにステップしながら投げつけた。



「小癪な!」


「ケロちゃんゴー」


「グルガァァアア!!!」


「なッ!?」



手榴弾を斬ったのが悪手。氷の花が咲くとバレルの腕を凍りつかせ、そこへケルベロスが襲い掛かった。



「ほう、魔術師か」



一瞬で凍結を解くと、ケルベロスを迎え撃った。



「分離」



バレルの剣がケルベロスの鼻先に触れる瞬間彼らは分離した。



「コンビネーションファング」


「くッ!なんだこいつはッ!見たこともない魔物だ!」



高速でバレルに襲い掛かるケルベロスは、バレルの足に噛みついた。



「ガァアッ!」


「くそッ!」


「1…2…3…フォー!!」



3匹の犬が離れた瞬間バレルは激しい衝撃に襲われた。

それがまさか黒いローブを纏った者の攻撃だと思わなかった。


拳打一発一発が重い。剣で受けなければたちまちこちらがやられてしまう。



「しッ!」



ボクシング選手のようなジャブを受けながらバレルはじりじりと後方へ下がっている事に気付く。



「ほおおう!」



声からして少女だろうか。

まさかこんな小さな子が自分を圧倒している事にバレルはただただ驚いていた。


一際強いストレートを剣で受けると、少女は手榴弾また投げつけてくる。



「チェックメイト」



その時バレルは見た。

彼女が指をまるで拳銃のように構えると、目の前に黒い影が落ちてきた。



「え…?」


「ケロちゃん。トルネードファング・フィニッシュ」


「ガアアアアアアッ!」



凄まじい暴風がバレルを襲った。

バレルは咄嗟に剣を盾にして防ぐ。



「なんて風だ…ッ!前が見えん…!」



風が収まると、もうそこに敵はいなかった。

竜巻が突き抜けた跡のような何もなくなった廊下でバレルは剣を落とした。



「はぁ!はぁ!はぁ!」



強かった。

まさかアメリカ最強の自分がここまで圧倒されるとは思わなかった。

決着はついていないが、負けていた。あのまま戦っていたら何もせずに自分は負けていた。



「くそッ!何がアメリカ最強だ……!」



バレルは握り拳を床に叩きつけた。

感情が完全に戻った舞香ちゃんです。

なかなかSっ気があるような気もしますが、これからはこんな調子で続いていきます。

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