太陽と月光の犬狼と炎の魔神
氷室直人も相棒である2匹の犬狼と戦いを繰り広げていた。
「ふぅ……紅哉先輩達と一緒に毎朝トレーニングしてなかったら終わってたっす…」
交互に襲い掛かる自分の相棒のコンビネーションをギリギリで躱す直人の表情に余裕などない。
直人のいる空間は奇妙な場所で、まるで世界が真っ二つに裂かれたかのように空には太陽と月が昇っており、スコルとハティの能力値を底上げしている。
2匹はまるで水を得た魚のように動き回って直人を翻弄する。
今の所癒理に比べればまだ遅い方なので目で追えるが、この先更に速度を上げてくるようになれば直人の戦いはここで終わってしまうかもしれない。
「グルルルルゥ…!」
「ガウウウッ!」
「そんな威嚇すんなっすよ!」
直人は襲い掛かって来たスコルに対して中級に属する氷系統の魔術『アイススピア』を発動し、牽制する。
しかし、スコルは氷をその身に秘めている犬狼。中級程度の魔術では避ける必要などない。
「やっぱダメっすかね!」
「ガルウ!」
一歩後ろに下がると、神速でスコルが直人のいた場所に氷の牙をガチンと噛みあわせ、そして避ける事を想定していたハティが炎の牙で直人の背中を狙う。
直人は骨が外れるかと思うほど身を無理やり捻じって牙をギリギリのところで躱し、カウンターとしてハティの頭へ氷の拳を振り下ろす。
「せいッ!」
「キャンッ!」
当たった喜びに浸ろうとした次の瞬間、足に凍てつくような痛みを感じた。
「うッ!この野郎!」
スコルが直人の右足首に噛みついていたのだ。
噛みついていたスコルを蹴り飛ばそうと蹴りを放つが、傷をつけた事を確認するなりスコルは直人とすぐに距離を取る。
足を見ると、噛みつかれた箇所がカチカチに凍っていた。
これでは満足に足が動けそうにない。
「やってくれたっすね…」
彼の眼先には叩かれたハティの頭を舐めているスコル達の姿あった。
ハティはあからさまに怒りを表しており、いつも優しい表情をしていた彼女はどこかに行ってしまったようだ。
「なんだか辛いもんっすね。でも、やらなくちゃ」
直人は足首の氷を拳で叩いて壊すと、ギュッと拳を再び握り直した。
「暑いです~」
「我慢しろ」
「うぅ……これ苛めです~」
「我慢しろと言っているであろう」
凪咲は灼熱の大地で座禅を組んでいた。
その座禅を組んでいる場所はぐつぐつと煮えたぎるマグマである。
「足溶けてなくなっちゃいますよ~」
「これも修行なのだ。凪咲が我と戦ったとしても勝ち目などあるわけなかろう」
「それもそうですが~、これもなかなか辛いのです~」
「喋らず座禅を組んでおれ」
マイペースな気もするが、凪咲は今この状況をかなりピンチだと捉えている。
イフリートの力を得た凪咲は炎に対する絶対的な耐性を持っているが、何故かこのマグマは耐性が余り働かないのだ。
そのせいか、今凪咲は歯を食いしばるどころか立ち上がって逃げ出したい気持ちでいっぱいなのである。
「鬼畜です~鬼です~」
「あ~あ~聞こえんぞ~」
「この腐れ魔神……」
「なんだと?」
「聞こえてやがるじゃないですか~。これ一体いつまで続ければいいんですかね~?凪咲死んじゃいますよ~」
「決戦は8月1日だったな。ならば、7月25日に終わらせるとしよう」
「なんですかその基準~……」
「凪咲が見事この座禅をやり遂げたらの話しだ。もし、途中で諦めるような事があれば我は今後一切エヴォルトをお前に与えるつもりはない。これは忍耐力の問題だ。どうもお前はどこか抜けているような感じがするのでな」
「余計なお世話です~。いいですよ、これやりきってイフリートさんをぎゃふんと言わせてやります~」
「それでいい。言っておくが、恐らく凪咲が一番楽な課題だと思うぞ」
「どうでしょうね~。他の皆さんが肉体的に辛いものなら、こっちは完全に精神を攻めてきているえぐい修行ですよ~」
「ただ座っているだけで終わりだぞ?これが楽以外の何ものだ」
「じゃあ、イフリートさんが水の中で座禅組んでみてくださいよ~。あなた水苦手でしょ~」
「水など、我が入った瞬間に蒸発する」
「……論外でしたか…」
「ほれ、喋っていないで真剣に座禅を組め」
「はいはい~……」
凪咲は目を閉じる前に空を見た。
空は真っ青ではなく、まるでこの世の終わりのような真っ赤な空が広がっていた。
目を閉じると、頭に思い浮かんできたものがある。
それは――――………
『熱い……熱いです…』
ひたすらに熱かった。
凪咲ちゃんがこの頃お笑い担当になってきているような気もしなくもない、また太びです。
結構時間が空いた?あ~空いてますね。
本当になかなか厳しい時期が続いておりまして、8月になればひと段落つくと思います。頑張って投稿していくので皆さんどうか私を見捨てないでえええ!!




