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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略
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英雄の試練

「ほおおう!!」



癒理の刺突が槍の英雄に繰り出される。



「あめぇ!」



防がれる。

癒理は槍をくるっと1回転させると、次は連続で刺突を繰り出していく。

だが、英雄もその攻撃に合わせるように弾く。

弾かれた鉄の槍は後方へ飛んで行き、その隙を狙われた癒理は後ろへ飛びながら槍を取る。



「一筋縄では行きませんね」


「あったりめぇよ。これでも英雄様だからな。もっとオレを敬え」


「ふん、師匠の家で食ってゲームしているだけのあなたを尊敬したことなどありませんよ」



槍の英雄クーフーリンは癒理の言葉に顔をしかめる。

そんな彼を見た癒理は鼻で笑いながら槍を構えて切っ先を英雄へ向けた。



「続けましょう。勝負はまだまだここからです」


「あいよ。だが、最初にも言った通り、オレが負けることはありえねぇ。お前に槍の使い方を教えたのもオレだし、何よりお前の使っている槍術はオレのもんだ」


「だからなんだと言うのです」


「つまり、お前の攻撃は全部見切っているっていうことだよ!」



リンは自分を囲むように地に魔槍を走らせた。

そこから稲妻がほとばしり、そして槍に吸収されて行く。



「それはどうでしょうね」


「なに?」


「あなたが舞香さんとぐうたらゲームしている間私と師匠はずっと組み手をしている」



癒理は目を閉じ、顔の前に槍を握っていない右手の人差し指と中指を立てて見せた。

それはまるで忍者のようで、次の瞬間癒理を覆うように土が舞い上がる。



「これはあなたにも見せていない技。師匠と私だけで生み出した忍術です!」



砂煙が凄まじい竜巻となってリンを襲う。



「へぇ、おもしれぇじゃん。やってみろよ」



砂嵐の中でもリンは槍を肩に担ぎ不敵に笑う。



「ッ!?」



リンは後ろへ飛びのいた。

次の瞬間リンの足元から槍が飛び出した。

後ろへ下がると、そこへまた槍が襲い掛かる。



「へぇ……分身でも生み出してんのか?忍者っておもしれぇな」



次々襲い掛かる槍をいなしながらリンはこの状況を楽しむ。



「うおっと!」



リンのマントを鉄の槍が貫いた。



『捉えた!』



癒理は確実に英雄の動きを捉え始めていた。

彼女の師匠には圧倒的な格闘センスを持つ者が二人存在している。

その二人は癒理にいつも口癖のようにこう語っていた。


『戦いに変化を混ぜろ』と。


癒理の戦闘スタイルは一人で確立させたものではない。

彼女は貪欲に二人の師匠の技を盗み、自分の物にしてきた。時には荒ぶる龍のように力強く。時には神速の虎のように手堅く手数で攻める。

それが彼女のスタイルさだった。


そして今彼女は龍へ変化する時が来た。



「でいやぁああああ!!!」



砂の竜巻が槍に収束し、癒理はリンのがら空きの背中へ渾身の刺突を繰り出した。

大地を抉る刺突は突風を纏う。



「くそッ!」



リンは一瞬反応が遅れてしまい、慌てて槍を盾代わりにする。



「はぁああああ!!」


「おお……おおおお!!」



ガチガチと槍が拮抗する。

この精神世界においてただの鉄の槍も必殺の魔槍も関係はない。ただ純粋に己らの力で勝敗が決まる。

槍の継承はもちろんない。だが、癒理は伊達に英雄の力を毎日欠かさず使ってきたわけではない。

今更継承を失ったところで彼女が槍を使えなくなる道理などどこにもないのだ。


実力からすればリンが恐らく一枚上手。しかし、癒理は全くそんなことなど気にしてはいない。

いつも自分が相手するのは格上ばかりだった。だからこそ、常に自分が相手と同じ土俵に立っているものだと錯覚させて生き抜いてきた。

今更相手が遥か大昔に猛威を振るった英雄だろうと関係はない。こちらはいつも人外を相手にしてきているのだ。恐れる必要などどこにもない。



「お前にだけは…!お前だけには負けられないんだぁあああ!!」


「ッ!?嘘だろッ!?」



声が張り裂けんばかりに叫び、体内に残る全てのエーテルを槍の一撃に込めた。

そして何かが砕ける音が癒理の耳に確かに届いた。



「あ……」



ザシュッ――――!!


鈍く光る鉄の槍が英雄の胸を貫いていた。



「はは……見事だ。あ~あ、ゲイボルグ折れちまったよ」


「あなたに褒められても嬉しくないです」


「お前の鉄仮面っぷりには呆れるぜ」


「違います。本気を出していないあなたに勝利を祝われても嬉しくないと言っているのです」


「あらら、バレてたのかよ」


「当然です。槍の扱いに関しては私よりあなたの方がうまいですからね。認めたくはありませんが」


「おうおう、オレ様を褒めるとは何事だ?今日雪でも降って来るんじゃないのか?」



癒理は負けを認めたリンから槍を引き抜くと、素早く折り畳み始めた。



「それであなたの腕試しとやらは終わりですか?」


「あぁ、終わりだぜ。まぁオレはこの先に行かせないように遣わされた防衛装置みたいなもんだがな」


「どういう事ですか」


「ん~お前授業で習っただろ?パートナーはこの世界に来るときにある程度の力を抑えられた状態で召喚されるって話」


「ええ、覚えていますよ。この前の中間テストにも出ましたからね」


「つまり、何らかの拍子でその力が外れてしまわないように守るのがオレの役目なわけよ」


「ここに来た私はイレギュラーな存在だと?」


「そういうこった。エヴォルトっていうのは一種の暴走みたいなもんだと思うぜ?パートナーと魔術師には耐えられない力を解放するんだからな」


「なるほど。世界はこのエヴォルトという禁忌の技を嫌っている節がありますね」


「考えてみろよ。ニルがエヴォルトなんかしたら世界を滅ぼせるくらいの力を手に入れる事が出来るんだぜ?そんな奴がほいほい増えてでもみろ。地球が終わるぞ」


「力の使い方を誤ればそうなってもおかしくはないですね」



リンの言う事は的を射ていた。

そして癒理は今朝の玲奈の話を思い出した。昔、主の死に激怒したパートナーがエヴォルトして大陸の4割を破壊したと。

それがもし世界に溢れたりなどしたその日には――――………考えるだけでも恐ろしい事だ。



「ま、お前はそんな心配なんかいらねぇと思ったからオレも手を抜いたんだけどな」


「手を抜かれるのは気持ちが良いものではありません」



癒理の声には怒りが籠っていた。

その様子を見たリンは髪を掻きながら『わりぃわりぃ』と申し訳なさそうに謝る。



「だけどな、オレが本気を出したら勝てないぜ?今のお前じゃゲイボルグを防ぐ事なんか出来る訳がない。それにオレはこの力を手に入れてバハムートに勝ってほしいんだ」



リンの真面目な様子に癒理は毒気を抜かれた。



「手を抜いたのは悪いとは思っているさ。でも、八百長してでもお前にはあの力が必要だと思ってのことなんだよ。こんな所で躓いていらねぇだろ?」


「まぁ確かにそうですね」


「早く旦那に追いついて特訓相手にでもなれよ」



ニヤリと笑う英雄に癒理は口元を緩ませて『そうですね』と頷いた。



「さ、一旦休憩だ。オレ達が戦い続けて何時間経ったと思っている?」


「は?ふむ……1、2時間程度ですか?」


「バーカ、5時間ぶっ通しだっつうの。精神世界だから肉体的疲労はないけどな、精神的疲労は相当なものになっているはずだぞ」



5時間という言葉に癒理は驚いた。

まさか槍を5時間も握っているとは思ってもおらず、自分がどれだけリンとの戦いに集中しているのか窺えた。



「ほら、1回外に出るぞ」


「分かりました」


「3、2、1!っと!」



視界が真っ白に染まる。

そして視界がクリアなものになると、滝の音が聴こえてきた。


何時間ぶっ通しで執筆してると思ってんだよ?3時間だぜ?

と、どうもまた太びです。

前書きを書かないことで定評のある私ですが、前書きって何を書けばいいのでしょうね。

他のみなさんは書いているようですが、私だけですかね………いやァ…前書きを書くとどうもネタバレしそうで怖いッス。

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