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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略
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豪雨と轟雷

7月2日の午前6時30分。豊姫たちは近くの山の中にある巨大な滝壺に来ていた。

昨日一通り説明された事を再度確認として話す玲奈は真剣だった。当然それを聞いている美波たちも同じ。



「――――では、説明は以上です。天狐!」



桜吹雪が舞うと、そこには青く光る大きな狐がこちらを見ていた。



『なんだろう、全て見透かされているような嫌な目……』



豊姫は反射的に天狐から目をそらしてしまった。

それを見た天狐はこちらの思考をまるで見ていたかのようにニヤリと笑う。



「少し人が多いけど、大丈夫?」


「構わんじゃろ。ただ送るだけじゃからな」


「分かった。それじゃ皆ここに仰向けになって」



美雪が敷いていたレジャーシートに靴を脱いで上がると、豊姫たちは全員仰向けになる。



「準備はいい?まずは心を落ち着かせてね。この流れる滝の音すら聞こえないくらいに…」



玲奈は皆の心が静まったのを確認するなり、隣にいる天狐にアイコンタクトで術を発動するよう促す。

天狐の9本もある尾が輝きだし、その光は天狐の頭上まで昇ると弾けた。

視界を真っ白に染める光は豊姫たちに影響を及ぼす。



『えっ!?』



まるで床が抜けたかのように自分が落下して行く感覚と共に豊姫たちは精神世界へ落ちて行った。



「成功した?」


「うむ。無事届けたぞ」


「………皆さん頑張ってください…」



美雪は手を合わせて天に祈った。



「冷たっ!な、なに!?」



美波は状況を確認する暇もなく突然豪雨の中に放り出され、とりあえず近くの古びた建物まで走る。



「な、なんなの…?ここは」



と、自分で言っておきながら先ほど玲奈から説明されたばかりであり、ここはとりあえず精神世界で合っていると思った。


空の雲は真っ黒に染まり、止む気配を見せない雨を降らせ続ける。

時々雷の音が美波の耳に届く。



「濡れちゃうなぁ……これ…」



ここにいつまでもいるわけには行かない美波は、意を決して建物から飛び出した。

視界が悪い。雨のせいで遠くまで見通すことは出来ないようだ。


ジャブジャブと雨を吸収できず地から溢れる水を踏みつけながら美波は雨の世界を進む。



「こんな直人君には見せられないなぁ……あれ、なんで私…」



かあっと顔が赤くなるのを感じ、美波は顔をぶんぶんと振る。

その時だった。



「ッ!?落雷が近づいてくる!」



天から降り注ぐ轟雷が徐々に美波を目指して近づいて来ているのだ。

恐らくではなく、あれに触れれば間違いなく即死するだろう。

美波は雷に対し圧倒的な耐性を持つ相棒を呼び出そうとした。



「イクシオン!?どうして!?どうして出てきてくれないの!?」



美波は焦りながらも、とりあえずあの雷から逃げ出す事が最優先だと考えて来た道を全力で戻り始めた。



「あ、あれ?イクシオンを感じない!?ど、どこに行ったの!?」



美波は胸に手を当てて己のパートナーの気配を感じようとするが、その気配が全くない。

慌ててイクシオンと契約した時に得た証がある胸の谷間を見る。



「な、ない……」



なかった。

稲妻のマークに一本角の馬が描かれた紋様が完全に消失していた。


これは完全に美波は孤立していた。



「ど、どうすればいい……ここには豊姫先輩も癒理さんも直人君もいない……私、だけ…………きゃっ!」



自分のすぐ隣を稲妻が通り抜ける。

パートナーがいない今美波は雷に対しての耐性が一般人と何ら変わらない。



「一度でも受けたら即終わり………」



走りながら美波は考える。



「と、とりあえず防御壁を…!」



豊姫に教わった即興で作る防御壁を自分に纏わせる。

気休め程度にしかならないと思うが、ないよりはマシだ。



「よ、よし!出来た!」



美波は小さな喜びを実感するなり、落ち着いてきた思考を回転させて考える。



『あの雷はなんで私を追って来るのだろう……とりあえず普通の雷ではないと思うんだけど………一つ試してみようかな…』


「行くよ…ッ!スプラッシュ!」



美波は走りながら手で術式を組み上げ、地にある水を利用して水の竜巻を生み出した。

生み出すと、美波は追ってくる雷目掛けて投擲した。

下級に属す魔術だが、様子を見るにはこの程度でいいだろうと思ってのスプラッシュだった。


しかし、スプラッシュは突然降り注いだ雷によって防がれてしまった。



「とりあえずあれは普通の雷じゃない事は確認出来た」



それを見た美波は再び走り出す。

ここ最近癒理と直人を見てから自分も体力を付けなければと思って走り込みをしていたのが幸をなした。



「んじゃ、これはどうかな?」



恐らく避雷針の役割を果たしている鉄塔なのだろうか。

美波は一定の間隔で立っている塔に次々手で触れて行って何らかの術式を埋め込んでいく。



「まずは一つ目!ストーンランス!」



追ってくる雷が美波の仕掛けが施された塔に迫った時、美波は両手を合わせた。


ドオオオオオン――――!!!


凄まじい爆発音と共に塔から岩の槍が突き出た。


だが、雷は自我あるがの如く槍が突き出たその手前で制止していた。



「避けた!?」



美波はその光景に驚愕した。

突き出た槍は雷によって破壊され、やがて再び進行してくる。



「一つ目は下級。二つ目は中級。最後は上級魔術よ。これで相手の力が測れるはず」



美波は相手の力量を測るためにトラップを設置したのだ。

出来れば中級で相手にダメージを与えたい所だが、恐らくそれはないだろう。



「二つ目よ!ストーンバースト!」



鉄塔が爆発した。

少し遠くにいる美波でも熱気が届く爆風。

腕で目を守りながら美波は様子を見た。



「ダメ……だね…」



追ってくる雷は健在。

美波は最後のトラップに賭けながら走り出す。



「これで最後!クエイクフレア!!」



両手に広がる魔法陣を地に叩きつけると、鉄塔周辺の地面を呑み込んで塔ごと球体にしてしまった。


ググ……――――!


岩が唸る。

次の瞬間、数回に分けて岩の中で爆発が起こる。

そして外を覆う岩にヒビが入ると、岩石を吹き飛ばしながら最後の爆発が巻き起こった。



「これでどう!?」



砂煙はすぐ雨によって打ち消され、そこに立っていたのは―――………。



「………うん………ここに来た時点で薄々気づいていたよ」



バチィバチィ!と辺りに紫電をまき散らしながら地を前足の蹄で蹴る。

それはイクシオンだった。



「なんであなたが私の事を攻撃するのか分からない。でも、ただでやられるつもりはない!」



美波は自分のパートナーに立ち向かう事を決めた。

それを見たイクシオンは前足を上げ轟雷を呼び寄せる。



「いつもあなたに頼っているばかりじゃない事を見せてあげる!」



美波とイクシオンとの戦いが始まった。


今回は美波ちゃんが主役でしたね。

これからは修行編になります。結構なキャラクターを回すことになると思うので少し長くなると思われます。

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