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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略
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応龍との接触


自分も自室に戻ろうとした時ニルに声をかけられた。

ここでは話せないと言ったニルとヴリトラに連れられて外に出ると、風がとても心地よかった。昼間の暑さとは程遠く、海の風と海の音が眠気を誘う。



「なんだ?二人して」


「いまリンドヴルムから連絡が来た」


「リンドヴルム?誰だ?」


「翼龍よ。恐らく舞香の鍵に封じられた最後の龍でしょうね」


「風天龍リンドヴルム。頭の悪い翼龍の中でも知性と強さを持った聖龍だ」


「リンドヴルムは分かった。で、そいつがなんて?」


「応龍との接触に成功したそうだ」


「舞香の話しにあった龍か!それでいつ復活するんだ!?」


「もう応龍はボロボロだそうよ………もってあと20日…」


「1ヶ月もたないのか!?おいおい……やばいぞ…」


「あぁ……つまり、7月の21日にバハムートは復活する」



紅哉に焦りが走る。



『やばい…やばいやばい………これじゃどう考えても間に合わない…どうすればいい…!』


「先延ばしに出来る方法ならなくはない……」


「ホントか!?」


「あぁ……それはな―――」



そこで紅哉の携帯端末のバイブが鳴る。



「うわっと!なんだよ!って舞香か!?」



紅哉はすぐさま端末の通話ボタンを押して舞香の電話に出た。



「もしもし、どうしたんだ?」


『お兄様……今ニルから話は聞いた?』


「応龍の話しか?」


『うん……もたないって…』


「あぁ…聞いたぞ。どうすればいいんだ……このままじゃ豊姫たちは間に合わないぞ」


『大丈夫……もたせて見せる…』


「どうやってだ?」


『リンドヴルムを生贄に捧げる……』


「は……?おいおい、なんだか穏やかじゃないな…」


『リンドヴルムもそれでいいって言っているから私もその案でいくつもり』


「待て待て!説明しろって!生贄ってなんだよ」


『ごめん……余り話す時間はないの……詳しい事はニルとヴリトラに聞いて…』


「あ!おい!舞香!」



舞香は一方的に通話を切ってしまった。

紅哉はニルとヴリトラを見る。



「説明してくれるか」


「応龍は龍族の中でも極めて珍しいドレインという能力を持っている。恐らくバハムートを封じていられなくなったのは、力がもう尽きようとしているのだろう」


「そこで誰かから力を受け取れば万事解決という事ね。でも、バハムートを抑えつけておく力は途方もなく強大だと思うわ。応龍が龍神種じゃなかったら出来ない芸当」


「翼龍1体でどこまで回復するのか分からないが、リンドヴルムを吸収すれば確実に日にちは伸びるだろう。だが、応龍もリンドヴルムも死ぬことには変わりはないな…」


「なんで応龍も死ぬんだよ…」


「紅哉、応龍は使命感の強いお方なの。それにリンドヴルムはアタシたちの事を応龍に話したと言っていた。きっとあのお方はアタシたちにバトンを繋ぐためにも最後まで抑えるお気持ちでいるはずだわ」



ヴリトラが尊敬するほどの龍なのだろうか。

彼女は言い終えて悔しそうに顔を伏せる。



「必要な犠牲なのだ。リンドヴルムもそれを理解しているからこそ自ら犠牲になる事を望んだのだ」


「止めないでね、紅哉。彼らの決意を汚すような事だけはしないで頂戴」


「…………あぁ……」


「話はそれだけだ。マスター、ここは耐えてくれ。アイツらの犠牲を無駄にしないためにもオレ達は前に進まねばならない」


「了解だ…」



紅哉はどこか納得しない表情だったが、それでも自分にはどうしようもない事だと悟り、とぼとぼと家の中へ戻って行った。



「同胞が死ぬか……」


「分かっていた事よ」



紅哉がいなくなった後、ニルは星いっぱいの夜空を見上げる。



「何体の龍がこの地に集まるのだろうか……」


「少ないでしょうね………ダハーカ達はアテはあると言っていたけれど」


「そもそもこの時代に同胞が生き残っている可能性自体無きに等しい。未来の舞香が何を言っていたのか分からないが、集めて何をやらせるつもりなんだ」


「さぁ?アタシ達は待っていろとしか言われてないからね~」


「………待っていろ、か」


「どうしたの?」


「いや、昔のオレ達に比べれば随分と協力的になったな、と思っただけだ」


「ふふっ、そうね。昔のアタシ達は暇さえあれば喧嘩しているような集団だったわよね」


「これもマスター達人間の力か」


「一人の力は弱いけれど、集まれば強大な力になる。それを教えてくれたのは紛れもない人間よね」


「あぁ、お前もそうだろう?数多くの人間に知恵を使われ、その果てに滅ぼされたのだからな」


「ええ、もう実体験済みよ。ホント人間は侮れないわ」



言葉だけ聞くと忌々しげに聞こえるが、彼女は笑っていた。

心から人間を尊敬するようにヴリトラは笑う。隣で見ていたニルはそれに同意するようにニヤリと龍牙を見せた。



「王との決戦は近いな。果たしてオレ達は勝てるのだろうか」


「難しいわね。神の攻撃すらいなせるお方よ。生半可な攻撃はきっと通じないわ」


「だろうな。オレ達が龍の里を放棄する時、最後まで神と天使の猛攻を防いでいたからな」


「そうなるとアタシたちの状況はかなり最悪よ。スーパーノヴァでも撃たせて見なさい。アタシ達消し飛ぶわよ」


「ふむ……オレも鍛えねばならないか…」


「どうするの?」


「バハムートの技を真似るしかないだろう。エヴォルトしたオレならば8割程度模倣出来ると思う。それで威力を削るしかあるまい」


「あのアメリカでやった技もバハムートの物よね。でも、あれも威力はバハムートのより程遠いわ」


「仕方あるまい。あくまで真似なのだ。オリジナルではない。ヴリトラ、明日からオレの修練に付き合え」


「いいわよ。正直バハムートの技なんか受けたくもないけれど、しょうがないわね」


「さて、オレ達も寝るとするか。余りここにいてはマスターが心配するだろう」


「そうね。ふふ、今日はアタシが紅哉の隣で寝る日ね~」


「ぬぅ……」


「あら、ジャンケンに負けるあなたが悪いのよ~」



眉間にしわを寄せているニルを見てヴリトラはくすくすと笑う。

元から仲が良かった二人だが、ここ最近ヴリトラもゲームの腕を上げてから更に仲が良くなったように見える。

まぁ、元々紅哉の背中の傷から彼の世界やリアの視界から舞香のゲームをしている姿を見ていたため、全くゲームに関して知識がないというわけでもないというわけではないのだが。



「ちっ、オレは霊体化する」


「は~い。おやすみね~」



紅哉の部屋に戻ると、彼はもう既に寝ていた。

いつも大人ぶっているが、寝顔は年相応の子供らしさが残っている。

彼の机には舞香特製の自作ノートパソコンが起動中であり、何気なく画面を覗くと、動画が一時停止されたままだった。



「あら、シャットダウンしないで寝ちゃったのね。ん…?」



その映像に映っていたのは、未来の娘二人と瑠璃、豊姫。そして欠伸をしながら彼女たちを見ている舞香の姿があった。

皆幸せそうだった。笑顔が溢れ、普通の家庭ならば誰しも通る当たり前の光景が邪龍の彼女には酷く眩しく見えた。



『邪龍のアタシには眩しすぎるわね……』



苦笑しながらヴリトラはパソコンを操作して電源を落とすと、一つ欠伸を噛み殺して紅哉のベッドに潜りこんでゆっくりと目を閉じた。


安らかな寝息を立てる自分の主には、一体いくつの命がかかっているのだろう。

昔の自分は人の命関係なしに奪い、その果てに人間に滅ぼされた。


自分を倒した英雄には一体いくつの命がかかっていたのだろう。

いや、自分の一つの国を壊滅させたが、紅哉には全世界の命がかかっていると言っても過言ではない。


こんな小さな背中で世界を守りきる事が出来るのだろうか。



『ううん、守りきるのよ。このアタシの命に代えてでもこの人を』



先ほどの映像を見てから自分のその感情が高まって行くのを確かに感じた。



「瑠璃~豊姫~………あは、俺と遊ぼうぜ~…」


『……………どうしようかしら』



ヴリトラは誓いを撤回したくなってきたのであった。


連続投稿となります。

これあげている時間帯午前3時40分くらいですね。はぁ……昔の自分はこんな時間帯まで起きていることなんて考えられなかったのにな…と思っていたり。

親にその話をすると、年齢を重ねていくうちに起きていられなくなると言われましたね。

そんなもんなんですかね、と全然危機感ゼロの自分が通りますよっと。

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