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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略
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全体確認

「皆、明日の特訓についての最終確認をする。これから皆が何をするのか全員で確認し合いたいと思う」



晩御飯も食べ終わり、一通りアーデルトと玲奈と美雪の紹介が済んだところで紅哉は話を切りだした。

長方形のような長い木で出来たテーブルに座る瑠璃たちは、紅哉の話しに耳を傾ける。



「まずは豊姫、直人、癒理、美波、凪咲、彰のエヴォルト組だ。玲奈、エヴォルトについて説明を頼む」



瑠璃の隣に座る玲奈は立ち上がると、紅哉と入れ替わるようにホワイトボードの前に立つ。



「単刀直入に言います。まずあなた達がエヴォルトに至る可能性は限りなく低いとみていいでしょう。未来のあなた達は成功したかもしれませんが、今の私たちは失敗するかもしれません。もちろん私も修行には全面的に協力しますが、習得出来るか出来ないかは、あなた達にかかっています」



玲奈の言葉は豊姫たちに緊張を走らせるには十分だった。

豊姫に至っては、彼女が習得できるか出来ないかでバハムートの攻撃を防ぐ事にまで関わって来るのだ。



「私だって脅しをかけたくはありませんが、こればかりは本当にあなた達の頑張りにかかっているのです。紅哉さんの時はとても特殊なケースでしたが、今の6人は一からであると同時に短時間で習得する。私がここに来る以前に見立てた予想としては……」



玲奈はホワイトボードにペンを走らせて数字を書く。

それを見た紅哉達の顔が曇る。



「甘めに見てエヴォルトに至る人数は6人中2人です。本当ならば1人も至らないと思いますが、2人という数は私の願望です。出来れば2人にはなってもらいたいと思います」


「まぁ世界でエヴォルトに至っているのは俺と玲奈を含めて10人だもんな……」


「そもそもエヴォルトという現象を科学的に解明できている国はどこもありません。ですが、私と天狐が考えた結果、エヴォルトというものはパートナーとマスターの心理に関わって来るものだと思います」



ホワイトボードに簡単な人間と狐が描かれ、その間に大きな字で心と書く。



「これは最後の段階の話しです。紅哉さんは既にエヴォルト開花寸前でしたので私が背中を少し押してあげるだけで習得することが出来ました。しかし、今回の場合一からなので、これは私にも想像がつきません」


「え?それじゃどうするんですか?」


「私が出来るのはあなた達を心の中に送る所までです。そこから先は実力でどうにかするしかありません。1ヶ月でどこまで行けるか、それは私には分かりませんが、出来る限りの事はやらせていただきます。明日の6時からすぐ始めますので遅れないように。では、説明は以上です」



ホワイトボードに早朝6時玄関前集合と書いて玲奈は自分の席に戻った。



「説明ありがとう。皆も言いたい事はあると思うが、とりあえず全部の流れが終わってからにしよう。んじゃ、次は瑠璃の永久幻術についてだ」


「永久幻術……?紅哉、それはホントなのかい…?」



傍観する予定だった雅文たちが興味を示していた。

魔術についての研究に人生を捧げてきた彼らにとって魔法の存在を知れるというのは歓喜のほかない。



「本当だよ。とりあえずそれはアーデルトさんから」


「紅哉、スクリーンある?」


「ありますよ」



一応年上という事で敬語を使う紅哉から指名されたアーデルトは、A4サイズの電子端末を操作しながらホワイトボードの前に来ると、丁度そこへスクリーンと機材が登場する。

USBを繋ぐと、スクリーンによく分からない術式が映し出された。



「これが未来の瑠璃から渡された術式よ。拡大したものだけれど、相当画質はいいようね」



アーデルトが説明をしていると、雅文、直海、アイリ、麗華は興味深そうに見ていた。



「私もまだ解析が全然進んでいないのだけれど、流石魔法と言った所ね。理解出来ても私には到底使えない代物。さて、瑠璃と私がこれからする事は、術式の解読および実践よ。私だけ解読してもダメなのは分かるわよね?」


「はい。使うのはあくまで私ですから、術式の根本から理解しないと危険なのは分かります」


「ええ、よく分かっているじゃない。ちゃんと理解しないと反動で痛い目見るからね。ましてやあなたが挑戦しようとしているのは魔法。恐らく失敗したら即死よ」



アーデルトは自然に語るが、この場の全員がその言葉で固まってしまった。



「だからこそ全てを理解してこの魔法をあなたのものにしなさい。それにこれは未来のあなたが作った物だから絶対に理解出来るはず」


「はい!頑張ります!」


「それで、そこの研究者さん達はどう思うかしら?この術式をざっと見て」


「ここまで複雑かつバラバラな術式を見たのは初めてだ」


「無駄なところを全て省いているのかしら……よくこれで術式が成り立っていると思うわ……」


「凄い、の一言だよ。未来の瑠璃ちゃんは天才だったんだね。アイリでも一応理解出来るんだけど、絶対に真似できないって思えるのは初めて」


「なァ豊姫。お前にはどう見えるんだ?」


「分からない……これはもう学生云々の話しじゃない………天才くらいじゃなきゃ理解出来ないと思う…」


「そ、そんなに凄いのか……いや、魔法だから当然か…」


「これをこれから瑠璃先輩が解いていくものだと思うと………どれだけ時間がかかるんだろう…」



豊姫は紅哉の顔を見ずにスクリーンに映し出された術式を見ていた。



「つまりそういう事よ。いい瑠璃?明日からあなたが挑むのはそれくらいのレベルという事なの。覚悟を決めておくことね」


「はい!頑張ります!」


「私の説明は終わりよ」


「ありがとうございます」



アーデルトは自分の席に座ると、瑠璃のために術式解読の作業に戻った。



「次はアイリのところだな。アイリ、説明を」


「はいはーい!」



ツインテールを揺らしながらホワイトボードの前に来ると早速説明を始めた。



「アイリが作る機械は、バハムート達がまき散らす龍族のオーラを相殺する装置だね。一応1ヶ月以内には絶対に間に合うけど、一つだけ問題があってね。この装置開発には朱音ちゃんが必須なのだ」


「今日アイリさんの研究を一通り説明して貰ったのですが、バハムートにも対応できる範囲まで装置のレベルを上げようとしたのです。しかし、バハムートまでとなると想像を遥かに超えるオーラなのは分かりきっていること。そこで龍の力を使える朱音さんに協力をお願いしたいのですが……」



椅子に座っている遊佐が喋りだし、アイリも『そうなんだよね~』とため息をつく。



「紅哉君、瑠璃ちゃん、舞香ちゃんの3人の力を合わせればバハムートに匹敵するオーラが集まると思うんだけど、何せ舞香ちゃんはアメリカにいるしね。だから、アイリと遊佐ちゃんの目標はとりあえず作れるところまで作る!ってとこかなぁ…」


「俺と似たような状況なのか……」


「費用は炎道家で全部賄えたから問題はないけれど、朱音ちゃんがどれくらいで復帰してくるかで完成出来るか出来ないか決まると思うよ」


「舞香姉さんが鍵を握っているという事なんだね。紅哉兄さんも舞香姉さんが探しているカケルという人物が見つかるまで修行が出来ませんからね」


「そうだな。一番焦っているのは俺なんだよな。舞香には頑張って欲しいものだ…」



この時直人は別の事を考えていた。


『あれ……皆突っ込まないっすけど……今アイリさん、費用全部炎道家で賄えたって…………どんだけ金あるんすか…』


この事に誰も突っ込まないこと自体直人は驚愕していた。



「とりあえずアイリのとこはこんな感じだよ」


「分かった、ありがとう。最後に俊介のところだな」


「うす!俺だな!」



俊介は立ち上がると、堂々とホワイトボードの前に立った。



「俺の修行だが、監督に直海さん、麗華さん、雅文さん、クロフィードさんがついてくれることになった」


「へぇ?ただ暇なだけなんじゃないのか?」


「おい…………ま、まぁとりあえずだ。んで、まず俺が受けれる最大までの炎をデータ化して貰う。それを元にクロフィードさんが俺の攻撃を受けてどれだけ攻撃力が上昇しているのかを測ってもらうってことよ」


「子供たちが必死に頑張っている中で僕たちが何もしないわけにはいかないからね。基本的に僕と直海が俊介君の能力変化を測り、麗華とクロフィードで彼の力を受けて貰う形になる。炎の供給源はアイリの朱雀になるけど、俊介君は元の力を出せそうかい?」


「大丈夫だと思います。凪咲の炎に比べて若干劣るかもしれませんが、能力の変化にさほど支障はきたさないと思いますよ」


「ふむ……でも、違いを知りたいな。凪咲さん、修行に行く前に一度俊介君のボルテージを最大までにしていってほしい。朱雀の炎とイフリートの炎の違いを測りたい」


「分かりました~。凪咲は問題ないですよ~」


「なら、私たちも修行開始は6時にしないといけないわね。久しぶりに研究者の血が騒ぐわ!」


「ほどほどにしなさいよ…」



満面の笑みを浮かべている直海に呆れている麗華。

紅哉は親の見たくもない一面を見た気がして軽く引いていた。



「っと、俺もこんな感じだぜ。どこまで力が伸びるのか分からねぇが、やるだけやってやるぜ!」



俊介が自分の席に戻った事を確認した紅哉は立ち上がる。



「最後に俺だが、自分が何をすればいいのか分かっていない。未来の舞香には、とびっきりの修行相手を用意したって言われてな。それでカケルっていう人が朱音さんを回復してくれない限り俺はお預けなんだ」


「朱音さんかぁ……早くカケルさんが見つかるといいね」


「ホント早く見つかる事を祈るばかりだよ」


「舞香から何か連絡はないの?」



直海が紅哉に尋ねた。



「もう少しで見つかると昨日言っていた。でも、あいつ少し骨が折れそうとか何とか」


「骨が折れそう…?舞香ちゃん何をするつもりなのかな…」


「舞香はね、キャピトルに潜入するつもりでいるわ」


「キャ、キャピ?」



端末に目を通しているアーデルトが答えた。

直人が何語?と言った顔で聞き返すが、アーデルトはそれを面倒臭そうに答える。



「アメリカの国会議事堂よ。それくらい覚えておきなさい。一般常識よ?」


「す、すみません……」


「あいつ何をするつもりなんだ……」



キャピトル・ヒルを知らなかったのは直人と俊介だけみたいで、他の皆は舞香の行動が読めないでいた。



「一歩間違えれば舞香さん……国家犯罪者に…」


「だよな……まさかそこにカケルさんがいるのか…?」



豊姫の言葉に全員が頷く。



「いや、とりあえず話をまとめるとしよう。明日から修行開始となる。1ヶ月という短い期間だ。一秒も無駄には出来ない日々が続く。結果は後についてくるものじゃない。自分の手でついてこさせるんだ」



紅哉は皆を見渡すと、そこには決意を決めた皆の姿があった。



「よし!皆!絶対にバハムートを倒すぞ!」


『おおー!!!』


「おっしゃ!解散だ!」



紅哉がテーブルを叩くと同時に皆はワイワイと騒ぎながら部屋を出て行く。

もう寝るには良い時間だし、この後お風呂にでも入ったらすぐに皆は寝ることだろう。



「マスター、ちょっといいか」


少々日が空いてしまったような気もします。

なかなかリアルに追われる生活でして、だいぶ前よりは慣れたと思うのですが、身体はまだまだ本調子とはいかないみたいですね。

今回の話しは少し長いのかな?と思います。みんなの目標が決まり、遂に動き出すバハムート襲撃戦!ってところですね。


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