外伝 氷山の奇跡6
「うぅ…さっぶいよォ…」
『メイド服などで来るからそうなるのだ……寒いのならリヴァイアサンの力をコントロールするのだな』
「ソ、ソウスルゥ………………はァ!大分寒さが和らいだよ!」
『うむ』
「紅哉君の反応はこっちだね。リアちゃんの反応が大分遠のいたけど、どうしたんだろう」
『ふむ、かなり上にいるようだ』
朱音は紅哉がいると思われる山小屋に近づくと、飛来物を察知して大剣を前に突きだす。
「誰!?」
「また誰か来た……もう今日はお客さん多すぎ………来なくていいよ」
「ええ!?なんだか歓迎されてないっぽい!?」
「とにかく帰って。私は彼を看ていないといけない」
「あ、それあたしのお友だちなの。んじゃ、リアちゃんもここを通ったのかな…」
「あの人の知り合い……はぁ…入っていいよ」
「歓迎されているのかされていないのかさっぱり分からないね…」
『恐らく後者だろう。完全に歓迎されていないぞ』
「デスヨネー……」
小屋に入ると、そこには眠っている紅哉の姿があった。
「無事だったんだね……良かった…」
「あなたもこの人の知り合いなんだ……」
「うん、朱音って言うの。ねェ、さっきここに青い髪をした龍族来なかった?」
「来たよ……冥王龍は山頂に向かった…」
「あぁ、動けない紅哉君の代わりに依頼品を取りに行ったんだ。なるほどね」
「あなた何者…?下の結界を超えて来るなんてあり得ない」
「え?下の結界?あのフェンスのこと?」
「違う…あのフェンスは人間が作った物だけど、その奥に私が作った結界を作ったの」
「え~と………そんなのあった?」
「あったの。あれは龍族しか越えられない物。この人の中に龍族がいるから理解出来る。さっき来たのは正真正銘の龍族。でも、あなたからは何も感じない」
「あ~あたしも一応龍族に分類されるのかなァ……あたしの身体には10体の龍族が眠っているからね。恐らくそれで通れたんじゃないかな」
「龍の波動を感じない………私はそこまで弱ってしまったの…?」
「もしかすると君も龍族なの?」
「うん……ちょっと龍の力が封じられているの…」
『ゲオルギウス。こんな子私たちの世界にいた?』
『いや、見たことがない。舞香も知らない龍族だろう』
朱音は自分の世界に存在しなかった龍族に驚いていた。
『でも、ここ東京だよ?未来でも私たちが住んでいた場所は東京だし、知らないはずがない』
『ならば答えは一つだろう。過去が変わっているとしか考えられん』
『そうだよね……これは良い事なのかな…』
『良い事だろう。龍族ならば我らに協力してくれるはずだ』
「ねェ、ちなみに名前は…?」
「サクス……」
「聞いたことがないね……そんな龍いたかなァ…」
「いないと思うよ……私の名前はこの世界で過ごしやすくするためのものでしかないから」
「無名の龍なんだ。ここに何年住んでいるの?」
「もう…分からない………」
「それもそうだよね……」
悲しそうな顔をしたサクスに朱音は聞いちゃいけない事を聞いてしまったと後悔した。
この子は今の今まで一人ぼっちだったのだ。それは寂しかっただろう。
「ねェ…良かったらあたしの家に―――」
ドオオオオオン――――!!
「え!?なに!?」
「始まった……山の主と冥王龍の戦いが…」
「ええ!?これただの採取依頼じゃなかったの!?依頼難易度も低かったし」
「冥王龍なら勝てると思ったけど……これはちょっと分が悪いかもしれない…」
「リアちゃんが負ける…?なら、あたしも行かないと!」
「オレも連れて行け」
「ニルちゃん!?」
小屋を出て行こうとした朱音を引き留めたのは、余り顔色が優れないニルだった。
「もう…大丈夫なの……?」
「お前、氷帝龍サクソンだろう。マスターに自分の名前を言う時にサクソンって最初言ったからな。お前がオレたちに名前を隠すのか分からないが、お前ほどの龍が何故こんな山に縛られている?」
「バレてた………なら、私の伝承も知っているでしょう?」
「氷帝龍サクソン……確かブリタニアに伝わる龍よね。炎帝龍ドレイグと戦ったと言われる白き龍」
「うん……ドレイグとの戦いに負けた私はこの山に流れ着いたのだけれど、もう体力が限界で……その時に山の主からここで山に来る者たちを追い返す門番をする代わりに生かして貰った。でも、逃げだすと困ると思ったのか…力の8割くらい持っていかれた…」
「伝承では死んだことになっているけど……まさか生きていたなんて」
「つまりお前は山の主さえいなければさっさとこの場所を抜け出せるのだな」
「え…?」
「龍族を縛り付けるなど、愚かすぎる。幻想種最強の龍族の力を思い知らせてやろう。朱音、行くぞ」
「あ、うん」
「待って……私も行く……足手まといにはならないから…」
「紅哉君はどうするの?置いて行くの?」
「大丈夫。ここは私の家だから、魔物も襲ってこない安全地帯…」
「そっか。んじゃ、帰りに拾って行こう」
「戦闘が激化している。リアの奴が手遅れになる前にオレ達も急ぐぞ」
朱音はばれないようにアスカロンへリアの力を取り入れ、ニルは龍の姿へ変わる。
サクソンは氷の翼を作り出し、それで飛んで行くようだ。
「行こう…!」
サクソンの言葉で3人は同時に頂上を目指し始めた。
少し時間は戻り、リアは頂上に着いた時の事である。
「これは…ッ!」
『あれ…?この龍どっかで見た事あるのよね』
『あぁ!こいつならオレも見た事あるぜ!』
『こやつは氷帝龍サクソンだな。何故氷漬けになっておるのだ…』
頂上に到着すると、そこには巨大な龍が氷像のように固まっていた。
4足でしっかり地を踏み、大きな翼を広げている姿は今にも動き出しそうだった。
ニルやグリンデルのような荒々しさはなく、この龍から感じるのは争いを嫌う優しい波動。
リアもなかなか龍族の中では綺麗な龍であるが、サクソンはリアから見ても一目で美しい龍だと感じた。
「何故ここにサクソンが…」
「それは保険じゃ」
リアは山の響きのような声に振り返った。
そこには巨大なスノーゴーレムが立っており、小さなリアを見下ろしていた。
「あなたは?」
「山の主だ。かつてこの山に1体の傷ついた龍が落ちてきた。わしはこの山を荒らす人間が嫌いでのう、助ける代わりにこの山の門番になれと言って助けたんじゃ」
「それがあの小さな女の子だと?」
「おお、あの龍め。同族だからと言って追い返さなかったな。後でお仕置きをしてやろう」
「なるほど、氷龍の鱗とはサクソンの事でしたか。なら、この依頼は完遂できそうにありませんね」
「何もしないと言うのであれば、わしも手荒なマネをしないで済むんじゃが」
「そうはいきませんね。同族がこの地に縛れているのであれば、それを解き放ってあげるのが情け。あなたに罪はありませんが、友のために倒させていただきます」
「わっはっは!そんな小さな身体でわしと渡り合おうと?」
「冥王龍を冠する私を甘く見られては困る」
リアは力を解放すると、龍の姿へと変化した。
山の主と並ぶその大きさに山の主は『ほう…』と呟いた。
「クキャアアアア―――!!」
「わしの山は荒させん!」
リアのブレスと山の主の拳がぶつかり合い、戦いの火蓋は切って落とされた。
え~とこの話を投稿したのは、新しく書き始めたものの後になりますね。
少し更新が遅れてしまっておりますが、新しい方に少し力を入れてしまっているからでしょうかね。
申し訳ないです。
ですが、頑張って更新していくので、温かい目で見守っていてくださいw




