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龍の血を引く者  作者: また太び
外伝シリーズ
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外伝 氷山の奇跡4

「はッ!?ニル!?いっつッ!」


「まだ起きちゃダメ。凍傷が治りきっていないよ」



紅哉は目を覚ますと、真っ先にニルの姿を探した。

だが、周りは魔物の姿もなく、雪もない全く身に覚えのない場所だった。



「き、君が俺の事を助けてくれたのか…?」


「うん……でも、ちょっと違う。私はあなたを拾っただけ。本当にあなたの命を守っていたのは黒龍のおかげ」


「そうか…ニルが……あぁ…エーテルが全然ないんだな。ニルを召喚する事も出来ないのか…」


「あなたは酷く弱っている……これでも食べて」



少女はお粥を鍋から木の容器によそうと、身体を起こした紅哉に差し出してきた。

それを見た紅哉は。


ぐ~………。



「あ……すまん、腹がかなり減っていたようだ」


「気にしないで…あなたは丸一日寝ていたんだから…」


「丸一日だと!?うっそだろ…」


「本当……」



お粥を食べながら紅哉は愕然とした。

流石にこの山での依頼は1日で終わるとは思わなかっため、セレナには2日か3日かかると言って来たのだが、舞香は心配していることだろう。



「舞香心配しているだろうなァ…」


「誰…?」


「妹だよ。俺、ある物を回収するためにここに来たんだ。それで、この依頼を俺が受けるか妹が受けるかで少し揉めてな。毎日一通メールは寄越すって言ったんだが……大丈夫かな…」


「あなたのリュックならそこに…」


「あぁ、一緒に持ってきてくれたんだな。ありがとう」



紅哉はリュックを漁って携帯を見つけ出した。

すぐさま電源を入れようとしたが、一向に着く気配がない。



「うわ…バッテリーが切れてやがる……でも、確か予備のバッテリーを持ってきたはずなんだが…」



ない。いくら探しても見つからない。



「まずいな。こりゃ舞香に怒られそうだ」



感情がない妹が怒るはずはないのだが、なんだか怒りそうな気がして紅哉は、がっくりと肩を降ろした。



「怖いの…?妹」


「どうだろうなァ……怖いと言うか、無言の威圧って言うんだろうな。あんまり喋るような奴じゃないから、尚更怖いんだ」


「よく分からないけど、妹が怖いのは分かった……」



食べ終わった紅哉のお椀を取ると、少女は立ち上がった。



「どこ行くんだ?って洗い物か」


「そ……私もあなたが寝ている間に食べ終わったから、食器洗うの…」


「俺も手伝うよ」



まだ完全に身体が回復しきっていない事を忘れていた紅哉は、立ち上がろうとして身体に鋭い痛みが走った。

それを見た少女の目は『ね?』と語っていた。

紅哉は大人しく「はい」と言って休むことに専念した。


食器を洗っている少女へ紅哉は聞いてみることにした。



「なァ、君の名前はなんて言うんだ?」


「私の名前…?私の名前はサクソン……ううん、サクス」


「サクスって言うのか」


「うん」


「俺の名前は火神崎紅哉っていうんだけど、なんでサクスさんはこんな所に住んでいるんだ?」


「サクスでいい……」



食器を洗う少女の名前はサクスと名乗った。



「んじゃ、サクスはどうしてここにいるんだ?」


「私はここから出られないから……」


「どういうことだ?」



サクスは紅哉の問いに答えることはなく、紅哉は『言葉のキャッチボールが成り立たない子だな』と思っていた。



時間は少し戻り、まだ紅哉が雪山で倒れている頃の話しである。

リアはいま山を昇っていた。

既に日は沈み始め、これから完全に夜が訪れようとする時間帯だ。



『リア……今どこにいるの?』


『どこにいるのか言えませんが……舞香、私に暇をいただけませんか?』


『……………まぁいいけど……それよりお兄様が少し気になるね…それじゃ』



脳内に舞香の声が響き、若干焦ったが彼女はリアの焦りに気付かず念話を切ったようだ。



「いや、あれは完全に気付いている感じでしたね。紅哉の事を気にしていた素振りから、遠まわしにお兄様へよろしくと言った所ですか」



ちらほらと山道の端に雪が見え始め、リアの目の前には『この先魔物出没。進入禁止』との看板と魔術によって封印されたフェンスがあった。



「これは……破壊したら警報が鳴りますね」


『離れるがいい、リアよ』


「分かりました」



アジダハーカの声が頭に響くと、突然何もない虚空から暗黒に染まった鎖が飛び出した。

鎖は魔術が施されたフェンスに刺さると、強引に開け始めた。



『我の鎖で無効化している今だ。行くがよい』


「感謝します。邪龍王」



リアは難なくフェンスを通ると、先を急いだ。

彼女が通ったのを見たアジダハーカは鎖を引き抜くと、フェンスの扉はゆっくりと閉じて行った。



「はァ……暗くなってきたなァ……もうリアちゃんどこに行ったのー!?」


『お前が大丈夫大丈夫こっちだから、などと言った結果がこれだ』


「うっさいなァもう……リアちゃんのエーテルの反応はこっちだと思うんだけど、全然元来た道と違うんだよね…」



絶賛朱音は遭難中であった。

彼女の身体に眠る冥王龍リヴァイアサンの力と全く同じ反応を頼りに朱音は進んでいた。

しかし、なんというか、この子は反応に頼って進むのが得意ではない。

むしろ勘に頼った方がよっぽどいいのではないか、と思うほどに脳筋である。



『朱音、前を見ろ』


「お?フェンス…?あぁ!この先にもう行ったんだ!でもこれ、相当強力な魔術障壁なんだけど……」


『恐らく力技で壊したら警報が鳴るだろうな』


「だよね~。これ転移魔術にも反応する奴だよ。どうしよっか」


『バハムートの次元移動を使えばいい』


「あ、それいいね!」


『提案しておいてなんだが、長時間使うなよ。元の世界へ帰れなくなるぞ』


「大丈夫大丈夫、ちょっとだけだし!set!バハムートインストール!」



黄金の輝きを纏った大剣を朱音は構えた。



キィィィィイイイン―――――!!!!


剣の輝きが最大に達した瞬間、朱音はアスカロンを空間へ一閃した。

すると、紙のように空間は裂け、朱音は何も思わずその空間に飛び込んだ。



「えっと、もっかい!」



再び剣を空間へ一閃すると、自分が生きている元の世界へ通じる空間が顔を出した。



「よっと!はい!フェンス抜けた!」


『余り使うなよ』


「分かっているってば。もうゲオルギウスはおじさんなんだから~」


『人の良心をからかうものじゃない…』



朱音はそんなパートナーに「はいはい」と言って剣を投げ捨てる。

剣はいつもの如く空間へ溶けて行き、朱音も先を急いだ。


どうも前書きをいつも書かないまた太びです。

最近は新しい環境に慣れてきたせいか、投稿する速度も上がっているかと思われます。

前回はなぜかポ〇モンを語っていたのですが、どうぞ忘れてくださいw

さてさて、今回の外伝ですが、IFというよりもこんな話もあったんだよ。という感じで見てくださると嬉しいです。

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