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辺境育ちの侍女ですが、無自覚チートだったようで  作者: しゃもん


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第4話 篝、無自覚に刺客を瞬殺する

 シア様は殿下と甘い時間を過ごしたあと、侯爵家へ戻ることになった。

 その間、私たちは隣室で簡単な朝食を取っていた。


 離宮の客間は、夜明け前の薄い光に包まれている。

 静けさの中で、スープの湯気だけがゆらゆらと揺れていた。


(……なんで今日は、やたらレイモンドの視線を感じるんだろう)


 向かいに座るレイモンドは、黙々と食事をしている。

 けれど、時折こちらをじっと見てくる。


(文句でもあるのかな。

 また騎士団に入れって団長からの勧誘を持ってきたとか?)


 私は侍女だし、モブだし、王宮騎士団なんて柄じゃない。

 そもそも、団長が私を勧誘してくる意味が分からない。


(……まあ、視線だけで何も言ってこないなら放っておこう)


 ただ、レイモンドが絡むと王宮の侍女たちから余計な嫉妬を買うので、正直めんどくさい。


 そんな私の心情とは裏腹に、

 レイモンドと私の周囲には、なぜかぽっかりと空間が空いていた。


 暗部の侍女リュミエルとカトレア、そして王宮騎士二名。

 四人は、なぜか私たちから距離を取って座っている。


(……なんか、あの二人に近づくとよくないことが起きそうだ)


 四人の暗黙の了解らしい。



 ちょうど六人が食べ終えた頃、

 防音魔法のかかった部屋から、殿下とシア様が姿を現した。


「シア、気をつけて戻れ。護衛は王宮から三名つける」


「はい、アレクシス様……」


 シア様は蕩けるような瞳で殿下を見上げ、

 護衛に囲まれながら馬車へと向かっていく。


 その後ろ姿を見送り、私たちも離宮を後にした。


 馬車は軽快な音をたてて、真っ直ぐ侯爵家に向かっていた。


 夜明け前の王都は、まだ薄暗い。

 街灯の魔石が淡く光り、石畳に影を落としている。


 その静寂の中──


 空気が、ひやりと冷えた。


 殺気。


(……え?)


 考えるより先に、身体が動いた。


 反射的に馬車の中から魔力を放つ。


 白い光が走り、

 何かが倒れる鈍い音がした。


 ……が。


「……あれ? 今の、何?」


 気配が一瞬で消えたため、

 私は倒したことにすら気づけていなかった。

 あれ、勘違いかな。


 暗部の侍女たちは青ざめていた。


(……やっぱりこの方、化け物だわ)

(脳筋貴族が放っておかないわけだ……)


 王宮騎士たちも、目を丸くして固まっている。


 そんな中、レイモンドだけが額を押さえていた。


「……篝。

 お前、ほんとに自覚ないのか」


「え? 何がですか?」


「いや……もういい」


 レイモンドは深いため息をついた。

 その横顔は、呆れと心配が入り混じった複雑な表情だった。


(……なんで怒ってるの?)


 私は首をかしげながら、

 何事もなかったかのように歩き出した。

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