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辺境育ちの侍女ですが、無自覚チートだったようで  作者: しゃもん


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第2話 篝、王子とお嬢様のお泊り護衛に駆り出される

「篝、準備はできている?」


 シアがドレスの裾を軽く揺らしながら振り返る。

 侯爵家の長女で、第二王子の婚約者。

 気が強いが、私の言うことだけは素直に聞いてくれる。


「はい、シア様。馬車の準備も整っています」


「よかった。アレクシス様に会うの、久しぶりなの」


 シアは嬉しそうに微笑んだ。

 その横顔を見ながら、私は胸の奥に残る重さをそっと押し込む。


「では向かいましょう、篝」


 シアは侍女に先導され、私と並んで廊下を歩く。

 侯爵家の玄関前には、すでに馬車が待機していた。

 扉が開かれ、シア様と私が乗り込むと、馬車は軽い揺れとともに王城へ向かって走り出した。


 窓の外を流れる街並みを眺めながら、シアはちらりと私を見た。


 あっあの目、まずい。

 シア様、なんか気づいたみたい。

 後で追及されるわね。


 シアは篝のいつもとは違う様子に扇子の影からチラリと視線を向けた。


(……やっぱり、元気がないわね)


 でも第二王子アレクシス殿下には久しぶりに会えるし、護衛と侍女の二役やれるのは篝くらいだし一緒に行ってもらわないと困るからなぁー。

 

 まあ、篝としても苦手にしている公爵家次男

 **レイモンド・フォン・グランツ**がいるからあまり王城に行きたくないようだけど・・・。


 あいつ騎士団でも屈指の実力者で、見目も良く、第二王子の幼馴染。

 でも、もてるくせに篝へのアプローチはへたくそで彼女の縁談をことごとく潰している。


(まあ……篝は気づいていないようだけど)


 シア様は心の中でため息をついた。


(あいつのおかげで、篝は三十歳、独身、行き遅れになっちゃったのよね)


 そう思いながらも、シア様は優しく声を掛けた。


「篝、どうしたの? 今日は元気がないわ」


「……いえ、その……」


 少し戸惑いながら、篝は話した。

 辺境の村に住む幼馴染から結婚式の招待状が届いたこと。

 そしてシア様の結婚式が終わったら、一度帰省したいこと。


「それはいいけど……落ち込み方が普通じゃないわね」

 シアは眉をひそめた。


 王宮に到着し、侯爵家が抑えている控室に入ると、

 シアはすぐに篝を椅子に座らせた。


「篝。幼馴染の結婚式って……どういうこと?」


「え、えっと……昔、ちょっとだけ……結婚の約束みたいなものを……」


「ふむふむ。それで?」


「その……五歳下の女の子に、取られちゃいました」


「…………」


 シアは一瞬、沈黙した。


(グッジョブだわ、その女子)


 心の中で、シアは篝の幼馴染の女の子を称えた。


(篝が村長の息子と結婚なんてしたら、もう王都に戻ってこないじゃない。

 あの子は篝にとっては悪女でも、私にとっては救世主よ)


 もちろん、このことは篝には言わない。


(……さすがに、公爵家次男も知らないでしょうね)


 シアは篝が淹れてくれた紅茶をひと口飲み、息をついた。


 その時──

 控室の扉がノックされる。


「失礼する」


 現れたのは、噂をすれば影。

 公爵家次男、**レイモンド・フォン・グランツ**だった。


(……来たわね、篝の縁談クラッシャー)


 シアは心の中で呟いた。

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