表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境育ちの侍女ですが、無自覚チートだったようで  作者: しゃもん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/14

第1話 篝、幼馴染の結婚式招待状を受け取る

 王都の朝は、いつも忙しい。

 侍女たちの軽い足音、厨房から響く鍋の音、遠くで聞こえる騎士たちの訓練の掛け声。

 その喧騒の中で、私はひとり、深いため息をついていた。


 私の部屋は、仕えているお嬢様──侯爵家の長女シア様──の部屋のすぐ前にある。

 アンティーク調の家具が並び、辺境に住む母が作ってくれた便利な魔道具があちこちに置かれた、少し不思議で温かい空間だ。


 机の上には、一通の封筒。

 先ほど食堂で、同じ使用人から「辺境からの手紙です」と渡されたものだ。


 差出人は──


 **「朝比奈 透馬・水瀬 佳乃」**


 幼馴染ふたりの名前が、仲良く並んでいた。


 私は封を切り、震える指で中身を取り出す。


 > 『結婚式にぜひ来てください。

 > 篝さんが来てくれたら嬉しいです。

 > 佳乃より』


 ……ああ、そう。

 そう来たのね。


 胸の奥が、じんわりと痛む。


 透馬は、子どもの頃に私と口約束をした相手。

 「篝が王都から帰ってきたら迎えに行く」

 そう言って笑った、あの夏の日。


 佳乃は、私に懐いていた五歳下の妹分。

 でも、昔から透馬が好きだった。


 そして私は──

 王都で侍女として働き詰めで、村に帰る余裕もなかった。


 気づいたら、

 **ふたりは結婚していた。**


「……あれ。約束は?」


 ぽつりと漏れた声は、誰にも届かない。


 いや、届かなくていい。

 こんな弱音、誰にも聞かれたくない。


 私は侍女。

 侯爵家の長女、**シア・フォン・アルベルト**様に仕える身だ。


 そして今日、シア様は婚約者である

 **第二王子アレクシス・フォン・ヴァレンシュタイン**殿下に会いに行く。


 私はその同行役。

 ため息を飲み込み、招待状を机に置いた。


 部屋の隅に置いてある魔道具に、水差しから水を注ぐ。

 母が作った“自動湯沸かし器”は、魔力を通すとすぐに湯気を立て始めた。


 無意識に、好みの紅茶缶からひとさじすくってカップに入れる。

 沸いたお湯を注ぐと、ふわりと香りが広がった。


(……あと少ししたら、シア様に声を掛けに行かないと)


 紅茶をひと口飲んでから、部屋の鏡の前に立つ。

 黒髪を手早くアップにまとめ、侍女服の襟を整える。


 深呼吸をひとつ。


 そして私は、静かに部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ