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辺境育ちの侍女ですが、無自覚チートだったようで  作者: しゃもん


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12/13

第11話 篝の両親、王都の政治を物理で終わらせる

 侯爵家の庭園は、白い花と魔石灯で飾られ、

 婚約式にふさわしい華やかさに包まれていた。


 だが、空気はどこか張りつめている。


(……絶対に何か起きる)


 レイモンドは篝の手を握りながら、

 周囲の気配を探っていた。


 篝は緊張で顔が強張っている。


(婚約式なのに……なぜか胃が痛い……)


 そんな篝の横で、

 父・剛志と母・玲花は完全に“戦闘モード”だった。


「あなた、今日は暴れちゃダメよ?」


「分かってる。

 でも強硬派が来たら斬る」


「私は焼くわ」


(やめてくれ……!)

 レイモンドは心の中で土下座した。



 式が始まって間もなく──

 庭園の外から黒衣の影が滑り込んだ。


 アレクシス殿下が小さく呟く。

「来たな」


 第一王子派の強硬派が放った刺客。

 狙いは篝とレイモンド。


 黒衣の男たちは、

 魔力を抑えたまま篝へと近づく。


(篝、危ない──!)

 レイモンドが動こうとした瞬間。



「おっと、そこまでだ」


 剛志が黒衣の腕を掴み、

 **そのまま地面に叩きつけた。**


 地面が揺れた。


「なっ……!?」


 刺客たちが驚く間もなく、

 玲花が指を鳴らす。


「はい、燃えろ」


 **黒衣の足元から炎が噴き上がった。**


「ぎゃあああああああああああ!!」


「大丈夫よ、死なない程度に調整してるから」


(調整してるのにこの威力……!?)

 レイモンドは震えた。


 刺客たちは一瞬で無力化され、

 庭園の隅に山積みにされた。



 その様子を見ていた第一王子派の強硬派は、

 慌てて逃げようとした。


 だが──


「逃がすかよ」


 剛志が一歩踏み出すと、

 **地面が割れた。**


 強硬派の貴族たちは尻もちをつき、

 そのまま動けなくなる。


「ひっ……!」


 玲花が優雅に微笑む。

「あなたたち、王都を混乱させて楽しかった?」


「ひ、ひぃ……!」


 そこへ、アレクシス殿下と第一王子が現れた。


「……わたしの派閥が、ここまでとは」


「兄上、あなたの派閥の管理不足だ」


 兄弟が言い合いを始めた瞬間──



「はい、そこまで」

 玲花が二人の頭を同時に叩いた。


「いっ……!」

「痛っ……!」


 王族二人が同時に頭を押さえる。


 玲花は腕を組み、

 完全に“母親の顔”になっていた。


「あなたたちねぇ……

 王族がこんなことで喧嘩してどうするの。

 国民の前で恥ずかしいと思わないの?」


「……はい」

「……すみません」


 アレクシスも第一王子も、

 完全に子ども扱いされている。


(……なんで王族が怒られてるの?)

 篝は呆然とした。



 そこへ、優雅な足取りで王妃が現れた。


「玲花。久しぶりね」


「王妃様!」


 玲花は嬉しそうに駆け寄る。

「あなたの娘さん、立派に育ったわね。

 ……でも、あなたに似て強すぎるわ」


「まぁ、お互い様よ?」


 二人は親友らしく笑い合う。


 王妃は王子たちを見てため息をついた。

「あなたたち、玲花に叱られたのね」


「……はい」

「……すみません」


(王妃まで味方……!)


 レイモンドは悟った。


(篝の家族……王都最強じゃないか……)



 刺客は全員捕縛。

 強硬派は全員拘束。

 王族は説教済み。


 庭園は再び穏やかさを取り戻した。


 レイモンドは篝の手を握り、

 小さく呟いた。


「……篝。

 お前の家族、強すぎる」


「え? 普通ですよ?」


「普通じゃねぇよ!!」


 篝は首をかしげた。


 だが、レイモンドは確信した。

(……この家族となら、どんな政治戦でも勝てる)


 そして婚約式は、

 無事に──いや、物理的に強制的に──

 幕を閉じたのだった。

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