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魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。  作者: 暁真
第二.五部 魔法少女の劇場版って話。
44/51

大体中盤くらいに休憩が挟まるよねって話。


「ん、んん……」


 微妙に身体が怠い。寝る前に何か運動でもしていたんだろうか……というか私はいつ寝た?昨日の記憶が随分と朧げだし……というか此処どこ?


「……」


 まだ微妙に靄がかかった視界で辺りを見回す。何処か休憩所のような……というか私が寝てたの椅子の上?一体何がどうなって


「弍乃ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「……二美?」


 ……見計らったようなタイミングで二美がこっちに突っ込んできた。いつもの事だが騒がしいし慌ただしい、寝ぼけていた頭が覚めてしまった。とりあえず状況の説明をしてもら……うん?


「大丈夫?怪我とかない?私の事分かる?この指何本?」

「落ち着きなさい意識ははっきりしてるから……というか二美」

「どうしたの?やっぱり身体に異常とか」

「……いつの間に背伸びたの?変な薬か呪文(アーツ)でも使ったのかしら」

「あー……」


 気のせい、にしては明らかに二美が大きくなっている。いつものように呪文(アーツ)を使ってたら変な事になったというのが一番あり得るけど最近は控えめになってきてるし一体どうしたというのか。


「まあ気にするだけ無駄かしらねそれは。で、テルスは?ポケットに感触がないのだけど」


 服装はいつもの私服だ、なのに定位置に入れてるテルスが見当たらない。呑気に昼寝してて盗まれたなんて事はないだろうし二美が持っていると考えるのが自然だろう、全く何してんだか。


「えーっとその、テルスはね……」

「別に勿体ぶらなくていいでしょうに、ほら出しなさい。ジャンプさせる寸劇でもしたいのかしら?」

「いやそういう訳じゃ……」

「じゃあ何よ、まさか無くしたとでも『それはない、安心しろ』……何よ、どっかに置いてたのなら最初からそう言いなさいよテル……ス?」


 聞き慣れた電子音声が聞こえた方に目を向ければ居たのはテルスを持ってる女の子。いや何があった?何をどうしたら私がテルスを二美以外に渡す?


「どちら様?」

「あ……えっと、その……」

『弍乃、状況を簡潔に説明する。彼女は君の後輩と言った方がいいだろう、同じ魔導士(マギスター)だ』

「……ああ、愛奈や狼奈みたいな?」

『いや、同じデバイスの使い手だ』

「はい?え、ディーデバイス?カオスデバイスはテルスしかないし……」

『そうだ、そして君は彼女のことを知っている……筈だった』

「いやどういうことよ説明しなさい」

『だから今説明している』


 目の前の子がディーデバイスの適合者(デヴァイサー)で、私はこの子の事を知っている?タルタロスの裏切り者って訳でもないだろう、今まで戦った奴らの中にこの子は居なかった。となると考えられるのは……


『結論を言えば君は2年間の記憶を一時的に失っている。本来の君は18歳であり……』

「16歳に若返った……って言いたいの?」

『そうなる。記憶が所々曖昧なのもそのせいだ』

「ああ……」


 確かに言われてみれば色々と記憶が不明瞭だ。寝る前の記憶がないしそもそもどうして此処にいるのかも分からない、なんなら今が何日かも。そうなると呪文(アーツ)が暴走かなにかしたという結論に行き着くしかない。何がどうしてそうなったかは分からないが……まあ多分二美がやらかしたのだろう、いつもの事だ。


「……まあ呪文(アーツ)ならそのうち戻るわ。だからそんなよそよそしい対応しないでちょうだい。ええっと……」

「三葉です、狐梟三葉」

「そう。じゃあ三葉、一旦テルスを返してもらえないかしら?私がテルスを他人に渡したって事は何かあったんでしょうけど……それはそれとして現状を把握しておきたい」

『なら弍乃、その腕のデバイスを外してもらえないか?調整が必要だ』

「腕?」


 テルスに言われて腕を見てみると確かにスマートウォッチのようなデバイスがくっついていた。確かこれ前にテルスが見せてきた……そうだ、クロノデバイス。


「……なんで私がこれを身に付けてる訳?もしかしてテルスがお払い箱になったりしたの?」

『どちらとも言えん、ひとまず外してくれ』

「分かったわ……うん?」

『どうした?』

「なんでか知らないけど外れないわね……エラー?」

「えっ」

「此処に来てそんなことある?」


 外してみようと留金に手をかけてみたはいいのだがデバイスに「ERROR」の文字が表示されて外れない。いや何か不具合が起こってるのはいいんだが詳細を寄越せ詳細を、エラーだけじゃ何にも分からんぞ。


『ERROR:デヴァイサーの身体機能に異常アリ。補助機能作動中』


 ……なんて言ってたら出たよ。異常ってつまり若返ってるこの状況の事?んじゃあ直るまで外せないって事じゃんこれ。


「……ああなるほど、これ私が元に戻るまで外れないわね。どうも今の身体はこのデバイスが色々と補助してるみたい」

「……」

「二美?」

「あーいや、その、どうしよう……ああやらかしたやらかしたやらかしたぁ!!!!!」

「落ち着きなさい、貴方が何やったかは知らないけどこうして正常にはなってるんだし元に戻ればなんとかなるわ、多分」

『それに君が嘆いた所で状況が改善する訳でもない、今は本来の目的を優先するべきだ』

「うわぁぁぁぁん弍乃ぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「ちょっ、いきなり抱きつくな大きくなってるんだからいつもみたいに受け止められる訳じゃっ!?」


 パニクった二美が抱きついてくる。たまにこうなるけど同じ年齢だったから受け止められただけで今はそっちが若干大きいしなんなら力も強ちょっと待ってこれ倒れる!?


「ねえテルスさん」

『なんだ三葉』

「あの2人っていつもこうだったの?」

『部分的にはそうだな』

「……本当に仲良しだったんですね」

「傍観者みたいな話してないでちょっと二美を離してちょうだい……」

「後10分くらいこうするぅ!」

「やめなさい殴るわ」


 本当に何があったかは分からないけどひとまず二美がいつも通りで安心した。とりあえずテルスから本来の目的どうこうを説明してもらうとしよう、別に身体が戻らなくてもどうにかなりそうなら後回しでいい。にしても……


「ねえ二美」

「なにやっぱり人肌恋しかった?」

「な訳ないでしょう……貴方此処まで力強かったかしら?かなり痛いのだけど」

「えっ、あっ……ご、ごめんっ!」

「別に咎めてる訳でも怒ってるわけでも……ん、どうかしたかしら三葉?」

「あー、その……なんでもないです」

「2人して何か隠してるみたいな反応して……まあいいわ、多分今の私が知ると面倒な事だろうし」


 なんだ2人してそのあからさまに何かありますみたいな反応は……テルスも何か言えっての面倒くさい。まあそれはそれとしてまずきっちりと説明を聞かせてもらおう。













「要するに例のティフォンって奴の分身がこの街に紛れてて」

「うん」

「それを処理するためにエキドナって機獣(ヘカトンケイル)が暴走して」

「そうだね」

「その過程で私はこうなった、と」

『そうなる』

「んで偶然だかなんだか知らないけど狼奈達も居て合流、今に至る」

「まあ多分偶然だろうな、意図的にしては来た目的も滞在期間も違いすぎる」

「……全く面倒なことになったわね、ほんと」


 弍乃さんが二美さんのよく知る彼女(幾つか記憶の欠落はあるみたいだけど)に戻っている事を確認し、どうにか回復した狼奈さん達と合流し再びエキドナの元へ。転移(ワープ)を使う手もあったけど二美さんも消耗していたのといきなり知らない人を連れて帰ってきたらエキドナがビビるとの事なので再びの歩き、なんというか友達というかペットというか……


「まさかこんな形で狼奈にまた会うとは思わなかったわ……もしかして魔導士(マギスター)が集まると碌な事起きないジンクスとかあるんじゃないの?」

「いや流石にそれは……ない、とは言い切れないな」

「ウチらもこれで3回目やからなぁこういう案件」

「やっぱりジンクスあるじゃないの」

「まあそうなるはそうなるよね、客演回やらゲスト出演やら。現実でこうなるとは流石に思わなかったけど」

「フィクションはフィクションであって欲しかった、とでも言いたいのかしら?」

「んー、どうなんだろ……確かに怖い事も悲しい事も色々あったけどこのデバイスが弍乃と会わせてくれたのは事実だし、もしなかった事にできるってなっても全部なかった事にはしたくない。それに後から振り返れば全部思い出話だし」

「だからと言って面倒ばかり持ってこられても困るのだけど?」

「にゃはは、許せ」


 2人は自然と寄り添って歩いてる。なんだろう、こう……一見近づけるように見えて超えられない壁があるような、そんな感じ。弍乃さんの知らなかった一面がいっぱい出てきてなんか複雑な気分。


「にしても……そのティフォンとやらの分身っていうのは一体何処に潜んでるんだろうね。ジャミングで分からないっていうけど」

「定番は誰かに化けてたりとかですけど……」

「……なんでこっちを見るのよ」

「流石にないよ!?だってみんなで……あー、んー……」

「あんたもあんたで何急に黙り込むのよ二美」

「い、いやいやいや……だからない、ないって!そうでしょテルス!?」

『クロノデバイスを身に付けている以上少なくとも今の弍乃は本人だ、それは保証する』

「そもそもなんで私が分身の疑いをかけられるのか分からないのだけど?一体全体私がこうなる前何があった訳?」

「まあ、その……」

「だから黙らないで頂戴三葉、貴方までそうなるってほんっと何が……」


 流石に敵対してました、とは言えない。でもクロノデバイスは一つしかないらしいし、それを身に付けた彼女と最初にあった時テルスさんは間違いなく本人だと断定した。だからこの弍乃さんがティフォンの分身なんて事はない……筈、正直偶然にしてはできすぎている気もするけど二美さんが元に戻せた以上偽物なんて事はない。だから……弍乃さんとは別にティフォンの分身が居るか、あるいはバッカスが弍乃さんに何か仕込んでいるか。用心はしておいた方がよさそうだ。


「……あ、開いたままなんだ」

「海が……割れてる?」

「モーセの海割りみたいだね、杖は掲げてないけど」

「おおちょっと写真、ってそうだスマホが機能してないんでした……」

「まあ参考資料として欲しくはあるが今じゃないわど阿呆」

「そもそもこんな場面を書く事があるのかしら?気になるのは確かだけど貴方達の作風じゃやらないでしょう」

「ちょっと三葉ちゃん達みてて次回作の構想が……」

「現行作が完結するまで後何年かかると思っとんのやえぇ!?」

「あはは……」


 エキドナさんが気を利かせてくれたのか分からないけど小島へと繋がる道は開いたままだった。やっぱりこういうのは創作意欲を刺激されるのか莉亜さん達は足を止めて眺めているけど……早く紗七達と合流した方がいいよね。


「とりあえず行こう皆。早くこれを終わらせないと街の皆がずっと引き篭もりになっちゃう」

「どんな表現よ……まあ早く終わらせたいのは同意、私も出来る限り早く元の身体に戻りたいし」

『……そうだな』

「何よその間は。とりあえず行きましょう。面倒事は素早く対処するに限るわ」

「あっちょ、待って弍乃!?道迷うって!」

「一本道の何処を迷うっていうのよ」


 なんて考えてる間に弍乃さんが先に行ってしまった、後を追って二美さんも。私達も早く行った方が……でも。


「テルスさん」

『なんだ』

「今の弍乃さんは……本当に弍乃さん、なんですよね?」

『ああ、それは保証する……ただし、バッカスに何か仕込まれているという可能性は否定できない。彼女の相棒であった私が言うことではないが……警戒を怠るな』

「……分かりました」


 抱えていた不安をテルスさんと共有し、深呼吸。最悪が起こってもパニくらないよう精神を整える。

 

「……よし、行きましょう皆さん!サイン会早く行きたいので!」

「ふふ、随分と熱心なファンに会っちゃったな」

「大事にしろよ?後輩としてもな」

「いいわね、あの子」

「絵に描いたような真っ直ぐな子ですよね、眩しいです」

「ああいうのが世界救ったりするんやろなぁって子や、ウチらも負けじと頑張らんとな」


 莉亜さん達にも声をかけ、覚悟を決めて歩き出す。大丈夫、私……いや、私達なら何が起こっても立ち向かえる、1人で背負わなくてもなんとかできる。だから落ち着いて歩こう。


『……此処から先は何が起こるか見当が付かん、用心は最大限に、だ』

「分かってます。もし弍乃さんに何かあったら……また止めてみせます」


 皆と合流して、ティフォンの分身を探してどうにかして、この結界を解除してもらう。


 何も難しい事はない、もう一踏ん張りだ、私。

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