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魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。  作者: 暁真
第二.五部 魔法少女の劇場版って話。
43/51

最終決戦より中間戦の方が気合い入ってる時あるよねって話。


「空から失礼っ!」

「また新手……!」

「二美さんのこと忘れちゃったんですか、弍乃さんっ!」

「お前もかっ!」

「こっちへの意識が乱れてないかな、設定再編(リライト)!」

「チイイ……!」


 空中から二美さん……ウェスタが追尾する弾幕を放ち、私が近接戦で牽制。その隙にパンドラが本命を叩き込む。即興にしてはだいぶ良いコンビネーションだと思う。


「行くよテルスさん!時空(クロノ)加速(アクセル)十倍速(テンスクロック)ッ!」

「もう切るの?だったら私もっ!」

「なるほど君達も使えるんだね、じゃあこうしよう、設定再編(リライト)!」


 なんで時空加速(クロノアクセル)を弍乃さんが使ってないのかは分からないけど今がチャンス。先に起動して抑えに……ん?


「ああ、こういう感じか」

「パンドラ!?なんで時空加速(クロノアクセル)を……」

「私もできるように設定を書き換えた」

「さっすが究極フォーム、なんでもありだね!」

『概念の再構築!?どういう原理だ、いやそもそも同じ呪文(アーツ)というカテゴリで区別できるのか……!?』

「もう細かいことは気にしないで行こうテルスさん!今は弍乃さんに集中!」


 最早細かい事には突っ込まない。私は驚きに来たんじゃなくて弍乃さんを取り戻しに来たんだから。


「邪魔をするな……!」

「いいや邪魔します!本当の貴方を取り戻すためにっ!」


 先に起動して不意打ちという目論見は失敗、すぐに速度を合わせてきた弍乃さんと鍔迫り合いになる。けどまあ抑えるっていう目的は達成。


「ウェスタっ!」

「いい加減後輩泣かせてるんじゃないよ、弍乃ォ!」

「貴様らに構っている暇はない!」

「君にはなくても私達にはあるのさ!」

「っ!」


 ウェスタが放ったレーザーの嵐は間に合ってしまった同じレーザーの迎撃で相殺されるが此方は3人、割って入ったパンドラの拳が直撃する。


「言っとくけど私もビーム連打するだけの芸のない女って訳じゃないんだよ!」

「空中戦なら勝てるとでも!」

「おっと飛ぶか、だったら…… 設定再編(リライト)!」

呪文詠唱(アーツコール)浮遊(フロート)!」


 吹き飛ばされた弍乃さんはそのまま浮遊(フロート)を使ったのか空へ。私達も追って呪文(アーツ)を使い飛行、なんかパンドラは翼生えてるけど気にしないって決めたので気にしない。


「寧ろ死角が増えたんじゃない?」

「迎撃……!」

「弾幕合戦だけじゃないよ!」

「いや、この状況なら……そうだな、設定再編(リライト)!」

「打ち込むっ!」


 空中を飛び回りながらまだ展開され続けているレーザーの嵐を掻い潜り再び弍乃さんの懐へ。倒すんじゃない、どうにかして隙さえ作れば……元に、戻せる!


「貰ったぁ!」

「今……!」

「んなっ、入れ替わり!?」

「しまっ……」


 やらかした、入れ替わりの存在が頭から抜けていた。鎌を振る時にはすでに弍乃さんはウェスタと変わっている。まずい、止められ……


「だろうと思ったよ」

「なっ!?」

「ありがとうパンドラ!」

「一度やられてるから対策くらいはね!」


 都合よく鎌が直撃するタイミングでパンドラがウェスタ、そして弍乃さんと位置を連続入れ替え。元の位置に戻った彼女に振り下ろした鎌は直撃、そのまま落下していく。


「確かに設定再編(リライト)は自分の設定しか変更できない。けど相手が何をしてくるかわかっていればこうして対策できるのさ」

「あらゆる事象への適応ってとこ?チートだと思ってたら地頭良くないとあんまり意味ない奴だ」

「このまま行こうウェスタ!」

「もっちろん!やっぱり最後はステゴロだね!」


 落下していく弍乃さんを追い浮遊(フロート)を切って落下。入れ替わりはパンドラが対処してくれるから心配しなくていい、ようやく近接戦に集中できる!


「……面倒、な……!」

「だからさせないっての!」

「瞬間移動!?」

「いや、多分時を止めた……なんとかなったみたいだけど!」


 いよいよ仕掛けようとしたら一瞬で姿を消した。すぐに打撃音がした方に目を向ければいつの間にか地上に降りていたパンドラが弍乃さんを蹴り飛ばしていたので時間凍結(クロノフリーズ)を使ったのだろう。


「三葉ちゃんは弍乃を抑えてくれればいい!あとはこっちでどうにかする!」

「分かりました!呪文詠唱(アーツコール)拘束(バインド)!」

「舐めるなぁっ!」

「通るとは思っていません!」


 蹴り飛ばされた弍乃さんに放った拘束(バインド)の鎖は軽く躱される。ただ動きはこれで鈍った、やっぱり一番信用できるのは……


「ミネルヴァ!」

「わかったパンドラ!」

「んなっ……」


 パンドラが大剣を蹴り飛ばすのに合わせ入れ替わりが起動、位置を交換してすぐに弍乃さんを羽交い締めにする。怖いのはまた入れ替わりされる事だけどこの位置ならされてもすぐ対処できるし何よりパンドラがどうにかしてくれる、これで……!


「ウェスタッ!」

「ありがとう!いっくよぉ!」


 自由落下の姿勢に入ったウェスタを受け止めるように姿勢を変え、弍乃さんとぶつけるように倒れ込む。私達のやり方は一回戦闘不能にしないと解除する余裕がない、けど詠唱が必要ない彼女なら……


「あの時助けてもらった!今度は私が助ける番っ!」

「何を……」


 落下しながらウェスタは右手を弍乃さんに伸ばして。


「元の弍乃にっ!戻れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 接触。同時に閃光が走って思わず目を瞑る。何が起こっているかは分からないけど潜航(ダイブ)を使っている訳じゃなさそうだ、上手くいけば……ううん、上手く行くと信じる。だってウェスタは誰よりも弍乃さんと一緒にいた相棒なんだから。

 

「っ……」


 ようやく光が収まって、目を開ける。羽交い締めにしてた弍乃さんの身体は髪色が元に戻って……成功?


「……どうにか、なった?」

「なんか、色々とごちゃごちゃしててよくわかんなかったけどこれで元に……」

『弍乃のバイタルは……』

「……ん?」

「パンドラ?」


 ひとまず羽交い締めを解いて気絶してしまった弍乃さんを横にする。服はそのままだけど髪色は元に戻ってるし多分上手く……あれ。


「服が……ちょっと大きくなってる?」

『違う』

「えっ?」

「……あー、そういうことか。成功したけど……ある意味失敗した、とも言えるのかな」

「どういう事パンドラ?」


 少し衣服のバランスが合ってない事にウェスタと首を傾げていると何かに気付いたらしいパンドラとテルスさんが口を開いた。


『結論から言おう、今の弍乃のバイタルは16歳の物と一致する』

「16歳って……わ、若返ってる!?」

「……多分だけど、原因は分かるよ」

「なんでこうなったんです……!?」


 確か弍乃さんは18歳だったはず、何がどうして若返るなんて事……


「ウェスタ、君が知る一番新しい一宮弍乃の記憶は?」

「そりゃあ最後に別れた時……あっ」

『……こんな事になるとはな』

「えっ、ど、どういう事!?」


 何故ウェスタの記憶が大事なのか、何がなんだかさっぱり……


「私は弍乃を元に戻そうとしたから、こうなって……」

「そう、でも君の知る「元の一宮弍乃」は16歳の彼女だ」

『つまり今の弍乃は正確には元に戻ったのではない』





『一時的に今の状態から16歳の姿に変えられている、と言った方が正しい』

「……つまり、その」

『そうだな、今の彼女の上に二美の知る「16歳の一宮弍乃」というテクスチャが覆い被さっているようなものだ。根本的な解決には……なっていない』

「あ、はは……やっちゃ、った……」

「ウェスタ、落ち着いて。彼女が元に戻らないと決まった訳じゃない、今は目覚めるのを待とう……皆もボロボロだしさ」


 つまるところ弍乃さんが元に戻った訳じゃない、と。でも敵じゃなくなった訳だし……


「テルスさん、テトラの時と同じやり方で元には戻せないの?」

『できはするだろう、だが今は覆い被さったテクスチャがそのまま融合してしまう危険を含んでいる。下手にやってしまえば……本来の弍乃と16歳の弍乃が混ざり合って戻らなくなる。そうなって仕舞えば終わりだ、君の知る一宮弍乃は2度と戻ってこない、そしてそれは私が望まない……非推奨どころではない、使わせる気はない』

「……わかった」

『理解してくれて助かる。元に戻すのならばまずはこのテクスチャを剥がさねばならないが……それは再び彼女が敵となることを意味する。今の我々に戦える余裕はないだろう……難儀な物だな』

「それでも……今敵じゃないだけありがたいです。パンドラの助けがあってようやく、だったから……やっぱり強いなぁ、弍乃さんは」


 あの人の強さの根源である戦闘経験がリセットされた上であれだというのだから正直恐ろしい。もし記憶が完全に戻った上でクロノデバイスを使ったのならばどれだけ強いのか……いやそれは今考えるべきことじゃないや。


「……ふう、ごめんメアリー、今回はもう一回くらい力を借りる事になりそう」

『今日の読み聞かせ2冊くらい増やしてよ?』

「それくらいならお安いご用だよ。じゃあまずは全員無事に帰らないとね、彼女も含めて」

『今元通りにしなくていいの?』

「出来はするけど……それやったらさっきまでのあれこれ全部無意味になっちゃうからね。全部解決できるまではできないかな」

『そっか……じゃあまた呼んでね、お姉ちゃん』

「うん、ちょっと昼寝でもしておいて」


 パンドラの手にあった薄紫色の本が消滅し、変身が解除される。話しかけていたのを見るにテルスさんみたくあの本も意思があるんだろうか、にしては子供に話しかけるみたいな感じだったけど。


「ミネルヴァ、ウェスタ。彼女を元に戻すのはこっちでできる。それは安心してほしい」

「ありがとうございます莉亜さん。正直どうなるのかって結構不安で……」

「……ごめん、私のやらかし尻拭いさせるみたいで」

「失敗は誰にだってあるよ、大事なのはそこからどうやって挽回していくか。今回に関しては意図的じゃないミスで誰が悪いとかはないしね。だからまずは……この異変を終わらせる事を第一に考えよう」

「わかった……そうだ、これ制限時間あるんだった。テルス、再変身できるまでどれくらいかかるのこれ」

『ティタノデバイスの時間制限はディーデバイスのオーバーヒートを防ぐためのものだ。最低2時間は必要とする』

「そっか……じゃあそれまで弍乃が起きるのを待つよ。死屍累々な訳だし」


 莉亜さんの仲間達は限界を迎えたのか全員倒れてしまっているし、私達も正直な所かなり疲弊してる。このままエキドナが言ってたティフォンの分体を相手する事はできないだろう、少し休憩した方がよさそうだ。


「……テルスさん」

『今度は何だ』

「16歳の弍乃さんって私の知ってる弍乃さんと何か違うところはあるんです?」

『特にないが前提として君達の事は知らない。目覚めたらまず初めに君が私を持っている事を詮索されるだろう』

「そっか、安心しました……ふぅ」


 着身(マギアライズ)を解除し、人気のない大通りに座り込む。やっぱり素直に喜べないのはそうなんだけど、今この状況では弍乃さんが戻ってきてくれたのが凄くありがたい。


「……ごめんなさい、必ず元に戻してみせますから」


 この状況をどう説明したものか、とかを考えながらひとまず彼女が目覚めるまで体を休める事にした。

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