同時変身は皆大好きって話。
「……で、結局どういうプランで行く事にしたのテルス?」
『端的に言えば距離を離さないように動く。此処最近の時間結界はファウヌスやディーデバイスを捉えるように展開されているからな、カオスデバイスを狙わなくなってきたのは対処されるのが目に見えてるから、という所だろう』
「なるほど。最初から5人体制で行くのね……いや、できるのそれ?」
『時間結界の予兆は君も私も感知できるだろう?それに合わせて転移を使えばいい、ようはいつも通りだ』
「あぁ……ま、それが1番現実的な落とし所ね」
『タルタロスが機獣を投下しなくなったからこそできるやり方だ、ある意味感謝しなくてはな』
「原因はあいつらなんだからしなくていいわ……早く終わればいいのだけれど」
面倒な説明は全部テルスに任せ、正式にあの子達と協力関係になった。私としてはユピテルを元に戻せば全部終わるのでささっと彼女を撃破して洗脳解除してー、で速攻終了祝引退と行きたいのだが……
『ユピテルが何人引き連れて来るか、によるだろう。まずメルクリウスは間違いないとして……』
「あの子達にぶつけるもう1人も居る。マルスは謹慎、1度負けたアポロを出す訳もないでしょうし……ウルカヌスかネプトゥーン?バッカスはオリンピアの方で忙しいとか2年前言ってたし来ないでしょう」
『情報のあるウルカヌスの方がありがたい所だが』
「そうね……」
問題はユピテルがどれだけ戦力を率いて来るか、数が増えれば増えるだけ手間は多くなるし撤退の隙も与えやすくなる。流石に3度目の正直で次こそは洗脳解除を試みたい所なんだけど……あの子達次第か。
「で、今あの子達は何してる訳?追跡かけてるんだったら分かるでしょ」
『纏まって下校中のようだ、この前はミネルヴァ1人が時間結界に囚われたらしいからな、その対策だろう』
「……よく無事だったわね」
『どうもその時ウルカヌスに求婚されたようだ』
「あぁ……」
そう言えば言ってたなそんな事、あれガチだったのか。私もいつぞやアポロに口説かれた時そんな感じだった覚えあるけど……そういうの受け継がれてるんだろうか。受け継がなくていい気もするが。
『とはいえいつ時間結界が展開されるかは我々には分からない、タルタロス側の匙加減でどうとでもなってしまう。後手に回るしかできないのが歯痒い所だ』
「こっちから動くとなればケイオスに転移するしかないけど……流石にそれは無謀だもの、仕方ないわ」
『ままならんな……だがマルスを一時的とはいえ戦闘不能としたのは僥倖だ。我々や彼女らを脅威と判断したタルタロスが早急にユピテル達を送り込んでくる可能性だってある』
「三葉ちゃん達が物語の主人公ならもう仕掛けてきそうだけれど」
尺の都合というかなんというか。そろそろ中盤に差し掛かる頃だろうし幹部の1人ぐらいは撃破しててもおかしくない頃だし。
『またそれか……現実はアニメじゃない、都合の良い優しい世界など幻想だぞ?』
「そんな事は分かっているわテルス」
……そう、もし彼女達が主人公だったとしても補正が乗るのはあの子達だけだ。ほぼほぼ部外者な私は対象外、それに……
「理不尽な現実なんて何度も味わってきているじゃない、今更よ、今更」
『なら何故未だに幻想を見ようとする?』
「逆よテルス、何やっても都合よく行かない現実を見てきたからこそ幻想を夢見たいの。あの子達なら上手くやってくれるだろう、ってね」
『詭弁だな』
「現実逃避じゃないからそこは安心してちょうだい……挫折を味わうのは私だけで充分よ」
……昔、何で挫折しかけたのかは何故か思い出せないけど。
『全く君という奴は……む』
「……噂をすれば、ね。やっぱり主人公補正あるじゃないの」
『偶然だろう』
「そういうことにしておきましょうか……行きましょうテルス」
『ああ』
そんな話をしていればいつも通り時間結界の予兆を感知。テルスは偶然だのなんだの言ってるけどこれやっぱり主人公補正じゃないかなぁって思うのだ。これならちゃんと後を任せられそうで安心した。
「呪文詠唱、転移」
追跡は行使済みなので詠唱は転移だけ。時間結界が展開されきる前にあの子達の元へ、これを日常生活でも使えれば楽なのだがバレた時が面倒なのでこういう時ぐらいしか使えないのが勿体無い所だ。
『今日こそは、確実に』
「ええ、取り戻しましょう……貴方と、ついでに私の恩人をね」
『だからそういう所だぞ君は……』
「何がよ……」
なんか締まらない会話の締めだ。カッコよく決めるつもりだったのが……ちょっと変な顔で転移する事になってしまった。
「私としてはマルスを下した彼女と相まみえたかったのだが……命令である以上仕方ないものだ。対面は君達のディーデバイスを回収してからとしよう」
「逆に勝てると思ってるの?一応そのマルスにこっちはある程度戦えてたんだけど」
「八雲ちゃん挑発しない……」
「それは評価しよう、だが……手を抜いた状態の彼女相手だ。考慮には値しない」
弍乃さんと協力関係を結び、ユピテル……シルウィアさん救出へ向けて頑張るぞー!と意気込んで数日。ようやく展開された時間結界の主は変身前から巨大な槍を担いだウルカヌスと同じくらいに見える人、礼儀正しいけど……アポロ、ウルカヌス、マルスって変なのが続いてきたせいで逆に違和感が凄い。
「さて、時間結界も展開されきった。もう無粋な乱入を危惧する必要もない、いざ「「呪文詠唱、雷霆」っ……!?」
「……はっや」
「すぐに来るとは言ってましたけど……」
いざ着身、と意気込んでいた相手に降り注ぐ雷。不意打ちは失敗したみたいだけど……
「あわよくば着身前にデバイスを破壊できればと思っていたけれど、そう上手くは行かないようね」
「弍乃さん!」
「……何故、此処に居る?」
「私1人でユピテルとメルクリウスを相手取るより先に貴方を仕留めた方が楽って事よ……ネプトゥーン、でいいのかしらね」
「ハッ、これは随分と舐められたもので……そうとも、私はネプトゥーン、タルタロスの魔導士が1人!」
杖のようにデバイスを構えながら現れた弍乃さんとそれに応える魔導士……ネプトゥーン。私達も着身前に呪文を使う時はああいう握り方するけど弍乃さんも同じなんだ。
「これでめでたく全魔導士コンプリート、と……いや全然めでたくないわね。なんだってこの星にご執心なのやら」
「星ではなく君達にご執心なのだよ。正確には君達のデバイスだが」
「あら、あの子達のはともかく私のは正式に譲渡された物よ?治安維持機構が人の所有物を盗もうなんておかしいとは思わないのかしら」
「公務執行妨害、とさせてもらおう」
「難癖ね」
売り言葉に買い言葉。2人は私達の事そっちのけで論戦を始めてしまった……え、これ大丈夫なの?
「無論実力行使に出るというのなら受けて立ちましょう。地に伏せるのは貴方よ」
「マルスを下した実力、相手として申し分無し……受けて立とう、魔導士ユノ」
「先に仕掛けてきたのはそっちよ?それじゃあ……」
……あ、あれ?このまま2人で戦い始めそうな雰囲気……えっこれ大丈夫なの?一ヶ所に纏まって確実にって話じゃなかったの?
「先走りすぎですネプトゥーン、此方としてもユノが其方に行ったのは想定外でしたが……」
「水を差してくれるなユピテル。これは騎士道に則った正式な決闘である」
ああ、そっか。ユピテル達は弍乃さんを狙って来てるんだからこっちに来れば確実に追って来るんだ。
「任務から逸れに逸れまくって決闘も何もないでしょ……というかユノ、本当になんで此処に居るの?いつもなら単騎でこっちに来てるじゃない」
「貴方達の目的は私であって破壊活動ではないでしょう?だったらわざわざ1人で相手するのも面倒だもの、こうして待ち受けるついでに1人倒しておいた方が楽だわ」
「確かに道理ですね、我々の目的は貴方達のデバイス以外にない」
「でしょう?……で、何呆けてるのかしら貴方達?ボサッと見てるだけで終わるつもり?」
「そっちがこっちを置いてけぼりにしてるだけだよ!?」
「完全に世界から切り離されてました……」
「下手に横入りしちゃダメかなって……」
「私達部外者じゃないかなぁって……」
「貴方達ねぇ……」
弍乃さんの呆れた視線が突き刺さる。いやまあその、そういう予定だったとはいえ因縁は弍乃さんとタルタロス側のだから下手に口を挟むと何を言われるかわからなくて……っていうのは言い訳かぁ。
「……まあ、何れ彼女達のデバイスも回収しなければならないのです。此処でまとめて終わらせましょう」
「言うだけなら幼稚園児にだってできるわ、それにこっちもいい加減邪魔だと思ってたのよ……終わらせましょう、今日で!」
「……横槍が入ったのは残念だが戦える事には相違ない、実力を測らせてもらおう!」
「今回は前みたいにされるがままじゃ行かないよ……覚悟してよね!」
目の前でデバイスを構える4人。こっちだって出遅れる訳にはいかない。
「行くよ皆!弍乃さんの道を作るんだ!」
「恩返しの時間だね!」
「こっちとしては貸しはお父さんが返したと思うけど……約束したししょうがないよね!」
「助けてもらった恩、力になる事で返します!」
同じようにデバイスを構え弍乃さんの隣へ。此処が正念場、私達の力で……弍乃さんを届けてみせる!
「「変身詠唱!」」
「「変身詠唱!」」
「「「「変身詠唱!」」」」
「ユピテル!」
「ユノ!」
「メルクリウス!」
「ネプトゥーン!」
「ミネルヴァ!」
「ディアナ!」
「ケレス!」
「ウェヌス!」
全員同時の変身。完了はほぼ同時で。
「「「「呪文詠唱!」」」」
「「「「武装錬成!」」」」
これまた同時に各々の武器を錬成し、大混戦が幕を開けた。




