強キャラは基本剛柔一体って話。
「腕は鈍ってないようだなぁ!?」
「相変わらずの馬鹿力ね……!」
二つの刃が音を立てて軋み、火花を散らす。ただ鍔迫り合っているだけというのにこれだ、適合率の差もあるとはいえデバイスの世代など軽く超えてくる。タルタロス最強格はやはり伊達では……というか前より強くなってない?
「埒が明かないわ……ねっ!」
「ほう?拳で語り合うのがお好みかっ!」
「ずっと睨み合いしてても暇するだけでしょ!」
「確かになぁ!」
とはいえこのままではお互い決定打どころか一撃すら与えられない、マルスが先に痺れを切らす前に大鎌を振り上げ大剣ごと上空へ。落下してくるまで徒手空拳でお茶を濁すことにした。こいつ一瞬でも退屈したら何してくるか分からないからな……
「いいぞ、実に良い!ユピテルですら私の拳についてくるのがやっとだというのにお前はこうも簡単に対応してくる!ああ、やはり運命の……!」
「気持ち悪い事言うんじゃないわ、運命とかそういう面倒なの私は嫌いよっ!」
肉弾戦とは到底思えない衝撃音を響かせながら拳に拳を合わせ相殺、地面に若干のクレーターを作りながら応戦する。いつもなら合間合間で回し蹴りを叩き込んでる所だがこいつにそんな隙は存在しない、0.1秒でも隙を見せたら狩られる……マルスはそのレベルの相手だ。
「以前ならばこの辺りで隙を見せたはずだがなぁ!」
「3年もあれば成長くらいするわよ、色々とねっ!」
「ならば見せてもらおうか!」
とはいえそろそろ武器が落ちてくる。今まで拳で受け止めていた一撃を回し蹴りに変え踏み抜き離脱、落ちていた武器を手に……
「……ま、こういうこともあるわね」
「不満か?私は別に構わんぞ!」
「別にっ!」
……したのはいいが、お互い降ってきた武器が逆。私がマルスの大剣、マルスが私の大鎌を手にしてそのまま鍔迫り合いアゲイン。あーっくそこのままやってられるか!
「付与詠唱、剛健!」
鍔迫り合いながらでも詠唱できるのをいいことに剛健で一時的な筋力強化、このままだと埒が明かないので強引に大鎌を弾きあげる。
「ほう……?」
「余裕綽々もそこまでよっ!」
「それはお前もだろうがっ!」
すかさず振るった横薙ぎの一撃は対応して避けられたせいで表面をかするだけに留まった。パワーキャラが動きも速いのは反則……と言いたい所だけどフィジカル強いんだから仕方あるまい、速くて重いは受け入れよう。
「やはり私の相手は貴様以外に務まらん!願わくば未来永劫戦い続けたいものだ……やはり此方側に来る気はないか?」
「何度目かしら……お断りよ!呪文詠唱、加速!」
まあ馬鹿みたいな質量の攻撃と違って速さは此方に若干の分がある。身体を低重心に構え加速でブースト、脱兎の如く駆け出し即座に切り上げ……
「そうか、それは残念だ!」
「なんっで対応してくるのかしらね……!?」
……今度は鎌を振り下ろして相殺、相変わらずどんな反射神経してるんだこいつは。
「けどあんたはそういう類の武器、苦手でしょうっ!」
「苦手も合わないも全て力で捩じ伏せればいい!」
「説得力ないわねっ!」
とはいえ速度はまだ此方が上回っている。鍔迫り合いに持ち込ませまいと大剣を鎌に「合わせて」振るい、振り子のように攻撃を弾き続ける。ったくこの大剣無駄に重いな……けど変形してる時間はまだないし、これでどうにかするしかない。
「そろそろ……ねっ!」
「ぬうっ!?」
弾き続けるにつれ隙が大きくなっていくのを腕力で誤魔化そうとしていたようだが流石に20回程度続けていれば大きな隙を晒す。
「シイッ!」
「ぐっ……!」
鎌の刃がマルスの頭上を越えるレベルの隙を見逃さず再び横薙ぎ、今度こそマルスに直撃し手傷を負わせる。
「ようやくその面崩したわねぇ!」
「ハッ……舐めるなぁ!」
「っ!」
そのまま連撃、と行きたかったのだが投げつけられた大鎌を咄嗟にパリィ……しまった、まずい。
「今度は此方からだっ!」
「あがっ……」
「ユノさん!」
致命的な隙を見逃すほどマルスという戦士は鈍くない。構えなおす前に右手を掴まれ、思いっきり地面に叩きつけられる……このままじゃ大剣がデッドウェイトだ。
「3年前を思い出すなぁ、えぇ!?」
「別に、思い出したくなかったわ……っ!」
どうにかして大剣を手放したまではいいがそれもまた隙。間髪入れずマルスの拳が腹部に直撃、中規模なクレーターを作りながら私に軽微程度では済まないダメージを与える。生身だったら原型を留めていないレベルだろう。
「このまま終わるか?いいや終わるまいっ!」
「過度な期待されても……困るのよ!」
とはいえデッドウェイトは消えたしマルスも手傷を負っている、続く拳はどうにか受け止めた。
「攻守逆転よっ!」
「そうこなくてはなぁ!」
拳を受け止めたまま巴投げで叩きつけ反動で宙返り、勢いのままマルスに跳び蹴りを叩き込む。
「だがまだ甘いわぁ!」
「想定してないとでも!」
無論最初から当たるとは思っていない。ローリングで透かされクレーターに着地、そのまま立ちあがろうとするマルスに今度は回し蹴り。
「痒いな!」
「ああったくなんでそんなすばしっこい訳!?」
が、またも掠る程度に留まる。成長しているのはどうやら彼方も同じらしい、以前ならば直撃コースだったのに……
「ここまで来れば得物は不要か?えぇ?」
「いっつもそうだったでしょうがっ!」
「違いないなっ!」
そのまま2度目の徒手空拳フェーズに突入。お互い手傷を負って動きは多少鈍っているがそれでも重い打撃音は変わらない、このまま続けてたら此処ら一体クレーターだらけになるやもしれん。
「もしかして適合率でも上がったかしら!?昔なら此処から崩されてたよねぇ!」
「変わらず92%のままよ!日々の鍛錬の成果に過ぎん!」
困った時の煽りも残念ながら通用しない、本当に戦いの事しか考えてないんだよなこいつ。
とはいえこのままじゃ動いてるように見えて戦況は膠着したままだ、何か良い手は……
「強化詠唱029、茨蔓ッ!」
……ん?
「っ……邪魔をするな有象無象っ!」
「お父さんに手出したんだ、これくらいは仕返しさせてもらうよ!」
クレーターから蔓が伸び、マルスの四肢に絡みつく。無論すぐに引きちぎられるだろうが……
「……礼を言っておくわ、ケレス」
「貴様ァ!」
「言ったでしょう?私だけに意識を割いてると……痛い目見るかもって!」
「ガハァっ!?」
それは充分すぎる隙だ。渾身の回し蹴りを叩き込み、蔓を引きちぎったマルスを思いっきり吹き飛ばす。
「今日こそケリを付けましょう、必殺詠唱!」
「抜かせ!必殺詠唱!」
空中に吹き飛んだマルスは血のような魔力の塊を脚に纏い、此方も迸る稲妻を右脚に集約させる。
「迅雷槍!」
「鮮血槍!」
お互いに槍状に形勢されたエネルギーを纏い。
「閃穿脚!」
「鏖殺脚!」
振り上げた右脚と落下する右脚が激突、激しいスパークを生み出す。
「互角……」
「いいや……!」
このまま拮抗、する筈もなく。
「呪文詠唱111、閃熱ッ!」
「なっ……!?」
「よくやってくれたわ後輩!」
ミネルヴァの横槍がマルスを直撃、僅かにズレた体勢はこの場において致命的で。
「お、わ、り、よ!」
「認めん、認めんぞっ、こんな決着はっ!」
マルスの右脚を弾き、再び落ちてくるまでに回転で勢いを付けて。
「どんな過程であっても……」
「勝ちは、勝ちよっ!」
再び振り上げた右脚は、今度こそマルスを穿った。




