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魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。  作者: 暁真
第一部 魔法少女は引退したいって話。
13/60

正式加入は一区切り付いてからって話。

「ふぅ……」


 マルスを穿ち、吹き飛ばした脚を直して一息。しかしあいつが直接出てくるとは思ってもみなかった、それもあの子達相手に。

 あいつは誰にも制御できない戦闘狂だ、早々ユピテルが連れてくる筈もない、だって言うこと聞かないし。

 ただ私が居るとフリスビーを投げられた犬の如く向かってくるから私を確実に仕留めるため派遣してくるだろうか?くらいの想定だった。多分ユピテルもその想定で……あ。


「……」

『どうしたユノ?』

「いや、わざわざマルスが来た理由が予想ついただけよ」

『ふむ、多分私も同意見だろう』

「分かりやすいのも困りものね……そろそろ落ちてくるかしら」


 内心少しユピテルに同情しながらマルスが降ってくるのを待つ。ディーデバイスは破壊できていると思うが……万が一のためにもう一度必殺詠唱(フィニッシュコール)の準備をして。


「ガ……ハッ……」


 うん、想定通り変身解除済み、ディーデバイスは破壊できたようだ。このままユピテルの予行演習として洗脳解除を「二重詠唱(デュアルコール)加速(アクセル)浮遊(フロート)」……そう上手くはいかないか。


「ユピテル……!」

「勝手に出て行ったと聞いて嫌な予感はしましたが……よりにもよってデバイスまで破壊されるとは。弁解はありますか、マルス」

「貴様が慎重すぎるから進まないのだ……!」

「そうですか……デバイスの修理が終わっても暫くは謹慎です、此方で預かりますので」

「チイッ……!」


 何処からともなく現れたユピテルが地面とキスする寸前のマルスを回収、やっぱり無断出撃だったようだ。


「逃すと思うのかしらっ!」

「残念ながら今日は戦闘目的ではありませんので、メルクリウス」

「悪いけどマルスを確保されると困るんだよね!」

「っ……」


 無論想定済みだったためそのままユピテルに仕掛けようとしたがメルクリウスの杖に阻まれる、もしかしてお目付け役にでもなったか?


「では、お暇させていただきましょう。呪文詠唱(アーツコール)転移(ワープ)

「待ちなさっ!?」

「待てと言われて待つやつがあるかっての。呪文詠唱(アーツコード)179、転移(ワープ)っ……じゃあねっ!」


 咄嗟に阻んできたメルクリウスを蹴り飛ばしてでも向かおうとしたが間に合わず。ユピテルはマルスを抱えて離脱し、跳び蹴りが直撃したメルクリウスも吹き飛ばされながら離脱を許してしまった……ええいお約束ってなんでこうも面倒なんだ!


『タルタロス側も早々マルスを失う訳には行かないのだろう。制御が難しいとはいえ最高戦力であることは確か、君にご執心な事以外は投入すれば確実な戦果を期待できるからな』

「アポロがアレだったし余計そうでしょうね……さて、事後処理しましょう、呪文詠唱(アーツコール)修復(リカバー)


 いつも通り修復(リカバー)でクレーターを元通りに。先日のビル倒壊程ではないが結構壊してしまっている、相変わらずあの馬鹿力は……


忘却(オブリビオン)はどうする?』

「……正直、悩んでるわ」


 ケレスのお父さん……マスターはこれで娘達が裏で戦っていることを知ってしまった。いつも通りなら忘却(オブリビオン)で綺麗さっぱり忘れさせて何事もなく終わらせているところだが今回色々知ってしまったのが彼1人、なんならあの子達は記憶を消してないだろうから段々と戦いの事が隠せなくなってきている……なんかもう、今更1人記憶消したところでなぁって感じ。

 後正体バレ回はお約束ではあるし……まああのマスターの事だし悪いようにはならないだろう、だったら別にいいのだろうか?でもなぁ……


「ユノさん!」


 ……あぁうん、先にこっちだな。


『……考えは纏まったか?』

「ええ……まあ、なんとかね」


 結局あくまでユピテル救出までの関係、そう割り切る事にした。全部終われば私はユピテル……シルウィアにカオスデバイス(テルス)を託して引退する、お別れするのはちょっと寂しいけど……元々の所有者は彼女なんだしそれでいい筈だ。

 引退すればニチアサ展開にこれ以上関わる事もない、懸念事項は全部消えて一宮弍乃と言う人間は最低限の面倒で生きる日常に戻るのだ。


「あのっ、助けてくれてありがとうございます!」

「……あの店のコーヒーが飲めなくなるのは嫌だった、それだけの事よ」


 まあそれはそれとしてあまり関係を結びたくないので塩対応は続ける、退場したいのにサブキャラ残留は勘弁だ。


「相変わらず素直じゃないのですね」

「随分お父さんと仲良さそうだったじゃん?」

「あのねぇ……私だって好きなものくらいあるわ。それを奪われるのは面倒だったの、貴方達を助けたのはそのついで」

「絵に描いたようなツンデレだね……」


 誰がツンデレだ、別にデレてないぞ。素直じゃないのは認めるがツンツンしてるんじゃなくて関わりたくないだけだし。


「まあマルス相手に少々保たせたのは成長していると言っていいんじゃないかしら?アポロ程度に苦戦してた頃なら瞬殺だったろうし」

「そっちこそ手助けしてなかったら危なかったくせに」

「だまらっしゃい、6分かかる睨み合いが3分に短縮されただけよ……時短になったのは確かだけども別になくたって勝てはした」

「この前と似たようなこと言ってる……」

「素直にお礼を言いたくないだけって言えばいいんじゃないkむぐぅ!?」

「はーいファウヌスはお口チャックねー」


 コーヒー飲んでた時も思ったけど君達随分妖精の扱い雑になってきてない?マスコットというかサンドバッグというか……


「ま、戦えるようにはなってきてるんじゃないかしら……これなら手伝ってもらってもいいかも」

「手伝い?」

「何の……です?」

「……そうね、此処からは至極個人的な話になるわ」


 元々下へ振り切らせようとしていた好感度調整は過去の私のせいで大失敗しているためそのまま切り出しても問題ないだろう、怪我の功名……いやこれ大失敗したリペアプランだから別に怪我の功名でもなんでもないぞ。


「さっきの魔導士(マギスター)……ユピテルの事は知っているわね。一度私と戦っているのを見た筈だし」

「……あの時の」

「速すぎて何がどうなっているのかまるで分からなかった戦いでした」

「かろうじて姿が見えたくらいだったよ……」


 ……そうだった、あの子達が来る頃には時空加速(クロノアクセル)を使ってた。それでも姿はかろうじてレベルなのがむしろ驚くというか。


「単刀直入に言えば……彼女は私の恩人、みたいな子なの」

「恩人?」

「ええ、私に魔導士(マギスター)としての力を与え……いや、託してくれた子。色々あって今はああなってしまったけど……なんとかして元に戻してあげたいと思ってる」

「元にって……あの人、自分の意思で魔導士(マギスター)になった訳じゃないんですか?」

「少し違うわね……まあ話してもややこしいから省くけど」


 記憶改竄だの最適化(フォーマット)だの話すと時間が足りなさ過ぎる、必要最低限の説明だけでいい。


「それが私にとって最後の戦い。けど問題は……あの子は必ず他の魔導士(マギスター)を引き連れて襲撃してくる。どうにか元に戻そうとしてもその前に他の奴が連れ帰ってしまう」

「さらっと倒せてるって言ったよこの人」

「私たち本当に必要なんですそれ……?」

「必要だから話してるのよ……そうね、貴方達に頼みたいのは他の魔導士(マギスター)の相手。私が確実にあの子を取り戻せるようにしてほしい」


 倒すだけなら私一人だけでもどうにかなる、けれど救うとなれば邪魔をされる訳にはいかない。だから手を借りるしかない……なんっでこう関わらないって選択肢を悉く潰されるのやら、ニチアサ時空の因果とかあったらぶん殴ってやりたい気分だ。


「取り戻す……」

「ええ、正気に戻してやってこれ(カオスデバイス)を返す。後は……貴方達に託そうと思う」

「急にそんな事言われても困るんだけど?」

「逆に順序立てて説明した所で貴方達理解できないでしょう?これでも結構ややこしいのを噛み砕いてるのよ」

「確かになんかこう複雑な事情があるのは分かるけど……」

『他人に伝えるのが下手だからな、彼女は』

「だまらっしゃいテルスっ!人が説明してるところに横槍いれない!」


 なんでこう一言余計なんだこいつは……!


「今のは……」

『気にしないでほしい、私はただ彼女の補佐をしている人工知能だ』

「いやめっちゃ気になるんだけども!?」

『質問なら後で受けつけよう、今はユノの話を聞いてほしい』

「待ちなさいあなたさらっと私の予定を決定したわね?」

『交渉材料としては充分だと思うが?』

「よくない!」


 こいつたまにこうやって独断専行するんだよなぁ、こんな事ならスリープモードにしときゃよかった……


「……ふふ」

「……何かしらミネルヴァ」

「いや、ユノさんはやっぱり優しい人なんだなって」

「だから優しくなんてない、面倒事が嫌いなだけ」

「だったらさっきの提案は即座に全否定すると思うけど」

「焦ってやり損ねただけよケレス、こいつは後でスリープモードにしておく」

「そもそも勝手に動かれるのが嫌なら最初からオフにすればいい気が……」

「戦闘後すぐに切り替える暇はないのよディアナ、だから焦っただけ」

「と言うか名前ちゃんと覚えてくれてるんですね、嬉しいです」

「デバイスの登録記号のようなものだから覚えてるに決まってるわウェヌス……ああっもう、調子狂うわね……」


 なんでテルスといいこの子達といい言葉狩りがこうも上手いの?どうしてこう私をめんどくさいキャラじゃなくて善人キャラにしようとしてくるの?


「まあでも、それなら決まりです」

「うん、ミネルヴァならそういうと思った」

「相変わらず即断即決だなぁ、いい所ではあるんだけど」

「いい意味で迷いありませんものね」


 ……まあ、下手に協力断られるよりはマシではある、が。それはそれとして面倒だなぁ、此処から。


「協力させてくださいユノさん。助けてもらった恩、返します」

「恩じゃなくて貸しよ貸し。これでプラマイゼロね」

「此処まで来るともうわざとだったりしない?」

「だまらっしゃい。ユピテルを助けるまでの関係なんだからゴタゴタ言わないの」


 確かに3割くらいはわざとだが……7割はガチだからな?真面目にシルウィア助けたらもう関わりたくないからな?あっでもコーヒー……


「それじゃあよろしくお願いしますね、ユノさん……あっでも、私達魔導士(マギスター)としての名前しか……」

「……はあ」


 ……どうせ素顔を晒してしまっているのだ、名前を隠した所で無駄か。


「それくらいなら別にいいわ。素顔は知っているんだし偶然あった時にユノって言われても困る」


 デバイスを操作し変身解除。流石に時間結界解除されてるしこれ以上着身(マギアライズ)してたらこの子達以外にも身バレする可能性あるしな。


「……思ったより若かったです」

「そりゃあそうよ私18よ?法的にはやっと成人よ?魔導士(マギスター)になったのは貴方達と同じくらいの年齢だし……」

「というか変身解除する意味あった?」

「貴方達以外に素顔バレる訳にはいかないもの……まあ、そういう訳よ」




「私は一宮弍乃。もし偶然会ったらこっちの名前で呼ぶように」


 こうやって釘を刺しておけば身バレの心配はないだろう、特にケレス辺りはうっかりしそうで怖いし念のため。


「分かりました、弍乃さん!」

「いきなり名前呼びの方から……距離感詰めてくるわねミネルヴァ」

「こういう子だから……ごめんね一宮さん」

「満更でもなさそうな顔してるくせによく言うよ」

「だまらっしゃい……それじゃあ、また。多分次のゲートが開く時くらいに会いましょう」


 めちゃくちゃ歪んだ顔を帽子で隠し手早く帰ろうと「待ってください一宮さん」……む。


「何かしらウェヌス」

「ええっとその……さっきの声、質問ならあとで受け付けるとか言ってませんでした?」

「それが今日とは言ってな『いいや今日だ、情報共有は早い方が良い』テ〜ル〜ス〜!?」


 おまっこのポンコツAI!?いい感じに誤魔化して帰ろうとしたのに!?


「じゃあ店で話そうよ、大丈夫お父さん口硬い方だから……お母さん以外には」

「絶妙に不安にさせてくるのをやめてくれるかしら」

「やっぱり優しい人なんですね、一宮さんは」

「だから何がよ……」


 ……ああもう、やっぱり調子狂うなぁ。言い出しっぺはテルスなんだから質疑応答は全部あいつに任せてやる……


「それじゃ戻りましょう!弍乃さんの歓迎会です!」

「いや仲間になった訳じゃないわ……」


 結局主人公オーラ眩しいなぁ、とか考えながら私は店に連れ戻された。ちゃんと質疑応答は全部テルスにさせたしマスターからは豆もらって帰ってしまった。

 ……ちょっとだけ記憶消さなくてよかったかも、と思ったのは内緒だ。

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