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力を失った魔剣士と聖女

「う~ん……」

『アベル! 大丈夫!?』


 僕が目を覚ますと、心配そうにアジェが呟いてくる。

 どうやら、僕は意識を失って倒れてたみたいだ。

 空は黒雲から一転、空は晴れていた。さっきまで神と対決していた時とは大違いである。


「ああ……大丈夫……」

『良かったぁ~……アベルの意識が戻って……』


 返事を返すと彼女は安堵した言葉でホッとして言う。

 彼女は僕の体を心配して意識が戻るのを待っていたようだ。


『あたしの触手を避雷針代わりにして防いだから感電死は間逃れたよ!』

「ありがとう……あっ! 神はどうなったの?」


 どうやら、アジェの触手が雷を吸収して地面に流して直撃を防いでくれたおかげで感電死せずに済んだようである。

 感心しているとハッとなり神の行方がどうなったのか気になった。


『あいつなら、あたしが吸収しようとした最中に雷を落として逃げられてしまったんだよね~』

「えっ? 逃げられたんだ……また僕達に悪さしてくるかな?」

『たぶん、大丈夫だと思う……あいつは、もう魔力が全然残ってない筈だからさ!』


 アジェは神が力を再び蓄えて復讐してくることはないと自信を持って言う。

 どうやら、触手のオーラで巻き付けて吸収した時に魔力を殆ど吸い尽くしたようである。


「それなら良いけど……でも、何処に逃げたんだろう?」

『それは、あたしにもわからないね……』


 僕が質問すると彼女は分からないと答えてきた。

 しかし、僕の中の女神が勝ったとは言え、神と対決して勝利したのは思いがけない幸運だった。


「あっ! 皆がこっちに来ている!」

『頼りになる仲間がいて良かったね……さあ、行きましょ』

「うん、そうだね」


 すると、仲間は魔王城から僕に向かって近付いてくるので、僕は立ち上がり仲間の元に歩いていく。

 仲間達は雷が落ちた後、レムルスが敗れた事で戦いが終わったと思い安堵して話してくる。


「アベル! 大丈夫じゃったか?」

「さっきの戦いは凄かったね! 人智を超えた神々の闘いみたいだったよ」

「勇者との戦いは、まるで伝説のような戦いだっじゃないか!」

「無事で何より見事だったぞ!」


 皆は僕を心配するも、超人的な決闘に圧倒され興奮し浮かれていた。

 神との戦いの後、仲間達は僕を取り囲み感嘆し称えるのであった。


「ありがとう……」


 僕は照れながら皆に感謝の言葉を言う。すると、近くで白目を剥いて倒れているレムルスが目に入る。

 雷が落ちたせいか体のあちこちに火傷の痕がある。髪も焦げ付いて逆立っていた。


 神から力を貰って超人化してなかったら即死であっただろう。

 そして、2人の男がこちらに向かって来ていた。


 彼等はウェイドと武闘家……たしか、アーロンという名前だったと思う。

 近付いて来る彼等に警告するように話す。


「まさか、僕等に再び戦いを挑む気じゃないよね……」

「ち……違う! 俺達はアベルと争う気は全くない!」


 僕が彼等を警戒すると、ウェイドは慌てた様子で弁明する。どうやら、僕と戦うつもりは更々無いようである。


「それなら、何の用?」

「ただ、リーダーの無事を確認しに来ただけだ……お前達と戦う気は微塵もない」


 代わりにアーロンが答えている間、女がとぼとぼと歩いて来る。

 それはレイラであり、顔は虚ろで憔悴したような表情であった。

 そして、2人を押し退けて倒れているレムルスに駆け寄る。


「ああ……レムルス! 負けてしまうなんて、なんて 情けない……神の名を汚すなんて……」


 彼女はレムルスの体を揺すり、泣きながら嘆いている。どうやら、レムルスが負けた事がショックだったようだ。


「レイラ…… レムルスを回復してあげたら」


 僕はレイラにレムルスを回復させるように言うと、彼女は僕の方に振り向き睨み付けて言う。


「……神の敵であるあなたが、なぜレムルスに気遣うの?」

「だって、僕は君達に殺意を抱いている訳じゃないよ……追放されたとはいえ、彼をほったらかして死んでしまったら気が咎めるからね」


 彼女は僕が答えている間も、キッと睨み続けていた。

 それを見ていたウェイド達が僕を刺激するのではないかと、ハラハラした様子で見守っている。


「レムルスが死んでもいいの……?」

「それは……」


 僕が忠告すると、彼女は言い返す言葉が見つからず口ごもる。そして、暫く沈黙が続いた後……。


「分かった……レムルスを癒しましょう」


 レイラは意を決したように答えると立ち上がり魔剣士に向けて詠唱を始めたのである。


「神よ! その大いなる力で持って、かの者の傷を癒やし給え!」


 彼女は神聖魔法を唱えるがレムルスには全く何も起こらない……。


「どうして!? 何も起こらないの!?」

『この世界から神の力が失われたんだね……奴に祈っても何も起こらないよ』


 何度も詠唱するが一向に効果が無い。すると、アジェが僕の頭の中で呟くのである。

 聖女は焦りながら自身の神聖魔法の効果が発現しない事に何が起きたのか不明なままだった。


「そんな……魔法が使えない……」

「僕が彼に癒しの魔法を掛けようか?」


 彼女は信じられないと言った表情で呟いた。

 どうやら、神聖魔法を使うには信仰する神の力が顕現していないといけないらしい。

 そんな彼女を傍目に僕は自らレムルスを回復させようかと申し出るのであった。


「お……お願い」


 レイラは少し躊躇ったが僕に任せてみる事にする。

 そして、僕がアジェに祈りながらレムルスに回復魔法を掛けると彼の体が多元色の光に包まれていく。

 それから、少し時間が経って彼は意識を取り戻すのであった。


「うっ……はっ!? 俺は……生きている……」


 レムルスは目覚めたばかりで状況が分からず混乱していた。

 そんな彼にウェイドとアーロンが経緯を話すのである。


「神がお前に乗り移って支配されてしまった……」

「その後、アベルと戦い敗けたんだ……」

「嘘だ……俺が……神が敗ける筈がない!」


 2人が経緯を説明したらレムルスは信じられないと言った表情で否定する。

 そして、すかさず地面に刺してあった聖剣に目をやると素早く立ち上がり手に取る。


「聖剣よ! 我に力を!」


 彼は聖剣を地面から抜くと、剣を構えるのであった。しかし……。

 聖剣『ディヴァイン・フォース』は見る影もなく錆びついていて神々しい輝きが失われ、神聖な力は失われていた。

 レムルスは聖剣を構えると錆び付いた刀身が脆くもボロボロと折れてしまった。


「そんな……馬鹿な……」

「君に力を与えた神はもういないんだよ……」

「そんな……俺は勇者でもなくなったのか!?」


 僕がそう言うと彼は折れた刀身を見つめながら茫然としていた。


「俺は……俺は、これからどうすればいいんだ……?」

「さあ? 一から出直して来たら?」

「くっ……」


 彼は僕の言葉にショックを受けたのか、地面に膝をつき項垂れるのであった。

 そして、彼等に別れの言葉を投げ掛ける。


「僕はもう行くよ……もう会う事はないだろうけど達者でね……」


 僕はレムルス達に別れの挨拶を言って立ち去る。

 仲間達と一緒に魔王城に向かって歩いている途中、アジェが僕に話し掛けてきた。


『ねえ……力を失ったとはいえ行方知らずの神が気掛かりだから捜す旅を始めない?』

「そうだね……時間が経てば、いつかは力を取り戻してしまうの?」

『うん……多分ね。そうなったら厄介だから早めに捜して始末しようよ』


 アジェは僕に提案すると、彼女は復活した神への懸念を露にするのであった。


「分かったよ……でも、何処にいるか分からないし手掛かりもないから難しいと思うけど……」

『それなら大丈夫! 奴の痕跡があれば、それを辿っていけるから!』

「あっ! そう言えばシャノン……もとい魔女を見かけなかったね。彼女に何か手掛かりがあるかも……」

『そうだね……神は魔女の庇護を受けて、その体に宿っているかもね』


 女神と僕は色々想像しながら答え、僕等は魔王城に向かって歩き続けるのであった……。

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