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魔剣士の企み、魔女の陰謀、アベルの新たな旅路

「城に戻ったら僕は魔王を辞退して旅に出ようと思うんだけど……」


 魔王城へ戻る途中、僕は仲間達に今後の方針を伝えると、皆は驚きを隠せなかった。


「魔王を辞めてどうするの?」


 ニルスは僕の言葉に驚くと残念そうに言うのである。


「うむ、お主が好きなようにすればよい。儂はお前について行くぞ……」

「魔族以外の強者とも戦いたい……私は行動を共にするぞ」

「武の道が、まだまだ途上だ……私も付きあおうぞ」


 ドワーフ、古エルフ、竜人族ともに打ち合わせしたかのように、 僕と一緒に旅に出ると言い出した。


「も……もちろん、僕もついて行くよ!」


 ハーフリングも慌てて旅に同行すると言い始めるのである。

 僕はニルスの慌てふためく姿を見て苦笑しながらも、皆に礼を言った。


「ありがとう……みんな」


 こうして、皆の思いを胸に感謝しながら僕の魔王の役目は終わるのである。

 その数日後、僕は仲間達と共に魔王城を後にして旅立つのであった……。




 アベル達が去った後、『終焉の刃』のメンバー達はレムルスを取り囲んでいた。


「……これから俺達はどうするよ?」

「『終焉の刃』を解散するか?」

「……いや、パーティは存続しよう」


 ウェイドとアーロンの言葉にレムルスが答える。彼はまだ再起を考えているようである。


「何を言っているんだ! レイラは神聖魔法を使えなくなったし、ベルゼリアは行方知れずだぞ!」

「そうだ! 魔法使いとヒーラーがいないとパーティは続けられないぜ!」


 戦士と武闘家が魔剣士の反論に顔を赤くして言い合いになり、ややこしくなっている。

 そんな彼等を他所にレイラは地面に座り込み呆然としていた。


「……神よ、私はこれからどうすれば良いのですか?」


 彼女は天を仰ぎながら神に問い掛ける。しかし、その答えは返ってくる筈もない……。


「レムルス! じゃあ、これからどうするんだよ!?」


 アーロンが魔剣士の今後を尋ねるも、彼は思案してるのか黙ったままである。

 そして、暫くして重い口を開いた。


「忘れるな……俺達はベルゼリアと一緒に王殺しを共謀したんだ」

「ああ……そうだったな……」


 彼等はベルゼリアの魔法で王や重臣達が生ける屍者として蘇生させたことを思い出す。

 その出来事に加担した事を思い返し、顔を曇らせた。


 自分達は王殺しの重罪人の一員であることを理解し、この国には居られないと悟るのである。

 そして、2人はベルゼリアの行方を捜して始末しようと言い出すのである。


「じゃあ、ベルゼリアの行方を捜そうぜ!」

「そうだ! 奴を始末しないと俺達の気が済まないぞ!」


 2人はベルゼリアを始末する為に行動しようとするがレムルスが制止した。

 その顔から苦渋の色が見えていたのである。


「待て! 勝手に手を出すんじゃない……あの体はシャノンのものだ」

「そう言えば、そうだったな……」

「じゃあ……どうする?」


 彼等はベルゼリアとケリをつける事に同意したが、シャノンの肉体を乗っ取っている事を思い出して思案する。

 そして、魔剣士が口を開くのである。


「魔女を始末するには特別な方法が必要な筈だ……雷に打たれた時、神が俺から離れた直後に魔女を頼る思念を感じた……」


 彼から離れた神がシャノンの肉体に入り、一安心する思念を感じとったのである。そして……。


「魔女が神を宿しているのなら、奴から神を離す方法がある」


 ベルゼリアに宿る神をシャノンの肉体から追い出す方法を知っていると言い切る。

 戦士と武闘家には全く思いつかないので魔剣士に、その案は何かと聞く。


「それはどんな方法なんだ?」

「シャノンの肉体を傷つけず魔女を追い出す方法があるのか?」


 この時、レムルスはレイラをチラチラ見ながら小声で彼女には聞こえないように2人に話すのである。


「その方法を可能にするのが……レイラを神の依り代にする事だ」

「だが、神をレイラに憑かせたところでシャノンの体はベルゼリアが操っているぜ……」

「神が離れた後どうするつもりなんだ!?」


 魔剣士は神をレイラに宿らせて、シャノンの肉体から追い出すと言いきる。

 だが、2人は操っているベルゼリアを、どうするのかと疑問を持ち尋ね返す。


「それに関して俺に考えがある……ベルゼリアを冥界から召喚したのも神だ……」

「それで……」

「神の方もベルゼリアに宿るより自身が聖女の役目を与えたレイラの方を選ぶはずだ。その時、神に恩を着せてベルゼリアを排除して貰うよう頼むつもりだ」

「なるほど……神をレイラの肉体に宿らせた後、神の力でシャノンの肉体から追い出すんだな」


 レムルスは神と交渉し、貸しを作る事でシャノンの肉体から追い出そうと言うのである。

 その案を聞いた戦士と武闘家は納得して頷き、レムルスの考えに賛同する。


「神をシャノンの肉体から離す事は可能だ……問題はその後、上手くいくかどうかだ」


 魔剣士と彼等はそう呟き座り込んで呆然としているレイラを見詰めこれから起こるであろう事態を思い描くのであった……。




 神がアジェからオーラの触手でがんじがらめにされた時、天空から雷を落とし女神から吸収されるのを回避した。

 レムルスから離れ逃げていく先に遠くで自分を呼んでいるベルゼリアを感知し、近付いていく。


 傷付き力を消耗した神は自身を呼ぶ声に誘われるまま、避難の為に彼女の肉体に宿った。

 そして、神はシャノンの肉体の中で眠りに着くのである。


「ふふふ……哀れな神よ妾が憑りついた器の中で眠りに着くのだ。そして、神の力を奪い妾は神の力を自由に顕現できる魔人となるであろう……」


 神と古代の魔女の魂、シャノンの肉体が1つに融合した瞬間彼女の瞳は禍々しく妖しく光る。

 ベルゼリアは神の力を自分のものにする為に、シャノンの肉体を神の依り代として利用すべく計画を立てる。


 そして、神の力を奪った時……彼女はこの世界を支配するつもりであった。

 古代魔法王国を支配できなかった無念が彼女の心を蝕み、その思いは現世への復讐心へと変わっていくのである。


「ふふふ……神の力を手に入れた後、妾が世界を支配してやろうぞ」


 彼女はそう呟きながら邪悪な笑みを浮かべていた。

 そして、呪文を唱えると転移魔術を発動させ遠くへ消え去るのであった……。




 魔王城から遠く離れた街道を、複数人の男女が歩く集団がいた。

 その集団の先頭を歩いているのは髪が多元色で黒いローブを着た女であり集団のリーダーであろう。


 その後ろを背の低い男達……長い髭を生やしているのがドワーフで子供のような見かけをしたのがハーフリングであった。

 更に後ろを金髪で金色の瞳をした女エルフと竜の様な角と尻尾を生やした赤髪の女竜人族が歩いていた。

 彼等は魔王城から旅立ち、リーダーが導く方角へ歩いているのである。


「ねえ……本当にこっちの方角に神が逃げたの?」

「うん……多分ね。何となく神の残滓を感じるんだ……」

「アベルの力は人智を超えておる……お主の言う通りで間違いないじゃろう」


 ニルスの問いに僕は頷き、ガラドも僕が決めた方針を信じてくれてる。

 そして、シャノンの肉体に宿った神が逃げた方角へ彼等は向かって旅をしているのである。


「アベル……神と決着をつけると言ったが、また復活してくるのか?」

「うん……また復活してきたら厄介なんで次はキッチリと仕留めるつもりです……」

「その事なんだが神の魂を破壊できる方法はあるのか……?」


 バルバラの質問に作戦を説明すると、アイラも新たな質問をしてくる。


「それは大丈夫です……神を倒す方法があるんです」


 僕はそう簡潔に答え詳しい内容ははぐらかしていた。

 仲間達にはまだアジェの事は伝えていないのであるが……。


「まあ、その時が来れば解りますよ……ふふ」


 意味ありげな含み笑いに皆は何かを察してか、それ以上何も聞いてこなかった。

 暫くして、アジェも落ち着かない感じで脳内で話し掛けてくる。


『ねえ~……まだ、あたしの正体を隠しておく?』

(うん、その時が来たらね……)

『早く見つかればいいね……』


 僕は心の中でアジェにそう答える。女神も神と決着をつけたいようで僕達は心の中で会話する。

 神が去り神の奇跡が失われたこの世界で僕だけが唯一、女神の奇跡をおこなえる存在となったのである。


 吹き抜ける風が僕の髪を優しくなびかせていく。

 この身に宿る女神と共に、神と決着をつける為の旅はまだまだ続くのであった。


「ねえ……アベル。何処へ向かうの?」

「うん……とりあえず、ここから1番近い町へ向かおうか」


 ニルスの問いに答え遠くから町並みが見えてくる。

 僕等はまだ見ぬ町に思いを寄せ、その方角に歩いて行くのであった……。

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