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神の奥義で空間内で圧殺されそうになるも魔力解除を使い脱出する

 アジェの触手が徐々に押されていっていた。このままでは空間が閉じて僕の体が押し潰されるのは時間の問題だ。

 彼女は肉体を持ってないから無事であっても僕は死んでしまう。


『ぐぐぐ……アベルが死んだら、あたしは無事でも依り代を失い神に対抗できる力が無くなってしまうよ!』

(ど……どうすればいいの?)

『う~ん……あたしの魔力喰らいでは、神の魔力を喰らって相殺していくには追い付かないよ……』


 どうやら、アジェが魔力を吸収するスピードより神が放出するスピードの方が速い様である。

 彼女としては、この窮地から脱する方法が思い付かないようだ。


 しかし、このままでは潰されて僕は死んでしまい、依り代を失ったアジェは神によって消滅させられるだろう。

 すると、神が考えを読んだかのように勝ち誇った笑みを浮かべて口を開く。


『空間が潰れるのも時間の問題だ……そうなれば人間の肉体は死ぬ。依り代を失った汝は我に取り込まれ、跡形もなく消えるのだぁ!』

『冗談じゃない! あんたみたいな奴に吸収されるくらいなら自殺した方がマシよ!』


 女神は神に対して怒りを露にし拒絶する。神は肉体を持たないので自殺する事は出来ないと思うけど……。

 そんな事を考えていると、僕にアイデアが閃く。


(アジェが僕の体を操っているなら魔力解除の力も強化されているよね?)

『うん、そうだけど……まさか!? 』

(そのまさかだよ……このままじゃ、どっちみち死ぬんだ。一か八かやってみようよ!)

『分かったわ……でも、それしか方法は無いよね……』


 咄嗟に考えたアイデアを彼女に伝えると彼女は渋々ながらも了承してくれたのである。


(うん、絶対に解除して一緒に脱出しよう!)

『そうね、絶対よ! じゃあ、今から魔力解除の能力をアベルに委ねるから!』


 決意を固め自身の感覚を取り戻すとアジェは僕に魔力解除を託してきた。

 すると、僕の目を通して空間内に施された神の術式を解析していく。


 僕の脳裏には神が仕掛けた奥義には黄金色の魔力の糸が幾重にも施され張り巡らされていた。

 女神が憑依してなければ、この空間内の複雑すぎる術式を解除する事は不可能だっただろう……。


『あたしには解除の方法は全然わからないけど、アベルには分かるんだね……』

(君が力を開放したから能力が強化されたんだよ……)

『そうなんだね……』


 アジェは僕の能力を羨みながら言う。だが、僕が魔力解除士だったからこそ、この局面を乗り切れるのだ。

 すると、神の奥義に施された複雑に絡み合う無数の魔力の糸から隙間を見つけ出し、そこに僕の魔力解除で術式を無効化していく。

 段々、空間内にかかっていたオーラの圧が少し弱まってきたのである。


『押し潰す力が少し弱まっている?……』


 女神は空間を圧縮する力の勢いが落ちた事を感じ驚くと僕に知らせてる。

 それは神にとって想定外の事態で、自身の術式を解く存在など予見してなかったのだろう。


『アベル! 今がチャンスよ!』

(分かってる……今、術を解除するのに集中してるから邪魔しないで!)

『ごめん……』


 アジェが急かしてくるので僕は彼女に注意する。すると、彼女はシュンとしながら謝るのであった。

 だが、少し弱まったとはいえモタモタしてれば、また押し潰してくる力が元に戻ってしまうのだ……。

 僕は魔力が幾重にも張られた格子の隙間を縫うように解除し集中させていく。


(よしっ! 術式の解除は順調だよ!)

『やった! これで脱出できるんだね!』


 アジェは歓喜の声を上げるが、まだ油断はできない。完全に解除するには最後の一手が残っているからだ。

 僕は最後の力を振り絞り、決め手を掛けるべく更に集中する。


 すると、奥義に施された黄金色の魔力の糸の隙間から極僅かな隙間を見つけ核を発見する。

 その核は一際金色に輝いた球体であった。


(これだ……これさえ解いてしまえば!)

『これでいけるね!』

(うん……後はここを解くだけだよ!)


 そして、僕が手探りで見つけた僅かな隙間をこじ開け核を握って潰す。

 すると、球体は萎んでいき黄金のオーラで覆われた空間が崩壊する。


『なんだと! 我が奥義を破るとは……』


 神が信じられないと言った表情で崩壊していく空間を見つめる。そして、中から僕の体が姿を現していく。


「はぁ……はぁ……やっと、解除できたよ!」


 僕は息を切らしながら安堵して言うのだった。しかし、その瞬間にアジェが口を開く。


『アベル! 脱出したから、あたしが体の主導権を貰うからね!』

「うん!……いいよっ!」


 女神はそう言うが否や、体の主導権を強引に奪い取り神に向き直る。

 そして、僕の意識はそのままで再び体は彼女が主導権を握るのであった。


『よくもやってくれたわね! あんたの魔力を根こそぎ吸い尽くしてやる!』


 彼女は怒りで我を忘れ、神に向かって突進していくとオーラで具現化した触手を無数に生み出す。

 その数は数百を超えており神に一斉に襲い掛かかり絡み付いて行く。


『小賢しい真似を!!』


 神がそう叫び地面に突き刺した聖剣を取ろうとした時、アジェの触手が聖剣に絡み付き奪い取る。

 そして、そのまま神を触手でぐるぐる巻きにすると拘束して身動きできない様にする。


『むむっ!……小癪な真似を!』


 縛れながらも怒りで顔を歪ませると女神に言う。

 しかし、彼女は聞く耳を持たずに絡み付いた触手から神の魔力を吸収していくのであった。


『大人しく消えてしまえ!!』

『ぐぬぬっ!!……ぐげぇえ!!』


 神が必死に抵抗しようともがくも、アジェの吸収の速度が速く徐々に力を奪われていく。

 女神から魔力を吸われる度に神としての自我が薄れていくようになっていった。


 このままでは存在が無くなり女神の一部として吸収される事に逆上するのであった。

 そして、アジェは最後の一滴まで神の魔力を吸い上げようと触手の締め付けを更に強める。


『これでお終いよ! くたばりな!』

『ぐがぁあああ!!……い……いい気になるなぁあああ!!』


 神が断末魔の叫びを上げると、頭上の漆黒の雲から突如、雷が神と女神に降り注いだ。

 稲妻が当たるとズガアァアアアアンッ!!と途方もない大きな音を立てる。

 通常の雷に比べて巨大で黄金の稲妻が神達に直撃したのである。


『ぐおぉおおっ!!』

『きゃぁああっ!!?』


 アジェは神の断末魔の叫びと共に放たれた雷の直撃を受けて吹き飛ばされる。

 同時に神の方も糸が切れたように地面に落ち、そのまま動かない。

 そして、僕は感電した衝撃で意識を失い倒れてしまうのであった……。




 この時、近くで祈りながら成り行きを見ていたレイラは、神と女神が巨大な雷の直撃を受けたのを目撃する。


「……何が起きたの?……」


 レイラは信じられないと言った表情で虚ろに呟くのである。

 彼女は何が起こったのか分からず、ただ茫然と立ち尽くすだけであったのである。

 アベルの仲間達も神の化身と化したレムルスとアベルの戦いを見守っていたが、何も出来ずにただ黙って見ている事しかできなかった。


「雷が落ちた後でアベルが倒れておるな……助けに行くか?」

「助けに行こうよ! 早く!」

「そうだな、アベルの元に行こう」

「うむ、助けねばな!」


 4人はアベルの元に駆け寄っていくのである……。

 暫く離れた所でウェイドが一緒に逃げていたベルゼリアが居ない事に気付き、慌てて探し回る。


「ベルゼリア、何処にいる!」

「魔女が消えた?」


 アーロンも彼女が居ない事に気付き、ベルゼリアを探すが視認できなかった。

 しかし、先程の巨大な雷が2人に落ちて両者とも倒れている。


「おい! レムルスとアベルも倒れている……近付いて確認しようか?」

「そうだな、どちらが勝ったのか確かめた方が良いな……」


 そして、2人は元来た道を引き返し、倒れているレムルスとアベル達の方に近寄っていくのであった……。

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