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この世界の神対異世界の女神

 僕は神の攻撃を見て巻き込まれた王国軍の被害を見てアジェに忠告する。


(アジェ……逸らしたら魔王城にいる人達にも被害が及ぶよ!)

『流石に腐っても神ね……あの攻撃を完全に吸収しきれないわ……』


 どうやら、神の攻撃はアジェの能力でも完全に防げなかったようだ。

 彼女が吸収できない程の威力を持つ者は神以外に存在しないのであろう。


 そうこうしている内に神が第2撃を放とうと剣を構えた。

 レムルスの姿をした神が放つ2撃目は聖剣の刀身を遙かに超える長大な金色のオーラが空高く立ち昇っていく。

 僕達に向かって神の『断空斬』を放つつもりのようだ……。


『避けてみるがいい! 我が攻撃を!!』


 神が剣を振りかざして剣を振り下ろすと、空高くまで立ち昇っていた黄金色のオーラが僕達に向かって伸びてくるのである。

 向かって来る『断空斬』をアジェはギリギリでかわすが、そのまま振り下ろされたオーラの斬撃が魔王城に直撃した。

 魔王城の城壁はオーラの斬撃によって切り裂かれ、城壁の中にいた者達をも巻き込んでいく……。


「うげぇえええ!!」

「ぐわぁあああ!!」

「うぎゃああああっ!!」


 魔王城に待機していた魔族の兵士達や魔物達が神の一撃になす術なく飲み込まれていく……。

 破壊された城壁から煙がモクモクと立ち昇り、暫く視認できなかった。


 そして、煙が収まると魔王城は見る影もなく瓦礫の山となっていたのであった。

 神にとっては王国軍や魔王軍とか関係なしに、虫けらのような存在でしかないようである。


 それは神の傲慢さと身勝手さを表しているのであった……。

 アジェはと言うと気になったのか崩壊した魔王城の城壁の方へ振り向く。


『全く自己中心的で身勝手な神だこと……』

『我が敵を倒すには、いかなる犠牲もいとわない……この世界の管理者として当然の事よ……』

『そう……あんたとは絶対に分かり合えないって事が分かったわ……』


 女神は神の言い分に納得できず睨む。そして、この世界の管理者だから自分勝手な事をしても良いと考えている考えにも共感出来なかったのであった。

 すると、神がこちらに顔を向けて白目でニヤッと笑う。


『人間達は信仰心の為の我が餌でしかない……多大な犠牲を払おうとも汝を始末する』

『あんたって奴は……神として最低な奴ね!』


 アジェは神の物言いに怒りを露にする。そして、体を借りた彼女は神に向かって叫ぶ。

 その発言を聞いた僕は神に幻滅する。世界を創った存在が述べるには余りにも身勝手過ぎたのである……。


(こんな奴が今まで世界の管理者として、のさばっていたなんて……不条理すぎる!)

『アベル、あなたの怒りは御もっともだけど……神には何も感じないし、奴にとって人は信仰心の為の家畜みたいなものとしか見てない……』


 彼女が僕の怒りに反応して注意を促し戦闘態勢を整える為に多元色の触手を身に纏わせるのであった……。




 神が聖剣で力を振るい王国軍に被害が出ると兵士達はちりじりとなって逃走していく。

 しかし、神の力は凄まじく逃げ惑っていく。次は我が身だと……。


「うぁああっ!! こんな所にいたら命が幾つあっても足りはしねぇ!」

「こ……ここにいたら死んでしまう、逃げるぞ!!」

「死ぬのは嫌だぁああっ!!」


 王国軍は統制が取れず皆、敵前逃亡をして散り散りになっていく。

 そして、王国軍の指揮官も、この事態を収拾できずに一緒に逃げ去るしかしかないのであった……。


 周りの兵士達が皆、逃亡していく様子を見て『終焉の刃』のウェイドとアーロンも恐怖を感じ逃げ出そうとしていた。

 ただ、レイラを除いてだが……。


「ここにいたら俺達も殺されてしまうぞ……逃げようぜ!?」

「そうだ、命が何よりも大事じゃねぇか!」


 戦士と武闘家が嘆いているとレイラがレムルスの姿をした神を見て口を開く。


「逃げるの? 私はいるわ。神がアベルの姿をした悪しき存在を打ち倒すまで……」

「お前、正気か!?」


 ウェイドが驚いてレイラの顔を見る。すると、彼女は覚悟を決めた表情で2人を見つめる。

 その顔は狂信的で、見開かれた目は神に魅入られたかの如く狂気に満ちていた。


「私は聖女よ! ここで命を失おうとも、この身を神に捧げる覚悟があるわ!」

「レイラ……お前……」

「俺は逃げさせてもらうぜ……こんな所で死にたくねぇからな」

「妾もここにいては危険だと思うぞ……一緒に避難しようではないか」


 ウェイドとアーロンはレイラの顔を見て諦めると、この場からベルゼリアと避難する事を決断する。

 しかし、彼女は3人の言葉に耳を貸さず神に祈りを捧げる。


「私は神の勝利を信じています! だから……この命が尽きたとしても天国で神にお会いできると信じて……私はここに残ります!」


 聖女は3人に自分の意志を伝えると、そのまま神に祈りを捧げ続ける。

 ウェイドもアーロンも彼女の決意が変わらない事を知り、これ以上は何も言う事はできなかったのである。


「じゃあな! 俺達は逃げようぜ」

「生きていれば、また会うだろう……あばよ!」


 3人は王国軍の兵士に紛れて逃げ去るのであった。

 レイラと仲間であった期間が短いアーロンはともかく、ウェイドは過ごす期間が長かったため、彼女に対して仲間意識が強かった。


 だが、彼女が聖女の啓示を受けてから人が変わった様になり、さっきの言動で腹をくくったのである。

 ウェイドは一緒に逃げ去りながら後ろをチラッと振り返りレイラを見て呟くのであった。


「レイラ……お前、狂っちまったな……」




 レムルスを依り代にした神が『ディヴァイン・フォース』を構え、対して僕の体を依り代にした女神が背からオーラの触手を生やし迎え撃つ。

 そして、次の瞬間……アジェの多元色の触手が神に向かって伸びていく。


『これでも喰らいな!』

『笑止……この程度の攻撃で我を倒せると思っておるのか?』


 向かって来る触手に神が黄金のオーラを纏った聖剣を薙ぎ払う。

 すると、黄金のオーラで次々に絡み付こうとしている触手を切り裂いていく。


『いくら触手を切り裂かれても痛くも痒くもないもんねー』


 アジェは神の攻撃に臆する事もなく、次々と触手で攻撃をしていく。

 だが、聖剣『ディヴァイン・フォース』で触手をばったばったと薙ぎ払っていくのであった。


『そろそろ、飽きてきたぞ……汝の力はその程度か?』

『そう? そろそろ本気を出してやりましょうか?』


 神が女神の攻撃にマンネリを感じ、そう言うとアジェもそろそろ終わらせようと本気を出す事にする。

 それに対して神は聖剣を地面に突き立てると両手をかざし虚空に向けて握り込む動作をする。

 すると、僕の周りの空間に巨大な黄金のオーラが凝集してくる。


『我が奥義を……受けてみよ!! 神魔圧殺!』


 神が手を握りしめると黄金色の空間が瞬時に縮小され圧縮されていく。

 空間内のアジェを押し潰して消滅させようとしているようだ。


『ちっ!!』


 アジェは舌打ちをすると触手を全方位に伸ばし自身を守るように囲むと防御態勢をとる。

 しかし、神は依り代である僕の身体ごと破壊しようと力を一点に集中させるのである。


『これが神の力だ!』

『ぐぎぎぎ!……』


 神の奥義が炸裂して空間内のアジェを押し潰そうとしてくる。

 その衝撃によって彼女は苦悶の表情を浮かべる。


 だが、それでもオーラの触手で圧縮から免れようと何とか耐え続けていた。

 しかし、いつまでも耐えられる状況ではなかった。


『ちいぃっ!!』


 アジェが舌打ちをすると、触手を更に伸ばして空間の圧縮から身を守ろうとする。

 だが、神の奥義の威力は凄まじく彼女の触手を押し潰そうとしていく……。


(アジェ! 大丈夫!?)

『うぐっ……このままじゃ、いつかは押し潰されるかも……そうなったら、あたし自身は無事でもアベルが死んじゃうよ』

(アジェ、空間から脱出する方法はないの?)

『無理! 奴も力を一点に集中しているから……』


 どうやら、奥義は神自身の力で発動している為、その威力は凄まじくジリジリと空間が狭まって閉じるのを待つだけであった……。

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