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剣で斬られないよう魔剣士にしがみ付くが顔を殴られまくる

「な、何だとっ!? 張り付いて封じた……? 離れろ! 鬱陶しい!」


 僕は彼にピッタリくっ付く。利き手側にしがみ付いているので剣が振れないでいた。


「離れろと言っているだろう!!」


 レムルスは叫ぶが僕はしがみ付き離れないように必死になっていた。

 彼から離れれば武器を持たない僕は、あっけなく剣で斬り捨てられてしまうだろう。

 不格好だがアジェが呪いを打ち消してくれるまで時間稼ぎするしかない……。




 その頃、周囲で見守っていた『終焉の刃』のメンバー達とアベルの仲間達は奇妙な光景を目の当たりにしており、困惑していたのだった。


「ねえ? 何か変な事になってない?」

「そうじゃの……アベルは武器を持ってないからか?」

「魔力吸収の技があれば魔力のこもった攻撃は吸収してしまうんじゃないのか?」


 ハーフリング、ドワーフ、竜人族はアベルが魔女の呪いで一時的に能力を使えない事を知らない為に不思議がっていた。


「じゃあ……何で、アベルはくっ付いたまま動かないの?」

「もしかして、魔力吸収のスキルを封じられておるのやもしれんな……」


 古エルフが何か感じたように呟く。しかし、アベルの奇妙な行動に彼女も困惑していた。

 そして、レムルスの仲間達もその光景に困惑していたのである。


「なんで、アベルはレムルスに、しがみついて離れようとしないんだ?」

「さあな……俺に聞かれても……」

「どうやら、奴は妾の呪いで魔力を吸収できない状態に陥っておるようだな」


 彼等の問いに魔女は、ニヤーッと笑いながら答える。その答えを聞いてウェイドが叫ぶ。


「そうか!……だから、レムルスに抱き着いて離れようとしないのか……」

「武器を持たない者が素手で魔剣士相手に戦うのは無謀極まりない……俺は武闘家だから話は別だがな」

「そうだとも、レムルスに抱き着き少しでも時間を稼いでおる……時間が掛かり過ぎると妾の呪いを解呪されてしまうかもしれぬがな……」


 アーロンは御大層に大口を叩きベルゼリアは、その呟きに答える。

 そして、アベルの行動を見て彼女は何かを感じ取っていたのであった……。




「離れろ! このっ!」


 レムルスは僕に抱き着かれながら必死に剣を振り回すが離れないように、しがみ付き続ける。

 しかし、剣の柄でドカッ!ドカッ!っと僕の背を打ち付けてくる。


「うっ……くっ……」


 柄で背中を殴られて痛みで呻く。だが、それでも僕は離れないように必死にしがみ付く。

 剣を離して両手を使えば、縋りつきから解放され易くなっただろうが剣を離さないのは、僕の切り札を警戒しているからだろうか。


「くそっ!……しぶといなっ!」


 僕はレムルスから離れまいと必死にしがみつく。終いに、彼は僕の顔を目がけて頭突きを仕掛ける。

 ドスッ!ドンッ!と何度も頭突きをしてくる。僕の額が切れ出血し、意識が飛びそうになっていた。

 だが、その攻撃が逆に僕を奮い立たせ彼を睨みつけていたのである。


(絶対に離すもんか!)


 額から血を流しても、抱き着くのをあきらめない僕に対してレムルスは鼻目掛けて頭突きを放つ。

 ズガッ!!という鈍い音と共に鼻に強い痛みを感じると血が噴き出してくる。

 それでも離さないで必死の形相で踏ん張っていると、レムルスの顔にも焦りの色が見られた。


「ううっ……くっ……」

「いいかげんに離せって言ってんだろうがぁ!!」


 レムルスは片手で僕の髪を掴み引き剥がそうとする。しかし、それでも尚離れなかったのである。


「は……離すもんか……」


 彼は僕を引き剥がすのを諦めると剣を持たない手で殴りかかる。


「離れろっ!」

「ぐうっ!……あうっ!」


 バキッ! ドカッ! ボカッ!っと何回も左手の拳で僕の顔や顎を殴り続ける。

 それでも僕は離れないで必死に抱き着く。そして、レムルスの拳が血に染まっていく。


「離れろっ!……このっ!!」

「くうっ……!」


 僕の顔は段々と腫れ上がり口の中も切って口からも血を流していた。

 額、鼻、口が出血し顔が血塗れになるほど殴られていた。


 それでもレムルスの体にしがみ付き続け剣を振らせない。

 彼も全力で引き剥がそうとする。しかし、それでも離れない僕を見て彼は苛立ち叫ぶ。


「離れろっ!……この死にぞこないがぁ!!」

「くっ……」


 だが、流石に殴られ続けると意識が朦朧としてくる。

 僕が相変わらず剥がれないことに焦りや苛立ちは最高潮に達していた。


「離れろぉおおおおお!!」


 レムルスは朦朧としだした僕のしがみ付く力が弱まった所を見逃さなかった。

 彼は拳を握り締めると僕の脇腹に力一杯叩き込んできたのである。

 ボフッ!と鈍い音がし、僕は目を見開き呻き声を上げとうとう手を離してしまう。


「ぐふっ……」


 脇腹の鋭い痛みで呻き口からも血を吐き出し跪くのであった……。

 ここぞとばかり魔剣士は聖剣でもって僕の首を刎ねるため振り下ろそうと構えていた。

 ちょうどその時、頭の中にアジェの言葉が鳴り響く。


『アベル! お待たせ!呪いの除去完了したよ!』

「くっ……」と声を漏らすが中々、声が出ない……。

(早く立ち上がらないと……)


 そう思った時にはレムルスは聖剣を振り下ろしていた。


「死ねぇええええ!!」


「アベル!!」と仲間達が叫び声を上げる。

 目を瞑り振り下ろされる剣に向かって無意識に右手を突き出していた。

 だが、聖剣は僕の首を斬り落す事はなく……レムルスの振り下ろした剣がカキィーンという音がして弾かれたのである。


「えっ!?」と驚くレムルス。僕も驚きを隠せなかった。


(えっ、何が……?)


 僕は目を見開いて周囲を見回す。すると右手の先には多元色のオーラを纏った障壁が発動している。

 どうやら、この障壁のお陰で命拾いしたようだ……。


「こ……この障壁は? アジェ?」

『そう。あたしの防御障壁だよ。だけど、あたしが離れていた間、ボロボロにやられちゃったね……アベルをこんなにして絶対許さない!!』


 アジェが怒りに燃え大声を上げる。その怒りは凄まじく、その激しい様子に僕は背筋に寒気が走り出す。


「なっ、何故……障壁を張れる!?」


 レムルスも突如発動した障壁に驚きを隠せないで固まっている。

 その隙に、僕は立ち上がり怒りが溢れそうな勢いで彼に仕返ししようとする。


「よくも、いっぱい殴ってくれたな……今からお返ししてやるよ!」

『奴に近付いて! あたしが目一杯魔力を吸って精神を壊してあげる!』


 アジェの怒りのこもった声に僕は頷き、レムルスに近付く。


「くっ……来るな!」


 彼は聖剣を振り回し近付けさせないようにするが、僕は構わず距離を詰める。

 そのタイミングで斬りつけようとするがアジェの障壁で弾かれる。


「くそっ!」

『アベルをボコボコにしたからね……今からフルボッコにしてやる! 覚悟しな!』


 悪態をつきながら彼女は物凄い勢いで、まくし立てるが彼には女神の声は聞こえてない。

 そして、僕は覚悟を決めた。魔力を全て残らず吸収してレムルスの心を壊してやると……。


『行くよ! ひっ捕まえて!』


 アジェの掛け声と共に僕は、レムルスの腕を取る。


「な……何をする! 離せ!!」


 彼は僕の手を必死に引き剥がそうとする。だが、僕は構わず魔力を吸収しようと試みた。


『魔力吸収!』


 アジェが叫ぶとレムルスの体から魔力が僕へと流れ込んでくる。


「な……何だ!? うあああっ!!」


 彼は初めて魔力を吸われる感覚に戸惑い叫び声を上げる。


『まだまだ! 全部吸い取るまで離さないよ!!』


 初めて魔力を吸われる感覚に戸惑い叫び声を上げる。

 それは自身の魂が吸われるような感覚と生気を奪われたような脱力感に襲われるのであった。


「ぐっ……ああっ……」


 アジェもどんどん魔力を吸収し続けていく。次第にレムルスは目が裏返り白目になっていく。

 突如、この周辺の空に黒い雲が覆いだし、一気に曇っていく。

 だが、徐々に暗くなっていくのではなく一瞬にして世界が黒くなっていくのであった……。

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