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アベル対即席の勇者レムルス

「真・終撃斬!!」


 叫び声と同時に刀身に宿る朱色のオーラが衝撃波となって僕に向かって襲ってくる。

 僕は様子を見る為に魔力を吸収することなく飛び退いて避けてみる。


 避けた先で衝撃波は僕の遥か後方にある木々や岩を切断しながら飛んでいく。

 そして、森の奥で巨大な爆発音と共に爆風が押し寄せてきた。


「どうだ……これが聖剣の力で増幅された『真・終撃斬』だ」


 レムルスは自慢するように聖剣を見せびらかせ僕に言い放つ。

 『真・終撃斬』……その威力は凄まじく、もし直撃すれば僕でもただでは済まないだろう。

 しかし、どんな攻撃も魔力がこもっていたらアジェが吸収してくれ自身の栄養にしてしまう。


「確かに凄い技だね……」

「この聖剣は神に認められた勇者でしか抜けない……それを俺は引き抜いたんだ」

「神に選ばれたんだね……だけど、僕には魔力を帯びた攻撃は効かないよ?」

「ああ……そうだったな」

「だから、君の攻撃は僕に通用しない」


 僕は彼に事実を突き付ける。だが……彼は不敵に笑うのであった。

 そして、レムルスは聖剣を上段に構えると魔力を刀身に込めていく。すると、朱色のオーラが更に輝きを増していった。


「なら……この技でどうだ?」

「えっ?……」


 『真・終撃斬』以外の技があるのか?と僕は興味深く彼を観察する。

 そんな僕の態度を見てか、彼はニヤリと笑うと聖剣の刀身から彼の魔力を纏ったオーラが天高く伸びていく。

 そのオーラは上空で形を成そうとしていた。そして、それは長大な朱色の剣のオーラへと変わっていく。


「これが『断空斬』だ!」


 レムルスが叫ぶと空から長大な剣が僕に向かって振り下ろされてくるのである。

 そして、刀身から伸びる長く続くオーラが僕に振り下ろされようとした瞬間、アジェが警告してくる。


『避けて!……その攻撃は魔力で物理的に切り裂くよ!』

「う、うん!」


 アジェに言われるまま僕は横に飛んで避ける。そして、振り下ろされたオーラがその場にいた空間を裂くのであった。

 それは地面をも切り裂き大きな溝を作るのであった。


「な、何っ!?」


 僕は驚きのあまり声を発するとレムルスが大胆にも笑う。


「ははは……どうだ? これが『断空斬』だ」

「……」

「余りにも凄すぎて声も出ないか?」


 彼は僕を蔑む様に見てくる。そんな視線を無視し僕は切り裂かれた地面を見て思う。

 オーラで長く伸びた分だけの距離の地面が裂けていた。


「凄い威力だ……この攻撃を、まともに受けたら僕の体は真っ二つだったね」

「これでも俺の攻撃を吸収できる自信があるのか?」

「残念だけど……自信ないや」


 僕が正直に言うとレムルスはニヤリと笑う。自分の方が有利だと思っているのだろう……。


「なら……俺に斬られて観念するんだな」

「だからと言って、わざわざ死ぬ気もないけど……」

「お前は神の敵だ、大人しく斬られろ!」


 彼はそう吐き捨てると聖剣にまたもや魔力を込め朱色のオーラが刀身に纏わり付く。

 しかし、避け続けていてもいつかは斬られてしまう。


 彼も場数を踏んだ魔剣士である。そう何度も避けられるものではない。

 頭の中でアジェに、どうすればいいか呼びかける。


(どうしたらいい?)

『うーん……そうだね。あんな攻撃が出来るのも聖剣の力を借りているからだけど……。聖剣を奪えばいいんじゃない?』

(奪う? でも、どうやって……)

『大丈夫よ……神聖魔法で囮を作って騙せばいいんじゃない?』

(神聖魔法に……そんなのがあるんだね)

『うん。そして、近付いたらアイツの魔力を吸ってしまえばいいよ』

(なるほど……やってみる)


 アジェから作戦を聞くと僕は早速、神聖魔法を唱えてみる。


「光よ! 我が実像に瓜二つの分身を造り出し給え!」


 神聖魔法を唱えると僕の体が眩しく光り出していく。

 光が消えると僕の形をした魔法の分身が2体出現していた。

 僕がいきなり3人になってレムレスは驚き困惑している。


「な……何だ? アベルが3人になったぞ?」


 彼が戸惑っている間にも駆け寄って近付こうとしていた。


「くっ!……分身か!? 全て斬り裂いてやる!」


 魔剣士は僕や分身達に向かって『断空斬』を繰り出す。

「はっ!!」と気合の掛け声と共に、1体の分身に朱色のオーラが振り下ろされる。

 しかし……その攻撃で斬り裂かれた僕はサラサラとした光の粒子となって消えていく。


「な……何っ!? 2人の内のどちらかが本物か?」


 レムルスは驚きの声を上げると同時に僕と、もう1体の分身に目を向け呟く。

 ドンドンと距離が縮まっていき、僕は分身と共に彼に向かって駆け出す。


「そうはさせるか!」


 彼は僕の行動を読んでおり、横薙ぎに『断空斬』で斬り裂こうとしてくる。


「2体諸とも斬る!!」


 聖剣を横薙ぎに振るうと刀身のオーラも同時に向かって来る僕等に横薙ぎに襲い掛かって来た。


『アベル! しゃがんで滑り込んで!!』

「わかった!」


 横薙ぎに一閃される直前に走る勢いのまま滑り込む。しゃがんだ瞬間にオーラが僕の髪を数本斬り裂いていった。

 その攻撃で最後の囮に『断空斬』が当たり光の粒となり消失していく。

 そして、滑り込んだ勢いでレムルスの眼前まで迫ると彼は慌てて聖剣を構え直し振り上げる。


「し、しまった!……」

「遅いよ!」と聖剣を振り上げ今にも斬りかかろうとしている腕を掴み動きを止める。

「くっ……離せ!!」

「誰が離すもんか!」


 彼は僕の手を振りほどこうと必死に抵抗するが、僕も一心不乱に掴み絶対に離さなかった。

 腕を掴まれている状態で身動きが取れない為、レムルスは回し蹴りを放ってくる。


 蹴りを入れてきたが、密着した状態であるので蹴られても大したことはない。

 反対に、その瞬間に彼の足を引っ掛け地面に押し倒すのである。


 この武術の技はアイラさんから教えられたものであった。

 彼女が言うには初歩的な技だという事だが……。


「くっ!」


 レムルスは僕の引っ張る力に負け地面に倒れる。僕は倒れた彼に馬乗りになる様に跨り動きを封じたのであった。

 だが、利き手には聖剣が握られているままである。


『アベル! 今だよ、吸収しな!』

「うん、わかった!」


 アジェの声に頷くと僕は彼の聖剣を持つ手を掴んだまま反対の手で魔剣士の手首を掴む。

 そして、彼の魔力を吸収しようと集中し、魔力吸収を発動する。

 すると、レムルスは苦痛の表情を浮かべ呻き声を上げる。


「う……ぐああ……」

『アベル! コイツの魔力を残らず吸ってあげる!』


 魔力を吸収している間、急に僕の体に何かドロドロとした邪気みたいなものが入り込んで来た。

 その邪気の様なものは、まるで僕の体の中で暴れ回る様に駆け巡る。


「うっ……くっ……」


 僕はその感覚に苦しみ、掴んでいた彼の手首を思わず離してしまう。

 すると、レムルスは苦しそうに悶える僕を見てニヤリと笑う。


「は……はは……どうやら、魔女の呪いも吸ったみたいだな」

「えっ!? 呪い……?」

「ああ、そうだ……ベルゼリアに吸収された時に発動する呪術を掛けて貰った。そして、俺の魔力を吸えば呪いはお前に移る」

『大丈夫? あたしがその呪いを分解するまで少し時間が掛かるけど、その間は手伝えないけどいい?』

「わ……わかったよ……」


 僕は自分の中に入って来た呪いを分解する為に集中しているアジェに返事をする。

 その間、彼は体を起こし剣を構え今にも斬りかかろうとしている。

 呪いに掛かった僕を倒せると確信を得たのか、笑みを浮かべていた。


「ふふふ……お前の魔力吸収を封じれば問題ない! 只の人間と変わらん!」

「くっ……」


 僕は不快な気分で苦しみながら、レムルスから距離を取ろうとするが素早く動けない。


「どうした、苦しいか?……だが、これで終わりだ! 死ねっ!!」


 レムルスは僕を見詰め嘲笑いながら聖剣を上段に構えると勢いよく振り下ろす。

 剣を振り下ろす瞬間、勝手に体が動きレムルスに抱き着いた格好になったのであった……。

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