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倒した魔獣の体の中から出てきたコア

 僕等が前に進み出て魔獣を囲い込み攻めようとしている所にレムルスとシャノンが誹謗してくる。

 2人は幻覚作用の煙を吸い込んでいるので何も出来ず、ただ眺めて僕の悪口を言うだけであった。


「ちっ! お前に倒せるわけがねぇ!」

「アベル……アンタなんか、すぐに死んでしまえ!」


 そんな言葉を無視して魔力解除を使い魔獣の結界の魔力の綻びを探すのである。


「ア……アベル! 早くしないと、攻撃されてしまうよ!」


 ニルスがじっくり観察している僕に心配そうな声で言う。

 しかし、僕は魔力結界の綻びを探すのに必死であった。


『アベル……魔力がこもった攻撃はあたしが吸収してあげる。それと、魔獣の内部に膨大な魔力が蓄えられているコアが有るから壊さないでね』

「わかってる、アジェ……結界の解除は僕がやるよ!」


 頭の中で、そんなやり取りをしている間に合成魔獣は獅子の口が開き衝撃波のブレスを吐く。

 ガオォオオオ!!と叫ぶと共に吐き出された無色透明の衝撃波が僕達に襲い掛かる。


「シルフィードよ! 我等を守り力を受け流せ!」


 アイラが精霊魔法を唱えると周囲の空気が一変する。

 僕達の周りに無数の淡い緑の光が幾重にも重なり壁を作り出す。


 合成魔獣の放った衝撃波はシルフィードが展開した壁に触れた瞬間、左右へと受け流されていくのである。


「す……凄いよ! 衝撃波が四散した……?」

「これが精霊魔法か……便利なものじゃ」


 ニルスとガラドが精霊魔法に感心していると後ろから怒声が飛んでくる。


「素手で俺には敵わんだろう!」

「なら、やってやろうじゃないか!」


 そんなアイラの行動を尻目にウェイドとアーロンが口喧嘩を言いあう。

 しかし、それも長くは続かない……2人共直ぐに幻覚に囚われ武器を捨てると取っ組み合いになるのであった。


 彼等の無様な姿を見てニヤニヤと嘲笑うレムルスとシャノン。仲間の醜態にも、この2人は軽蔑的な態度を取っていた。


 そんな態度に僕は呆れ返るも魔獣の魔力の綻びを遂に捜し出したのである。

 綻びを見つけ出した僕は有頂天になり不用意に魔獣に近付こうとする。


『アベル、見つけたのね。けど、危ないから仲間達から守って貰いながら解除してね』

「うん……」


 僕のテンションと対照的に冷静沈着なアジェの声が頭の中で聞こえる。

 その助言を受け僕は、仲間達の所まで後退すると皆に言う。


「みんな!……僕の言う通りに行動して! バルバラさんは剣で攻撃を! ガラドさんはタンク役に徹して! アイラさんは引き続き精霊魔法で魔獣の攻撃から守って! ニルスは傷付いたり毒に侵された仲間の回復に回って!」


 皆に指示を飛ばすと、合成魔獣に向かって走り出す。


「ああ、タンク役に徹するぞ!」

「わかった、奴を攻撃すればいいのだな」

「承知! 精霊魔法でアイツの攻撃を撹乱してやる!」


 僕は魔獣に近付きながら皆の様子を確認する。

 バルバラは大剣を構え攻撃態勢を取りガラドは大盾を構え敵の攻撃を引き付ける……そして、アイラは精霊魔法を詠唱する。

 最後にニルスは、傷ついた場合に回復させるポーションを準備していた。


 仲間達が攻撃を引き寄せ魔獣に近付いていき不可視であるが、僕には見える結界が淡く光り輝く複雑な魔力の糸として映し出される。


 指が幾重にも張り巡らされた幾何学模様の輝く結界に触れる。

 何百年の時を経てもなお、完璧な魔法防御が続く結界に僕は笑みを浮かべる。


「……へぇ、多重構造の相互補完術式か。当時の魔導師達が、それぞれ結界を重ねて張ったんだね。でも、ここを切れば……全部、台無しだ」


 そんな僕の呟きを合図に魔獣は、蛇の頭部が大きく口を開け咆哮する。

 シャアァァァア!! その咆哮は空気を震わし周囲に黒色の毒霧を撒き散らす。


「シルフィード! 毒の霧を風で吹き飛ばせ!」


 アイラは咄嗟に風の精霊に命じ毒霧を僕達の外に拡散させていく。


「アイラさん、ありがとう! みんなも毒の霧に気を付けて」


 僕はそう皆に伝えるとバルバラが跳躍し蛇の首めがけて大剣を一閃する。


「お前の首、貰ったぁああ!!」


 彼女が横なぎに払った剣は蛇の頭部の首を斬り裂いていく。

 跳躍したバルバラが地面に降り立つと同時に蛇の頭部がゴトッと音を立て地面に落ちる。


「バルバラ、やったか!?」


 ガラドが大盾を構えながらバルバラに近付いて言う。

 すると彼女は振り向き魔獣の切り口を見詰めると切断面がブクブクと泡立って肉が盛り上がってくるのである。


「再生しているぞ! 油断するな!」


 バルバラが叫ぶと魔獣は痛みで暴れだし、その巨大な尾をバルバラに打ち付ける。


「っ!?」


 彼女は瞬時に剣でガードしたが吹き飛ばされる。そして、遺跡の壁に激突しズルッと地面に落ちていった。


「バルバラ! 大丈夫か!」


 ガラドが叫ぶ。その隙をついて合成魔獣は獅子の頭部で衝撃波を吐く準備をする。


「まずい! 衝撃波が来る!」


 僕は慌てて皆に警告するが、もう遅かった。

 獅子の頭部は大きく口を開き、こちらに向かって衝撃波を吐き出す。


「させるかぁあああ!!」


 突如、叫び声が聞こえ並行して獅子の首から大剣の刀身が斬り裂いて出てくる。

 衝撃波を放つ寸前にバルバラは獅子の首を斬り裂いて飛び出してくるのである。

 2本の首を斬られた合成魔獣は巨体をくねらせて暴れだす。


 だが、先程斬られた獅子の首の切断面も蛇の切断面と同じく再生しようとしていた。

 再び現れたバルバラの姿は全身に竜の様な鱗が浮き出ており、まるで竜のような姿であった。


「アベル!……今のうちに解除しろ!」


 バルバラが叫ぶ。僕は慌てて魔獣の結界に手を伸ばし一つ一つ魔力の網目を切っていく。

 魔獣の防御結界が剝がれていく。そして、最後の1本を切断していく……。


 すると、合成魔獣の巨体に変化が生じるのである。

 ガァァッ!……ガハァッ!と山羊の頭部が苦しみながら地面へと無様に這いつくばっていく。

 どうやら、魔術で強引に繋ぎ止められていた反動で歪みが生じ体の制御が出来ないようだ。


「今だ!……全員、一斉攻撃!」


 僕がそう叫ぶと皆が一斉に魔獣に攻撃を仕掛ける。

 バルバラは剣でガラドは短槍で魔獣の体を突きアイラは火の精霊を召喚して焼き払おうとしていた。


「山羊頭の首も斬ってくれるわ!」

「魔獣よ! 死に晒せ!」

「サラマンダーよ! 醜き穢れた獣を焼き払え!」


 皆が思い思いの言葉を口にしながら攻撃していく。

 バルバラは最後の残った山羊の首を剣で切断し、ガラドは槍で穴だらけにする。

 アイラは火の精霊サラマンダーを操り魔獣の肉体を焼き焦がしていく。


 魔獣は苦しみながら暴れまわり、その巨体がのた打ち回っていた。

 暫くすると抵抗する力も無くなり弱った魔獣は、その巨体を地面に横たえるのであった……。


「やったか!?」


 バルバラが息を切らしながら言う。

 全ての首を切断された魔獣の胴体の鱗が光沢を失い緑色の体液が地面にドロリと溢れだす。

 そして、その巨体は徐々に黒く変色していきボロボロと崩れて原形を留めなくなっていく。


「やったね……」


 僕は汗ばんだ顔を手で拭いながら皆を労う。

 魔獣は今はただの塵と化していた。


 こうして、何とか合成魔獣を倒すことが出来たのである……。

 その時、僕は魔獣の遺体の中に蠢く何かを見つけるのだった。


『それよ!……それを、あたしに食べさせて!』


 アジェが突然、急かすように叫ぶ。


「えっ? な、何を?」

『いいから早く! それよ!』


 僕は慌てて魔獣の遺体の中に手を入れ蠢く何かを掴んで引っ張りだす。

 それは極彩色に輝く珠であった……。その珠は、まるで生きているかのように鼓動している。


『それよ!……早く、あたしに食べさせて!』

「う、うん……」


 僕はアジェの言われるがままその珠を手から魔力を吸収するように掴む。

 珠の魔力を吸収していくにつれて一際極彩色の輝きが増していく。

 やがて吸収しつくすと珠は輝きを失くし半透明な球に変わるのであった……。


「……どう? アジェ」

『……えへへ、ごちそうさま、アベル。この魔力、すごく歴史を感じさせる味がする。……ねぇ、もっと食べさせて? 究極の魔力を食べ続けたら、本当の神様になれると思うんだ』


 アジェの無邪気な声に僕は呆れて言う。


「アジェが神様になったら僕はどうなるのさ?」

『えへへ……その時は一緒に世界を創っていこうね』

「まったく……」


 そんな会話をしていると皆が僕の周りに集まってきたのであった……。

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