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魔獣を倒した後も喧嘩を続ける戦士と武闘家を黙らせる古エルフと竜人族

「アベル、大丈夫か?」


 バルバラが心配そうに僕に近付き声を掛けてくる。


「はい、大丈夫です。それより、バルバラさん……その竜の鱗の様なもので覆われている姿は……?」


 僕は、異質な姿のバルバラに尋ねる。彼女の姿は今や人型の竜のようだ。


「ああ……この姿か? これは竜人族が戦闘形態になった時の状態だ。この状態だとスタミナの消耗が激しいから普段はしないがな」

「へぇ、そうなんですか……」


 そんな会話をしているとニルスが僕等の所に駆け付けて来る。


「アベル! その珠は何?」


 ニルスは僕が手にしている半透明の珠を見詰めて好奇心旺盛に言う。


「これ……? これは、魔獣を無理矢理繋ぎ合わせた古代魔法時代の魔力の制御装置みたいなものだよ。今は魔力を失った状態になっているけどね」


 僕はニルスにそう説明すると、後ろを振り向き元仲間達の様子を伺う。

 レムルスとシャノンは虚ろな目で見ているも忌まわし気に僕を睨んでいた。


「ぐぬぬ……魔獣討伐の成果を横取りしやがって」

「魔力が使えなくなったって言ったのは噓だったのね……」


 2人は僕の功績に対して嫉妬し僻みと憎しみを込めた視線を浴びさせる。

 彼等の後では未だにウェイドとアーロンが取っ組み合いの喧嘩をしていた。


「このクソ野郎! ぶっ殺してやる!」


 アーロンはウェイドに馬乗りになり殴りかかる。しかし、ウェイドはそんなアーロンの顔面に頭突きをする。


「ぐわっ!? 頭突きをしたな!」

「へっ! やったもん勝ちよ!」

「ああ……神よ……我等を救い給え」


 レイラも未だに神に祈りを捧げていたのである。

 2人の喧嘩を傍観していたガラドが呆れた様子で言う。


「……あの2人、まだやっておるのか?」

「アベル……君の元仲間はどうする?」


 ニルスが戸惑いながら僕に尋ねてくる。


「この3人を正常に戻すポーションはないかな?」

「ごめん……流石にないよ。そんな薬は……」

「仕方ないか……幻覚作用が抜けるまで、もう少しかかりそうだね……」


 彼は申し訳なさそうに答え僕も判断に迷いレムルス達を見る。

 彼も僕の視線に気づくが、知らん顔で目を逸らすのである。


「私とバルバラでアイツ等を大人しくさせてやろうか?」


 アイラが2人を静かにさせると言ってくる。バルバラは既に鱗のない元の状態に戻っていた。

 女竜人族は片方の手で握ったもう一方の手で包み関節をポキポキと鳴らしながら頷く。


「そうだね、殺し合いにまで発展したら困るからね」


 例え追放に加担した相手であっても、それで本当に死んでしまったら後で気持ちがスッキリしなくなる。

 だから、ウェイド達とレムルス達を交互に見ながら2人にお願いする。


「じゃあ……あの2人を大人しくさせてくれる?」

「了解! 行くぞ、バルバラ!」

「おう!」


 彼女達はそう言うとウェイド達に近付いて行くのであった。

 そして、ウェイドの後から肩を掴み強引に振り向かせると、バルバラはウェイドの顎を拳で殴る。


「うおっ!?」


 急に殴られた彼は、そのまま倒れて昏倒してしまうのである。

 対してアイラはアーロンの肩を掴もうとすると気配に気付き反射的に彼は振り向く。


「このアマァ……何のつもりだ!?」

「うるさい、大人しくしろ!」


 武闘家らしく彼はアイラの掴み技を躱し反対に殴ろうとするが、そんな彼女はアーロンの腕を取る。

 腕を取った後は半身になり腰を沈め、そのまま担ぎ上げるようにして地面に投げつけた。


「ぐへっ!?」


 ドシャッと音がし頭部と背中を強打して彼は気絶してしまったのである。

 それを見ていた僕とニルスは口元が引きつり気味に呟く。


「うわぁ……2人共容赦ないなぁ」

「そうだね……」


 僕は気絶した2人を見て気の毒になるのであった……。

 失神した2人を呆然と見詰めているレムルス達をよそ目に声を掛ける。


「ねぇ……この2人の目が覚めたら介抱してあげてね?」

「……うん」


 シャノンは気絶した2人と僕を交互に見ながら頷く。

 しかし、レムルスは頑なに僕から顔を背けたままであった。


「じゃあ、僕達は……そろそろ行くよ。君達とはここでお別れだ……」


 僕がそう言うと、皆は出口に向かって歩き始める。

 残された『終焉の刃』のメンバー達は素に戻れば問題なく帰還できるだろう。

 すると、僕を呼び止める声がした。


「アベル! これで終わったと思うなよ!」


 レムルスの声で我に返る。しかし、僕は振り返る事なく呟く。


「……そうだね」


 僕の脳裏には様々な思いがよぎる。複雑な感情を噛み締めながら僕達は遺跡を出て行くのであった……。




 アベル達が去ってから暫くして失神状態から目覚めたウェイドとアーロンは、気を失う前の記憶を辿り自分がどうやって気絶したのかを思いだす。


「思い出した! あの女! いきなり俺を殴ったんだぜ!」


 ウェイドは起き上がると顎をさすり怒りながら叫ぶ。

 竜人族とはいえ女から殴られて気を失うのは、ばつが悪いのであろう。

 するとアーロンも憤慨した様子で言う。


「俺も女エルフから投げられて気絶してしまったんだ! くそったれ!」


 彼の方はエルフから投げられて失神した事にプライドが傷つけられたようだ。

 2人共、女性から攻撃されて気を失った事にひどく腹を立てている。


「あの女、絶対殺してやる!」

「ああ……あの女は俺を侮ったんだ! 絶対に許さん」


 魔獣の幻覚攻撃でお互い喧嘩したのにも関わらず、その事にはそっちのけで冷静さを欠いており感情のままに叫んでいた。


「おい、レムルス……とりあえずは『終焉の刃』のリーダーとしての指示をくれよ!」

「そうだ! 俺達は復讐心で一杯なんだ! 街に戻ったら、すぐにでもアイツ等を探し出して……」


 ウェイドとアーロンが捲し立てるようにレムルスに言うと彼は冷静に彼等を見詰めながら言う。


「2人共冷静になれ……頭に血が上った状態では勝てるものも勝てんぞ」

「……ああ、そうだな」

「頭を冷やして、これからの事を考えるか……」


 2人はレムルスの落ち着いた様子から冷静さを取り戻すと、ゆっくりと頷く。


「とりあえず、この遺跡を出よう。先ずは町に戻ってからだ……」


 彼はそう言うと、ウェイドとアーロンも同意するように頷く。

 冷静を装っているがレムルス顔は無表情で少し強張っていた。


 彼の胸の内はアベルへの憎み恨みで満たされており彼等以上に憤っていたのであった。

 そして、フラフラした足取りで歩くレイラをシャノンが支えるようにして出口に向かうのである……。




 遺跡を出た僕達は、そのままダルグの町に戻り冒険者ギルドで報告を済ませる。


「えっ!? 本当に合成魔獣を倒して帰って来たんですね……」

「言ったでしょ。僕等にちょうどいい依頼だと……」


 目を丸くして驚く受付嬢を横目に、僕は呆れた顔で言う。


「はい、すみません……ですが、まだ信じられなくて……」


 彼女がそう言うと周りの冒険者も呆気に取られて僕をポカーンと見ているだけであった。

 少しして正気に戻った彼等は口々に言う。


「おい、古代魔法王国遺跡の合成魔獣を討伐したってよ」

「しかも無名の奴等だってさ」

「マジかよ……信じられねぇな……」


 そんな彼等を他所に僕はマイペースで答える。


「まぁ……信じられないなら、それでいいけど。とりあえず、報酬は貰えるんですよね?」


 すると受付嬢はハッとして答える。


「あっ! 何か魔獣を倒したと証明できる物はないですか?」

「ああ……それなら、これです。倒した魔獣の体の中にありました」


 僕はそう言うと懐から合成魔獣のコアである半透明の珠を取り出しカウンターに置く。


「こ、これは!?」


 彼女は驚きながらそれを手に取るとマジマジと見詰めて言う。


「……私では判断できないので魔術師ギルドに持って行って鑑定してもらいますね」

「うん、それでお願いします。……じゃあ、明日に又来ますね」

「時間が掛かるかな?」

 ニルスが不安げに僕に尋ねる。


「う~ん……どうだろう? まぁ、明日になれば鑑定結果が出ると思うよ」


 そんな会話をしていると冒険者達が僕達の所に、ぞろぞろと集まりだす。

 そして、彼等は興味津々に魔獣討伐の成り行きを聞いてくるのであった……。

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