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合成魔獣に苦戦する『終焉の刃』

「くそぉ……こいつ強ぇぞ……」


 レイラが解毒魔法を唱え毒が中和されていき状態が回復するとウェイドが愚痴を溢す。

 他のメンバー達も戦っている魔獣を見て衝撃を受けながら呟く。


「何だあれ……斬っても再生してくるぞ?」

「蛇の頭部は毒を吐くか……他の頭部はどんな攻撃をしてくる……?」

「魔獣には魔法防御用の結界が敷かれているから攻撃魔法の効果が薄い……マジヤバい」


 『終焉の刃』のメンバー達は、かなり苦戦しているようである。

 その時、彼等は後ろからの気配に気づき振り返るのである。


「ア……アベルじゃないか……」


 ウェイドが僕を見て驚きの表情を浮かべている。他のメンバー達も気付き驚いているようだ。

 僕は元仲間達に軽く手を振って挨拶する。


「やぁ! 奇遇だね」

「お前……どうしてここに……?」

「この依頼を受けて遺跡にやって来たんだよ」


 そう答えるとレムルスは眉間に皺を寄せながら言う。


「お前……この依頼を受けたのか? 自分の実力を分かっているのか……?」


 レムルスは憎々し気に僕を見詰めるのであった。

 そんな時、合成魔獣と戦っていた『終焉の刃』の他のメンバー達も驚きの声を上げる!


「えっ!? 何でアベルが、ここに居るの!」

「もしかして……私達を手伝いに来た?」

「コイツが前に言っていたアベルという奴か……女じゃないか、役に立つのか?」


 最後に発言した男は知らない人物であったが自分が追放された後、加入してきた者であるようだ。

 しかし、あの森での出来事を知らないんだろうけど、その言い方に僕は少しムッとする。


「好きで女になった訳じゃない! 僕はこの遺跡を守護する魔獣退治の依頼で来ただけだよ!」


 僕がそう言うと『終焉の刃』のメンバー達は驚きの表情をする。

 そして、レムルスが僕を見て容赦なく言う。


「アベル……お前、俺を舐めているのか? 俺達は上位の冒険者だぞ」

「そうよ! 魔力を無くしたアンタに、この魔獣を倒せるわけがないじゃない!」

「そうだ!……俺達だけで、この魔獣を倒して見せる! 奥で見ておけ!」

「アベルには無理よ! 魔力を失ったんだから……せいぜい私達が倒すのを見てたら?」


 レムルスとシャノンは僕をあからさまに見下し、他の2人も上から目線で言ってくる。

 僕はそんな彼等を見て少し悲しくなると同時に憎しみも湧いてくる。


「レムルス……シャノン……それに皆も……僕が本当にこの魔獣を倒せないと思っているの?」

「当たり前だ! お前みたいな魔力も仕えない上、女になってしまったら足手まといだ!」

「そうよ! そんな奴に手伝って貰う必要なんてない!」


 彼等は僕を更に蔑む様に言う。しかし、そんな言われ様にニルスが怒りの声を上げた。


「さっきから聞いていれば、アベルの事……馬鹿にし過ぎだよ!」


 ニルスは憤慨しレムルス達に言い返す。ガラドも厳しい目で彼等を見て釘を刺すように言う。


「お主達が倒せなかった場合、儂等が倒しても文句なしだぞ……」

「倒せなかったら自分達の不甲斐なさを思い知るがいい」

「お前達が倒せれば依頼は達成される……それで終わりだ」


 アイラもキッと睨みながら答え、バルバラも大剣を肩に担いで言う。

 そんな亜人達を見て『終焉の刃』のメンバー達は動揺する。


「な……何なんだ、こいつ等は? ……所詮はドワーフ、エルフ、ハーフリングの寄せ集めだろ!」

「そうよ!……私達『終焉の刃』が負けるはずないわ!」

「俺達の実力を甘く見るなよ!」


 彼等は動揺しながらも合成魔獣に攻撃を開始し向かって行くのであった。

 そんな戦いを僕は黙って見詰める。そして、心の中で呟くのである。


(君達に、この魔獣は倒せないよ……)


 僕は合成魔獣の魔力結界を見抜いていた。そして、その体の中に魔力を供給しているコアが見えているのは僕だけだろう……。




「くそ! コイツ等、何度斬っても再生するぞ!?」

「もう、魔力も殆ど残ってないわ!」

「神の奇跡を信じれば、この苦難を乗り越えれるわ!」

「しかし、このままじゃ……俺達がやられちまう!」


『終焉の刃』のメンバー達は息を切らせながら言う。その様子をレムレスは歯噛みしながら見ていた。

 そして、合成魔獣は獅子の頭部が口を大きく開くと咆哮する。


 ――ガオォォォォォォォォッ!!!

 腹を抉るような重低音が響き皆、恐怖で体が竦むのであった。


 その開いた口から超高密度の魔力を帯びた衝撃波を放つ。

 その衝撃破に『終焉の刃』のメンバー達は包まれる。


「ぐわぁ!……な……なんだ、この攻撃は!?」


 レムレスは地面に剣を突き立て何とか崩れるのを耐えていた。


「ぐふっ!」

「ぎゃっ!」

「ううっ!」

「も……もうダメだ」


 他のメンバー達は獅子の咆哮により弾き飛ばされ体を壁や地面に打ち付けていたのである。

 衝撃波による攻撃で彼等はボロボロになり武器を構えるのも難しくなっている。


 そして、合成魔獣は更に追撃するように山羊の頭部が彼等を見詰める。

 その頭部は不気味な水平方向の瞳を持ち禍々しい角が生えていた。

 山羊の頭部も口を大きく開くとメェェアァァ!!と咆哮をあげ紫色のブレスを吐き出す。


 その煙は濁った紫色で甘ったるい匂いがする。その煙が元仲間達を覆いつくしていく。

 煙が晴れると『終焉の刃』のメンバー達は何を思い立ったのか急に意味不明な事を喚きだすのである……。


「うわ!……やめろ! くるな! 魔女め!」

「ち、違う!……兄さん、私よ!」

「俺は最強の戦士だ! 邪魔する奴は剣の錆にしてやる!」

「私は聖女になりたかった……けど、なれなかった。神よ、哀れな私を助け給え……」

「武術において向かう所敵なし……どんなモンスターも一撃でやっつけてやるぞ!」


 魔獣の山羊の頭部から吐き出した煙は、どうやら幻覚作用があるようだ。

 『終焉の刃』のメンバー達は、それぞれが意味不明な事を言い出す。

 レムルスから剣を突き付けられたシャノンは、恐怖のあまりガタガタ震えている。


「魔女め! 討ち取ってくれる!」

「違う……私は天才魔術師のシャノンよ。兄さん、私に剣を向けないで!」

「アーロン! 俺とお前、どちらが強いか証明しようじゃないか!」

「望む所だ! 剣を振るうしか能のない脳筋に負ける訳がない!」


 ウェイドとアーロンに至っては、お互い罵り一発触発の状態になっている。

 幻覚に怯えているレイラは跪いて神に祈りを捧げているのである。


「神よ! 私をお助けください!」


 そんな彼等を魔獣は嘲笑うかのように唸り声を上げ止めを刺そうと襲い掛かる。


「失せろ、化け物!」

「俺は無敵だ! この剣で斬り裂いてくれるわ!」

「この棍で頭を叩き割ってザクロのように爆ぜさせてやる!」

「稀代の天才魔術師、我が名はシャノン!……いや、私は魔女だったかしら……」

「神よ……お許しください……私が未熟者であるばかりに……」


 レムルスは剣をがむしゃらに振り回すが魔獣には全く当たらない。

 シャノンは独り言を呟きながら焦点の合わない瞳で、虚空を見詰めていた。


 ウェイドは大剣をアーロンに向かって振り回すが全く当たらないのである。

 そして、アーロンも棍を振るうが全く当たらず空振りしているのであった。


 レイラに至っては跪いて神に祈るだけであった……。

 そんな彼等を放っておけば全滅するのは火を見るより明らかだった。


「やれやれ、仕方ないね……僕が何とかするか」


 僕はそう呟くと、合成魔獣に向かって歩きだす。


「アベル! 危ないよ!」


 そんな僕の背中にニルスが心配そうに声が届くが僕は振り向かず言うのであった。


「大丈夫! この魔獣は魔法攻撃に対する結界を張っているから、僕にしか解除できないんだ」


 そんな僕を見てレムルスとシャノンは虚ろな瞳で嘲笑う。


「ハハハ……何を言ってやがる? 誰も、お前なんかに期待していないんだよ!」

「そうよ!……アンタなんか、すぐに殺されちゃうわよ!」


 2人の悪口に何も答えず黙って魔獣に向かって歩きだすのであった。


「皆は、僕が魔力結界を解除したら、すぐに攻撃して!」


 僕はそう皆に指示し魔獣に向かう。そして、皆で取り囲み攻勢をかけるのであった……。

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