13話 つかの間の休息
「はあ、気持ちい、、。」
悪魔払いのためにお風呂に入っているけれど、目的を忘れてしまうくらいにはリラックスできる。
お風呂には薬草が入っていたり、不思議なアロマが焚かれている。
全身から力が抜けてこのまま溶けてしまいたい、、。
窓の外を何気なく眺めていると、どこからかトテトテと足音が聞こえる。
もしかしてまたルシアンさんたち?
警戒して辺りを見回しても誰もいない。
「気のせいか、、。」
ずっと緊張していてきっと空耳よね。
湯船に肩まで浸かっていると、またトテトテと音がした。
さすがに空耳ではないと思う。
「誰かいるの?」
呼びかけても返事はない。
少し気味が悪くなって出ようとすると、足元には変な生き物がいた。
「きゃ!!」
「うぎゃ!!」
私とその生き物の叫び声が重なる。
「見つかった大変だ!」
変な生き物は焦りながらどこかへ行こうとする。
「ちょっと待って、あなた誰?もしかして悪魔な?」
話しかけると動きが止まった。
「あなた、悪魔なの?だとしたらルシアンさんにどうにかしてもらわないと、、。」
「ルシアンだけはやめてくれ!!」
急に動き出したかと思ったら必死にすがるように私にルシアンさんに言わないでと懇願してきた。
「言わないでって、、でもあなたが悪魔なら祓ってもらわないと。」
「俺様は悪魔じゃない!!使い魔だ!!ご主人様に言われてここに来たんだ。」
「ご主人様に言われてってことはルシアンさんがご主人様?」
「違う!!あれはご主人様の下僕だ!!」
ご主人様の下僕、、。ルシアンさんとは仲が悪いのかな?
「ねえ、ご主人様って誰なの?」
「それはお前みたいな人間には言わない!!」
「ふーん、だったらルシアンさんに言っちゃおうかなあ。」
「なっ、お前ずるいぞ!!」
「別にずるくないわよ。それに女の子のお風呂に勝手に入るなんて最低よ。」
「俺様だって好きでこんなところに湧いたじゃなくて、召喚されたんじゃない!」
使い魔って湧くんだ、、。
「ねえ、あなたのご主人様ってホゼさんだったりしないの?」
「なんでお前が知ってるんだ?もしかして、お前が【創世の主】か?!」
「うーん、多分そうだと思うけどそういう風に言われるは変な感じ。
私はカリナって言うの。私の家はこの島でレストランをやっているのよ。」
「レストランって旨そうなものがたくさんあるのか?俺様も行ってみたいぞ!」
「ふふっ、それはよかった。でも君は少し不思議だからレストランに行ったら驚かれちゃうかもね。」
「それは問題ないんだぞ!俺様は姿を自由自在に変えれるからな!」
そういって急に煙が出たかと思うと目の前には男の人がいた。
「俺様の人間の姿かっこいいだろ!!これで人間の女をメロメロにするんだ!」
え、目の前に人間の男の人、、???
あれ私って今タオルってとってなかった?
、、、、、、。
「きゃああああ!!!!」
「なんだぞ?!急に大きな声をあげるな!!」
「どうした悪魔でも出たか?!」
私の悲鳴を聞いてお風呂のドアを開けてルシアンさんとリアムが入ろうとしてくる。
「私は大丈夫だから入らないで!!入ったら目を瞑すから!!」
扉の向こうからうろたえた声が聞こえる。
「とにかくこの変態を持ってって!!」
扉を一瞬だけ開けてこの変態生物を放り投げる。
どうやら放り投げたらリアムとぶつかったみたいだけれど気にしたら負けよね。
「もう、さっさと出よう、、。せっかくリラックスしてたのに、、。」
みんながいなくなったのを確認してさっさと服を着ようと思ったら何故か新しいワンピースが籠の中に置いてあった。
「これを着ろってことかな?」
着てみたら意外と着心地がよくて気持ちがいい。
「ルシアンさんお風呂ありがとうございました。このワンピースって着てもよかったですか?」
ルシアンさんたちはリビングにいてどうやら変態生物とリアムが手当てを受けている。
「ああ、それを着といて欲しい。他の服は魔よけの薬や聖水できれいにしとくから。」
「はーい、ありがとうございます。」
「カリナさんちょっとこっちに来てくれる?邪気が残っていないか確認させてほしい。」
そういうと私に杖をかざしてポワアと音を出しながら不思議な魔法をだす。
「うん、邪気は完全に祓いきったね。お疲れさま、それじゃリアム早く入ってきて。」
「お前、俺にだけなんかあたり強くない?てか、けがの手当てとかしてくれないの?」
「あの薬湯は治癒効果もある。さっさと入って来い。」
「はああ、なんなんだよ本当に、、、。」
リアムとルシアンさんは意外と仲が深まっている気がする。
リアムがお風呂に行ったあと私は近くの椅子に腰を掛けた。
目の前にはあの変態生物がいる。
「はあ。」
「溜息をつきたいのは俺様の方なんだぞ。」
目の前にはボロボロな変態がいる。
「そもそもあなたが男の人の姿にならなければよかったのよ。正当防衛よ。」
「俺様はなんにもしてないんだぞ!!それにお前みたいな小娘の裸なんて気にしないんだぞ!!」
「もう一度投げてあげようか?」
「悪かったんだぞ。」
「それで、あなたは何者なの?」
「よくぞ聞いてくれたな、人間!!
俺様の名前はテラスだ!人間のような下等生物と違って偉大な使い魔だぞ。」
「ふーん、その下等生物に放り投げられてたんこぶができたのねえ。」
「うるさいぞ!
俺様はホゼの使い魔だったんだぞ。
本当ならあいつが死んだら俺様は自由の身なんだがな、遺言で泣き虫エルフの相棒になってほしいって
お願いされて律儀にここまで来てやったんだぞ。」
「誰が弱虫エルフだ。お前だって洞窟に行くときビビッて留守番してたじゃないか。」
「別にビビッてなんかないんだぞ!俺様は洞窟が怖いんじゃなくて好きじゃないだけなんだぞ!」
洞窟が怖いんだ。
「まあまあ二人とも落ち着いて。紅茶でも飲もうよ。」
「そうだねカリナさん。僕は大人なエルフだから紅茶でも入れてこようかな。
ああテラス、君にはお子様用の甘いジュースを入れてあげるよ。」
「誰がお子様だ!!」
「さ、入れてよー。」
二人の関係は兄弟みたいな感じかな。
「ねえ、テラス。」
「テラス様と呼べ。」
「うるさいな変態。
あなたはルシアンさんの相棒って言ってたけど、もっと早くから手伝いとかできなかったの?」
「変態とは失礼なんだぞ!
俺様はホゼが死んだとき魔界に里帰りしていたからあいつが死んだのを知ったのも
最近だったんだぞ。
しかもルシアンのやつ、異世界でもない半端な空間にいたから中々座標を特定するのが
難しかったんだぞ。」
「そうなんだ、テラスも大変だったんねえ~。」
「全然そんなこと思ってないだろ。」
「そんなことないわよ。」
「二人とも飲み物を持ってきたよ。
実は茶葉を切らしちゃってて、果物のジュースしかなかったんだ、ごめんね。」
「いやいや飲み物までいただけてありがたいです。
それに果物のジュース、好きなんです。」
「そっか、それはよかった。これは庭でとれたイチゴのジュースだよ。」
出されたジュースは真っ赤に光っていてまるで宝石みたい。
「お前は気に食わないけどお前が作るものはうめえんだぞ!」
「最初の言葉がなければお前のことを相棒として認めてやってもよかったんだけどな。」
「俺様はお前の師匠の使い魔だぞ、お前なんかの相棒になるわけないんだぞ。」
「でも実力はもうほとんど同じだろ。」
「なんだと、試してみるか?!」
「ああ、もちろんいいさ。ただ僕だってずっと弱いままじゃないからね。」
「ちょっとちょっと二人ともせっかく一息つけたんだし落ち着こうよ。」
また変な魔法が出てめんどくさいことが起きるのはゴメンよ。
今はこの素敵な空間に美味しいジュースを飲んでゆっくりしたい。
そういえばここってずっと明るいのかしら。
お昼時から結構時間がったている気がするんだけど。
「あのルシアンさんここって日が沈んだりしますか?
ずっと同じ明るさで、そろそろ暗くなったりしてもいいかなてって思うんですけど。」
「あ、忘れてた。」
「え、なにをですか。」
「いやあ、ずっとここにいるとさ外の世界が何時とかわからなくなるなって。
だってここずっと明るいからさ。
それで思い出したんだけど、多分外は結構日が暮れてるかも。
はやく帰った方がいいかもね。」
「日が暮れてるってどのくらいですか?!」
「うーん、結構夜かもね。」
「うそでしょ?!(だろ?!)」
リアムもお風呂から出ていて呆然としている。
「ちょっと待てよ、門限を破ったら大変なことになるんだけど。」
「私もそうよ、あんまり遅いとお父さんに怒られる!!
お父さん怒るとすごく怖いのよ!!」
「そんなのまだマシだろ。俺は海軍大佐だぜ?!」
「なによそんなん関係ないわよ!」
「落ち着きなよ二人とも。」
「誰のせいよ!!(だ!!)」
「まあまあ、君たちは誰にも気づかれないように君たちの部屋に送ってあげるから。
いったん適当に魔法をかけて、そんで服もちょちょいのちょいっと。」
気づけば服は元通りになっていて、ルシアンさんが転移魔法を使うねーとか言ってるのが聞こえたと
思ったら気づけば自分の部屋にいた。
「え、何で。」
お父さんが部屋に向かってくる気配がした。
「どうしよう、一旦寝たふりをしよう。」
急いでベッドにもぐりこみ服を脱いで、ずっとぐっすり寝てましたよ感を出しておこう。
「なんかドンって言う音がしたけど、、。」
お父さんが部屋のドアを開けて入ってくる。
「ん?カリナ?!テトラ、カリナが帰ってるぞ!」
「本当なのあなた?!」
「叔父さんそれ本当?」
お母さんとマリンがすごい勢いで階段を駆け上がって部屋に入ってくる。
「よかった生きてたのね、、。」
お母さんたちの安堵する声が聞こえてくる。
「2日間もいなくなるなんて、、。誘拐されたわけじゃなくてよかった。」
「ああほんとになあ。」
え、今2日って言った?
うそでしょあのエルフ。
時間の感覚大丈夫?というかリアムは大丈夫なの?
「カリナも帰ってきたことだしよかった。いったん寝かしといてやるか。」
「ええそうね。本当に良かった。」
「え、叔父さん起こさないの?絶対にカリナお腹空いてると思うよ。」
「寝ているのを起こすのはかわいそうだろ。」
「ええ、でも今日はカリナの大好きなハンバーグなのに、、。」
なんでそんなこと言うのよマリン、、。
お腹が空いてきちゃったよ。
「そういえば今日はおいしいパンを買ったのよねえ。白くてもちもちのパンよ。
確か東の国で食べられている穀物を使ったらしくて、とっても美味しかったわ。」
だめだ、お腹なりそう。
「そうなのか、カリナが食べられないのはかわいそうだな。」
「ほんとだね叔父さん。でもそれって少ししかないし今食べないとなくなりそうだよね。」
ええ、なくなっちゃうの?!それだけはやめて、、。
「まあまあマリン、カリンは眠っているし聞こえてないから食べれなくても拗ねたりしないわよ。」
「それもそうよね叔母さん。それじゃおやすみカリナ。」
みんなが部屋を出ていこうとする。
今まで何で気づかなかったのかというくらい急にお腹がとても空いてきた。
白くてもちもちのパンにハンバーグ、、ああ食べたい!
私のお腹の音がなるのと同時に
「ごめんなさい、ちゃんと反省するからご飯を食べたいです!!」
と叫んでいた。
お母さんたちは驚いたような笑ったような顔をしたと思ったら、急に怖い顔をしてそこから何時間か
お説教をくらった。
「カリナ、本当になんにも覚えてないのか?」
「うん、気づいたらこの部屋にいたの。2日もたっているなんて気づかなかった。」
半分ほんとで半分嘘だけど。でも意外とほとんど本当な気がする。
私の嘘偽りがほとんどない目を見てお父さんたちも納得はしていないけれどこの話は終わったみたいだ。
ただ反省として一か月間は一人での外出が禁止になった。
この時の私は特になんとも思わず、目の前の美味しい食事に夢中だった。
私が外出禁止だとルシアンさんにしばらく会えないってことだしダメでは?!と気づくまではもう少し
かかった。
海の音が久しぶりに聞こえてきた。
開いている窓から潮風が入ってきて私の頬を優しくなでた。




