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星と煌めきの空  作者: 香坂
選択と真実の物語
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 案内された場所は見慣れない機械がいくつもあり、無機質さを象徴するような空間だった。窓がなく四方を白い壁に囲まれているせいかどことなく閉塞感が漂う。


 カルラとルトアの部屋も白一色だったが、この部屋はどこか息が詰まる感じがしてあまり長くいたくないと思った。同じ白でも全然違う感覚を覚える。



「そこへ座って」


 シグリに促されるまま背もたれのない丸椅子へと腰掛ける。

 何やら棚の中を漁っている彼女の後ろ姿を見ながら、この場にいない双子のことを思うと少々の寂しさが胸の中に広がった。


 暇を潰そうと床に視線を落としたが、汚れも傷もなく継ぎ目すらない床は見ていてつまらないどころか、どこまで見たかわからなくなってしまったのですぐに見るのをやめた。

 今度は視線を上げて壁を見渡すも、どこまでいっても同じような白い壁が続き、これといって特徴もないのでやはり見るのをやめた。



 仕方なく用途のわからない機械の数々を眺め、近くにある衝立から繋がった太い線の先を辿っている最中に声をかけられる。


「お待たせ。こちらに手をかざしてもらえる?」


 差し出されたのはシグリの手のひらよりも一回りほど大きな丸いガラス玉だった。


「こう、ですか?」

「ええ。両手でそのまま…………ふむ。わかったわ、もう手を離していいわよ」


 スイが両手をかざすとガラス玉はしばらくした後に中心部分から金色の光を放ち始め、ガラス玉いっぱいに光が満ちるとシグリが頷いた。


 彼女はガラス玉を引っ込めると次は小さめの黒い石を数個渡してくる。


「それを握って、力を込めてみて。……言っておくけど握力ではなく神力をだからね」


 グッと強めに石を握り締めるとすかさず指示が追加される。ちょっと恥ずかしい。



 言われた通りに神力を込めてみる。


 全身をゆったりと流れる力の源は今ではもうすっかり体に馴染んでいた。意識的にその存在を感じ取ることが容易にできる。そしてそれをどうしたら自分の思い通りに使えるのか、誰に教えられるでもなくやり方がわかるのだ。


 拳の中にある黒い石へと力を注ぎ込む。

 本当に不思議だけどできてしまうのだし、できないよりはいいのかなと思うことにした。


 事実、この力のおかげでプネウマと戦うことができた。あの時は見様見真似だったけど、もしかしたらもっといろんなことができるんじゃないかと少しワクワクしていたりもする。


 でもプネウマとの一戦以降、力を使うことはルトアから禁止されていたから、この力を使って何ができるのか試すことはできていない。

 もし力が暴走したらどうするんですか、と何度も何度も言い聞かせられたのだ。


 俺としては暴走させないためにも力を使う練習をしたほうがいいと思ったんだけど、ひとまずアストロンに着くまでは勝手なことはしないこと、と強めに念押しされてしまった。


 まぁ、今まで使えてたものが使えなくなったわけじゃなくてむしろその逆だから、使わなくても不便とかはないんだけど……。




「あの、そろそろいいのでは?」


「えっ? あ、すみません。考え事してました」


 訝しげな表情のシグリに謝りつつ慌てて手を開くと、そこに黒い石はなく、代わりに白い砂が現れた。


「……あれ?」


 きめ細やかな砂は粒が目視できないほどにサラサラと手のひらの上を滑っていく。ちょっと手を傾けただけでこぼれ落ちそうだ。



「えぇっと……」


 どうしたらいいのかわからず、おずおずとシグリの顔を見上げると、彼女は目を見開いたまま硬直したように動かなくなってしまった。


「シグリさん……? 大丈夫ですか?」


 シグリの目の前で手を振ってみる。まばたきすらしていない。本当に大丈夫なんだろうか?


 というかもしかして俺のせい?



 不安が押し寄せてきたところにシグリがハッと正気を取り戻す。


「……あぁ、えぇっと、それはこちらに入れてもらえるかしら。後ほど調査するので。あっと失礼。それではこちらに……失礼。こちらにどうぞ」


 明らかに動揺している様子で、スイに渡そうとした入れ物を何度か落とした。キリッとした雰囲気がすっかり崩れてしまっている。


 やっぱり俺のせい、かな……?


 何だか申し訳ない気持ちになりながらも石から砂に変わってしまったものをサラサラと流し入れる。


 本当にどういう仕組みなのだろうか? シグリさんの反応から、これが普通じゃないことだけはわかる。たぶんあの黒い石はこんな風に砂になったりしないんだろうな……。



「では次はこの箱に手を入れてみて。少し刺激があるかもしれないけれど我慢してちょうだい。もちろん力は使わないで」


 刺激?

 ちょっと気になることを言われたけど、とりあえず言われた通りにするしかない。



 真四角の箱の一辺に丸く穴が開いている。ちょうど手を入れられそうなくらいの大きさだった。

 ここに入れればいいんだよな?



 恐る恐る手を差し入れると、中は何もなくて空の箱のようだった。

 何もなくてホッとしたのも束の間、肌にピリッとした感覚が走る。


 そして———。



「いぃったあ⁉︎」


 鋭い痛みが肌を突き刺し、思わず箱から手を引っ込めた。


 何だこれ⁉︎ ものすごく痛かったけど傷はついてない……。一体何をされたんだ⁉︎



「そんなに痛かった? この中には魔力が一定量漂うようになっているのだけど、せいぜい細い針で刺された程度の痛みのはず……」


 異様に痛がるスイを見てシグリは心配するでもなく、眉を寄せて困惑したように腕を組んだ。


「ちょっと見せて……外傷はないようね。骨は? 手の動きに支障はない?」


「はい。特にこれといっておかしなところはないみたいです。でもものすごく痛くて」


「そう。何ともないようでよかった。ちなみにどんな感じの痛みだった?」


「うーん、何かこう……ビリビリっという感じです」


 うまく説明できないのがもどかしい。だからと言ってもう一度確認したいとも思えない痛みだった。


 でも何だろう? これと似た痛みを前にも感じたことがあるようなないような……。



「まぁ、神力と魔力は相性が悪いから当然の結果と言えば当然だけど、さっきの魔石のことも気になるし…………もしかしたらあなたは私たちよりも遥かに強い神力を持っているのかも。それともまったく別の力……? 調べてみないことには何とも言えないわね」


 ぶつぶつと独り言のように呟き、突然スイの肩をガシッと掴む。


「ラオザームがなんたら言ってたけどまさに未知の生物ね! 久しぶりに腕がなるわ! 最近は調整ばかりでちょうど退屈してたの」


 にーっこりと満面の笑みを見せるシグリ。スイの肩を掴む手はちょっとやそっとじゃ外れそうにない。


「えぇっと……」


「さぁ、実験の続きといくわよ!」



 あぁ……ここから逃げ出したい……。



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