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第九話 再び大空へ(前編)


お待たせしました!

 

 日が昇り、クレハさんと俺は早朝から出掛けることにした。

 少し早く目が覚めていた俺は、他の団員達を起こさないようにホームの外でクレハさんを待つ。


「お待たせ、クロノ君」


 それから間もなくして、クレハさんがやって来た。


「ごめんね、準備に時間がかかっちゃって」

「いえ、大丈夫です」


 クレハさんは、これから山にでも登るのかというような重装備をしている。

 全身を覆う厚手のジャケット、背中より大きいバックパックのような鞄。

 服装を褒めようにも、正直この格好では何を言えばいいかわからない。


「えっと……よく似合ってます、ね?」

「何で疑問系なの? 無理に褒めなくてもいいのよ」


 何処か不服そうな表情で見られる。

 まずい。これは失敗だったな。


 そんな心中を察せられたのか、クレハさんは重装備の理由を教えてくれた。

 街の外ではいつ魔物が出るかわからない為、これくらい念入りに準備をするのは当然なのだそうだ。

 鞄には万が一に備えて回復薬や包帯、野営をするための道具などが入っているらしい。

 寧ろ俺が軽装過ぎると注意されてしまった。


「ところで、薬草はどこにあるんですか?」

「この街道をずっと先に進んだところよ。森のあちこちに生えているから少しずつ集めて行くの」

「ずっと先? 森なら近くにもありますけど……」

「残念ながらこの辺りには無いわ。他の冒険者さん達も集めているから遠くまで探しに行きましょう」


 なるほどな。

 俺は地図を開いて森の様子調べる。

 初日の移動によりマップが更新されていたので、森の様子が詳細に記載されていた。


 他の冒険者が通らない場所となると、やはり隣街に続く街道から大きく外れた山奥になるだろう。

 そう考えればクレハさんが登山者の様な装備をしているのも納得がいく。

 ともかく、ここから少し遠いな。

 歩いて行ったら夕方までに帰って来られるかどうかだ。


「さっ、出発しましょう。早く歩かないと日が暮れてしまうわ」

「クレハさん、待ってください。空を飛んで行きましょう」

「空? 飛ぶってどういうこと?」

「まあ、見ててください」


 俺は雲一つ無い青空を指差し、「おいで」とピーちゃんを呼び出す。

 間もなくして空から水色のアヒルが降りて来た。

 よしよし、今日も良い子だ。

 俺はピーちゃんのフサフサの羽毛を撫でる。


「紹介します。相棒のピーちゃんです」


 俺はクレハさんにピーちゃんを紹介した。


「何この鳥さん! か、可愛い!」


 いつに無い喜びようのクレハさん。

 どうやらピーちゃんに興味を持ってくれたようだ。

「撫でてみてもいい?」と聞かれたので勿論了承する。

 クレハさんは嬉しそうに、ピーちゃんの頭をそっと撫でた。


「モフモフ〜。それにあったか〜い」

「ふふ、そうでしょう」

「でも……何だか元気無いね」

「え?」

「ほら、この子お腹が空いているみたい」


 言われてみれば、何処かやつれている様にも見える。

 ピーちゃんのステータスを確認すると、胃袋ゲージが0%で〔空腹〕状態になっていた。


「ピ……ピュィィ……」


 今度は明らかにげっそりとしている。

 聞いたことのない弱った鳴き声だ。

 ゲームでも何度か空腹状態にしてしまうことはあったが、飛行時の動きが鈍くなるだけだった。

 見た目までは変化しなかったんだけどな。


 取り敢えず餌をあげてゲージを回復させなければ。

 そう思った俺はアイテムストレージを開く。

 ピーちゃんの大好物の[極上霜降りミート]を選択したが、〔期限切れ〕と表示された。

 どうやら俺が転生するまでの一ヶ月間に、消費期限が過ぎてしまっていたらしい。

 同様に霜降りミート以外の餌も全てダメだった。


「ごめん、餌が無かった」

「ピュィ………」


 しょんぼりとした様子のピーちゃん。

 頼むからそんな哀愁漂う目で見つめないでくれ。

 餌が無いことを身振りで伝えると、とうとうピーちゃんは地面にしゃがみ込んでしまった。


 困ったな。これでは薬草探しどころでは無い。

 一体どうしたものか。


「あの……。よかったらクッキー、食べる?」


 クレハさんはポケットから昨日のクッキーを取り出した。


「いいんですか?」

「ええ。でも、これだけでお腹いっぱいになるかしら」

「んー、何もあげないよりはましだと思います」


 クレハさんにお願いしてクッキーをあげてもらうことにした。

 俺が大きな嘴を開けて押さえている間に、クレハさんがドサドサと流し込む。


「ピュイィィ!!」


 クッキーを飲み込んだ途端、ピーちゃんは元気になった。

 しかも空っぽだった胃袋ゲージはほぼ全開だ。

 大飯食らいのピーちゃんがクッキー数枚で満足とは何事だ?


「そのクッキー、何か入れてました?」

「そんなことは……あっ、もしかして香り付けに薬草を練り込んでいるからかも」

「薬草?」

「ハーブとして回復効果のある薬草を練り込んでおいたの。傷までは癒せないけど、沢山食べれば疲れを取るくらいならできると思う」


 疲労回復できるクッキーなんてあるのか。

 お陰でピーちゃんは普段よりも元気そうである。


「改めてよろしくね、ピーちゃん!」


 クレハさんは元気になったピーちゃんの頭を撫でた。

 ピーちゃんは嬉しそうに「ピーーッ」と鳴く。


「では、そろそろ出発しますよ。クレハさんも背中に乗ってください」

「えっ、もしかしてピーちゃんに乗って行くの?」

「勿論です。その為に呼んだんですから」

「そっか、そうだよね。……その、落っこちたりしない?」

「ピーちゃんがバランスをとってくれるので大丈夫です。もし落っこちても必ず拾いますから」


「本当に大丈夫かなぁ……」と半信半疑のクレハさん。

 暫く躊躇っていたが、俺の説明とピーちゃんの自信満々の鳴き声を聞いて乗ることを決心したようだ。

 そして俺達はピーちゃんの背中に跨る。


「しっかり掴まっててください」

「う、うん!」


 ピーちゃんに飛翔の合図をして、俺達三人は大空へと旅立った。


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