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最終話 再び大空へ(後編)

 

 ピーちゃんの背中に乗って大空を飛ぶ。

 最初クレハさんは目を伏せていたが、途中から景色を楽しんで見ていた。


「わぁぁ、森がこんなに小さく見えるなんて!」

「もっと高く飛べますよ」

「えっ? まだ上がるの?」


 俺はピーちゃんに合図して更に高度を上げる。

 街や森がミニチュアのように小さくなるまで上昇していく。

 驚いたクレハさんは「わーっ。待って、待って!」とピーちゃんにしがみついたので、ストップすることにした。

 雲一つ無い上空でピタリと止まる。


「凄い……。世界ってこんなに広いんだね」


 遥かに広がる大地を見て呆然とするクレハさん。

 そういえば、この大地はどこまで続いているのだろうか。

 ゲームではマップの端が存在していたが、この世界はどこまでも続いて行きそうである。

 新たな街に、新たに出会ったギルドの仲間達。そしてミカエルさんとのサタンを倒すという約束。

 まだまだ知らないことが沢山待ち受けているのかもしれない。

 気づけば俺の胸は次第に高鳴っていた。

 でも、先ずはこのメタバースから始まった世界でスローライフを楽しもうと思う。


 ◆


 俺達は森の中の開けた場所を探し、ゆっくりと着地する。

 ピーちゃんをストレージに戻そうとしたが、クレハさんが寂しそうな目をしていたので一緒に連れて行くことにした。


(ドシン、ドシン、ドシン……)


 それにしてもピーちゃん、デカい。

 ドシドシと足音を立てて歩くので、何だか威圧感がある。

 だが、そんなのもお構いなしといったように、クレハさんは嬉しそうにピーちゃんの背中を撫でている。


 薬草は森の様々なところに生えていた。

 クレハさんはテキパキと目的の薬草だけを見分けて摘んでいく。


 正直なところ、俺には雑草との見分け方がわからない。

 ゲームの頃と違ってシステムウィンドウによる識別補助もないのだ。

 取り敢えずそれっぽい草を渡してみたが、半分くらいは雑草と言われてしまった。

 これは全く力になれそうにないな。


「く、く、クロノ君!」

「どうしました?」

「あ、あれ!」


 クレハさんは突然青ざめた表情をして俺の背後に隠れた。

 何事かと思い視線の先を見る。

 そこにいたのは巨大な蜘蛛の様な虫だ。

 木々の間に糸を張り巡らせ、獲物の昆虫を捕食している。


 蜘蛛の魔物・スパイド。

 ゲームの中では、ボスと戦ったり採取をしている時に邪魔をしてきた嫌がらせモンスターだ。

 個体数はそれほど多く無いが、表皮が硬くしぶといのが特徴である。

 虫嫌いのプレーヤーからは最も嫌われていた魔物で、登場時は運営に苦情が殺到したらしい。

 まさかこの世界にもいたとはな。


 俺は魔導兵を倒した時と同様に、魔力片を打ち出して倒す。

 それを見てクレハさんはホッとしたようだった。


 残骸を見て気付いたが、やはりこの世界では魔物を倒しても勝手に消滅してはくれないようだ。

 俺も虫は苦手な方なので倒したスパイドから目を逸らすようにして通り過ぎた。


「ふぅ〜。これだけ集まれば十分だよ」

「カゴ一杯に集まりましたね」

「ええ、クロノ君も手伝ってくれてありがとう」


 二時間ほど経過した頃、遂に薬草を集め終わった。

 厚手の長袖を捲り、額の汗を拭うクレハさん。

 手に持つ籠には一杯の薬草が盛られている。

 後はここまで来た道を帰るだけである。

 そう思いピーちゃんに乗ろうとすると「待って」とクレハさんは言った。


「長旅になると思ってお昼を持ってきてたの。ちょうどお腹も空いた頃だし、一緒にどこかで食べましょう」

「いいんですか?」

「もちろんよ。あの切り株の上に座るのが良さそうね」


 森の少し開けた場所で昼食を取ることにした。

「はい、どうぞ」とバスケットを手渡される。


 俺はクレハさんにお礼をしてバスケットの蓋を開けた。

 手作りのサンドイッチだ。

 新鮮な野菜とタマゴ、ハムなどが挟んである。

 表面だけトーストされているので、外はサクサク、内はモチモチの食感を楽しめる。


「口に合うかな? 私はユメリさんやアイリーネさんみたいに料理が得意じゃないから……」

「そんな事ないですよ。とても美味しいです」

「ほんと!?」


 クレハさんは嬉しそうだ。


「クロノ君、今日は楽しかったよ。どうもありがとう」

「此方こそです。また薬草が足りなくなったら言ってください」

「うん、またよろしくね」


 俺を見て微笑むクレハさんであった。

 そして昼食を取った後は、再びピーちゃんの背中に乗って街に帰るのであった。



 ~Fin~



最後までお読みいただきありがとうございました。

短いお話になってしまいましたが、ここまでの評価や感想を心よりお待ちしております。

今後もどこかでお目にかかりましたら、楽しく読んでいただけたら幸いです。


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