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第10話 小さな戦争 

 ツヨシはマクソランスに向けて魔法を放つ。威力のある炎はマクソランスのいる所に衝突する。地面に衝撃を与えるとともに砂埃が散らばる。


「やったか?」


 やれるだけのことは今やった。あの魔法は俺が覚えた中でも最強クラスだ。ダメージぐらいは与えたと思うが…


「へぇー君の実力はそんなものなんだね。少し期待したけどガッカリだよ」

「なっ⁉︎」


 砂埃が消えていき傷一つない様子のマクソランスが微笑みながら立っている。


「クソ野郎が!! 大地より秘めらし力よ。今ここに炎の力を解放し我が命じる。あの者を赤く輝く炎で焼き払え!! エルグランド•デスファイヤー!!!!!」


 ツヨシはもう一度魔法を放つ。さっきよりさらに威力が増している。怒りの感情と不安の感情が魔力を強くした。


「はぁ…はぁ…これならやっただろ?」

 ダメだ…今ので体力をほとんど使ってしまった…

 怒りの感情と不安の感情が出たせいか体の負担を大きくしてしまった…魔力には怒りの感情と不安の感情が出てしまうと普段より威力が増すが代償に体力を奪ってしまうのだ。


「はははははっ!!こんなちっぽけな魔法で私を倒せるとでも思ったか!!」

「な、なにっ⁉︎」

「では…私からもいかせてもらおう!!ダークファイヤーボール!!」


 マクソランスは両手を構え黒い炎を放つ。マクソランスぐらいの魔導士になってくると魔法詠唱を唱えなくても魔法を使うことができるのである。


「う…うわぁぁぁぁ!!」

 黒い炎はツヨシがいる場所に物凄いスピードで衝撃を与える。その威力は街の外側からよく見えるぐらいだった。


「ぐはっ!!」


 体全身がマグマのように熱い感覚と悪の感覚が混ざりツヨシを追い込む。心臓には激しく痛みが走る。その原因は悪の感覚だろう。


「うっ…ぐっ…」


 ツヨシは既に体力を使ってしまってるのと今の攻撃で立つことは愚か身動きすら動かす出来なくなっている。

 ツヨシはまた痛感する。自分の無力さに…


「さてさて…暗黒魔法書を取りに行きますか…」


 マクソランスはため息をついてからゆっくりのアルミネラ魔法学校の校舎へと歩いていった。


「ま…まて…まだ…戦いは…」


 最後の力を振り絞って右腕を動かす。しかし意識が遠くなっていく。そして周りの視界が暗くなっていく。


「ツヨシ!!ツヨシ!!」


 誰かが声を掛けている。ああ…ゲルク…お前か…あとは頼んだ…頼んだぞ…


「ツヨシは大丈夫だ。生きている。それよりこいつを襲ったのは…」

「ええ…ツヨシの体から悪の感覚が出てるから、おそらく暗黒魔導士だね」

「なっ⁉︎ 暗黒魔導士って!!」


 暗黒魔導士はこの世界では有名な存在である。ツヨシは知らなかったとしてもこの世界の人間なら誰もが知っている。


「今回の事件を起こしたのはどうやら暗黒魔導士のようね。厄介だわね…」


 エリーナはめんどくさそうな顔をしている。


「とにかく!!奴の目的が分からない!!エリーナとノア何か分かるか?」

「うーん…」


 二人とも真剣に考えている。だが…答えは見つからない。俺もさっきまで寮でゆっくりコーヒーを飲んでいたら突然クーシ教徒を始めとする集団が暴れ回り始めた。何故この街を攻撃したのか状況が分からない。何か…何か…落ち着いて考えるんだ。

 すると…ノアが何かをひらめいたかのように話しかけてくる。


「私の予想ですけど。暗黒魔導士はおそらく何か必要な物を取りに来たのじゃないのかな?」

「あーなるほどね。それは確かにそうかもな。奴がどうしても欲しい物がある場所がどこかと言ったら?」

「どこ?」

 ああ…答えは一つしかない。俺たちが通っているアルミネラ魔法学校だ。ここは奴らが欲しがっている物がある可能性が一番高いだろう。


「アルミネラ魔法学校だ」

「私たちの通っている学校が目的⁉︎ 」

「そうだろ。だってここの街で一番可能性が高いのはここしかないだろ」

「確かにゲルクさんの言う通りだわ。エリーナ!!今すぐアルミネラ魔法学校に入るわよ!!」


 ノアがエリーナの腕を引っ張りアルミネラ魔法学校へと向かっていく。


「おい!!ツヨシどうするんだよ!!」

「ツヨシはそこの場所で寝かせておいていいわ。ゲルクあんたもさっさとこっち来なさい!!」


 ゲルクはノアとエリーナの所へと走っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方…アルミネラ魔法図書館では…魔導士マクソランスが暗黒魔法書を探していた。なかなか見つからない本にマクソランスは苛立ちを見せていた。


「何故だ⁉︎ 何故だ⁉︎ ここにあるはずじゃなかったのか⁉︎ あれさえ手に入れればいいのにっ!!そうすればっ!!私の目的が目的が果たされるのにっ!!」


 とうとうマクソランスは我慢の限界に来てしまっていた。既に誰かによって取られていたため、もうここには暗黒魔法書はない。あの時偶然ツヨシによって持ち出された本はエーゲルト屋敷にあるからである。


「騒がしいね。一体何があったんだ?」


 白い制服を来た男が図書館に入ってくる。マクソランスは怒りを見せながら男を見つめる。


「貴様!!ここの生徒だな?暗黒魔法書はどこにあるっ!!場所を教えろ!!」


 マクソランスは強い声で叫びながら話しかけてくる。手にしなければいけない物がこうして手に入らないのはマクソランスにとっては都合が悪すぎた。


「さぁね…僕も知らないんだ。んでさ…ここ僕の勉強場所なんだよ……おまけにこんなに本をぐちゃぐちゃにして…どういうつもりかな?」


 白い制服を着た男ははぁ…とため息をついて話す。この男は本来は日曜日の図書館は入れないのだがいつもこっそり侵入して勉強している。


「ほぅ…貴様この私に喧嘩を売ってるのか…どうなるか分かっているのか?」

「どうなるって?」

「こうだっ!!ダークファイヤボール!!」


 マクソランスはツヨシに使った技で白い制服の男を攻撃する。男はとっさに反応して本棚の後ろに隠れる。


「ちっ…めんどくさい奴と戦うことになったな…」

「隠れても無駄だぞ。私を誰だと思っている。貴様には分かるだろ?フォルギネアさんよ」


 マクソランスは大声で脅すように叫ぶ。ゆっくりとゆっくりと男の隠れた本棚へと歩いていく。


「油断しすぎだよ。キミ」

「⁉︎」

「ライトニングソード!!」


 あたりの本棚が一気にバラバラになり吹っ飛んでいく。図書館はめちゃくちゃだ。


「ふふふふっ。汚い手を使ってくるじゃないか貴様」

「ええ。君に負けたくないないからね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ちくしょう!!よりによって先生達が不在の時にこんなことが起きるなんて!!」

「奴らはそれを狙ってたのよ。欲しい物を手に入れるために…」


 ゲルク達はアルミネラ魔法学校の一階の廊下を走っている。向かっている場所は図書館だ。図書館は3階の右側の奥にある。


ズドーン!!


 上から大きく爆発音がする。一階からでも物凄い振動だ。


「誰か戦ってるわね。今日は休校日だからいないはずなんだけど…」

「急ぐぞ!!手遅れになる前に!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「てめぇ何呑気にここで寝てんだよ。オラ!!」

「ぐはっ!!」


 ツヨシの腹を思いっきり蹴り飛ばす。サッカーのシュートのように突き刺さる感じで痛みを与えたせいか目覚める。


「やっとお目覚めになったかツヨシさんよ」

「お、お前は…」


 目覚めたツヨシの目の前に立っている男は……クルト•バルテンだった。クルトは不機嫌そうにこっちを見ている。


「あちこちにクーシ教徒がいて倒して倒しまくってここに来たらてめぇ…なんで寝てやがる」

「ちょ…ちょっと…待ってくれ!!俺はマクソランスに攻撃されて気を失ってただけだ…」

「マクソランス?誰だよ」


 あーさっきから何がどうなっているのか分からん!!俺はさっきマクソランスと戦って気を失って…今目覚めたら目の前でクルトがブチ切れてて…ってかなんでこいつ俺に怒っているんだ⁇


「ブローガイスで優秀なテメェがどこの誰だか知らねぇ奴に負けてここで気を失ってるなんて情けねぇな…」

「は?」


 褒め言葉なのか…理解できない。今のこいつを見ると…普段から嫌な事ばかり言ってくる奴とはとても思えなかった。正直言って驚いた。


「てめぇ…暗黒魔法書持ってっただろ」

「なんでお前がそれを知ってるんだ?」


 暗黒魔法書…あれは図書館の奥の方の本棚で見つけた本だ。かなり年季が経っていて黄ばんでいたため長い間忘れ去られていた本であると思うが…何故クルトが知っているのか?


「てめぇが持ち出しているのを見たからだよ。てめぇは気づいてねぇが俺もあの日図書館に来てたからよ」

「お前いたのかよ…」


 どこにいたのだろうか…図書館は広いから気づかないこともあるからな。まぁ…そんなことはいい。


「あの魔法書は普通のそこら辺にある魔法書とは違う。あれは危険だ。お前が持ち出した魔法書はクーシ教徒が欲しがってる物だ」

「ああ…さっきマクソランスが言ってた。それが欲しいと…」


 魔導士マクソランス…この世界の6大暗黒魔導士らしい。さっき戦った時…奴の魔力は異常なほど強かった。かなりの実力者じゃなければ勝てない。


「だ〜か〜ら〜。マクソランスって誰だよ。説明しろ」

「ああ…ごめん。ごめん。マクソランスってのはクーシ教の暗黒魔導士で…」


 すると…クルトの表情が固まる。口を開けたまま…唖然とした顔で俺を見る。


「クルト?」


 しばらくクルトは黙って俺を見つめていたが…普通通りに話しかける。


「テメェが持ち出した魔法書はどこだ?奴に渡してはいけない」

「エーゲルトさんの宅邸だけど…」

「ならそこに向かえ!!俺もついて行く!!走れ!!手遅れになる前に早くしろ!!」


 俺とクルトは暗黒魔法書を取りにエーゲルトさんの宅邸に向かって全力で走って行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方…図書館では激しい戦闘が繰り広げられていた。お互い一歩譲らず戦っている。


「ほほう。思ったよりやるじゃないか君。私の魔力に対抗できる奴がここにいるとはね…」

「ふふふふ…こちらも楽しませてもらってるよ」


 辺りは図書館とは言えないほどめちゃくちゃになっている。


「君…名前なんて言うんだ?」


 マクソランスはブローガイスの白い制服を着た男に問いかける。


「何故名前を名乗らなくちゃいけない。俺は人に名前を名乗るのが嫌いなんだよ」


 白い制服を着た男は嫌な顔で答える。この男は人に名前を教えるのが嫌い。アルミネラ魔法学校でもこの男の名前を知ってる生徒はいない。


「あそこだ!!走れ!!」

「誰か来たか…」


 白い制服を着た男は扉の近くから足音と声がするのを聞きその場を去ろうとする。


「どうやら俺の出番はここまでだ。また会おうじゃないかマクソランス」

「ま、まて貴様!!どこへ行くっ!!」


 白い制服を着た男は輝く光を放って一瞬にして消えた。マクソランスは周囲を見渡したが男はいなかった。


「最後の最後まで小細工しやがってクソ野郎。だが…奴をどこかで見たことあるような…何年か前か?いや違うな何千?」


 マクソランスは腕を組んで頭を傾げる。


「な…めちゃくちゃじゃねぇかよ!!」


 ゲルク達が図書館に入って来た。普段の図書館とは全く違うほど酷くなっているため、唖然とした顔をしている。


「ゲルク、ノア見て!!あいつ!!」

「ん?」


 二人はエリーナが指を指した方向を見る。三人が見ているのは、腕を組んで頭を傾げている男だ。そう、マクソランスである。


「なぁーんだあぁ?こののネズミ達は?」


 マクソランスやる気の抜けた声で呟く。さっきまで戦っていた奴よりも弱いと分かっているからである。


「おめぇか。暗黒魔導士は!!」

「ええ。そうとも。で?君たち聞きたいことがあるんだぁ」


 マクソランスは両手を広げにやりと微笑みながら次のように語る。


「私が求める暗黒魔法書は何処にあるか知らないかい?ここの図書館にあるはずなんだが…何処を探してもないんだよ。あれは私達クーシ教にとって必要な物だ」

「それを手に入れてどうするつもり?」

「みんな同じ反応か…まぁ…君たちは理解が出来ないことか…まぁいいさ。ここで皆殺しにすれば良い」


 マクソランスは戦闘態勢に入る。ゲルク達三人もそれぞれ構える。


「私はまだ不完全燃焼なんだよ!!一人でも多く戦って殺す!!いつか夢が叶う時まで何千、何万と殺す!!」


 マクソランスは大笑いしながら話している。全ては夢を叶えるため、何千何万と多くの者と戦い殺す。戦いで生じる魔力は真のエネルギーとなり、世界を変える。クーシ教は目的は果たすため…


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