第4章 英雄たちの末路 その45『偽りの奇跡』
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翌日。
謁見の間。
その日緊急に呼び集められた帝都の主要な貴族たちが居並んでいた。
貴族たちは、互いに視線をさまよわせている。何のための緊急招集なのか、誰も知らされていない。だからといって、謁見の間で許可なく口を開くことなどできようはずもない。
そんな中、宰相エメリヒ公爵が現れた。
それから間を置いて皇帝が謁見室に現れ、玉座に座した。
皇帝リンゲンベルク五世。
年の頃は四十を過ぎ、近年の情勢に気苦労を重ね、疲労の色は隠せない。だが、宰相の助力もあり賢帝と評価されるだけの見識を示してきた名君である。
集まった貴族たちは皇帝の姿を見ると、一同に頭を垂れ臣下の礼を取った。
皇帝はその様子をしばし眺めた後、
「皆、面を上げよ」
その言葉に貴族たちは、臣下の礼をやめた。
「皆に今日、急きょ集まってもらったのは他でもない。奇跡が起きたからだ」
皇帝の物言いに、集まった貴族たちは一様に戸惑った。
このところ奇跡どころか。
英雄たちに、立て続けの不幸が起きているのだ。
耳聡い者たちは、何となく英雄たちの「醜聞」を知っている。だが、それを表立って言う者はいない。
思わず、貴族たちはざわざわと話し始める。通常であれば、皇帝の御前で不敬と咎められかねない。
しかし、宰相を始め、この場にそれを咎める者はいなかった。
宰相は、貴族たちのざわめきを無視して話を進める。
「勇者ダルク。前へ」
その言葉を聞いた貴族たちは。
驚愕した。
勇者ダルク。
この帝国で知らぬ者などおらぬ英雄の中の英雄。
魔王を倒し、百年ぶりに帝国の領土の多くを取り戻した、勇者。
しかし、彼は死んだ。
魔王との戦いの深手がもとで。
あの英雄たちも、宰相もそう発表したではないか。
謁見の間にひとりの若者が現れた。
その姿は、紛れもない勇者ダルク。
ここにいる貴族は、皆ダルクの顔を知っている。
その場の貴族たちは、混乱の極みに陥った。
「し、死んだはずでは…」
「いや、確かに勇者だ。あの顔は間違いない」
「亡霊か!? それとも、影武者か!?」
ざわめきが、悲鳴に近い喧騒へと変わっていく。
その様子を、玉座から皇帝と宰相が眺めていた。
「…皆の者静まれ」
宰相のひと言で。
その場は、水を打ったように静まり返った。
静まった場に、緊張が走る。
そんな中、宰相が発言を続けた。
「この者は勇者ダルク、その人である」
貴族たちは、また声を上げそうになったが、何とかこらえた。
「三年前。ダルクは魔王との戦いの傷がもとで死んだ。しかし」
宰相は、一拍置いた。
「三年の時を経て。勇者ダルクは、女神ウォーデンの御技により、復活を果たしたのだ」
そんな、馬鹿な話があるか。
普通ならば、誰もがそう思っただろう。
だが。
誰も、成し遂げられぬと思われた魔王を倒したあの英雄ならば。
女神ウォーデンの奇跡ならば、あるいは、と。
貴族たちの胸に、奇妙な、説得力が、忍び込む。
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